戯れ言たれる侏儒
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新着のMMJ November 2007 vol.3 No.11の「世界の医学誌」からの紹介です。


デュフィ「Interior com Janelas Abertas」
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冠動脈疾患による死亡率低下の要因は危険因子減少と根拠ある治療
米国における1980~2000年の冠動脈疾患による死亡率低下の要因
Explaining the decrease in U.S. deaths from coronary disease,1980-2000
NEJM Ford ES,et al.2007;356:2388-2398

背景 
米国において、冠動脈疾患による死亡率はここ数十年のあいだに大幅に低下している。
この低下のうちどの程度が薬物療法や外科的治療によって説明できるのかを、心血管危険因子の変化と比較して検討した。

方法
1980~2000年の米国の成人(25~84歳)における、心疾患に特異的な治療の利用と効果、および危険因子の変化に関するデータに、妥当性が確認されている統計学的モデルIMPACTを適用した。
2000年の冠動脈疾患による観察死亡数と期待死亡数の差を、解析に含まれる治療法および危険因子に分配した。

結果
1980~2000年にかけて、冠動脈疾患による年齢調整死亡率は、男性では10万人当たり542.9から266.8に、女性では10万人当たり263.2から134.4に低下し、2000年には冠動脈疾患による死亡は341,745例少ない結果となった。
これらの低下の約47%は治療、すなわち心筋梗塞や血行再建術後の2次予防治療(11%)、急性心筋梗塞や不安定狭心症の初回治療(10%)、心不全治療(9%)、慢性狭心症に対する血行再建術(5%)、その他の治療(12%)などに起因していた()。


約44%は危険因子の変化、すなわち総コレステロール値の低下(24%)、収縮期血圧の低下(20%)、喫煙率の低(12%)、運動不足の低減(5%)などに起因していたが、これらの低下は、体格指数や糖尿病有病率の上昇によって部分的に相殺された。
この2つの因子は死亡数増加の原因であった(それぞれ8%、10%)。

結論 
米国における1980~2000年の冠動脈疾患による死亡率低下のうち、約半分は主要な危険因子の減少に起因し、約半分はエビデンスに基づく医学的治療に起因すると考えられる。

<コメント> 米国の統計がここまで正確であるということに感心しますが、反面どこまで正確な数字であるのかという危惧もあります。

もちろん、日本の統計も同様ですが。 

 

ここまでは一見、味も素っ気もない論文です。
この論文に対して友池先生が素晴らしい内容の解説で花を添えてくれています。

医療関係者から今を生きる人たちへのメッセージ
友池仁暢  国立循環器病センター病院長

本論文のメッセージは、表題に示されているとおり、きわめて明快である。
公的統計と多方面にわたる臨床試験を取り込んだ要因分析の成功事例と言える。
このようなメタアナリシスが成立するには、解析式の妥当性、
厳密な検証(sensitivity analysis)と、材料に用いられた各研究の科学的基盤の保証が不可欠である。

ポイントをいくつか点検してみる。
米国における冠動脈疾患死亡率をこの数十年ながめると、
着実に減少している。
全国的流行病としての様相であった1968年と比べると、年齢調整死亡率は男女ともに40%以上低下している。
同様の傾向は冠動脈疾患死亡率の高かった欧州の各地域
 (フィンランド、オランダ、スコットランド、イングランド、ウェールズ)やニュージーランドでも認められている。
これら欧州やニュージーランドの先行研究によると、危険因子への対処による効果は医療によるものより大きいとされている。
本論文は、同様の手法を米国における冠動脈疾患死亡率の低下の要因分析に応用したところ、内科治療と外科治療が47%、生活習慣病対策(高コレステロール血症、高血圧、喫煙、運動不足)が44%と同程度の効果であったことを示している。
急性期治療と2次予防に個人レベルの指導を徹底させる米国の医療政策の特徴が医療の効果を鮮明にしたものと思われる。
解析方法や論旨の展開において、先行研究がいくつもある中で、本論文がトップジャーナルの”Special article”の位置を占めたのはなぜであろうか。
米国における"know your numbers"というキャンペーンに象徴される2次予防推進活動の有用性の根拠になる成績であること、医療関係者のみならず、一般市民にも説得力のある内容であることなどが論文の採択理由と思われる。

第2のポイントとして、本研究の解析手法はヨーロッパ社会
を健康の観点から根本的に見直そうとする大きなプロジェクト
「European Policy Health Impact Assessment(EPHIA)」によっている。
この試みは、健康に関連した環境問題から各疾病対策に至るまで広い分野にわたって医療と行政の妥当性を検証し、将来計画の目標を抽出しようとする最先端の事業で、世界保健機(WHO)と欧州連合(EU)各国の厚生部門が関与している。
膨大な量のデータを扱う行政部門の研究者が、各国の医療の効果をマクロ分析し、臨床系の学術誌にインパクトを与えつつあることは注目すべきである。

第3のポイントとして、本論文の結果は、長期的にみても現医療は妥当であることを示しており、冠動脈疾患の診療に携わってきた医師にとって、明日からの診療の自信になるに違いない。
米国における疾病発症の疫学はFrammingham研究から本格化した。
その意図するところは、冠動脈疾患による死亡に関連した危険因子の発見と予防対策の具体化であり、目の前の患者(住民)に対して、「危険因子がある場合に発生する疾病発症の予測」を与えるというものであった。
このpragmatismは本論文でも企画の基本をなすものである。
「今を生きる人たちに医療関係者はどういったメッセージを発すべきか?」という問いへの回答の1つとも思われる。
なお、本研究では、死亡率低減に逆方向となる要因として、肥満と糖尿病を挙げ、将来の課題であることを強調している。


<コメント>
友池先生は奇しくもFrammingham研究を引き合いに出されましたが、先生の出身大学は確か、かの有名な久山町研究を続けている大学と記憶しています。
以前から、両研究がいつから始められたのかは気にはなっていましたので早速調べてみました。
コツコツ継続させる両研究には敬服するばかりです。
これらの努力に報いるためにも、私達はこの研究成果を臨床に大いに活用すべきであると思います。

Framingham Heart Study
http://www.nhlbi.nih.gov/about/framingham/design.htm
(1948年~)
久山町研究室HP
http://www.med.kyushu-u.ac.jp/intmed2/naiyou/hisayama.html
(1961年~)

(注)
pragmatism 実用主義、実用的な考えや方法
       (良い意味で使われていると思います。)

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