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個人的な話で恐縮ですが、私が循環器内科医になったのは急性心筋梗塞に対するヘパリンやUKの全身投与が試みられている頃でした。
その後のPTCR、PTCAやステントが始まったのは、たまたま医師としての環境が変わった時で、それぞれのことをはっきり覚えています。
そしていつの間にやら循環器の歴史を回想する年齢になってしましました。
まさしくArt is long, life is short. です。
さて、きょうはPCIの歴史、スタチンによる脂質のコントロールについて日経メディカルの記事で勉強してみました。
第55回日本心臓病学会学術集会ファイアーサイドシンポジウム
LDLCはthe lower the betterか?
スタチンはどれも同じか?
冠動脈インターベンションにおける薬物療法の重要性
社会保険小倉記念病院循環器科主任部長 安本均氏
PCIの歴史と現状
CABGは1967年Favalaroにより始められ、それに約10年遅れて1977年Gruentzigにより冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty、PTCA) は始められた。
最近では、PCIが低侵襲で入院期間も短いために急速に普及しているが、長期予後ではCABGに比べて劣るとされている。
小倉記念病院において、1985年から1986年にバルーン形成術( plain old balloon angioplasty、POBA )を施行した1,247例の長期予後を検討したところ、心臓死に対する15年生存率が76%であったにもかかわらず、心臓死に心筋梗塞の発症、CABGやPCIの施行を含めると、イベントフリーであった患者は27%となり、長期成績は決して良いものではなかった。
予後に影響する因子は糖尿病,左心室機能低下,腎不全および完全血行再建術施行例であることが示された。
また、POBAの再狭窄率はおよそ40%とされているが、術部位の再狭窄が進展するのではなく、新たな動脈硬化性病変が発生して、予後に影響を与えていることがわかった。
一方、糖尿病患者に対するPTCAとCABGを比較したBARI試験では、CABG群で長期予後が良好であったと結論づけられている(BARI: N Engl J Med 335: 217-225, 1996)。
1990年代に入り、ステントを血管内に留置する方法が開発されたことにより、急性冠閉塞の問題は解決され、術部位の再狭窄も起こりにくくなり、急性期の成績はCABGと同等になった。
しかし、長期的な成績には変化がみられなかった。
ステント留置術によるPCIとCABGを比較した3年間の追跡調査でも、CABGが優れていた(Hannan E , et al.: N Engl J Med 352: 2174-2183, 2005)。
最近では、薬剤溶出性ステント(drug eluting stent; DES)の使用が可能となり、再狭窄は劇的に減少している。
ARTSⅡ試験では、400日目までの成績がDESとCABGで同等であった。
しかし、DESと従来のベアメタルステント(bare-metal stent;BMS)とを比較した長期成績では、再狭窄率はDES群で明らかに低いが、死亡や心筋梗塞の発症率は両群間に差がなかった(Stone GW, et al. : N Engl J Med 356: 998-1008, 2007)。
さらに、DESを施行した糖尿病患者における累積死亡率でも、24カ月の時点でBMSと差がないことが示されている(Daemen J, et al. : Eur Heart J 28: 26-32, 2007)。
したがって、現時点ではDESのみに頼った冠動脈疾患の予防は困難と考えられる。
PCIにおけるスタチンの有用性
PCIは再狭窄を抑制しているにもかかわらず、死亡や冠動脈疾患イベントの発症を十分に抑制していない。
この理由には、新規病変の出現と不安定プラークの存在が考えられる。
DESでの2年目以降のイベント発生の原因は、ステント留置部位より新規病変の出現が起こって問題となることが報告されている(Cutlip DE, et al. : Curculation 110: 1226-1230, 2004)。
急性心筋梗塞前の冠動脈病変の狭窄度を調査した報告では、68%が狭窄度50%未満であることが示されている(Falk, et al. : Curculation 92: 657-671, 1995)。
また、BARI試験のメタ解析では、糖尿病を有する心筋梗塞患者において、CABG群は予後が良好であるが、PCI群は予後が悪いと報告されている(Detre KM, et al. : N Engl J Med 342: 989-997, 2000)。
心筋梗塞ではプラークの破綻が問題となるが、1個のプラ-クだけが問題となるのではなく、脆弱性プラークが複数存在することが指摘されている。
さらに、動脈硬化の進展には炎症の関与も指摘されている。
このようなvulnerable patientに対しては、PCIによる局所治療だけでは限界があり、不安定なプラークを安定化させる治療が必要である。
そのためには、スタチンをはじめとした薬物療法により、動脈硬化の進展を抑制することが重要と考えられる。
PROVE IT 試験では、スタチンでLDL-Cを積極的に低下させることにより、心筋梗塞および血行再建術を含むイベント発生率は低下した(Cannon CP, et al. : N Engl J Med 350: 1495-1504, 2004)。
さらに、炎症の指標となるCRP値が低いほど、イベント発生率は低かった(Ridker PM, et al. : N Engl J Med 352: 20-28, 2005)。
大規模臨床試験の成績から、LDL-C値と冠動脈疾患イベント発症率とをプロットすると正の相関がみられ、LDL-Cが低値であるほどイベント発症が抑制されることが確認されて
いる。
PLAC-I 試験は冠動脈造影法による血管径を測定した試験であるが,LDL-C値を28%減少させると狭窄の進行が抑制され、心筋梗塞の発症率も60%減少した。
最小血管径の減少とLDL-C値には正の相関がみられるとの報告もあり、血管内超音波法で評価したREVERSAL試験でも、LDL-C値を79mg/dLまで低下させるとプラーク容積に有意な変化はみられず,動脈硬化の進展が抑制されると考えられた。
様々な臨床試験から、動脈硬化の退縮をもたらすLDL-Cの
カットオフ値は75mg/dLと示唆され、また、HDL-C値の上昇も影響することが推測された。
さらに、脂質の中でもLDL-C/HDL-C比は動脈硬化の進展と最も高い相関を示し、動脈硬化退縮の指標になると考えられている。
海外では、LDL-C/HDL-C比が2.0以下になると動脈硬化の退縮がみられ、1.5未満ではさらなる退縮が認められたとの報告がある(図1)(Nicolis SJ, et al, ; JAMA 297:499-508, 2007)。

日本人においては、LDL-C/HDL-C比が大きくなるほど、動脈硬化が進展することが報告されており、LDL-C/HDL-C比の管理は重要である。
動脈硬化の退縮は、心血管イベントの発症を抑制するため、PCI にスタチンなどの薬物療法を併用することで、長期予後の改善が実現できると期待される。
出典 Nikkei Medical 2007.12
版権 日経BP社

森本 正興 Tahitian Green
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皆様よいお年を。
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内科循環器医は心臓外科のことは意外と十分には理解していないものです。
施設によって、冠動脈疾患の内科的治療(含むインターベンション)と外科的治療(CABG)は一定の線引き(お互いの守備範囲の確認)をしてみえるのでしょうが、心臓外科医の見解を見聞することも有意義と思い紹介させていただきました。
以下、日経メディカルからの紹介です。
日本大学医学部附属板橋病院心臓血管外科諸師
秦光賢氏
CABGに用いられる)クラフトの臨床知見
CABG術後遠隔期のグラフト閉塞により、再手術が必要な
症例が増加しており、長期にわたるGraft diseaseや狭心症再発の予防が重要な課題となっている。
現在、CABGに使用される血管は、内胸動脈、橈骨動脈、大伏在静脈、胃大綱動脈の4種類であり、一般的には胃大綱動脈を除いた3種類が用いられている。
内胸動脈は、全世界の心臓外科医が必ず使用するゴール
ドスタンダードで、早期開存率が100%、10年開存率も95%)である。
内胸動脈は成長するグラフトであり、内膜からEDTAが分泌されるため血栓を溶解するが、術後急性期にスパスムを発生することがある。
しかし、内胸動脈の採取方法を工夫することやCa拮抗薬を使用することにより、スパスムは予防できる。
内胸動脈によるCABG術後遠隔期では、急性期に比べると
血流は増加し、前下行枝の内径に準じて左内臓動脈の内径も増加する。
また,内胸動脈を使用した症例と大伏在静脈のみを使用した症例では、内胸動脈群で遠隔期の予後が良好であることが明らかにされている。
第2の動脈グラフトとして注目されている橈骨動脈は、スパスム発生のために使用されなかった時期もあったが、Ca拮抗薬などによる予防が可能となり、現在、日本でも盛んに用いられている。
橈骨動脈の3年間累積開存率は98%と優れており、橈骨動脈の利点として、グラフトを採取した上腕での合併症の発生が、他の部位と比較して非常に少ない。
問題点は、冠動脈の狭窄が軽い状態で吻合すると、塞栓が起こることである。
そのため、橈骨動脈は狭窄の強い症例に限定すべきと報告れている。
近年、橈骨動脈の開存率は静脈グラフトより低く,実際にはスパスムによる閉塞率が高いという衝撃的な報告がなされた。
これがきっかけとなり、また、複数のGABGが必要な症例では動脈グラフトが不足することから、静脈グラフトの見直しが行われている。
LDL-C改善によるグラフトマネージメント
動脈グラフトの開存率を向上させるには、グラフトの内膜スト
レスを予防する必要がある。
CABG術後にスタチン、そしてARBまたはACE阻害薬を併用したところ、スタチンとARBの併用群で黄色プラークの発生が少なく、LDL-Cが低値であった。
また、スタチンとARBの併用によって、アテローム病変の面積が減少したとの報告もある。
これらの結果から、動脈グラフト病変の発生にはLDL-Cが関与していることが示唆された。
静脈グラフトでも、同様に考えられている。
われわれは、CABG術後31例の静脈グラフトを血管造影法
および血管内超音波法により評価した。
その結果,15例に黄色プラークと白色血栓が存在し、残りの16例には認められなかった。
この2群を比較すると,LDL-C値に有意差が認められたことから、LDL-Cを低下させることにより、静脈グラフト病変を予防できると考えられた。
また、CABGを施行した症例で、LDL-C値が100mg/dL
以下にコントロールされている98例と、コントロールされていない70例を比較したところ、静脈グラフトの開存率に有意差が認められた。
これらの結果から、LDL-Cのコントロールは、二次予防に非常に重要であるといえる。
ロスバスタチン(商品名 クレストール)は,LDL-C低下作用が強力なスタチンである。
冠動脈疾患を合併した高コレステロール血症患者29例にロスバスタチン5mg/日を投与したところ、LDL-C値が平均83.8mg/dLまで低下した(図2)。

また、CABGを施行した61例にロスバスタチン5mg/日を投与した結果、LDL-C値は平均75.6mg/dL、LDL-C/HDL-C比は1.71となり、優れた脂質改善効果が認められた。
CABGでのグラフトマネージメントには、術後急性期からのストロングスタチンの投与が重要であり、ロスバスタチンなどを使用することにより、グラフトの長期開存、心血管イベントの予防が期待される。
出典 Nikkei Medical 2007.12
版権 日経BP社
CABG
http://ns.cvc-ohno.or.jp/~ohkawa/NS_Study/cabg.html
(わかりやすいイラストが紹介されています。心臓外科医には当たり前でも循環器内科医には意外に新鮮です。)
循環器内科医が望む冠状動脈バイパス手術(CABG)調査
http://www.syscom.ne.jp/home/seiwa/CABGquestionnaire.htm
CABG(冠状動脈バイパス手術)のページ
http://www.page.sannet.ne.jp/toshi-i/cabg.html
Systematic Review: The Comparative Effectiveness of Percutaneous Coronary Interventions and Coronary Artery Bypass Graft Surgery
Ann Int Med. 20 November 2007 Volume 147 Issue 10
http://www.annals.org/cgi/content/full/0000605-200711200-00185v1
(経皮的冠動脈インターべーション(PCI)に比較して、冠動脈バイパス手術(CABG)はより狭心症症状に対して有効であり、血管再建繰り返しが少ないが、術後の卒中リスクが高い。10年生存率は両手技とも同様。)
複雑性冠動脈疾患におけるステント留置術対CABG
http://www.nv-med.com/tct/99/pdf/09-Dr.Sigwart.pdf
<コメント>
恥ずかしながら 内胸動脈は成長するグラフトであり、内膜からEDTAが分泌されるため血栓を溶解するということは知りませんでした。
これは内胸動脈に限られたことなのでしょうか、またそうだとすれば何故でしょうか。

町田 二郎 麦畑
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スタチンを新水性と親油性という面からみた薬理学的な解説が最近の医学雑誌に掲載されていたので勉強してみました。
虚血性心疾患予防を目的とする高コレステロール血症治療における親水性スタチンのメリット
北海道薬科大学薬理学分野教授 市原和夫氏
親水性スタチンと親油性スタチンの相違
わが国では、現在6種類のスタチンが使用されている。
コレステロールの生合成経路であるメバロン酸経路において、スタチンはHMG-CoAをメバロン酸に還元する律速酵素HMG‐CoA還元酵素を阻害する。
スタチンは親水性と親油性(脂溶性)に分類できる。
親水性スタチンにはロスバスタチンおよびプラバスタチンがあり、その他は親油性スタチンである。
ヒトの細胞はリン脂質二重層構造をしており、中央部に疎水性の層をもつため、親油性スタチンは容易に細胞内に入り込むことができる。
一方、親水性スタチンは細胞内に入り込むことはできないが、肝細胞は体内に入ってきた親水性異物を積極的に細胞内に取り込んで無毒化する特殊な細胞であるため、有機アニオン輸送担体を介して肝細胞に取り込まれる。
つまり,親水性スタチンは肝臓以外の担体をもっていない細
胞に入ることはできないが、親油性スタチンはあらゆる細胞に入り込み、HMG-CoA還元酵素を阻害する。
肝臓以外の臓器においても、メバロン酸経路が存在するのは、アセチル-CoAから種々のイソプレノイドたとえばイソペンテニル二リン酸、ゲラニル二リン酸、ファルネシル二リン酸を供給するためである。
これらが不足すると、タンパク合成が障害されたり、Gタンパク質を介する情報伝達系が障害される。
さらに、心筋細胞においてメバロン酸経路は、心筋収縮のエネルギー源となるユビキノンを供給する。
親油性スタチンが肝臓以外の細胞内に入り込むことにより、これらの生合成を阻害して、様々な細胞機能を抑制する可能性がある。
心筋スタニング現象に及ぼすスタチンの影響
われわれは、親水性および親油性スタチンの心筋への影響
を検討するため、動物実験により心筋スタニング現象を再現した。
スタニング現象とは、短時間でも虚血に曝された心筋では、
虚血が解除されてもその収縮力は直ぐには元に戻らないことをいう。
スタチンは臨床用量のおよそ10倍を使用し、実験用ビーグル犬に3週間経口投与した。
その結果、親油性スタチン群とプラセボ群では、虚血後の
再潅流によって回復する心筋収縮力に明らかな差が認められたのに対し、親水性スタチン群はプラセボ群と同程度であった(図3)。

心筋スタニング現象は、親油性スタチンが心筋細胞内に入り込んだことにより発現している可能性が考えられる。
このような親油性スタチンの作用は、臨床的に起こる可能性
が少ないと考える向きもある。
しかし、スタニング現象が隠れた状態で起こっていると、心筋虚血が発生した時に、回復が遅れてより危険な状態になる可能性がある。
また、親油性スタチンが心筋収縮力を低下させるのは、心
筋保護作用と考える向きもある。
しかし、β遮断薬による心筋保護作用とは異なり、スタニング現象ではATPの保持量が低下しているため、心筋にエネルギーが不足した状態になり、心筋保護にはならないと考えられる。
このような点から、虚血性心疾患予防を目的とするLDL-C
血症治療には,親水性スタチンにメリットがあると示唆される。
出典 Nikkei Medical 2007.12 版権 日経BP社
<コメント>
冠動脈その他の動脈壁(特に内膜)に対しては親油性スタチンが有利に働くということはないのでしょうか?
つまり、心筋というある局面からの評価にかたよっている懸念はないのでしょうか?
親油性スタチンは正常心筋で心筋収縮力を低下させる可能性があるのでしょうか。
スタチンの主たる副作用であるCK上昇(ミオパチー)や横紋筋融解症の原因は私自身よく知りません。
親水性スタチンが肝臓以外では取り込まれないということならこれらの副作用は少ないということになるのでしょうか。
図で示された実験での親水性、親油性スタチンの設定用量は「臨床用量のおよそ10倍」ということですが、もう少し細かな用量設定をした場合はどのような結果になったのでしょうか。
ある一定の用量で直接比較した場合には、結果に問題が起こる可能性はないのでしょうか。
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Medical Tribuneからの紹介です。
〔ウィーン〕アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)には降庄効果だけでなく、臓器を保護する作用もある。
ブレシア大学(伊ブレシア)のEnrico Agabiti-Rosei教授は「このことはオルメサルタンメドキソル(商品名Olmetec,Votum)では既に証明ずみで、同薬が持つアテローム硬化性プラークの生成を抑制する効果に期待が寄せられている」と、欧州心臓学会(ESC) で行われたサテライトシンポジウムで報告した。
蛋白尿への影響も検討中
例えば,European Trial on Olmesartan and Prava- statin in lnflammation and Atherosclerosis (EUTOPIA) 試験では、オルメサルタン群ではプラセ
ボ群と比べて炎症マーカーが有意に低下した。
また、Vascular Improvement with Olmesartan
medoxomil Study (VIOS) では,オルメサルタンがアテノロールとは異なり、血管壁における高血圧性の変化を消退させることが示された。
Multicenter Olmesartan atherosclerosis Regression Evaluation (MORE) 試験では、最終的に高血圧患者の頚動脈におけるプラークの体積が、オルメサルタン群では減少したのに対し、アテノロール群では認められなかった。
現在では,腎疾患だけでなく心血管系イベントリスクの増大にもつながる蛋白尿が注目されている。
Randomised Olmesartan and Diabetes MicroAlbumi-nuria Prevention(ROADMAP)試験では、オルメサルタンが、微量蛋白尿の予防により高血圧性2型糖尿病患者における心血管リスクを低下させるどうかの検証が開始されており、これまで1つ以上の心血管危険因子を有する2型糖尿病患者4,400例がランダム化されている。
(Copyright 2007 Doctors Guide.com)
Medical Tribune 2007.12.20
版権 (株)メディカル トリビューン
ロバート・ハインデル BIG SKIRT シルク
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<参考>
血圧降下剤「オルメサルタン メドキソミル」
大規模臨床試験ROADMAPを欧州で実施
ROADMAPは,Randomised Olmesartan and Diabetes Microalbuminuria Prevention studyの略。アンジオテンシン II 受容体拮抗薬が,腎障害を発症していない2型糖尿病患者の微量アルブミン尿症の発症を予防するかどうかを検証する,世界初の大規模臨床試験。対象となる患者は,2型糖尿病のほかに最低一つの危険因子(高脂血症;含低HDL血症,高血圧症,肥満,喫煙など)を併せ持つ男女4,400人。オルメサルタン 40mgとプラセボによる二重盲検比較試験により,微量アルブミン尿症の発症率を見る。
ROADMAP試験の終了は,2012年の予定。
https://www.iyaku-j.com/MDJOURNA/iyaku/doc/2004-03/050monthly.htm
<コメント>
ARBはアテローム硬化性プラークの予防と退縮。 いずれにも効果があるようです。
スタチンにも同様の効果が期待できるようなので高血圧や脂質異常症がなくとも長生きをしたければ両者を服用する価値があるかも知れません。
私は個人的にひそかに、この2者に加えてEPAと抗血小板剤を毎日服用しています。
さて今回はARBとβ遮断剤との比較ですが、ARBとACE-Iではどうでしょうか。
気になるところではあります。
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安全性懸念はひとまず収束
では、昨年起きた騒動は今、どうなっているのか。
天理よろづ相談所病院(奈良県天理市)循環器内科部長の中川義久氏は、「その後、より信頼性の高い研究結果がいくつか発表されたことから、今年の海外の関連学会では、安全性に対する議論はほとんど終息していた」と語る。
それらの中で、現状で最も信頼できるとされる研究結果が、図3のデータだ。

これはDESとBMSを直接比較した38のランダム化比較試験(計1万8023人)の、最長4年までの追跡調査結果を対象
に、死亡や心筋梗塞、ステント血栓症の頻度などをメタ解析したもの。
死亡+心筋梗塞のリスクは2種類のDESとBMSで有意差がなかった。
また、カナダのオンタリオ州で行われたコホート研究では、DESとBMS使用例をそれぞれ3751例ずつ追跡したところ、3年死亡率はBMS群がDES群よりも有意に高く(7.8%対5.5%、P<0.001)、2年間の心筋梗塞発生率は同程度となった
(5.2%対5.7%、P=0.95)。
これらの結果を踏まえて中川氏は、「単一のランダム化比較試験で安全性を議論できない中、現時点のデータでは、DESのメリットを否定するほどの懸念はない」と強調する。
バッシングが一段落した今、改めて注目されているのは、DESの適応と抗血小板療法の期間だ。
適応と抗血小板療法の期間は
DESの使用に慎重な姿勢を取る仙台厚生病院(仙台市青葉区)循環器科主任部長の井上直人氏は、「日本人は血管が細く複雑病変が多いため、再狭窄のリスクが高い。
BMSだけでは治療は困難なので、DESはやはり必要。
重要なのは、DESの適応をしっかり考えることだ」と語る。
井上氏が適応を考える際に考慮するポイントは表2の通りだ。

「どこの施設でもポイントは基本的に同じだが、何を重視するかで使用率は異なってくる」と井上氏。
仙台厚生病院では、DESの使用率は従来2割程度だったが、最近は増加傾向にあり、今年の6~9月は38%となった。
ちなみに日本全体でのDESの使用率は6~7割だ。
また、DES使用例におけるステント血栓症のリスクは1年後以降も続くとされるため、チエノピリジン系薬を用いた抗血小板療法をいつまで続ければよいかも、まだコンセンサスが得られていない。
DESの使用経験が多い京大循環器内科准教授の木村剛氏は、「継続による出血リスクもあるので、特に事情がない限り6カ月までが妥当と考える」としている。
その理由の1つには、チエノピリジン系薬の服用をやめた時期が6カ月以内の場合は有意にリスクが高いが、それ以降にやめた場合は有意差がなかったという報告(Airoldi F et alCirculation 2007; 16: 745-54.)がある。
また、DESの1つであるサイファーステントを日本で使用した症例の観察研究(J-Cypher)では、1年以内に遅発性ステント血栓症を発症した患者のうち、60%はチエノピリジン系薬を継続していた。
つまり1年まで継続しても、血栓症を確実に防げるとは必ずしもいえないわけだ。
もちろん、他の意見もある。
米食品医薬品局(FDA)は昨年、DESの安全性に関する緊急ミーティングを開催した際、チエノピリジン系薬を1年間継続することを推奨しており、これに従う医師も少なくない。
いずれにせよ、安全性や適応などの問題に対して、現段階では明確な答えは出ていない。
ただ、今回の大きな議論が、急速にDESが浸透した現状に対する警鐘となり、DESとBMSの適応を再確認する契機に
なったことは確かだ。
NIKKEI MEDICAL 2007.12
版権 日経BP社
カシニョール リト『海に面したバルコニー』
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t56837315?u=;artfolio11
<参考>
DESに至るPCIの変遷,そして今
-mechanical solutionからmolecular solutionへ-
http://www.ebm-library.jp/circ/trialreview_kyoketsu02.html
すべてのインターベンショナリストが知っておくべきEBMに基づいた薬剤溶出性ステントの臨床成績
http://www.nv-med.com/tct/05/pdf/04.pdf
薬剤溶出性ステントCypher Drug Eluting Stents (DES)
http://www.chibanishi-hp.or.jp/pages/des.php
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バッシングは収まり冷静な評価が進行中
爆発的に普及した薬剤溶出性ステント(DES)。
昨年大きな話題となった安全性への懸念は一段落したが、適応や長期の抗血小板療法の必要性など、DESの注意点を再確認することが求められている。
薬剤溶出性ステント(DES)は従来型ステントよりも長期予後が悪いのではないか。
昨年9月の欧州心臓病学会での発表を契機に始まったDESの安全性懸念と、それに伴うバッシングは、非常に強いものだった。
特に欧米のメディアは強い論調でDESを批判、スウェーデンのように「DESの使用はできるだけ控えるべき」と声明を発表した国もあった。
循環器領域における、ここ1年で最大のトピックスだったといえるだろう。
発端は欧州心臓病学会
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において最も重要な問題は、治療した血管が再狭窄してしまうこと。
従来型のステントであるベアメタルステント(BMS)の時代には、再狭窄は30%以上あった。
しかし、新生内膜の増殖を抑える薬剤をステントに塗布したDESが登場し(2002年、欧州)、再狭窄は大幅に減少。
再狭窄に伴う血行再建術の再施行率も、BMSの20%弱か
らDESでは数%と大幅に下がった。
表1に、DESの長所・短所をまとめた。

再狭窄に伴う心血管イベントや血行再建術の合併症なども減ったことからDESは急速に広まり、医師の圧倒的な支持を得たかに見えた。
ただ、当初からDESには「遅発性ステント血栓症」(治療後30日以後に生じるステント血栓症)が起きるという懸念はあった。
そして昨年、これを主な原因として、総死亡や心筋梗塞の頻度がBMSよりも増えるという疑念が噴出したのである。
その発端となった発表の1つが、SCAARというスウェーデンにおけるステント使用例についての観察研究だ(図1)。

これは、ステント留置後6カ月を起点とすれば、死亡+心筋
梗塞の頻度がDES群で有意に増加していたというもの。
観察研究であるとはいえ、その規模の大きさから、衝撃をもって受け止められた。
また、ベルンとロッテルダムの2施設からの報告では、DES留置例8146例を追跡したところ、30日以後3年までの間、年率0.6%の頻度で、イベントを伴うステント血栓症が発症していた。
ステント血栓症のリスクが長期にわたって継続することも
示唆されたわけだ。
血栓の発生メカニズムは不明
そもそも、なぜDESで遅発性ステント血栓症が起きるのか、そのメカニズムはまだよく分かっていない。
ただ、BMSとDESでは、留置後の血管の状態に明らかな違いがある。
血管内視鏡で調べると、DES留置例では血管内膜の新生が抑えられ、ステント留置によって傷害を受けた血管内壁やステントが長期間にわたって露出する傾向にある(図2)。
阪大先進心血管治療学助教の小谷順一氏は、「血管内部の状態からすれば、新生内膜がステントを覆って早期に治癒するBMSの方が、内膜が活動的な状態が続くDESより血栓が起きにくいとは推測できる。
しかし、抗血小板療法をやめてもすぐに発症するわけではないので、これがすべてのステント血栓症の原因だとは言い切れないだろう」と語る。
原因がはっきりしない以上、DESとBMSの優劣は、現状では総死亡や心筋梗塞発症率などの総合的アウトカムから判断するしかないのだ。
NIKKEI MEDICAL 2007.12
版権 日経BP社
MASSステント研究(2007年12月19日)
http://blog.m3.com/reed/20071219/1/day
にいただいたコメントを転載させていただきます。
Dr.I様、コメント有難うございました。
2年だけでは、DESの場合は駄目ですね。
最低5年はみないと。
DESの場合、動脈硬化を抑制するだけなので。
遅れて再閉塞する事がありますからねー。
BMSだと、半年経てばないですけど。
最狭窄じゃなく、再閉塞の場合は、死にますし。
DESの場合は、2年経っても、5年経っても再閉塞のリスクはありますから。
もっと、長期のデーターが欲しいところですね。
>再血行再建術の実施率は、DES使用群で20.1%
これって、思ったより多いですね。
もっと少ないかと思っていましたが。
written by Dr. I / 2007.12.19 00:32
<コメント>
先生がおっしゃるように、DES使用群の再血行再建術の実施率は確かに多すぎますね。
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デコイペプチド(HRP)によるプロレニン受容体遮断
藤田
続いてレニン/プロレニン受容体の抑制という話題に移りたいと思います。
Danser
先程、話に出たプロレニン受容体を遮断するデコイペプチド(HRP)に関しては、市原先生と鈴木先生が積極的な研究を続け、重要な論文をご発表になっています。
我々も血管平滑筋細胞でヒトHRPを用いてマンノース6リン酸受容体(M6P)の存在下で検討してみましたが、対照と比べてレニン/プロレニン受容体との結合は十分ではなく、HRPの濃度を上げても変化はありませんでした。
この結果をどう考えるべきでしょうか?
鈴木
ラットのHRPではどうでしたか?
Danser
それは試していません。
鈴木
我々の検討では、ヒトHRPは細胞膜表面にある受容体とのプロレニン結合を抑制しました。
ラットHRPでも同様の知見が得られました。
またヒトのプロレニンがラットのプロレニン受容体に結合すること、ラットのプロレニンがヒトのプロレニン受容体と結合することも確認しています。
(Nabi AHM N et al. Front Biosci 2007;12: 4810-4817)
藤田
今のは基礎研究の話ですが、動物レベルでHRPの有用性は既に示されているわけですか。
市原
我々は、HRPが糖尿病ラットの糸球体硬化を減少させること(Ichihara A etal. J clin Invest 2004;114 1128-
1135)、SHRSPの心肥大を減弱化すること(Ichihara A et al. Hypertension 2006;47:894-900)などを既に報告しています。
しかもこれらの効果は、非蛋白分解の経路を介するものであることを示唆するデータも得ています。
Danser
AT1aP 受容体が欠損した糖尿病ラットでも同様の結果が得られたと報告なさっていますね(Ichihara A et al. J Am Soc Nephrol 2006;17:1950-1961)。
市原
はい。ですから心肥大や腎硬化といった臓器障害の機序として、アンジオテンシンⅡとは独立した(プロ)レ二ン受容体細胞内伝達機構を介した機序が関与している可能性もあると思います。
Danser
また基礎研究の話になりますが、我々も、心筋細胞を用いた検討で、プロレニンがアンジオテンシンⅡとは独立した形で、p38 MAPK(mitogen-activated protein kinase)やHSP(heat shock protein)27などの細胞内シグナリングを誘導するとの成績を得ています(Saris JJ et al.Hypertension 2006;48:564-571)。
これはまさにプロレニンがその受容体を介して直接作用を発揮したためと考えられます。
遺伝子解析(microarray approach)でもこのデータを支持する結果が得られており、しかもプロレニンで誘発された遺伝子のレギュレーションは、レニン阻害薬やARBの投与でも抑制できませんでした。
新規薬剤への期待
藤田
これまでのお話を踏まえた上で、レ二ン阻害薬を高血圧などに使う臨床的意義についてはどうお考えですか?
Danser
プロレニン受容体をレ二ン阻害薬で抑制するわけですから、アンジオテンシンⅡの作用をレ二ン・アンジオテンシン系の根元で抑制することができます。
レ二ン阻害薬が、先程ご紹介したような細胞内シグナリングの誘導といった直接作用にどういった影響を与えるのかは今後の検討が必要だと思います。
藤田
ACE阻害薬やARBは、アンジオテンシンⅡ抑制によりネガティブフィードバックが働いて代償的にレ二ン産生を増加させると言われていますが、この点、レ二ン阻害薬はどうなのでしょうか?
Danser
レ二ン系を遮断するわけですから、レ二ン阻害薬でもレ二ン産生は代償的に増加すると思いますが、問題は産生されたレ二ンがどの程度の活性を持っているかだと思います。
鈴木
レ二ン阻害薬投与により、血中のかなりのレ二ンは不活性化されているので、基質であるアンジオテンシノーゲン量は増加しているはずですが いかがですか。
藤田
レ二ン阻害薬への期待は大きいものがあると思います。
しかし、まだ検討すべき色々な課題が残っている
ようですね。
NIKKEI MEDICAL 2007.12
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中町 正男 時のかなたへ
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<コメント>
レニン阻害薬の発売を待ちたいと思います。
ARBやACEIとの併用でRASのDualないしはTriple Blockという時代が到来するのでしょうか。
完全ブロックにより血中アンギオテンシノーゲン量が増加することが予想されますが、対談の最後がちょっと尻切れトンボになっていたのが残念です。
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昨日の
レニン/プロレニン受容体の機能解明に迫る その1(1/3) http://blog.m3.com/reed/20071223/1
の続きです。
座談会
レニン/プロレニン受容体の機能解明に迫る その2
- 臓器保護の新たな視点 -
プロレニンの活性化経路をめぐって
藤田
ところで、通常は不活性状態態にあるプロレニンは、どのようにして活性化されるのですか?
Danser
プロレニンはプロセグメントと呼ばれる形で存在しており、この形では活性部位がカバーされていて不活性です。
しかし、蛋白分I解によりプロセグメントが分解されて活性レ二ンに変換されると考えられていました。
一方、最近、レ二ン/プロレニン受容体がクローニングされ、レ二ンおよびプロレニンが非蛋白分解により受容体と結合するとの報告が出て、非常に話題になりました
(Nguyen G etal. J Clin Invest 2002; 109:1417-1427)。
我々も、プロセグメントは生理的条件下で2%程に非蛋白
分解の経路を介して構造開存が生じるとの成績を得てい
ました。
すなわち、プロレニンは2つの異なった経路から活性化されると考えられています(図1)。
また、プロセグメントはhandle region peptide(HRP)を持っており、プロレニン受容体遮断を考える上で重要になります。
藤田
HRPというのは何ですか?
Danser
本日ご一緒の鈴木先生らがそのペブチド配列を特定したもので、プロレニンがその受容体に結合するのを抑制するデコイペプチドです(図2)。
藤田
蛋白分解と非蛋白分解の2つの経路のいずれにせよ、結局、アンジオテンシン産生を促進させるのですね?
Danser
トランスジェニックラットを用いた我々の検討でも、プロレニン受容体が過剰発現している血管平滑筋では、アンジオテンシンI およびⅡの産生が2~3倍高いとの成績が得られました。
プロレニンは細胞表面において、アンジオテンシンI およびⅡの産生を高めているものと思われます(図3)。

市原
図3にあるアンジオテンシノーゲンはどこ由来なのですか?
Danser
大部分は肝由来ですが、間質液や血液の中にも認められます。
市原
そうだとすると局所においてアンジオテンシノーゲンは組織からも供給されているということですか?
Danser
そうです。
ランゲルドルフ灌流心を使って、我々はそのことを確認しています。
今ご紹介したトランスジェニックラットのデータでは、レニン受容体における血管プロレニンの取り込みが増加していること(図4)、レニン受容体が高血圧の進展に関与していることも示されました(図5)。


またこの実験では、アルドステロンの産生も高まっていました。
アルドステロンのデータについてはどう思われますか?
市原
トランスジェニックラットを用いた我々の検討でも、血漿アルドステロンが高値でしたが、副腎のCYP11B2mRNA量を調べてみても対照と差はなく、その機序を突き止めることができませんでした。
鈴木
副腎のプロレニン受容体の発現状況はどうでしたか?
市原
我々のトランスジェニックラットでは副腎球状層細胞にヒト(プロ)レニン受容体遺伝子が検出されました。
Danser
我々はまだそうしたデータを得てはいません。
興味ある問題です。
Nikkei Medical 2007.12
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降圧剤関連のレニン阻害剤については以前このブログで勉強させていただきました。
組織レニン
http://blog.m3.com/reed/20070914/1
経口レニン阻害薬アリスキレンhttp://blog.m3.com/reed/20070908/1
日経メディカルの最新号で、レニンに関する以下の題の座談会が掲載されていました。
基礎的研究の話が主体なのでかなりアカデミックです。
大規模臨床試験が続いたお口直しにはいいのですが 、なにせアカデミック過ぎて十分理解できません。
東山魁夷 湖畔の春 新復刻画 http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v36889793?u=;artfolio11
座談会
レニン/プロレニン受容体の機能解明に迫る その1
- 臓器保護の新たな視点 -
レニン系の研究が進むにつれ、レニン/プロレニン受容体の機能が次第に明らかになりつつある。
それに伴いレニン/プロレニン受容体の抑制が高血圧や糖尿病における臓器保護を考えるための新しい視点を提供するに到っている。
そして一方では、レニン阻害薬の開発や臨床応用に拍車がかかっている。
そこでこの分野の第一線で研究を続ける内外の専門家の間で、レニン/プロレニン受容体の新しい知見とその臨床的意義をめぐって話し合っていただいた。
ご出席は東京大学大学院医学系研究科内科学教授の藤田敏郎氏(司会)、オランダ.エラスムスメディカルセンター薬理学教授のAH Jan Danser氏、岐阜大学応用生物科学部生物生産科学講座動物生化学分野教授の鈴木文昭氏、慶応義塾大学医学部抗加齢内分泌学講座講師の市原淳弘氏。
解明進むレニン/プロレーン受容体の局在や機能
藤田
本日は、レニン/プロレニン受容体をめぐる研究の現状や臨床的意義などをめぐって話し合いたいと思います。まず、Danser先生から口火を切っていただけますか。
Danser
プロレニンというのはレニンの不活性前駆体ですが、血漿中の全レニンの70~907%以上がプロレニンであることが分かっています。
腎臓癌のために両側の腎摘をした症例ではレニンが血中から完全に消失したので、レニンは腎由来であることは確かです。
しかしプロレニンはかなりの濃度を保っていましたの、30~40%は腎以外からも産生されていることが示唆されました。
藤田
プロレニンは腎以外のどの部位から産生されているのですか?
Danser
副腎・目・精巣・卵巣・胎盤などです。
鈴木
プロレニンはどの臓器で代謝されるのですか?
Danser
我々のデータでは、主に肝で代謝されていました。
しかし、プロレニンからレニンヘの変換の場は腎であると考えられています。
市原
我々の研究では、腎以外の他の組織での変換は見いだされませんでした。
腎においてのみプロレニンがレニンに変換されていると思います。
鈴木
胎盤にあるプロレニンは、胎芽や血管新生に関わっているのでしょうか?
Danser
詳しいことは分かっていないようですね。
妊娠すると高プロレニンになりますが、大半は何の問題もな
く経過します。
それが何故なのか興味あるところです。
市原
高プロレニン状態によるネガティブフィードバックのために受容体発現が低下し、何の問題も起きないのかも知れませんね。
はっきりしたことは不明ですが…。
Danser
糖尿病患者などのヒトから単離した細胞でプロレニン受容体を測定できないものでしょうか?
市原
ヒトのプロレニン受容体を測定する手段がないので、現伏ではヒトのサンプルを用いることは難しいですね。
鈴木
今ご紹介のあった腎摘後に残っていたプロレニンは心臓や血管などの組織由来のものとは考えられませんか?
心臓のプロレニンのmRNAを測定なさいましたか?
Danser
非常に低値で、機能する濃度ではありませんでした。
いずれにせよ、これまでの我々の研究から、受容体と結合しているのはレニンよりもむしろプロレニンのように思われます。
藤田
プロレニンと糖尿病などとの関連も報告されているようですね。
Danser
糖尿病では、プロレニン値の増加が網膜症の進展と有意に関連することが報告されています。
また、糖尿病では非糖尿病よりも、また、微量アルブミン尿を伴う糖尿病では伴わない糖尿病よりも有意にプロレニン値が高いとの報告もあります(DeniumJ et a. Diabetologial 1999;42:1006-1010)。
ですからプロレニンは、糖尿病などの微小血管障害の優れ
た早期マーカーとなり得ると考えられます。
Nikkei Medical 2007.12 版権 日経BP社
<参考>
プロレニンの生化学的研究
http://dspace.tulips.tsukuba.ac.jp/dspace/bitstream/2241/3857/1/A0726.pdf
プロレニンの生化学的研究
http://dspace.tulips.tsukuba.ac.jp/dspace/bitstream/2241/3686/1/B0386.pdf
ラット血漿中におけるプロレニンの存在
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000976670
(プロレニンは農学部で今ホットな研究がされているようです。)
<糖尿病合併症>「笑い」に腎症への進行抑える効果
腎臓の働きが悪くなる糖尿病合併症の腎症への進行を笑いが抑える可能性があると、国際科学振興財団バイオ研究所(茨城県つくば市)の研究チームが3日、発表した。
チームは、健常者16人、腎症のない糖尿病患者12人、腎症の糖尿病患者11人の計39人に、吉本興業の協力を得て「ザ・ぼんち」の漫才を40分間観賞してもらい、前後で血液を検査した。
糖尿病患者は、たんぱく質のプロレニンの血中濃度が高くなることが知られており、腎臓の細胞にある受容体とプロレニンが結合すると腎症が進行する。血中濃度を比べたところ、観賞前では健常者の平均が1リットル当たり32.5ナノ(ナノは10億分の1)グラム、腎症のない患者が同93.4ナノグラム、腎症患者が同196.6ナノグラムだったが、観賞後には、腎症のない患者は同60.4ナノグラムに減り、統計的な差が認められた。腎症患者も同166.7ナノグラムと減る傾向があった。
また、腎臓以外の血液中にあるプロレニンと結合する受容体の遺伝子の活動を笑いの前後で比べた結果、健常者はほとんど変わらなかったが、糖尿病患者は遺伝子の働きが約1.5倍、活発になった。同研究所の林隆志主任研究員は「笑いで遺伝子が活発になり、血中の余分なプロレニンが受容体と結びつき濃度が下がるのではないか。笑いが糖尿病合併症への進行を抑制することを示唆している」と話す。毎日新聞 2007年12月3日 20時45分
http://www.mainichi.co.jp/universalon/news/prt/1204m089-400.html
(興味深い研究ですね。)
動物生科学研究室
http://www1.gifu-u.ac.jp/~aob3073/animal_Biochem1.html
腎臓・心臓・松果体
http://www_pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/~bioorg/molphys/chap24/chap24.html
他に 「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。
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慢性心不全におけるβ遮断薬療法 その1(1/3)
http://blog.m3.com/reed/20071220
慢性心不全におけるβ遮断薬療法 その2(2/3)
http://blog.m3.com/reed/20071221
国立病院機構大阪医療センター循環器科 科長安村良男氏
カルベジロール導入の実際と管理ノウハウ
■禁忌症例
カルベジロール導入に際しては、まず禁忌について知っておく必要がある。
主な禁忌は気管支攣縮と徐脈(50拍/分以下)である。
気管支攣縮の合併がなければ、慢性閉塞性肺疾患の患者にも注意深く投与可能である。
β遮断薬はインスリン抵抗性や耐糖能を悪化させることがあるとされるが、血管拡張作用を併せて持つカルベジロールは大規模臨床試験GEMINIにおいて糖代謝に悪影響を与えず、むしろインスリン抵抗性を改善させることが示されている(Bakris GL, et al:JAMA 292: 2227-2236、2004)。
■導入の実際と留意点
心不全患者に対してβ遮断薬を導入する際は、
導入できない症例がある
導入後は投与量を漸増する
機能の改善には時間がかかる
改善の程度は症例によって差がある
ことなどを医師が良く理解し、患者にも説明して理解してもらう必要がある(図4)。

慢性心不全の病態は必ずしも一様でなく、カルベジロールの使用法や使用量が個々の症例によって異なることを念頭におく。
我々がDCM131例を対象にカルベジロール導入を試みたデータでは、導入成功117例、不忍容14例(徐脈・低血圧11例、心不全3例)であった。
特に心不全による不忍容例の予後は不良であった。
β遮断薬によって血行力学的代償不全が悪化することがある。
すなわち、左室充満圧がf曽加し、心柏出量が減少する症例が存在する。
したがって、血行力学的予備能がない患者ではβ遮断薬の導入は困難である。
実際には、明らかな体液貯留、肺うっ血などの心不全兆候が利尿薬やACE阻害薬、ジギタリス製剤で十分(最低2週間以上)コントロールされている状態で導入するのが原則である。
このような安定した心不全状態で慎重に用量が設定された場合には、β遮断薬は比較的安全に導入でき、従来の試験では約90%以上の患者で継続投与が可能とされている。
カルベジロールは1日2.5mgを分2で導入を開始する。
重症例ではさらに低用量から開始する。
用量依存的にLVEFの改善が認められるため、維持量は1日20mgを目標とする。
投与量を患者の状態(収縮期血圧90mmHg以上、心拍数60拍/分以上が望ましい)をみながら漸増していくのが慢性心不全に対するβ遮断薬投与の最大の特徴である。
初期投与量を約1~2週間毎に倍増し、維持量へと移行していく(図5)。

軽症例では増量までの期間を短縮しても良い。
NYHAⅡ以上では入院での導入が基本である。
症状が落ち着いていれば10mgまでを入院で行い、その後は外来で20mgまで持っていくという方法も可能である。
■導入後の対応のポイント
心不全に対するβ遮断薬療法の効果判定にBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の測定は有用である。
β遮断薬療法が奏効するとBNPは次第に低下する。
また特に重症例では心エコーから三尖弁逆流量(肺高血圧の指標)を求めることでBNPガイドに近い形でβ遮断薬療法を評価することもできる。
β遮断薬本来の薬理学的作用により心不全の悪化、低血圧、徐脈が発生する可能性がある。
そこで、自覚症状、血圧、脈拍、体重の変化を注意深く観察する必要がある。
β遮断薬導入に際して発生する問題点はNYHA分類の程度にかかわらずみられ、そのほとんどが導入時もしくは漸増時に出現している。
特に投与開始後2週間で半数以上が起こっており、導入時が最も問題がおこる可能性がある時期と言える。
このように症状の改善が得られる前に一過性に症状が悪化することがあるが、しばらくすると症状が安定してくるので、すぐにβ遮断薬を中断しないことを患者も十分理解しておくことが重要である。
体重の1~2Kgの増加や心不全悪化サインが出現した場合は、併用している利尿薬またはACE阻害薬を増量する
(表3)。

それに反応しない場合には、短時間(12~24時間)だけ経静脈的に強心薬(ドブタミンやPDEⅢ阻害薬)を投与する。
これらの努力によっても改善しない場合はβ遮断薬の減量もしくは中止を検討する。
併用薬の調節を行う前にβ遮断薬の用量を変更すると患者のβ遮断薬への忍容能力を妨げることになる。
心不全におけるβ遮断薬の陰性変力作用、末梢血管拡張作用は通常は時間経過とともに消退する。
特に、右心不全を伴う例、血圧が低い例、NYHA3~Ⅳの例ではβ遮断薬導入期の心不全の出現、悪化に注意を要する。
ふらつき、低血圧はカルベジロールでみられる副作用であるが、カルベジロールを減量するのではなく、これらは併用している利尿薬、ACE阻害薬減量を試みることにより解決することが多い。
しかし、時に遷延することがあるので、その場合にはβ遮断薬を減量する。
いずれにしろ、心不全の増悪、低血圧、徐脈など副作用が消失、安定するまではβ遮断薬の増量を行ってはいけない。症状が軽ければ、低用量で我慢すると最終的に維持量まで
増量できることもある。
β遮断薬中断後の再開に際しては、中断が72時間以内
の場合は中断前の用量で再開可能である。
中断が72時間から7日以内の場合には中断前の半量から再開する。
中断が7日以上の場合は初期量から再開する。
β遮断薬導入後の慢性期に心不全が出現した場合は、β遮断薬による心不全ではなく、貧血や感染などによる二次性の心機能の悪化や、基礎となる心機能の自然歴としての悪化によるものと考えられる。
このような場合はβ遮断薬の減量や中断をするよりも心不全の原因となった因子を取り除くとともに、他の心不全治療薬を強化するほうが良い。
また、心機能が改善したからといってβ遮断薬を中断すると心不全が再発する可能性が高く、場合によっては、突然死の可能性もある。
この点を患者に十分教育しておく必要がある。
心不全の再発や悪化の有無は基礎疾患などによっても異なるが、どの症例が再発するかを判断する基準はない。
■薬物相互作用や有害事象への対応
ACE阻害薬は投与量が多いほどその効果が大きいとの報告もあるが、血圧の点で問題となる場合はACE阻害薬を低用量にして、β遮断薬を時間をかけて導入する。
ジギタリス製剤、アミオダロン、ジソピラミドなどとの併用で徐脈になる場合は可能であれば併用薬を減量するか、β遮断薬を減量する。
高度の徐脈の場合、ペースメーカを植え込んでまでβ遮断薬を導入したほうが良いか否かは不明である。
しかし、QRS幅が延長し心臓の収縮同期不(dyssynchrony)が問題となる心不全例では、両心室ペーシングによCRT(心臓再同期療法)にβ遮断薬を併用する選択肢が考えられる。
カルベジロールがdyssynchronyを改善するとの報告もある(Gastro PF et al. Am J Cardiol 96:267-269, 2005)。
上利 真永 湿原に
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s78509358?u=edelcoltd
まとめ
現在、β遮断薬に対するレスポンダーとノンレスポンダーをめぐって、遺伝子変異(ACE genotype、β受容体の遺伝子多型)の詳細な解析が進行している。
将来的には、あらかじめレスポンダーとノンレスポンダーを知り、治療方針を立てられるようになることが期待される。
いずれにせよ、ここに紹介したような形でβ遮断薬をしっかり導入し、きちんとフォローアップすることが基本となることは言うまでもない。
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