戯れ言たれる侏儒
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BAFTA

戯れ言たれる侏儒 / 2007.11.30 00:01 / 推薦数 : 0

きょうはBAFTAについて勉強してみました。心房細動の際の脳塞栓発症抑制には抗凝固薬warfarinが抗血小板薬aspirinより有用であるということはなかば常識となっています。この試験では75歳以上のいわば超高齢者が対象で、抗凝固薬warfarinの有用性が証明されたという内容です。
また、脳出血などの合併症も特に多くはなかったとのことです。

BAFTA  
Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged

目的
高齢の心房細動患者において,脳卒中予防効果を抗凝固薬warfarinと抗血小板薬aspirinとで比較する。
一次エンドポイントは致死的または介護の必要な非致死的脳卒中(脳梗塞,脳出血のいずれも含む),頭蓋内出血,臨床的意義のある動脈塞栓。

コメント
現在のガイドラインの基となった試験では,75歳以上の高齢者はわずかしか含まれていなかった。比較的リスクが低い患者を対象とした本研究でもaspirinに比べwarfarin(INR 2~3)が塞栓症の抑制に有効で,出血性合併症には差がないことが示された。
(富山大学医学部第二内科 井上 博先生)  

BAFTA
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002613.html
 

以下Lancet誌に掲載されたBAFTAの紹介です。
BACKGROUND
Anticoagulants are more effective than antiplatelet agents at reducing stroke risk in patients with atrial fibrillation, but whether this benefit outweighs the increased risk of bleeding in elderly patients is unknown. We assessed whether warfarin reduced risk of major stroke, arterial embolism, or other intracranial haemorrhage compared with aspirin in elderly patients.

METHODS:
973 patients aged 75 years or over (mean age 81.5 years, SD 4.2) with atrial fibrillation were recruited from primary care and randomly assigned to warfarin (target international normalised ratio 2-3) or aspirin (75 mg per day).
 Follow-up was for a mean of 2.7 years (SD 1.2). The primary endpoint was fatal or disabling stroke (ischaemic or haemorrhagic), intracranial haemorrhage, or clinically significant arterial embolism.
Analysis was by intention to treat.
973例。75歳以上;2年以内に行った心電図検査で心房細動が認められたもの。
除外基準:リウマチ性心不全;5年以内の非外傷性出血;頭蓋内出血;1年以内の内視鏡で確認された消化性潰瘍;食道静脈瘤;血圧>180/110mmHgなど。

FINDINGS
There were 24 primary events (21 strokes, two other intracranial haemorrhages, and one systemic embolus) in people assigned to warfarin and 48 primary events (44 strokes, one other intracranial haemorrhage, and three systemic emboli) in people assigned to aspirin (yearly risk 1.8%vs 3.8%, relative risk 0.48, 95% CI 0.28-0.80, p=0.003; absolute yearly risk reduction 2%, 95% CI 0.7-3.2).
Yearly risk of extracranial haemorrhage was 1.4% (warfarin) versus 1.6% (aspirin) (relative risk 0.87, 0.43-1.73; absolute risk reduction 0.2%, -0.7 to 1.2).
一次エンドポイント発生例はwarfarin群24例(脳卒中21例,その他頭蓋内出血2例,全身性塞栓症1例)であったのに対し,aspirin群は48例(脳卒中44例,その他の頭蓋内出血1例,全身性塞栓症3例):warfarin群1.8%/年,aspirin群3.8%/年で,warfarin群でリスクが有意に低下した(ハザード比[HR]0.48;95%信頼区間0.28~0.80,p=0.003)。
二次エンドポイントである頭蓋外大出血はwarfarin群1.4%/年,aspirin群1.6%/年で両群間に有意差はみられなかった(HR 0.87;0.43~1.73,p=0.67)。またすべての重大な出血においてもwarfarin群1.9%/年,aspirin群2.0%/年で,両群に有意差はみられなかった(HR 0.96;0.53~1.75,p=0.90)。
その他の二次エンドポイント(全死亡,その他の血管死,非血管死)にも両群間に有意差はみられなかった。血管イベントにおいても両群間に有意差はみられなかったが,脳卒中・心筋梗塞・肺塞栓・血管死を合わせた重大な血管複合イベントはwarfarin群のほうがaspirin群よりもわずかだが有意に低下した(HR 0.73;0.53~0.99,p=0.03)。


INTERPRETATION
These data support the use of anticoagulation therapy for people aged over 75 who have atrial fibrillation, unless there are contraindications or the patient decides that the benefits are not worth the inconvenience.
75歳以上の心房細動患者において,禁忌や患者が治療効果を納得できない場合を除き,抗凝固療法のほうが有効である。

Warfarin versus aspirin for stroke prevention in an elderly community population with atrial fibrillation (the Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged Study, BAFTA): a randomised controlled trial.
Lancet. 2007 Aug 11;370(9586):493-503.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=17693178&dopt=AbstractPlus

<コメント>

超高齢者の服薬コンプライアンスや凝固能のモニタリングの頻度とかは知りたいところです。                さらに欲をいえば、無投薬の自然経過のコントロール群ではどうかということ、つまりこのコントロール群と抗血小板薬aspirin群の群間比較も知りたいところです。

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高性能ACEI(その5)

戯れ言たれる侏儒 / 2007.11.29 00:23 / 推薦数 : 0

高性能ACEI
http://blog.m3.com/reed/20071023
という内容で10月23日に書かせていただいた内容について
以下の内容のコメントをいただきました。

その1
本当に私もARBが過度に評価されているように思います。
冠動脈疾患、またCKDのコントロールにもACEIの方がEvidenceが揃っています。
しかし、イミダプリル、キナプリル、トランドラプリル等の「高性能ACEI」がそれ以外のACEIに比して確かに臓器保護に優れるという臨牀データはあるのでしょうか?
理論的には、組織親和性が高く、T/P比が長いものの方が良さそうな気はしますが、実際の臨牀でこのあたりの違いはどうなんでしょうか?
written by のんきい / 2007.10.23 07:03

その2
高性能ACEIに関しては、相当誇張がありすぎると思っています。
当然トランドラのような脂溶性で長時間作動型のACEIとレニベース・カプトプリルのような水溶性で短時間作動型のACEI間で、同じ土俵で(というより前者に有利な)比べると結果の差が明らかになります。
しかし、問題は血圧をSurrogateマーカ(代用評価項目)とすると、それだけでは組織RASの抑制は不十分であることが明らかにされています(下がっていてもRASの抑制ができていない;ARBとの併用が有用ですが)。
そこで、ACEIの投与量と使いかたが非常に重要となります。後者を十分臓器保護として使用するならば、分割頻回投与が有効です。前者の場合なら分割投与よりむしろ一回の量を増やす方が有効です。
繰り返しますが、一番重要な点は降圧でなくて(もちろん大切ですが)、いかに臓器保護を24時間しっかり得るかです。
上記をご注意いただくと、コスト、忍容性の問題をのぞくと、どれを使用しても変わらないと思います。
written by COOPERATE / 2007.11.20 19:19


アンディ   草原と馬   リトグラフ
http://page4.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d79124950


高性能ACEI (その1)
http://blog.m3.com/reed/20071023
高性能ACEI (その2) http://blog.m3.com/reed/20071027
高性能ACEI(その3)
http://blog.m3.com/reed/20071103
高性能ACEI(その4)
http://blog.m3.com/reed/20071104

コメントはあまりいただけないのでとてもうれしく思います。
忌憚のない意見を取り交わすのがブログの醍醐味と思います。
これからもFace to faceの意見交換ができるといいなあと念じております。
昨今、なかなか本音がいえる機会が減りました。
学会しかり、大規模臨床試験のコメントしかりです。
しかるに、昨日の私のブログに転載させていただいたK先生のコメントはかなりエキサイティングでシニカルな内容のものでした。                       HIJ-CREATE
http://blog.m3.com/reed/20071128


研究者とはいえ人間です。
それぞれの立場で無難なコメントをするのが賢い生き方、処世術というものです。
ところがK先生のコメントたるや歯に衣着せぬ快刀乱麻ぶりでした。所属が大学でないということもあるのでしょうか。
私(達)は、このようなコメントはわかりやすくて大歓迎です。
一度、K先生の講演を聴いてみたいとも思いました。

JIKEI HEART Study
http://blog.m3.com/reed/20070822
JIKEI HEART Study(その2)
http://blog.m3.com/reed/20070910

 

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 http://wellfrog.exblog.jp/があります。

 

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HIJ-CREATE

戯れ言たれる侏儒 / 2007.11.28 00:02 / 推薦数 : 0

第80回米国心臓協会学術集会(AHA)で発表されたLate-Breaking Clinical Trialsの中からHIJ-CREATEの紹介です。
東京女子医大の笠貫宏先生の発表で、桑島巌先生がコメントを寄せられています。

HIJ-CREATE Japanese
Heart Institute of Japan- Candesartan Randomized Trial for Evaluation in Coronary Artery Disease


高血圧を合併した日本人冠動脈疾患患者において,ARB candesartanをベースとした治療による有意な心血管リスクの抑制は認められず
腎機能障害症例での有効性が示される
presenter:Hiroshi Kasanuki, MD ( Tokyo Women's Medical University, Japan )
    
目的           
高血圧を合併した冠動脈疾患患者での心血管イベント抑制効果において,candesartanをベースとした治療がARB以外の降圧薬による標準治療を凌ぐことを検証する。
一次エンドポイントは主要な心血管イベント(MACE:心血管死,非致死的心筋梗塞[MI],入院を要する不安定狭心症・心不全・脳卒中・その他の心血管イベント)。
          
コメント           
心疾患を合併した高血圧に対するARBの予後改善効果を非ARBと比較したという意味でJIKEI-HEART study (以下JIKEIと略す)試験に類似している。
JIKEIではARBの心血管イベント予防効果が非ARBに比較して著しく高いことが示され話題になったが,本試験ではARBの優位性は証明されなかった。両試験の結果の違いは何に由来するのであろうか。
両試験の違いを分析すると,まずエンドポイントの発生率がJIKEIでは6%に過ぎないのに対して,本試験では25.8%と約4倍である。これは冠動脈疾患合併率がJIKEIの33%に対して,本試験では100%と高リスクであることによると考えられる。また試験期間もJIKEIの3.1年に対して5年と長かったことも関係していよう。するとJIKEIは低リスク,低イベント発症で,かつ試験期間が短いにもかかわらず,なぜあのような非ARB群との大きな差がでてきたのかということが改めて疑問視される。一般的にいえば験の信頼性はイベント発症数が多いほうが遙かに高いことはいうまでもない。JIKEI では物議を醸したTIAは本試験では含まれていないようである。
また非ARB群の内容も両試験では異なる。JIKEIでは大半がCa拮抗薬とACE阻害薬であったのに対して,本試験ではランダム化時点ではCa拮抗薬の併用率は各々45%,56%と治療群間に大きな差はない(試験期間中の非ARBの併用率については未発表)。本試験は実質的にはACE阻害薬との比較と考えられる。そういった意味では2008年春発表予定のONTARGET試験の前哨戦ともいえよう。
また新規糖尿病発症が5年間でARB群7例(1.1%),ACE阻害薬群で18例(2.9%)と両群とも非常に低く,有意性の信頼度が高いとはいえない。糖尿病基準を知りたいところである。
両試験の試験薬であるcandesartanとvalsartanの違い,とくに持続性などが結果の差をもたらしたとはこれまでの両薬剤の成績からいっても考えにくい。 JIKEIの信頼性に問題を投げかけたという点では意義のある試験であろう
          
デザイン           
PROBE(prospective randomized open-label blinded-endpoint),多施設(14施設),intention-to-treat解析。
          
期間           
追跡期間の中央値は4.2年。ランダム化は2001年6月~2004年4月,追跡終了は2007年6月30日。
          
対象患者           
2049例。20~80歳。冠動脈造影で確認された冠動脈疾患(CAD)を合併した高血圧患者;CADの定義:急性冠症候群(ACS);安定 CAD,高血圧の定義:血圧≧140/90mmHgあるいは降圧薬投与例。主な除外基準:1週間以内の急性心筋梗塞(AMI),3ヵ月以内の脳血管疾患,血清クレアチニン(sCr)≧2.0mg/dL。

■患者背景:平均年齢65歳,BMI 25kg/m2,女性(candesartan群 18%,標準治療群21%),血圧(135/76 mmHg,136/76mmHg),高血圧治療例(91%,94%),ACS(34%,37%),安定CAD(66%,63%),既往:MI(40%, 36%);PCI(83%,82%);CABG(12%,11%);狭窄病変数≦1(両群とも57%),糖尿病(37%,39%),高コレステロール血症(59%,60%),EF(54%,55%),CRP(中央値:両群とも2mg/L),クレアチニンクリアランス(Ccr:63mL/分,62mL/ 分)。

治療状況:candesartan投与量<8mg/日(75%,-),ACE阻害薬(-,71%),Ca拮抗薬(45%,56%),β遮断薬(45%,49%),利尿薬(10%,8%),スタチン系薬剤(45%,44%),硝酸薬(49%,51%),aspirin(93%,91%)。
          
治療法           
candesartan群(1024例):candesartanを第一選択薬とし,その他のRAS系抑制薬は使用しない,標準治療群(1025例):ARBを除く標準降圧薬治療。
目標血圧は<130/85mmHg。
          
結果           
一次エンドポイントはcandesartan群264例(25.8%)vs 標準治療群288例(28.1%)でcandesartan群でリスクが11%低下したが,両群間に有意差は認められなかった:ハザード比[HR] 0.89;95%信頼区間0.76~1.06(P=0.194)。
3~6ヵ月後はcandesartan群で有意に抑制された:0.55;0.34~0.91(P=0.021)。

二次エンドポイントである血行再建術は256例(25.0%)vs 271例(26.4%):相対リスク低下(RRR)7%(P=0.414),新規糖尿病発症は7例(1.1%)vs 18例(2.9%):RRR 63%(P=0.027)。

candesartan群は標準群に比べ投与中止例(P<0.001),薬剤関連の有害イベント(P=0.027),咳(P<0.001)が有意に少なく,同群の忍容性は良好で安全性にも問題はみられなかった。

サブ解析
Ccr<60mL/分例:標準群と比べたcandesartan群のMACE:HR 0.79;95%信頼区間0.63~0.99(P=0.039),Ccr≧60mL/分例:HR 1.04;0.81~1.34(P=0.764)。

http://www.ebm-library.jp/circ/index_top.html 

http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/aha2007/HIJ-CREATE.html 


Heart Institute of Japan Candesartan Randomized Trial for Evaluation in Coronary Artery Disease (HIJ-CREATE - Presented at AHA 2007)
http://www.cardiosource.com/clinicaltrials/trial.asp?trialID=1632
The Results of HIJ-CREATE Study, a Large-scaled Clinical Study of Candesartan with Coronary Artery Disease Patients with Hypertension in Japan
http://www.takeda.com/press/article_28732.html


No Clinical Gain From Subbing ARB for ACE Inhibitor for BP-Lowering in CAD Population  
http://www.medscape.com/viewarticle/565609


CREATE-LBCT-PRESS slides Nov 7-2007
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=HIJ+CREATE&lr=lang_en

 

米国心臓学会における高血圧症治療薬ブロプレス®の大規模臨床試験 「HIJ-CREATE[※1]」の成績発表について
http://www.takeda.co.jp/press/article_25718.html

第80回AHA Late-Breaking Clinical Trials
http://www.ebm-library.jp/circ/trial_AHA_2007.html

第80回米国心臓協会学術集会(AHA)がで発表されたLate-Breaking Clinical Trialsの結果が掲載されています。
掲載トライアルは以下のごとくです。
AF-CHF(心房細動と心不全の合併例)/ BRIEF-PCI(PCI施行例)/ CORE64(冠動脈疾患が疑われる症例)/ CORONA(高齢虚血性収縮不全)Details/ Couma-Gen(経口抗凝固療法(INR 2~3)適応)/ COURAGE(心筋灌流SPECT実施例)/ EVA-AMI(ST上昇型心筋梗塞)/ HIJ-CREATE(高血圧を合併した冠動脈疾患)Details/ ILLUMINATE(冠動脈疾患)Details/ MASCOT(心臓再同期療法を受ける心不全患者) / MASTER I(心筋梗塞既往のICD植込み例)/ PCI in the OAT(米国のPCI施行例)/ POISE(非心臓術例)/ PROVIDENCE(間欠性跛行)/RethinQ(QRS間隔の短い症例)/ TRITON TIMI-38(PCI施行予定の急性冠症候群)

高性能ACEI    http://blog.m3.com/reed/20071023
高性能ACEI(その2) http//blog.m3.com/reed/20071027 
高性能ACEI(その3)
http://blog.m3.com/reed/20071103
高性能ACEI(その4)
http://blog.m3.com/reed/20071104


小柳 晟 水彩画4号「佐田岬 灯台」
http://page3.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/c152521414


<2008.6.30追加>
HIJ-CREATE試験/ARBとACE阻害薬
http://blog.m3.com/reed/20080629

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Ca拮抗剤の有用性(1)http://blog.m3.com/reed/20071119 

Ca拮抗薬の薬理作用(2)

http://blog.m3.com/reed/20071126 

 の続きです。

 
Ca拮抗薬の脳・心・賢に及ぼす作用
わが国における三大死因(脳血管疾患、心疾患、悪性新生物)による死亡率の変遷を見ると、長年にわたり死因のトップであった脳血管疾患が減少する一方で、心疾患が増加するなど、大きなパラダイムシフトが起こっている。
詳細に見ると、脳血管疾患のうち脳出血は減少傾向にあるものの、脳梗塞や脳塞栓などは増加傾向にあり、心疾患においては心筋梗塞が増加傾向にある()。


このような死因の変化の要因として,食生活の欧米化やライフスタイルの変化が指摘されている。

食塩摂取量に比例する脳血管疾患の発症率
脳血管疾患の死亡率は各地域によって差があると思われる。
そして食塩摂取量などの生活習慣が脳卒中の発症に関与する可能性が示唆されている。

# 長野県は、平均寿命は男性が全国で1位、女性は全国3位の長寿県である。
ただし、2002年度の、脳血管疾患による死亡率と心疾患による死亡率の順位が入れ替わっている。
この背景にはやはり塩分摂取量の影響があると思われる。県民調査の食塩摂取量の結果から、1998年までは平均14~15g/曰で、全国平均よりも2~3g多いことがわかった。

これは全くの推論だが、長野県では心疾,患で死亡する,患者数が他県に比べて少なかったため、相対的に長野県民の寿命が延び、平均寿命の順位が上がったのではないかと思います。
長野県で心疾患による死亡率が低かった理由の1つには、良好な食習慣が挙げられると思います。
虚血性心疾患の発症には10~20年前の食生活が関係して
いると言われていますが、長野県では1960年代、70年代の食生活が都市部に比べてよかったのではないかと推測しています。
若い世代に限って見れば、心疾患が増加傾向にあると
思われます。

#心疾患、脳血管疾患による死亡率の高い地域を見ると、高齢化の進んだ、寒冷地域で脳血管疾患による死亡率の割合が高く、暖かい地域や東京をはじめとする関東地方は心疾患による死亡率の割合が高いですね。
もちろん脳血管疾患については気候だけでなく、やはり食塩の摂取量の影響もあると思います。
 
脳血管疾患の発症予防を重視した場合、降圧治療は最も重要であると考えています。

薬物治療としては,確実な降圧効果がある一方で副作用は少なく、代謝面への悪影響も見られないCa拮抗薬をベースに他剤を併用するケースが多いです。
長野県は医療コストが低い県ですが、逆に言えば使用する薬剤に対するコスト意識も高いと言えます。
そういう意味でも、Ca血拮抗薬は費用対効果が高く,使
いやすいと感じています。

冠攣縮の抑制には塩酸ベニジピンがファーストチョイス
#以前,有意狭窄の有無にかかわらず、カテーテル検査を行った全患者を対象に誘発試験を実施したところ、狭心症の患者に冠攣縮が高率に認められました。
ですから、私は冠攣縮を抑制する目的で最初からCa拮抗薬をベースとした降圧治療を開始しています。

冠攣縮を抑制することを考えると,冠攣縮を抑える作用が強い塩酸ベニジピンがファーストチョイスになります。
私の印象ですが、他のDHP系Ca拮抗薬は、飲んでいても冠攣縮を起こす人がいるものですから、塩酸ベニジピンに比べると冠攣縮に関しては作用が弱いという印象があります。
ですから、心筋梗塞の患者には血圧が低くても少量でも塩酸ベニジピンを使っているのが実状です。
考えられる作用は、乳頭筋よりも冠血管に選択的に作用するところにあると思います(図1)。


#心筋梗塞後の患者で血圧が高い場合は、冠攣縮を抑制すると言われているCa拮抗薬(塩酸ベニジピン等)を使いながら,積極的に降圧することが必要だと思います。

心疾患のなかでも冠攣縮はいつ起こるか予測できないところが問題のようです。
正確な発症予測が不可能であれば、予防的にDHP系Ca拮抗薬が投与されているようです。
DHP系Ca拮抗薬のなかでも冠血管に選択j性のあるものが望まれ、とりわけ塩酸ベニジピンの印象がよいものと感じました。
最近では、高食塩および低食塩の食事をとった高血圧患者に対する塩酸ベニジピンの自律神経系に及ぼす影響が報告されました。
塩酸ベニジピンは高食塩群、低食塩群ともに確実な降圧効果を示し、亢進した交感神経活性を有意に抑制していま
す(図2)。


このことからも、食塩を取りすぎの日本人において、塩酸ベニピンは心臓にやさしいCa拮抗薬と考えます。

多彩な腎保護作用を示す塩酸ベニジピン

腎機能低下例では血圧の上昇が心血管系疾患を発症させるとの報告がいくつかの大規模臨床試験でなされるなど、腎障害と高血圧は密接な関係にあります。

降圧療法における腎保護作用に関しては、RA系抑制薬であるACE阻害薬やARBの有効性がさまざまな大規模臨床試験で報告されており、腎障害の改善にはRA系の抑制が重要です。
一方、Ca拮抗薬にはどのような腎保護作用があるのでしょうか。
#Ca拮抗薬のなかでも塩酸ベニジピンはL型Caチャネルだけでなく,T型Caチャネルも抑制し(古川泰司:第100回日本内科学会総会2003)、輸入細動脈だけでなく、輸出細動脈も拡張することがわかっており、腎保護作用も期待できます(図3)。



また、腎障害を伴った高血圧、特に慢性腎疾患の患者に対し
ては、降圧が何よりも大切であるということが指摘されています。
#特に、クレアチニン値が徐々に上昇してくるような方たちは、できるだけ降圧することが原則で、SBP130mmHg、DBP80~85mmHgを目標にします。
また,糖尿病の患者は腎障害を合併するケースが非常に多いので,同様の降圧レベルまで徐々に下げます。
 
塩酸ベニジピンは腎障害を伴う高血圧患者に対して確実な血圧コントロールを示すとともに、血清クレアチニン値を低下させます(図4)。

 


また、最近の報告によると、塩酸ベニジピンには腎間質においてNO産生を促進させる作用が報告されているほか(図5)、左心室においてもNO合成酵素(eNOS)の産生を亢進させることが報告されております。


こうした結果から塩酸ベニジピンは臓器局所の微小血管リモデリングを抑制させることが示唆されます。
日本人の臓器合併症を考慮した降圧療法において、塩酸ベニジピンはふさわしい薬剤であると考えられます。

塩酸ベニジピンとRA系抑制薬との組み合わせ
単剤で十分な降圧効果が得られない場合、2剤目の降圧薬がしばしば併用されます。
現在、ARBと利尿薬との合剤が、本邦で発売されています。日本人においては食事の欧米化、運動不により代謝異常が多くなりつつあり、糖尿病患者も増加の一途をたどっています。
ALLHATの結果で利尿薬による代謝性異常が示されたように、利尿薬の薬価が安いからと言って、日本人における利尿薬の使用範囲は限定され汎用されないと予測します。
一方、Ca拮抗薬とRA系抑制薬の併用療法が軸になるものと考え、事実、ARB単剤では血圧コントロールが不十分な症例に塩酸ベニジピンを併用すると、ARBを増量するよりも降圧効果は著明であるという成績もあります(図6)。


その理由としては、塩酸ベニジピンは、ノルエピネフリンやアンジオテンシンⅡによる血管反応性の亢進を抑制するためと考えられます(図7)。



つまり、塩酸ペニジピンとRA系抑制薬との併用療法は,亢進している血管反応性をダブルでブロックする可能性があることから、併用の相性がよいと考えます。

 

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 http://wellfrog.exblog.jp/があります。 

 

 

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その1 Ca拮抗薬の薬理作用http://blog.m3.com/reed/20071119 

の続きです。 

 

 嶋津俊則(二元会会長) 哀愁の欧州風景10号
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p87570929?u=artwahaha

 

その2 Ca拮抗薬の薬理作用
Ca拮抗薬は曰本の降圧治療に幅広く活用されている。
近年においては臓器保護作用など、Ca拮抗薬に関する新たな薬理作用に関するエビデンスが集積しつつあり薬剤選択の重要な基準となっている。
わが国においては、曰本人を対象に開発されたCa拮抗薬で
ある塩酸ベニジピンがあるが,わが国における降圧療法の在り方や期待すべき薬理作用について考えていきたいと思う。

食塩摂取量が多い日本人における
再適な降圧療法は?

曰本人は一般的には欧米と比べて食塩摂取量が多いと言われているが,曰本人の食塩摂取の傾向はどうだろうか。
(図1


Ca拮抗薬が日本で重要な降圧薬として用いられている理由には、食塩摂取の問題が大きい。
Ca拮抗薬が開発された当時の論文でも、高食塩時でのCa拮抗薬の降圧効果は大きく、減塩すると小さくなることが指摘されている。
しかし,曰本で開発された塩酸ベニジピンでは,本態性高血圧の患者に対する検討において,低塩食時の平均動脈圧も下げることが報告されている。
一方,他のCa拮抗薬では,常塩食時の平均動脈圧は低塩食時に比べて有意に高くなっている(図2)。


また、それに加えて塩酸ベニジピンには若干の利尿作用があることが臨床において確認されている(図3)。


曰本人の食塩摂取量が多い現状を踏まえると、レニン-アンジオテンシン(RA)系抑制薬は高食塩摂取患者には効きにくい可能|生があり、高血圧に対する薬物療法の主体となるのは塩酸ベニジピンなどのCa拮抗薬であると言えるのではないかと思われる。

合併症や臓器障害の種類と程度に応じて長時間作用型
Ca拮抗薬間での使い分けを

現在,わが国で使用されているCa拮抗薬は多岐にわたるが、薬剤ごとに効果の差はあるのか。

# 狭心症に対してはCa拮抗薬を使うことが多いが、冠攣縮抑制という点では薬剤によって差がある。
昨今,九州大学でRho/Rho kinase阻害薬による冠攣縮抑制の可能性について発表されてる。
別のデータでは,塩酸ベニジピンにはL型Caチャネルを阻害するだけではなくRho/Rho kinaseを阻害する作用がラットの脳底動脈で観察されている。
(Kitayama J、et al : Eur J Pharmacol 2002;438:153-158)。
塩酸ベニジピンによって攣縮抑制を示す機序にはL型Caチャネルをブロックする作用のほかに,Rho/Rho kinase阻害作用によるデュアル効果によって抑制されている可能|生が示唆される。
# 患者の病態によってもCa拮抗薬の使い方は変わってくる。
塩酸ベニジピンは冠動脈に選択的に作用するので、冠攣縮による不安定狭心症の患者においても、冠攣縮予防として期待できる。
また、冠攣縮に基づくACSではやはり冠攣縮の発症予防が重要ですから、選択的に冠動脈に作用するような薬
剤が第一候補になる。

近年,糖尿病合併高血圧の患者様増加しているが,以前と比較すると糖尿病の病態は変わってきているようだ。
また,そのような患者に対する降圧療法の実際はどうか。
血中から細胞膜にいったんプールざれCaチャネルに作用する塩酸ベニジピンは降圧発現が緩徐でかつ確実であり,
副作用発現も従来の短時間作用型Ca拮抗薬よりも少ないと考えられる(図4)。



塩酸ベニジピンは副作用が少なくファーストチョイスとして最適
一般的に、Ca拮抗薬は投与量に比例して降圧効果が増加します。
その一方で、副作用発現率も増加すると認識されています。

# Ca拮抗薬のなかでも,塩酸ベニジピンは非常に使いやすい薬剤だと,思われる。
ほかのCa拮抗薬で見られる顔面の紅潮や頻脈が改善されており、1曰1回4mg程度の投与で確実な降圧が得られる。また、代謝面や糖尿病への悪影響などを心配しなくても
よいので、いろいろな合併症を有する、患者のファーストチョイスとして使用できる。
# 塩酸ベニジピンのT/P比(trough/peak:降圧薬を服用する直前の降圧度と降圧効果が最大に達したときの降圧度の比)は米国FDAが推奨している50%よりも優れており、降圧効果の持続性が高いことが示されている(図5)。


副作用が少なく、高用量まで安全に使用できるため、特に厳格な血圧管理が必要な糖尿病を合併する方へ比較的安全に使用できる薬剤として有用であると考えらえる。

Ca拮抗薬の多彩な薬理作用
Ca拮抗薬の位置付けをまとめてみると、
1)確実な降圧効果
2)若干のNa利尿作用
3)狭心症発症の予防
4)脳卒中の予防
などの薬理作用が期待される。

このようにCa拮抗薬は多くの優れた特徴があるが、なかには併用が必要となる場合もある。
ACE阻害薬であるベナゼプリルを用いて行われたAlPRl研究では、50%以上の症例にCa拮抗薬が併用されており、またARBとしてはロサルタンを用いて行われたRENAAL試験でも約80%にCa拮抗薬が併用され、いずれも良好な効果が得られてる。
こういった大規模臨床試験の背景まで考慮すると、降圧薬の併用療法においては、Ca拮抗薬とRA系抑制薬との組み合わせが望ましいと言える。
また、ARBであるカンデサルタンに塩酸ベニジピンを併用したところ、カンデサルタン単独投与時よりも血圧ならびに尿中アルブミン排泄量が低下したというデータも報告されている。

<コメント> 

現在のところCCBの市場はアムロジピンのシェアが1位のようです。

RAS抑制剤(ACE-I、ARB)が高血圧、CKD領域では主役でCCBは脇役に回った感があります。しかし現実には単独で使用する場合は少なく、多くの場合に両者は併用されます。(両者にそれぞれ優れた点があるのなら併用してみようと考えるのは当然です。そして相性がいいというのならなおさらです。)

新しいCCBの開発はそろそろ打ち止めの感があります。

アムロジピンを対照とした検討で、優っているというCCBもあるようです。

今後のCCBの処方には最新の知識がいるかも知れません。 

 

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 http://wellfrog.exblog.jp/があります。

 

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昨日の続きです。
出典 Medical Tribune 2007.11.22
 

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デバイスの選択と二次予防
司会
DESの使用頻度と効果についてはいかがでしょうか。
B先生
当院では約7割でDESを使用しています。
DESを使用した場合、PCI後6か月以降の冠動脈造影で再狭窄はほとんど認めず、責任病変を治すということだけを考えれば非常に有効です。
しかし、DESでは遅発性ステント血栓症のリスク軽減のため、長期にわたり抗血小板薬を服用しますが、抜歯や手術をする場合には抗血小板薬を中止すべきか非常に悩みます。PCI時、DESを用いるかBMSを用いるかは、冠動脈だけでなく、患者さんの全身状態と社会的状況をみて選択するのが大事だと思います。

H先生
急性冠症候群(ACS)にDESは保険適用外ですので、DESの使用頻度は各施設のACSの割合や、elective PCI(ePCI)の件数の比率によって影響を受けると思います。
当院ではACSが約3割を占め、その患者さんにはBMSを使っていますが、ePCIでは、術前に薬剤の副作用などを説明し、ほぼ100%DESを使っています。
 
E先生
当院のDES使用頻度は8割ぐらいです。
再狭窄はDESのほうが少ないため、コスト面でもDESが優勢だと考えています。
ACSに対するDESの使用に関しては,今後の大きな課題であると考えています。

DES後のカンデサルタン投与の意義を探る4Cトライアル
司会
最後に、PCI後降圧療法を必要とする患者さんにカンデサルタンを投与する意義についてご意見をお聞かせください。

I先生 
心筋梗塞後は、心機能低下や心不全の発症が懸念されます。
カンデサルタンは慢性心不全患者を対象にしたCHARMで、心筋梗塞の発症を抑制することが示されており,PCI後の心機能が低下した患者さんに カンデサ ルタンを使う意義があると考えます。
さらに糖尿病がある場合、再発リスクが約2.6倍高まることがFinnish studyで示されています。
ARBに糖代謝の改善が期待できることからも、PCI後のフォロー薬にカンデサルタンを用いる意義は非常に大きいと考
えます。
Ogaki研究では、PCI後6か月以上が経過し、心電図異常を認めないなど、症状が安定した患者さんにカンデサルタンを投与した結果、2年間でCVDの再発をほぼ半減しました(図3)。


この研究では、PCI後の再狭窄を免れた症例を対象としているという点が、再狭窄リスクの減少が期待されるDES使用者と共通しており、DES使用例の予後を予測できるものです。現在進行中の4Cトライアルでは、DES使用例の降圧療法や心不全治療を必要とする患者さんを対象に 従来治療にカンデサルタンを追加する群としない群に分け、カンデサルタンの有効性を検討しています(図4)。

2、200例の登録を目標としており、現在、全国38施設のご協力をいただき 約650例の登録をいただいておりますが、まだまだ多くの先生方のご協力が必要です。
ご興味のある先生は 熊本大学循環器内科ホームペー(http://www.kumadai-junnai.com/bosyuusikin.html)をご覧いただくか,私どもにご連絡いただき,一緒に本研究にご参加いただきたいと思います。
 
司会
DES使用例に対する介入試験は、報告が非常に少なく、インパクトの大きい試験になると期待しています。
本日は.PCIを専門とする先生方から、「肥満者、高齢者のCVDの一次予防、二次予防には、CVDのリスク因子を発症させないこと、発症している場合には厳格にコントロールしていくことが重要である」ことをお話しいただきました。

 

4C 薬剤溶出ステント(Drug Eluting Stent)を用いた冠動脈形成術後の心血管イベント抑制に関する研究-アンジオテンシンII受容体拮抗薬によるイベント抑制効果-
http://www.jhf.or.jp/josei/studies/number/160.html
 

 

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新着のMedical Tribune誌の心不全の特集が目にとまりました。

ARBを販売している某メーカーの提供記事のため、バイアスがかかっているかも知れません。

先生方はすでにご存知のことばかりと思いますが、知識の整理ということで載せてみました。

司会は熊本大学大学院循環器病態学 小川久雄教授、出席の先生は県内の病院勤務の方達です。 

出典 Medical Tribune 2007.11.22

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特別企画 

日本人の心を護る

~虚血性心疾患から心不全の発症を防ぐ~ 

司会
近年わが国では、肥満者や高齢者が著しく増加しています。この方たちは,糖尿病や高血圧の発症リスクを高め、ひいては、心血管系イベント(CVD)や心血管死を増やすため、大きな問題となっています。
そこで本日は、”肥満者や高齢者のCVDをいかに防ぐか?”について、考えてみたいと思います。
はじめにCVDの一次予防のあり方について伺いましょう。

メタボリックシンドロームの-次予防は血圧管理から
A先生
メタボリックシンドローム(MetS)の構成因子には、血圧高値、耐糖能異常、脂質代謝異常がありますが、基盤を成す
のは肥満(内臓脂肪蓄積)
であり、CVDの一次予防は、内臓肥満に伴うインスリン抵抗性がポイントになると思います。
これには、運動と体重管理が重要ですが、現実的には、肥満の方で最初に発症しやすい高血圧を、CVDの発現抑制が認められているARBを用いて厳格にコントロールするようにしています。
ARBの糖尿病新規発症抑制にも期待しています。

B先生
肥満者は,内臓脂肪の蓄積により、インスリン抵抗性やTNF-α・PAI-1の発現増加、抗動脈硬化作用をもつアディポネクチンの低下などが起こり、CVDが発現しやすい状態にあります。
また肥満者では,インスリン抵抗性や脂肪細胞の肥大化により、アンジオテンシンⅡ(AⅡ)の産生が亢進しています(図1)。


CVD抑制のためには、血圧を厳格にコントロールすることが最も重要であると考えています。
薬剤による治療介入を行う場合、降圧効果に差がないのであれば、患者さんの病態により適している薬剤、肥満者のようにAⅡが亢進した状態が予めある場合にはARBを用いた降圧療法が最適だと考えます。

高齢者の冠危険因子に応じた降圧療法
司会
高齢者のCVDの発現抑制についてはいかがでしょうか。

A先生
一般的なCVDのリスク因子は高齢者でも同じですが、高齢者では加齢に伴い腎機能が低下し、血圧が上昇している
症例が多い
点で異なります。
腎機能低下は血圧上昇を招き、逆に血圧上昇は腎機能低下をもたらすという、高齢者はまさにこの悪循環のなかにいることが予想されます。
CASE-Jでは,カンデサルタンが腎機能の悪化を特に高齢者で大きく抑制することを認めました。
高齢者の降圧療法においても,カンデサルタンをベースに用いることが適切だと考えています。

CVDと慢性腎臓病の-次予防
司会
CVDのリスク因子として慢性腎臓病(CKD)が注目されていますね。

D先生
肥満をベースとするMetSの方、特にその構成因子保有数が増えるに従い、CKDのリスクが高まります(図2)。


腎機能障害は、糖尿病以上に、CVDの発現に最も大きく寄与する因子であることがCASE-Jにおいて示されており、高血圧治療機能を保っていくことは非常に重要です。
CKDは腎疾患というより、むしろ動脈硬化性疾患としてとらえ、われわれ循環器専門医が積極的にCKDの重要性を認識していくべきだと思います。
CKDを発症している方では、すでに全身の動脈硬化が進行していますが、CKDはさらに動脈硬化を進行させ、逆に動脈硬化はCKDを悪化させるという悪循環を形成します。
CKDを発症すると、血圧は130/80mmHg未満、LDLコレステロール120mg/dL未満と、通常の目標値より厳しくコントロールしていかなければなりません。
より早期にCKDを発見し治療介入していくことが大切です。

E先生
 CKDはCVDの明らかなリスク因子ですが、それだけではなく、CKD後の治療や予後にも影響します。
例えば冠インターベンション(PCI)を実施する際、腎障害がある方では、造影剤1つ使うにしても造影剤腎症を懸念し、細心の注意を払わねばなりません。
さらに、CKD患者さんでは、治療薬剤の選択肢が狭くなります。
このような理由から、腎保護を意識した治療は非常に重要ですが、腎保護を臨床的に実感することは困難です。
したがって,カンデサルタンのように、日本人で腎機能障害の進行抑制が認められている薬剤を中心に用いています。

F先生
カンデサルタンは、安定した降圧効果に加え、CKDの進行抑制や、糖尿病の新規発症抑制もCASE-Jで認められておりリスク因子の管理、CVDの抑制により効果的であると考えています。

CVDの二次予防を目的としたリスク管理
司会
続いて、糖尿病合併高血圧症患者さんに対するインターベンション、二次予防について伺いたいと思います。

F先生
糖尿病合併高血圧症患者さんは腎機能低下例が多いので、造影剤の使用量を極力少なくして造影剤腎症の予防に努めています。
再狭窄は薬剤溶出性スント(DES)の登場により減少したものの生命予後は改善されていないため、生命予後の改善には、新規病変のイベントを抑制していかなければなりません。
そのためには 、薬剤介入によって血圧・血糖を厳格にコントロールしていく必要があります。
また、糖尿病患者さんは全身性の動脈硬化を有しているため、PCI施行前に脳血管、腎血管、末梢血管をきちんと評価したうえでインターベンションを行うよう心がけています。

G先生
糖尿病患者さんの冠動脈はびまん性に病変があるうえに従来のベアメタルステント(BMS)を使用したインターベンションでも再狭窄率が高いため、再狭窄抑制効果の高いDESの使用を念頭に置きます。
ただ、DESは長期にわたる強力な抗血小板療法が必要であるため、当院では抗血小板薬の忍容性を確認したうえで使用する方針としています。
また、PCI後の再発抑制のために、薬剤療法のみならず、運
動療法や食事療法も含めた包括的心臓リハビリテーションを積極的に行っています。

A先生
二次予防のためには、血圧、血糖、脂質とも一次予防より厳格な管理が必要ですので、積極的に薬剤による治療を行っています。
当院ではPCI後のフォローは実地医家の先生方にお願いしていますので、実地医家の先生方とのコミュニケーションにも力を入れています。

D先生
私も、二次予防のためにはリスク因子の厳格な管理が必要だと考えます。
血圧にはARBまたはACE-I、血糖管理にはチアゾリジン系薬剤、脂質管理には水溶性スタチンといった、エビデンスのある薬剤を中心に選択しています。
そして、二次予防でも生活習慣の改善、特に運動をしっかり行うことが大切だと思います。

<コメント> 

「CKDを発症している方では、すでに全身の動脈硬化が進行しています」 ・・・・


CKDについての議論で、いつも疑問に思うのはCKDの背景すなわち原因としての高血圧や糖尿病などが患者によっていろいろだということです。

すなわちどちらがclinical entityであるのか混乱してしまいます。

慢性糸球腎炎やIgA腎症もCKDに入ってくるわけですから、これらの疾患のとりわけ若い患者さんも 「全身の動脈硬化が進行」ということになるのでしょうか。

高血圧性腎症、糖尿病性腎症という表現の方がよほど(原因別ということで)すんなり心に入って来る(理解しやすい)と思うのは私だけでしょうか。

  


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BMJ Ferreira-Gonzalez l,et al.2007;334:756-757の紹介です。
November 2007 Vol3 No.11 MWJに原著の和訳と解説が掲載されていますので紹介させていただきます。 
特に佐藤先生の解説が読み応えがあると思います。
多くの循環器疾患の大規模臨床試験では「複合エンドポイント」が設定されています。
その問題点について解説されています。


複合エンドポイントは解釈が難しく誤解を招くことも
心血管系の臨床試験に複合エンドポイントを用いる場合の問題: 無作為化比較試験の系統的レビュー

ProbIems with use of composite end points in cardiovascular trials: systematic review of randomised controlled triaIs

BMJ Ferreira-Gonzalez l,et al.2007;334:756-757

目的 
無作為化比較試験で使われる複合エンドポイントに含まれる個々の評価項目が患者への重要性に関してどれくらい幅があるのか、重要性の高いあるいは低い評価項目のイベントの頻度、個々の評価項目間で相対リスク減少にどれくらい差異があるのか検討する。

中略

結論 
心血管系の臨床試験で使われる複合エンドポイントは、評価項目ごとに患者への重要度が異なったり、治療効果で大きな差異が生じるため、しばしばその解釈が難しくなっている。
複合エンドポイントに含まれている重要性の低い評価項目はイベント発生率が高く、治療効果が大きく現れる傾向がみ
られ、治療効果に対して誤った印象を与えかねない

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以下はこの論文に対する佐藤先生のコメントです。

解説
複合エンドポイントの問題を改善する工夫も必要
  佐藤俊哉 京都大学社会健康医療統計学教授 
心血管系の臨床試験で死亡率の低下や心筋梗塞の発症予防をエンドポイントに設定すると、イベント発生が少ないため、膨大な数の試験参加者を長期間追跡する必要がある。このような場合に、「死亡、非致死的な心筋梗塞、または非致死的な脳出血のうち最初に観察されたもの」といった複合エンドポイントを主要評価項目にすれば
1)必要な対象者数を減らすことができる
2)治療の心血管系イベント全体への効果を調べられる
3)重要な評価項目を無理に1つ選ばなくてもよい
4)検定の多重性を回避できる
といった利点がある。

複合エンドポイントを使用する一番の動機が観察イベント数
を増やすことにあるため、本論文で述べられている、患者への重要'性が中等度・軽度の評価項目でイベントが発生する割合が高く、致死的・重篤な評価項目で低いという結果はしごく当然な結果である。
つまり、複合エンドポイントを使用する以上、その結果は中等度や軽度の評価項目に重きがおかれているものだと思って解釈すべきであり、そのことが治療効果に対して誤った印象を与えるのであれば、複合エンドポイントは用いないほうがいいということになる。

あるいは本文最後に提案されているように、結果を報告する
際には、複合エンドポイントを構成するすべての評価項目の結果を記述することで、適切な複合エンドポイントの解釈が可能となるかもしれない。
しかし、すべての評価項目の結果が記述されたとしても、致死的や重篤な評価項目でのイベント数が少ないため、結局のところ中等度・軽度の評価項目への治療効果としてしか解釈できないこともありうる。

複合エンドポイントの使用は致死的あるいは重篤な評価項目のイベント数が少ないことに由来しているのであるから、この問題を回避する方法として、下位の評価項目として致死的・重篤な評価項目のサロゲート(代替変数)と考えられる評価項目を選ぶことが考えられる。
個々の評価項目を階層的に選ぶことで、あまり重要でない項目が選ばれて患者への重要性の幅が広くなるという、本論文で指摘されている問題も改善されるだろう。

さらに、このように階層的に選んだ個々の評価項目について
は、「いずれかのうち最初に観察されたものをイベント」とするのではなく、試験期間中はすべてのイベント発生を調べ、「いずれかのうち試験期間中に観察された最も重要なイベント」を解析する方法も有効と考えられる。
個々の試験参加者に対する追跡の負担が増えるため、試験環境によっては現実的でない場合もあるかもしれないが、個々の評価項目でのイベント数が増えるだけでなく、評価項目間の関連の程度を調べる手がかりともなりうる。

最後に、本論文の著者らと本論文で最初に引用されている
論文の著者Freemantle and Calvertが複合エンドポイントに関する誌上討論をJournal of Clinical Epidemiology誌で行っているので、こちらも参考にしてほしい(Variance and Dissent.Journal of Clinical Epidemiology 2007;60:651~662)。

<コメント> 

今まで、何の問題意識も持たずに大規模臨床試験をみてきた私としては、これからはエンドポイントンのところでつっかかってしまいそうです。

話は別ですが、ドロップアウト例って追跡はどうなっているんでしょうか?それらの症例の中にも真実が隠されているような気がいつもしています。もちろん死亡例もあるかも知れません。

 

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収縮期・拡張期高血圧

戯れ言たれる侏儒 / 2007.11.22 07:08 / 推薦数 : 0

日常臨床において収縮期、拡張期血圧のどちらかだけを下げたいという場面にしばしば遭遇します。

どちらかというと収縮期血圧は下げやすいが拡張期血圧は下がりにくい。

降圧剤によって、いわゆる脈圧が小さくなってしまう。そんな経験をお持ちの先生は多いんじゃないでしょうか。

上の血圧と下の血圧のどっちが大事なんでしょうかといった質問もしばしば患者さんから受けます。

そんな疑問に対する解答が書かれた内容の記事がありました。 

日本医事新報 No.4359(2007年11月10日)
国際医療福祉大学熱海病院内科
築山久一郎
収縮期・拡張期血圧の選択的降圧薬の有無

日常臨床上、収縮期血のみ高く、拡張期血圧は正常範囲ないし低値を示す(すなわち脈圧の増大を示す)高齢着は多く、また、中年では収縮期血圧が正常範囲を示し、拡張期血圧のみ軽度上昇を示す症例に遭遇することが少なくない。
実際には収縮期血圧または拡張期血圧だけを選択的に低下させる降圧薬は存在しない。

収縮期血圧の下降度が拡張期血圧の下降度と比較して大きい(すなわち脈圧の減少効果が大きい)降圧薬としては、VA研究によると、利尿薬ヒドロクロロチアジドはACE阻害薬カプトプリル、β遮断薬アテノロールより脈圧減少効果が大きく、中枢神経作動性降圧薬クロニジン、Ca拮抗薬ジルチアゼム、α遮断薬プラゾシンは両者の中間であった。

高齢者収縮期高血圧患者では4種の降圧薬間の脈圧減少効果を算出すると、さらに、Ca拮抗薬、利尿薬と比較してACE阻害薬とβ遮断薬の効果は軽度で、前2種の降圧薬の収縮期血圧の低下度は後2種の降圧薬より大であった。

ヨーロッパ高血圧学会、同心臓病学会の高血圧管理ガイドライン(2007)は、高齢者収縮期高血圧患者では利尿薬と、Ca拮抗薬を推奨している。
しかし、これは脈圧減少効果の少ない降圧薬の拡張期血圧の下降度が収縮期血圧の下降度より大きいことを意味するわけではな(通常、後者の下降度がより大きい)、また、脈圧減少効果の大きい、Ca拮抗薬でも拡張期血圧の低下の評価は高い。

収縮期血圧の著しい上昇(拡張期血圧の上昇を伴わない)は、高齢者では動脈硬化病変の進展などによる弾性血管の動脈伸展性低下(動脈の衝撃吸収効果の低下)により、収縮期に心臓より拍出された血液の多くが末梢組織へ送られ、同時に大動脈波形をみると速い反射波が収縮期に戻り、収縮期血圧をさらに上昇させる。
一方、収縮期に拍出された血液が動脈に貯留されることが少なく、拡張期の末梢組織への送血量は少ないため拡張期血圧は低下する


降圧薬による動脈伸展性の改善は、血圧上昇による動脈壁弾性低下に関わる負荷を血圧低下が軽減することから驚くにはあたらないが、降圧薬別に血管内皮機能の改善や粥状硬化病変の退縮効果が異なり、動脈壁への効果に差を来す可能性がある。
実際、動脈内膜中膜壁厚増加やプラーク進展の抑制が、Ca拮抗薬、RA系抑制薬などで報告され、降圧薬間の差も一部に報告されている。

一方、拡張期血圧のみ高値を示す高血圧isolated diastolic hypertensionの脳卒中や腎不全のリスクは低く(ホノルル心臓研究、およびMRFITによる)、また、フラミンガム心臓研究では冠動脈疾患のない高齢者住民を20年間追跡すると、冠動脈疾患発症のリスクは収縮期血圧上昇に伴い増加するが、同一の収縮期血圧であれば拡張期血圧の上昇に伴いリスクは低下していた。
すなわち、拡張期血圧だけ高い(収縮期血圧は正常範囲にある)高血圧がリスクであるかどうか、疑問とする見解がある。

リスクが低い理由として、
①収縮期血圧が正常範囲にあるため、拡張期血圧の著しく高い(高血圧重症度の高い)症例が除外され、
②収縮期血圧と拡張期血圧の差(脈圧)が少ないことは動脈硬化病変の進展が軽度である、
③診断上の問題として聴診法では拡張期血圧を実際の血圧値より過大評価している頻度が高い
などの指摘がある。
最近の高血圧管理ガイドラインは、心血管系の臓器障害が発生する以前に降圧薬を開始することを推奨している。

高齢者高血圧では主に収縮期血圧を管理基準とするが、若年・中年では拡張期血圧のみ高い症例も生活習慣の改善を行い、積極的な降圧薬治療の対象として、低リスク症例であれば少量の一次薬を単独で開始することが妥当であると考える。

<コメント> 

築山先生は高血圧症一筋に研究された方です。特にベータ遮断剤についての造詣の深い先生です。 

あくまでも個人的印象ですが、isolated diastolic hypertensionは肥満の方が多く減量により改善する場合があるような気がします。もちろん、将来的な収縮期高血圧症の予備軍であることは間違いないところですが。

先生方の経験ではいかがでしょうか? 

 

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JELlS

戯れ言たれる侏儒 / 2007.11.21 00:04 / 推薦数 : 0

新着の雑誌からの紹介です。 

JELISがLancetに掲載された論文を和訳で紹介していました。

横山先生自ら解説をしてみえますので解説を特に興味深く読ませていただきました。

私もJELISが発表されて以来、個人的にもEPAを服用しています。

November 2007 Vol3 No.11 MWJ 

日本人の高脂血症患者の冠動脈イベント予防に、n-3脂肪酸が有効
高コレステロール血症患者における主要冠動脈イベントに対するエイコサペンタエン酸の効果(JELIS):無作為化オープンラベル、エンドポイント盲検化解析

Effects of eicosapentaenoic acid on maior coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELlS)
a randomised open-label, blinded endpoint anaIysis

LANCET Yokoyama M et al.2007;369:1090-1098.

Kobe University,Japan


背景 
長鎖n-3脂肪酸の摂取量が多いと冠動脈疾患による死亡を防げるというデータが、疫学的・臨床的エビデンスから示されている。
本研究では、エイコサペンタエン酸(EPA)の長期使用が魚摂取量の多い日本の高コレステロール血症患者において主要冠動脈イベントの予防に有効である、という仮説の検証を目的とした。

方法
1996~99年に日本全国の医師から総コレステロール値が6.5mmol/L以上の患者18,645人を集め、本試験の対象として登録した。
対象患者を、スタチンに加えてEPA1,800mgを毎日摂取する群(EPA群 ; n=9,326) もしくはスタチンのみ服用する群(対照 ; n=9,319)に無作為に割り付け、5年間追跡した。
1次エンドポイントは、心臓突然死、致死的・非致死的心筋梗塞、そして他の非致死的冠動脈イベント(不安定狭心症、血管形成術、ステント術、冠動脈バイパス術など)とした。
解析はintention-to-treat(治療企図)に基づき行った。

結果 
平均4.6の追跡期間中に、1次エンドポイントはEPA群では262例(2.8%)、対照群では324例(3.5%)に発生し、主要冠動脈イベントはEPA群で、相対的に19%減少した(P=0.011)(図1)。
治療後のLDLコレステロール値は両群とも4.7mmol/Lから25%低下した。
血清LDLコレステロールはEPA群での主要冠動脈イベントのリスク低下に関与する有意な因子ではなかった。
EPA群において不安定狭心症と非致死的冠動脈イベントも有意に減少した(図2)。


心臓突然死と冠動脈疾患死については2群間で差がなかった。
EPA群のうち冠動脈疾患既往歴を有する患者では主要冠動脈イベントが19%減少した(2次予防サブグループ: EPA群158例[8.7%]vs対照群197例[10.7%]; P=0.048)。
冠動脈疾患既往歴のない患者でもEPA併用により主要冠動脈イベントが18%減少したが、統計学的に有意ではなかった(EPA群104例[14%]vs対照群127例[1.7%];P=0.132)。

結論
日本人の高コレステロール血症患者において、EPA補充は主要冠動脈イベント、とくに非致死的冠動脈イベントの予防に有望な治療である。

解説
わが国から発信する新しいエビデンス
横山光宏 兵庫県立淡路病院院長

本研究のJELISは、日本人の高脂血症患者を対象として主要な冠動脈イベントの予防にエイコサペンタエン酸が有効であることを証明した長期大規模無作為化比較試験である。
本論文は3月31日発行のLancetに掲載されたが、本年4月中に高頻度にダウンロードされたLancet掲載論文のトップ3にランクされ、読者の関心がきわめて高い内容であることが分かる。
本研究の特徴について以下に記す。

本試験はきわめて純度の高いEPA製剤を用いた医薬品による介入試験として行われ、対象患者の血漿脂肪酸濃度をモニターした。
冠動脈イベントと脂肪酸濃度の詳細な関連性については、
サブ解析結果として今後報告する予定である。

高コレステロール血症患者の全死亡と心血管イベントの予防に有効であることが多くの臨床試験で示されているスタチンをすべての患者に投与し、2群に分けた対象患者の一方にEPA1,800mgを上乗せし、PROBE法で評価した。
EPAの効果を評価するのにこのような方法を用いたのは、臨床研究の科学性と倫理性を担保したうえで、日常診療に応用しやすい"real world''をよく反映する方法であるためである。
長鎖n-3脂肪酸の冠動脈イベントへの予防介入試験では2次予防についての報告が欧米でなされていたが、1次予防介入試験についての報告は皆無であった。

1次エンドポイントである主要な冠動脈イベントとして心臓突
然死、心筋梗塞などのhard endpointと不安定狭心症、血管形成術、ステント術、冠動脈バイパス術などのsoft endpointの両者を用いた。
その理由は、日本人の冠動脈イベント発症率が欧米に比べてきわめて低い点と、治療の目的が生存率の改善とともに生活の質(QOL)の改善であるからである。

本試験は、日ごろの魚摂取量の多い日本人を対象としてEPAの保険診療上の常用量 (1,800mg/日)を5年間投与することによって、冠動脈イベント、特に非致死的冠動脈イベントを有意に減少させることを示した。

一方、欧米での2次予防試験では少量の魚やn-3脂肪酸(EPA+DHA)の摂取が致死的冠動脈疾患、特に心臓突然死を減少させることを示している。

これまでの大規模臨床試験は、JELISを含めて、長鎖n-3脂肪酸の作用機序を解明するための試験デザインになっていないため、機序の詳細は不明である。
低濃度の、n-3脂肪酸は抗不整脈作用を有し、その効果には閾値濃度があるとされる。
一方、冠動脈イベント抑制効果には高濃度を要すると考えられる。
長鎖n-3脂肪酸は抗血栓作用、抗炎症作用、プラーク安定化作用、脂質代謝改善作用など多彩な生物作用を有することが明らかにされているが、生体内でどのような機序によって冠動脈イベントが抑制されるかは今後解明されるべき課題である。

今回はJELISの1次エンドポイントについての解析結果に関する報告であるが、今後なされる多くのサブ解析によってどのような症例でエイコサペンタエン酸投与の効果が最も期待できるかを明らかにすることが重要である。
 
<コメント>

最近、家森幸男先生が書かれた「110歳まで生きられる!脳と心で楽しむ食生活」という本を読ませていただいております。

スタチン一辺倒の研究者の講演には最近少しうんざりしているところです。

家森先生も疫学調査の結果からはっきり「コレステロールが高すぎれば心筋梗塞が増える。低すぎれば脳卒中が増える。」 とおっしゃってみえます。

これが大方のコンセンサスの筈です。

しかるに冠動脈イベントだけに目をむけてlower the betterの大合唱。 

EPAとスタチンのガチンコの話はあるのでしょうか。

EPAは脂質低下作用では負けるでしょうが、冠動脈イベントで勝ったら痛快です。

しかし、スタチンにはpleiotropic作用もあるの一筋縄にはいかない?

 

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