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高血圧症の大規模臨床試験は、ごく最近まですべて諸外国の文献の紹介でした。
最近続々と国内の臨床試験が進行中です。
今となっては、切歯扼腕していたのがうそのような状況です。
現在日本人でのバルサルタンの臨床試験はVART、NAGOYA HEART Study、KYOTO HEART Studyの3つの大規模臨床試験が進行中です。
Medical Tribuneの最新号に掲載された内容です。
PROBE法という試験デザインについても少し勉強してみました。
臨床試験については 日医雑誌 生涯教育シリーズ「臨床試験のABC」(2006.11.1発行) という臨時増刊号に記載されています。
それによれば、米国ではNIHがまとめて公的研究費の予算請求を行い、疾患別に設立された14の国立研究所に配分しているとのことです。
ひるがえってわが国では臨床研究費は米国1/100~1/50のようですが、文科省と厚労省の縦割り行政のためはっきりしないようです。
今回の記事も、某製薬メーカーの提供記事でした。
JIKEI HEART Study も含め、どこまで製薬メーカーがからんでいる治験なのかを我々は意外と知りません。
要するに治験費用がどこから出ているかということです。
そのあたりの事情は論文には述べられているのでしょうが、意識して読んだことは、私自身あまりありません。
バイアスの話をする際には避けて通れないことなので、ちょっと触れさせていただきました。
以下の座談会は望月正武先生の司会のもと、堀内正嗣、松原弘明、小室一成、室原豊明 各先生が参加されて行われました。
循環器内科の先生ならご存知の先生ばかりですから所属は割愛させていただきます。
日本人におけるバルサルタンのエビデンス蓄積を求めて
~進行中のバルサルタン臨床試験を中心に~
●PROBE法をめぐって
望月
現在、わが国ではVART、NAGOYA HEART Study、KYOTO HEART Studyの3つのバルサルタンを用いた臨床試験が進行中です。
本日は各試験の統括責任者の先生方にお集まりいただきましたので、その進行状況についてお話しいただきたいと思います。
その前に、これら3つの試験に共通の試験デザインであるPROBE法について堀内先生からご解説いただきたいと思います。
昨年、私が報告したJIKEI HEART StudyもPROBE法を採用しましたが、多くの方々からその方法について質問を受けたからです。
堀内
PROBE法はProspective,Randomized,Open,Blinded Endpointの頭文字を取ったもので、JIKEI HEART Studyにコ・チェアマンとして参加なさったBjorn Dahlof先生と、もうお亡くなりになりましたLennart Hansson先生によって1992年に発表された大規模臨床試験の実施方法です。
従来の二重盲検法(ダブルブラインド)と同様にエンドポイントの評価は、独立したエンドポイント委員会によりblindのか
たちで行われますから、この点に関する信頼度に問題はありません。
しかし、患者さんがどちらの群に無作為化されたかは二重盲検法と違ってわかっているので、治療内容にinvestigator によるバイアスがかかる可能性はあります。
また、入院などが関連したソフトエンドポイントも診断基準がしっかりしていれば問題はないと思いますが、治療内容がオープンであることからバイアスがかかる余地は残っています。
JIKEI HEART Studyでもこうしたバイアスの是非が-部で議論となりました。
一方、PROBE法はより実地臨床を反映していると言えると思います。
望月
ありがとうございました。
10数年前の臨床試験はダブルブラインドとはいっても、対照薬は inactive なプラセボでしたから、investigator はその患者さんがどちらの群に属しているのかすぐわかってしまいました。
松原
確かに、ダブルブラインドで行ってもどちらの群か明確にわかることが多いですね。
PROBE法は非常に日常臨床に近いというよさがあり、しかも最終評価は完全な blind ですから、従来のダブルブラインドにあまりこだわる必要はないのではないかと考えています。ただTIA、狭心症、心不全などの評価法を事前にはっきり定めておかないと、バイアスが入る可能性は否めないと思います。
望月
現在ではもう、inactivityプラセボを使ったダブルブラインドは倫理的には許されないだろうと思います。
PROBE法では investigator も患者さん自身もどういった治療を受けているかわかっているので、副作用が生じたときにも対処しやすいというメリットもあります。
松原
PROBE法は患者さんの利益意識も守れるということですね。
後ほどKYOTO HEART Studyの進行状況をご紹介しますが、実際にPROBE法で行ってみてそのよさを実感しています。
望月
JIKEI HEART Study では堀内先生にエンドポイント委員会委員長を務めていただきましたが、委員会にイベントとして上がってきたとき、TIAを合め脳卒中では全例がCTやMRI所見、狭心症では明らかなスパズムの1例を除き全例が冠動脈造影所見に基づいて厳格な診断を付けていただいたとのことで、非常に感謝しています。
こうした画像診断の実施は、必ずしも事前に決められていたことではなかったことですのでエンドポイントの先生方には感謝しています。
小室
JIKEI HEART Study は、バルサルタン群と非バルサルタン群との比較でいろいろな薬剤が使われていますから、PROBE法しかなかったと思います。
しかし、私が統括責任者になっているVARTはバルサルタンとアムロジピンという実薬同士のhead - to - headの比 較なので、ダブルブラインドで行おうと思えばできないことではなかったのです。
ARBとCa拮抗薬の比較なので、多少効き方が違いますからダブルブラインドでもどちら の群かわかるかもしれませんが、どちらなのか investigator も患者さんもわからない可能性も高いと思います。
PROBE法の場合は、特に入院などのソフトエンドポイントが問題になるので、試験の公平性ということではやはりダブルブラインドがよいと思うのです。
私が、VARTをPROBE法で行うことにしたのはダブルブラインドが高コストであるという理由からです。
望月
われわれは医師として、あるいは大規模臨床試験を行う際の倫理観に基づき厳正な診断をしたと考えていますが、ソフトエンドポイントに関してはいろいろなご指摘を受けました。それももっともなことだと思います。
しかし JIKEI HEART Study は、小室先生からご指摘のあったようにダブルブラインドではデザイン的にもできません。
PROBE法があったからこそ実施できたのです。
室原
安定狭心症患者に対するCa拮抗薬ニフェジピンの予後改善効果を検討した大規模臨床試験ACTIONの一次複合エンドポイントの1つに治療抵抗性の狭心症に対する緊急冠動脈造影という項目が設定されています。
JIKEI HEART Studyでは入院を要する狭心症に対して、1例を除いて全例に冠動脈造影を実施したということですから、ACTIONにおいて冠動脈造影で診断した狭心症と同等の厳格な評価が行われたと考えられます。
松原先生や小室先生のおっしゃるように、入院はinvestigator のバイアスが最もかかりやすいグレーゾーンと言えますが、JIKEI HEART Study における入院を要する狭心症は、冠動脈造影を要するほど重篤だったと考えることができますので、investigatorの判断に対する信頼性は高いと言えます。
望月 冠動脈造影の是非は、その場の investigator の判断に任せられていましたので,結果的にこうなったということだと思います。
出典 Merdical Tribune 2008.1.3
版権 (株)メディカル トリビューン社
他に 「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。
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