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腎機能低下例における降圧治療
きょうは3回目、最終回です。
循環器専門医は腎臓についての知識は知っているようで意外と知らないことも多いものです。今回そのことを知らされました。専門分野以外の視点から循環器領域を見直してみる。
そして、われわれの前に大きく立ちはだかる「高血圧」という疾患。「高血圧学」は歴史的には腎臓病学者が研究の対象としていたものかも知れません。
今の骨粗鬆症も多くの研究者の研究対象となっている学際的な疾患です。
「高血圧」という巨象に対して「群盲、象を撫でる 」の盲者の一人になっていないか、高血圧研究者は常に謙虚であるべきです。
Page先生のモザイク説はまさに嚆矢です。

元二科会会員/福田輝 マテラの詩 P10号
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血圧はどこまで下げるのか
藤田
腎機能障害例に対して、薬剤を選ぶのか、至適降圧にするのか、どちらも重要でしょうが、この点についていかがですか。
木村
基本的には血圧を下げることが重要かと思います。
MDRD(modification of diet in renal disease study)(図4)では、どのような薬剤を使ってもよいからとにかく血圧を下げています。

結果は、到達した血圧値が低ければ低いほど腎障害の進行を抑制しています。
薬剤の種類は関係なかったという結果でしたね。
基本的には降圧することが最も予後がよく、そのうえR-A系を亢進させない、交感神経系を亢進させないことが重要と思います。
まず、降圧という意味ではCa拮抗薬が大変有効ですし、利尿薬もよいと思います。
特に腎障害のある場合は利尿薬を使ったほうがよいと思います。
利尿薬にR-A系抑制薬を併用するのが一番現実的でよいのではないかと思います。
藤田
Ca拮抗薬、R-A系抑制薬と利尿薬の3剤をうまく利用するということですね。
木村
はい、そう思います。
また降圧目標は、尿蛋白1g/日未満では130/85mmHg未満、尿蛋白1g/日以上の場合には125/75mmHg未満です。
藤田
最終的に、これらのレベル以下までコントロールできれば、腎機能低下が起こらないということになりますか。![]()
木村
それは原疾患によりますから。降庄で本当に個々の患者さんすべてによい結果になるかは難しいと思います。
実際、腎障害のある症例の血圧を下げるのは大変難しいです。
特に高齢者の場合脳血流の問題もありますから、腎臓だけを考えてというわけにいかないところがあります。
藤田
それでよく先生方からの質問に、「高血圧ガイドラインでは、日本のガイドラインも欧米のガイドラインも蛋白尿が1g/日以上あるときは125/75mmHg未満と記載されていますが125/75mmHg未満といったら、例えば120mmHgとか70mmHgまでなかなか実際には下げられない。どうすればよいか」ということをよくいわれます。
糖尿病性腎症の場合、動脈硬化など他の疾患を合併していることが多いです。
この場合どのように対処したらよいでしょうか。
木村
私としては、最終目標を125/75mmHg未満としています。
そして、段階的に最初は140/90mmHg以下を目標にして、そこで全身状態に問題がなければ、もう少し下げます。
しかし、全例が下げられるわけではありません。
特に高齢者では、ふらふらしてしまってだめだということもあります。
また、クレアチニンが20%程度は上がってもよいとはいわれていますが、どんどん上がってしまう人がいます。そのような場合は少し血圧を高めに維持していたほうがよい場合もあります。
藤田
確かにカイドラインのとおりに一気に血圧を下げてしまうと、尿量が急激に減少してクレアチニンが上昇する症例がありますから、ゆっくり下げていくことが重要であると
思いますね。
木村
そのような時間的な要因が大きいと思います。
藤田
高齢者の高血圧で、腎動脈硬化、動脈硬化性の腎血管性高血圧を合併している場合は、特にそのような危険があるのではないですか。
木村
急激に降圧したときにクレアチニンが一気に上がる。
特にR-A系抑制薬を使ったときに非常によく効いて血圧が下がって、逆にクレアチニンが上がってくるような症例は腎動脈狭窄を疑って調べる必要があると思います。
藤田
最近、米国の雑誌を読んでいましたら、高齢者の腎不全で両側性の腎動脈硬化による、腎虚血(renal ischemia)が3~4割もあるということです。
このような症例では腎動脈にステントを入れることにより腎不全の進展を抑制できたと報告されています。
両側性の腎血管性高血圧では、ACE阻害薬を使うと急性腎不全を生じますが、これは薬剤を中止すると同復する可逆性の急性腎不全です。
木村 今後、両側性腎動脈硬化症で高血圧を伴う症例、腎虚血の症例が増えてくるのではないでしょうか。
特に高齢者で、腎機能障害を伴った高血圧の方では可能性がありますから、そういうことも考えながら診療していく必要があると思います。
藤田
さて、ALLHAT(the antihypertensive and lipid-lowering treatment to prevent heart attack trial)では利尿薬が再評価されました。
確かに腎機能が悪くなってくるとNaの排出が悪くなりますので、利尿薬が奏効するということがありますが、意外と利尿薬が使われていないですね。
木村
ALLHATの成績が出たということで、利尿薬は見直されるべきであると思います。
しかし、ALLHATでも発表されていましたが、利尿薬を使った症例で耐糖能異常が増えたり、血清脂質に対する悪影響が報告されています。
あの試験の期間では特に悪影響はないということですが、それが10年、20年と続けたときの評価はまだわかりませんから、今後注意すべき点かと思います。
藤田
腎機能低下が著しい場合は、サイアザイド系利尿薬よりもループ利尿薬になりますか。
木村
クレアチニン値が1.5~2を超えたらループ利尿薬でないと効かないと思います。
ループ利尿薬の中でも長時間作用型を使ったほうが有効であると思います。
藤田
最近紹介されて来た患者さんで、腎機能が悪くてクレアチニン値か1.5程度あったのですが、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、アルファ1遮断薬、β遮断薬を飲んでも血圧が下がらないので、難治性高血圧として紹介されました。
その患者さんに少量の利尿薬を加えただけで著明に血圧が下がった症例を経験しました。
腎機能が悪いときは利尿薬は少量加えるだけで血圧
はよく下がりますね。
木村
大量に使う必要はなく、半錠~1錠でよいと思います。
うまく使えばよいと思います。
藤田
木村先生は最近、高齢者の高血圧、腎機能障害を合併した症例で何か苦い経験はありますか。
木村
ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬にジルチアゼムを併用して一気に血圧が下がり、クレアチニン値が上がった患者さんがいます。
高齢者では、薬剤を併用すると急激に下がってしまう方がいらっしゃいます。
藤田
脈拍も下がりますか。
木村
脈拍は変わりませんでした。
血圧が170mmHgぐらいから120mmHgぐらいまで下がり、尿量が減ってクレアチニン値が上がってきました。
藤田
確かに、血圧が上がることで腎障害が進展するので降圧しないといけないのですが、逆に血圧が急に下がり過ぎると糸球体内圧が下がって一時的に腎機能が悪くなる。これは今まで経験的に知っていたことですが、時間をかけてゆっくり降圧するということですね。
木村
血圧は全身状態をみながら2~3カ月かけてゆっくり下げる。
高齢者ではもっと時間をかけてもよいと思います。
ゆっくり下げていくことが重要です。
藤田
降圧薬としては多剤併用を考慮して、R-A系抑制剤に加えて利尿薬、Ca拮抗薬。
特にCa拮抗薬は血圧を下げるのににどうしても必要になってくるということになりますか。
木村
どの薬剤がよいかという議論よりも、併用していくことが実際的ではないかと思います。
藤田
特に腎障害を伴う高血圧や糖尿病を伴う高血圧は平均3剤以上の多剤併用が必要です。
そうすると、何を第一選択薬とするかではなく、コンビネーションセラピーということですから、何を併用するかが重要です。
望まれる糖尿病性腎症治療薬の姿
藤田 糖尿病性腎症の治療に新たな薬剤はどのようなものがよいかという話が出たときに、今は輸出細動脈を拡張することばかり考えていますが、輸入細動脈のみを収縮させるほうが理想的です。
しかし、残念ながら輸入細動脈を収縮させる薬剤は全身血圧が上がってしまいます。
木村
一番簡単な方法は血糖コントロールです。
藤田
これが一番ですね。しかし、難しいですね。
木村
糖尿病性腎症は、まずは血糖コントロールをきちんとすることが重要ですが、生活習慣が思うように改善せず血糖コントロールがなかなかうまくいかない患者が多いのです。そこが難しいところですね。
藤田
血糖コントロールというのも、食後にピークがあるから、それを全部抑えることはなかなか難しいでしょうね。
木村
今は食後高血糖を抑えるためのいろいろな薬剤が出ていますが、これもよいと思います。
血糖が上がったときに急激に輸入細動脈が拡張しますから。
それがなければ、腎臓に対する負担が少なくなると思います。
藤田
低蛋白食は輸入細動脈の拡張を改善するといわれていますね。
その意味にあっても、腎不全を伴う高血圧患者では、降圧薬とともに低蛋白食は必要な治療ですね。
木村
腎機能障害の進行を抑制するという意味ではトータルケアが必要で、糖尿病であれば血糖のコントロールを十分することと、血圧を下げること。
血圧を下げるときに輸入細動脈が拡張するということも考えなければいけないと思います。
低蛋白食を使うということも大事です。
藤田
UKPDS(United Kingdom prospective study)では、血糖のコントロールよりも血圧の管理が重要であるという結果でしたね(図5)。
もちろん、血圧の管理はイベント抑制に非常に重要ですし、血糖の管理も、長期的なことを考えるとやはり重要です。
それは早期から行うということが、腎障害の進展を食い止めるということになりますか。
木村
正にそのとおりだと思います。
藤田
どうもありがとうございました。
企画・制作 日本医事新報社
読んでいただいて有難うございました。
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