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慢性心不全におけるβ遮断薬療法 その2(2/3)
国立病院機構大阪医療センター循環器科 科長安村良男氏

亢進した心臓交感神経活性を抑制し、リバース・リモデリングをもたらすβ遮断薬
心不全では心機能の低下を補うために神経体液性因子の亢進を伴う。
心臓交感神経活性は全身の交感神経活性に先んじて亢進することが分かっている。
すなわち、軽症の慢性心不全では既に心臓交感神経活性が亢進しており、交感神経活性の抑制という作用を持つβ遮断薬を心不全の早期から使う意義がここにあると言えよう。

一方、神経体液性因子の持続的な亢進は心不全の悪化につながる。
特に、血中ノルエピネフリン濃度で代表される交感神経活性の亢進は、慢性心不全患者の強力な予後規定因子である。

心臓交感神経活性の亢進は、心筋細胞での活性酸素産生の増加を介して心毒性に作用するほか、β受容体シグナル伝達系の変化を介して心機能のさらなる低下をもたらす。
すなわち、不全心が不全心を増悪するといえる。 
実際に、DCM例で左室駆出率(LVEF)とMIBGシンチグラフイーから求めた洗い出し率(WR)を指標にして心機能と心臓交感神経活性との関係を検討した我々の成績では、心機能が低下している症例ほど心臓交感神経活性が亢進していた。
β遮断薬は交感神経活性の亢進を抑制することでこうした悪循環を断ち切り、左室リモデリングを抑制する。
また、β遮断薬は、左室リモデリングを抑制するのみならず、拡大した左室を小さくし、LVEFの増大をもたらす
これがリバース・リモデリングである(図2)。


心臓交感神経活性の持続的亢進は心筋細胞の病的変化(遺伝子発現の変化)をもたらし、ひいては左室機能を低下させる。
β遮断薬によるLVEFの改善には心筋細胞の質的変化を伴うことが示されている。
心不全のもとをたどれば不全心にある。
ACE阻害薬やARBは主に血管系にその効果を発揮する。 

これに対してβ遮断薬は左室の心機能を改善させる方向に働く。
これがβ遮断薬が慢性心不全の予後を大きく改善させる理由と考えられる。
実際、LVEFの改善は慢性心不全の独立した予後予測因子であるとの報告がなされている。

心不全に対して導入しやすいカルベジロール 
これまでに、慢性心不全の予後改善効果ガ認められているβ遮断薬はカルベジロール、メトプロロール、ビソプロロールの3剤であり、β1受容体遮断の確実さ、長時間作用型、脂溶性という共通点がある。
どの薬剤が最も予後を改善するかは明らかではないが、我が国で慢性心不全の適応症が承認されているのは唯一、日本人慢性心不全患者を対象にした臨床試験MUCHAにてエビデンスを持つカルベジロールだけである(図3)。

 

カルベジロールは血管拡張作用や抗酸化作用などの特徴を併せ持つために導入しやすいという特徴を考えると、心不全に対するカルベジロールの効果はβ遮断薬のClass Effectとは言えないであろう(表2)。

NIKKEI MEDICAL 2007.12              版権 日経BP社

<参考1> 
MUCHA     
Multicenter Carvedilol Heart Failure Dose Assessment
本試験は本邦で実施された治験である。5mg/日の低用量群でも20mg/日の高用量群と大差のない有効性が認められたが,左室駆出率の改善はMOCHA 試験と同様に用量依存性に増大がみられたため,やはり20mg/日まで増量するのが望ましいと考えられる。

20mg/日でも欧米の投与量の約1/2であり,日本人は少用量でも有効であることを示している。

さらにこの点を検証すべく現在,J-CHE試験が進行中である。        (コメント 堀正一先生)
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002326.html
<参考2>                             アーチスト錠1.25mg 他 (第一製薬株式会社)
「次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿剤、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者:虚血性心疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全」の効能追加。  (添付文書2006年改訂  より) 

<コメント>                            この適応でみる限り、上記3剤による基礎治療を受けていないと基金が通らないことになります。

亜硝酸剤の血管拡張療法は基礎治療としての条件を満たさないということです。 

そして弁膜症による心不全も適応外です。

なんだかしっくりしません。 

 

<コメント>

私自身、在局時代には血中ノルエピネフインの高感度測定に取り組んでいました。

そのころは上記の文中に出てくる心機能が低下している症例ほど心臓交感神経活性が亢進していることも拡大した左室も心不全に対する生体の合目的的現象と考えていました。そして当時の医学界もそういった見解でした。

このことは今でも一部真実のはずです。

急激なかつ急速な心不全の改善をβ遮断薬に望めないだろうしまた望んではいけないと個人的には思います。

あくまでもバイスタンダーという位置づけと思うのですが。

そして効果判定もこまめにかつ慎重に行うべきでしょうが、実際にきちんとモニターされているかというとその点もいささか疑問ではあります。 

従来の心不全治療法がおろそかにならないことを祈るばかりです。 

 

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。

 

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