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日常臨床において収縮期、拡張期血圧のどちらかだけを下げたいという場面にしばしば遭遇します。
どちらかというと収縮期血圧は下げやすいが拡張期血圧は下がりにくい。
降圧剤によって、いわゆる脈圧が小さくなってしまう。そんな経験をお持ちの先生は多いんじゃないでしょうか。
上の血圧と下の血圧のどっちが大事なんでしょうかといった質問もしばしば患者さんから受けます。
そんな疑問に対する解答が書かれた内容の記事がありました。
日本医事新報 No.4359(2007年11月10日)
国際医療福祉大学熱海病院内科
築山久一郎
収縮期・拡張期血圧の選択的降圧薬の有無
日常臨床上、収縮期血のみ高く、拡張期血圧は正常範囲ないし低値を示す(すなわち脈圧の増大を示す)高齢着は多く、また、中年では収縮期血圧が正常範囲を示し、拡張期血圧のみ軽度上昇を示す症例に遭遇することが少なくない。
実際には収縮期血圧または拡張期血圧だけを選択的に低下させる降圧薬は存在しない。
収縮期血圧の下降度が拡張期血圧の下降度と比較して大きい(すなわち脈圧の減少効果が大きい)降圧薬としては、VA研究によると、利尿薬ヒドロクロロチアジドはACE阻害薬カプトプリル、β遮断薬アテノロールより脈圧減少効果が大きく、中枢神経作動性降圧薬クロニジン、Ca拮抗薬ジルチアゼム、α遮断薬プラゾシンは両者の中間であった。
高齢者収縮期高血圧患者では4種の降圧薬間の脈圧減少効果を算出すると、さらに、Ca拮抗薬、利尿薬と比較してACE阻害薬とβ遮断薬の効果は軽度で、前2種の降圧薬の収縮期血圧の低下度は後2種の降圧薬より大であった。
ヨーロッパ高血圧学会、同心臓病学会の高血圧管理ガイドライン(2007)は、高齢者収縮期高血圧患者では利尿薬と、Ca拮抗薬を推奨している。
しかし、これは脈圧減少効果の少ない降圧薬の拡張期血圧の下降度が収縮期血圧の下降度より大きいことを意味するわけではな(通常、後者の下降度がより大きい)、また、脈圧減少効果の大きい、Ca拮抗薬でも拡張期血圧の低下の評価は高い。
収縮期血圧の著しい上昇(拡張期血圧の上昇を伴わない)は、高齢者では動脈硬化病変の進展などによる弾性血管の動脈伸展性低下(動脈の衝撃吸収効果の低下)により、収縮期に心臓より拍出された血液の多くが末梢組織へ送られ、同時に大動脈波形をみると速い反射波が収縮期に戻り、収縮期血圧をさらに上昇させる。
一方、収縮期に拍出された血液が動脈に貯留されることが少なく、拡張期の末梢組織への送血量は少ないため拡張期血圧は低下する。
降圧薬による動脈伸展性の改善は、血圧上昇による動脈壁弾性低下に関わる負荷を血圧低下が軽減することから驚くにはあたらないが、降圧薬別に血管内皮機能の改善や粥状硬化病変の退縮効果が異なり、動脈壁への効果に差を来す可能性がある。
実際、動脈内膜中膜壁厚増加やプラーク進展の抑制が、Ca拮抗薬、RA系抑制薬などで報告され、降圧薬間の差も一部に報告されている。
一方、拡張期血圧のみ高値を示す高血圧(isolated diastolic hypertension)の脳卒中や腎不全のリスクは低く(ホノルル心臓研究、およびMRFITによる)、また、フラミンガム心臓研究では冠動脈疾患のない高齢者住民を20年間追跡すると、冠動脈疾患発症のリスクは収縮期血圧上昇に伴い増加するが、同一の収縮期血圧であれば拡張期血圧の上昇に伴いリスクは低下していた。
すなわち、拡張期血圧だけ高い(収縮期血圧は正常範囲にある)高血圧がリスクであるかどうか、疑問とする見解がある。
リスクが低い理由として、
①収縮期血圧が正常範囲にあるため、拡張期血圧の著しく高い(高血圧重症度の高い)症例が除外され、
②収縮期血圧と拡張期血圧の差(脈圧)が少ないことは動脈硬化病変の進展が軽度である、
③診断上の問題として聴診法では拡張期血圧を実際の血圧値より過大評価している頻度が高い
などの指摘がある。
最近の高血圧管理ガイドラインは、心血管系の臓器障害が発生する以前に降圧薬を開始することを推奨している。
高齢者高血圧では主に収縮期血圧を管理基準とするが、若年・中年では拡張期血圧のみ高い症例も生活習慣の改善を行い、積極的な降圧薬治療の対象として、低リスク症例であれば少量の一次薬を単独で開始することが妥当であると考える。
<コメント>
築山先生は高血圧症一筋に研究された方です。特にベータ遮断剤についての造詣の深い先生です。
あくまでも個人的印象ですが、isolated diastolic hypertensionは肥満の方が多く減量により改善する場合があるような気がします。もちろん、将来的な収縮期高血圧症の予備軍であることは間違いないところですが。
先生方の経験ではいかがでしょうか?
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