戯れ言たれる侏儒
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内科循環器医は心臓外科のことは意外と十分には理解していないものです。

施設によって、冠動脈疾患の内科的治療(含むインターベンション)と外科的治療(CABG)は一定の線引き(お互いの守備範囲の確認)をしてみえるのでしょうが、心臓外科医の見解を見聞することも有意義と思い紹介させていただきました。
以下、日経メディカルからの紹介です。 

 

日本大学医学部附属板橋病院心臓血管外科諸師  
               秦光賢氏

CABGに用いられる)クラフトの臨床知見
CABG術後遠隔期のグラフト閉塞により、再手術が必要な
症例が増加しており、長期にわたるGraft diseaseや狭心症再発の予防が重要な課題となっている。
現在、CABGに使用される血管は、内胸動脈、橈骨動脈、大伏在静脈、胃大綱動脈の4種類であり、一般的には胃大綱動脈を除いた3種類が用いられている。

内胸動脈は、全世界の心臓外科医が必ず使用するゴール
ドスタンダードで、早期開存率が100%、10年開存率も95%)である。

内胸動脈は成長するグラフトであり、内膜からEDTAが分泌されるため血栓を溶解するが、術後急性期にスパスムを発生することがある。
しかし、内胸動脈の採取方法を工夫することやCa拮抗薬を使用することにより、スパスムは予防できる。
内胸動脈によるCABG術後遠隔期では、急性期に比べると
血流は増加し、前下行枝の内径に準じて左内臓動脈の内径も増加する。
また,内胸動脈を使用した症例と大伏在静脈のみを使用した症例では、内胸動脈群で遠隔期の予後が良好であることが明らかにされている。

第2の動脈グラフトとして注目されている橈骨動脈は、スパスム発生のために使用されなかった時期もあったが、Ca拮抗薬などによる予防が可能となり、現在、日本でも盛んに用いられている。
橈骨動脈の3年間累積開存率は98%と優れており、橈骨動脈の利点として、グラフトを採取した上腕での合併症の発生が、他の部位と比較して非常に少ない。
問題点は、冠動脈の狭窄が軽い状態で吻合すると、塞栓が起こることである。
そのため、橈骨動脈は狭窄の強い症例に限定すべきと報告れている

近年、橈骨動脈の開存率は静脈グラフトより低く,実際にはスパスムによる閉塞率が高いという衝撃的な報告がなされた。
これがきっかけとなり、また、複数のGABGが必要な症例では動脈グラフトが不足することから、静脈グラフトの見直しが行われている。

LDL-C改善によるグラフトマネージメント
動脈グラフトの開存率を向上させるには、グラフトの内膜スト
レスを予防
する必要がある。
CABG術後にスタチン、そしてARBまたはACE阻害薬を併用したところ、スタチンとARBの併用群で黄色プラークの発生が少なく、LDL-Cが低値であった。
また、スタチンとARBの併用によって、アテローム病変の面積が減少したとの報告もある。
これらの結果から、動脈グラフト病変の発生にはLDL-Cが関与していることが示唆された。
静脈グラフトでも、同様に考えられている。

われわれは、CABG術後31例の静脈グラフトを血管造影法
および血管内超音波法により評価した。
その結果,15例に黄色プラークと白色血栓が存在し、残りの16例には認められなかった。
この2群を比較すると,LDL-C値に有意差が認められたことから、LDL-Cを低下させることにより、静脈グラフト病変を予防できると考えられた。

また、CABGを施行した症例で、LDL-C値が100mg/dL
以下にコントロールされている98例と、コントロールされていない70例を比較したところ、静脈グラフトの開存率に有意差が認められた。
これらの結果から、LDL-Cのコントロールは、二次予防に非常に重要であるといえる。

ロスバスタチン(商品名 クレストール)は,LDL-C低下作用が強力なスタチンである。
冠動脈疾患を合併した高コレステロール血症患者29例にロスバスタチン5mg/日を投与したところ、LDL-C値が平均83.8mg/dLまで低下した(図2)。


また、CABGを施行した61例にロスバスタチン5mg/日を投与した結果、LDL-C値は平均75.6mg/dL、LDL-C/HDL-C比は1.71となり、優れた脂質改善効果が認められた。

CABGでのグラフトマネージメントには、術後急性期からのストロングスタチンの投与が重要であり、ロスバスタチンなどを使用することにより、グラフトの長期開存、心血管イベントの予防が期待される。

出典 Nikkei Medical 2007.12               
版権 日経BP社

CABG
http://ns.cvc-ohno.or.jp/~ohkawa/NS_Study/cabg.html
(わかりやすいイラストが紹介されています。心臓外科医には当たり前でも循環器内科医には意外に新鮮です。)

循環器内科医が望む冠状動脈バイパス手術(CABG)調査
http://www.syscom.ne.jp/home/seiwa/CABGquestionnaire.htm

CABG(冠状動脈バイパス手術)のページ
http://www.page.sannet.ne.jp/toshi-i/cabg.html

Systematic Review: The Comparative Effectiveness of Percutaneous Coronary Interventions and Coronary Artery Bypass Graft Surgery
Ann Int Med. 20 November 2007 Volume 147 Issue 10
http://www.annals.org/cgi/content/full/0000605-200711200-00185v1
(経皮的冠動脈インターべーション(PCI)に比較して、冠動脈バイパス手術(CABG)はより狭心症症状に対して有効であり、血管再建繰り返しが少ないが、術後の卒中リスクが高い。10年生存率は両手技とも同様。)

複雑性冠動脈疾患におけるステント留置術対CABG
http://www.nv-med.com/tct/99/pdf/09-Dr.Sigwart.pdf

 

<コメント>

恥ずかしながら 内胸動脈は成長するグラフトであり、内膜からEDTAが分泌されるため血栓を溶解するということは知りませんでした。

これは内胸動脈に限られたことなのでしょうか、またそうだとすれば何故でしょうか。

 

 町田 二郎   麦畑    
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t57161659

 

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。

 

 

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スタチンを新水性と親油性という面からみた薬理学的な解説が最近の医学雑誌に掲載されていたので勉強してみました。

虚血性心疾患予防を目的とする高コレステロール血症治療における親水性スタチンのメリット
北海道薬科大学薬理学分野教授 市原和夫氏

親水性スタチンと親油性スタチンの相違
わが国では、現在6種類のスタチンが使用されている。
コレステロールの生合成経路であるメバロン酸経路において、スタチンはHMG-CoAをメバロン酸に還元する律速酵素HMG‐CoA還元酵素を阻害する。

スタチンは親水性と親油性(脂溶性)に分類できる。
親水性スタチンにはロスバスタチンおよびプラバスタチンがあり、その他は親油性スタチンである。
ヒトの細胞はリン脂質二重層構造をしており、中央部に疎水性の層をもつため、親油性スタチンは容易に細胞内に入り込むことができる。
一方、親水性スタチンは細胞内に入り込むことはできないが、肝細胞は体内に入ってきた親水性異物を積極的に細胞内に取り込んで無毒化する特殊な細胞であるため、有機アニオン輸送担体を介して肝細胞に取り込まれる。

つまり,親水性スタチンは肝臓以外の担体をもっていない細
胞に入ることはできないが、親油性スタチンはあらゆる細胞に入り込み、HMG-CoA還元酵素を阻害する。

肝臓以外の臓器においても、メバロン酸経路が存在するのは、アセチル-CoAから種々のイソプレノイドたとえばイソペンテニル二リン酸、ゲラニル二リン酸、ファルネシル二リン酸を供給するためである。
これらが不足すると、タンパク合成が障害されたり、Gタンパク質を介する情報伝達系が障害される。
さらに、心筋細胞においてメバロン酸経路は、心筋収縮のエネルギー源となるユビキノンを供給する。
親油性スタチンが肝臓以外の細胞内に入り込むことにより、これらの生合成を阻害して、様々な細胞機能を抑制する可能性がある。

心筋スタニング現象に及ぼすスタチンの影響
われわれは、親水性および親油性スタチンの心筋への影響
を検討するため、動物実験により心筋スタニング現象を再現した。
スタニング現象とは、短時間でも虚血に曝された心筋では、
虚血が解除されてもその収縮力は直ぐには元に戻らないことをいう。
スタチンは臨床用量のおよそ10倍を使用し、実験用ビーグル犬に3週間経口投与した。

その結果、親油性スタチン群とプラセボ群では、虚血後の
再潅流によって回復する心筋収縮力に明らかな差が認められたのに対し、親水性スタチン群はプラセボ群と同程度であった(図3)。


心筋スタニング現象は、親油性スタチンが心筋細胞内に入り込んだことにより発現している可能性が考えられる。

このような親油性スタチンの作用は、臨床的に起こる可能性
が少ないと考える向きもある。
しかし、スタニング現象が隠れた状態で起こっていると、心筋虚血が発生した時に、回復が遅れてより危険な状態になる可能性がある。

また、親油性スタチンが心筋収縮力を低下させるのは、心
筋保護作用と考える向きもある。
しかし、β遮断薬による心筋保護作用とは異なり、スタニング現象ではATPの保持量が低下しているため、心筋にエネルギーが不足した状態になり、心筋保護にはならないと考えられる。

このような点から、虚血性心疾患予防を目的とするLDL-C
血症治療には,親水性スタチンにメリットがあると示唆される。

出典 Nikkei Medical 2007.12               版権 日経BP社 

<コメント>

冠動脈その他の動脈壁(特に内膜)に対しては親油性スタチンが有利に働くということはないのでしょうか? 

つまり、心筋というある局面からの評価にかたよっている懸念はないのでしょうか?

親油性スタチンは正常心筋で心筋収縮力を低下させる可能性があるのでしょうか。 

スタチンの主たる副作用であるCK上昇(ミオパチー)や横紋筋融解症の原因は私自身よく知りません。

親水性スタチンが肝臓以外では取り込まれないということならこれらの副作用は少ないということになるのでしょうか。 

図で示された実験での親水性、親油性スタチンの設定用量は「臨床用量のおよそ10倍」ということですが、もう少し細かな用量設定をした場合はどのような結果になったのでしょうか。

ある一定の用量で直接比較した場合には、結果に問題が起こる可能性はないのでしょうか。

 

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。

 

 

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