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個人的な話で恐縮ですが、私が循環器内科医になったのは急性心筋梗塞に対するヘパリンやUKの全身投与が試みられている頃でした。
その後のPTCR、PTCAやステントが始まったのは、たまたま医師としての環境が変わった時で、それぞれのことをはっきり覚えています。
そしていつの間にやら循環器の歴史を回想する年齢になってしましました。
まさしくArt is long, life is short. です。
さて、きょうはPCIの歴史、スタチンによる脂質のコントロールについて日経メディカルの記事で勉強してみました。
第55回日本心臓病学会学術集会ファイアーサイドシンポジウム
LDLCはthe lower the betterか?
スタチンはどれも同じか?
冠動脈インターベンションにおける薬物療法の重要性
社会保険小倉記念病院循環器科主任部長 安本均氏
PCIの歴史と現状
CABGは1967年Favalaroにより始められ、それに約10年遅れて1977年Gruentzigにより冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty、PTCA) は始められた。
最近では、PCIが低侵襲で入院期間も短いために急速に普及しているが、長期予後ではCABGに比べて劣るとされている。
小倉記念病院において、1985年から1986年にバルーン形成術( plain old balloon angioplasty、POBA )を施行した1,247例の長期予後を検討したところ、心臓死に対する15年生存率が76%であったにもかかわらず、心臓死に心筋梗塞の発症、CABGやPCIの施行を含めると、イベントフリーであった患者は27%となり、長期成績は決して良いものではなかった。
予後に影響する因子は糖尿病,左心室機能低下,腎不全および完全血行再建術施行例であることが示された。
また、POBAの再狭窄率はおよそ40%とされているが、術部位の再狭窄が進展するのではなく、新たな動脈硬化性病変が発生して、予後に影響を与えていることがわかった。
一方、糖尿病患者に対するPTCAとCABGを比較したBARI試験では、CABG群で長期予後が良好であったと結論づけられている(BARI: N Engl J Med 335: 217-225, 1996)。
1990年代に入り、ステントを血管内に留置する方法が開発されたことにより、急性冠閉塞の問題は解決され、術部位の再狭窄も起こりにくくなり、急性期の成績はCABGと同等になった。
しかし、長期的な成績には変化がみられなかった。
ステント留置術によるPCIとCABGを比較した3年間の追跡調査でも、CABGが優れていた(Hannan E , et al.: N Engl J Med 352: 2174-2183, 2005)。
最近では、薬剤溶出性ステント(drug eluting stent; DES)の使用が可能となり、再狭窄は劇的に減少している。
ARTSⅡ試験では、400日目までの成績がDESとCABGで同等であった。
しかし、DESと従来のベアメタルステント(bare-metal stent;BMS)とを比較した長期成績では、再狭窄率はDES群で明らかに低いが、死亡や心筋梗塞の発症率は両群間に差がなかった(Stone GW, et al. : N Engl J Med 356: 998-1008, 2007)。
さらに、DESを施行した糖尿病患者における累積死亡率でも、24カ月の時点でBMSと差がないことが示されている(Daemen J, et al. : Eur Heart J 28: 26-32, 2007)。
したがって、現時点ではDESのみに頼った冠動脈疾患の予防は困難と考えられる。
PCIにおけるスタチンの有用性
PCIは再狭窄を抑制しているにもかかわらず、死亡や冠動脈疾患イベントの発症を十分に抑制していない。
この理由には、新規病変の出現と不安定プラークの存在が考えられる。
DESでの2年目以降のイベント発生の原因は、ステント留置部位より新規病変の出現が起こって問題となることが報告されている(Cutlip DE, et al. : Curculation 110: 1226-1230, 2004)。
急性心筋梗塞前の冠動脈病変の狭窄度を調査した報告では、68%が狭窄度50%未満であることが示されている(Falk, et al. : Curculation 92: 657-671, 1995)。
また、BARI試験のメタ解析では、糖尿病を有する心筋梗塞患者において、CABG群は予後が良好であるが、PCI群は予後が悪いと報告されている(Detre KM, et al. : N Engl J Med 342: 989-997, 2000)。
心筋梗塞ではプラークの破綻が問題となるが、1個のプラ-クだけが問題となるのではなく、脆弱性プラークが複数存在することが指摘されている。
さらに、動脈硬化の進展には炎症の関与も指摘されている。
このようなvulnerable patientに対しては、PCIによる局所治療だけでは限界があり、不安定なプラークを安定化させる治療が必要である。
そのためには、スタチンをはじめとした薬物療法により、動脈硬化の進展を抑制することが重要と考えられる。
PROVE IT 試験では、スタチンでLDL-Cを積極的に低下させることにより、心筋梗塞および血行再建術を含むイベント発生率は低下した(Cannon CP, et al. : N Engl J Med 350: 1495-1504, 2004)。
さらに、炎症の指標となるCRP値が低いほど、イベント発生率は低かった(Ridker PM, et al. : N Engl J Med 352: 20-28, 2005)。
大規模臨床試験の成績から、LDL-C値と冠動脈疾患イベント発症率とをプロットすると正の相関がみられ、LDL-Cが低値であるほどイベント発症が抑制されることが確認されて
いる。
PLAC-I 試験は冠動脈造影法による血管径を測定した試験であるが,LDL-C値を28%減少させると狭窄の進行が抑制され、心筋梗塞の発症率も60%減少した。
最小血管径の減少とLDL-C値には正の相関がみられるとの報告もあり、血管内超音波法で評価したREVERSAL試験でも、LDL-C値を79mg/dLまで低下させるとプラーク容積に有意な変化はみられず,動脈硬化の進展が抑制されると考えられた。
様々な臨床試験から、動脈硬化の退縮をもたらすLDL-Cの
カットオフ値は75mg/dLと示唆され、また、HDL-C値の上昇も影響することが推測された。
さらに、脂質の中でもLDL-C/HDL-C比は動脈硬化の進展と最も高い相関を示し、動脈硬化退縮の指標になると考えられている。
海外では、LDL-C/HDL-C比が2.0以下になると動脈硬化の退縮がみられ、1.5未満ではさらなる退縮が認められたとの報告がある(図1)(Nicolis SJ, et al, ; JAMA 297:499-508, 2007)。

日本人においては、LDL-C/HDL-C比が大きくなるほど、動脈硬化が進展することが報告されており、LDL-C/HDL-C比の管理は重要である。
動脈硬化の退縮は、心血管イベントの発症を抑制するため、PCI にスタチンなどの薬物療法を併用することで、長期予後の改善が実現できると期待される。
出典 Nikkei Medical 2007.12
版権 日経BP社

森本 正興 Tahitian Green
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s78509320?u=edelcoltd
他に 「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。
皆様よいお年を。
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