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臨床現場ではこんな場面に遭遇することがあります。
「心臓は大丈夫なんだけどなあ。でもたしかに胸痛はあるし。原因はなんだろ?」
胸痛でみえる患者さんの中で心臓が原因の場合は2~3割。
多くは非心臓性胸痛(nonーcardiac chest pain:NCCP)といわれています。
原因が特定されないことが多いために、NCCPの方がやっかいともいえます。
患者さんも心臓が原因ではないといわれても、それで胸痛がとれるわけではないのでドクターショッピングに走ることがしばしばあります。
NCCPの4割はGERD
GERDで有名な症状は胸焼けですが、実は胸痛だけを主訴とする患者さんもみえます。
GERDが否定されない限り安易にNSAIDを投与することは控える必要があります。
心臓性の胸痛とGERDの鑑別にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)テストが有効でかつ簡単です。
PPIの常用量を服用して有効ならその時点で診断あはつきます。
内視鏡による診断はNERDという粘膜障害がない場合もあるため、所見がないからといって食道性の胸痛ではないとはいえません。
食道性の胸痛の胸痛では他に食道運動機能異常があります。
1)びまん性食道痙攣
(diffuse esophageal spasm:DES)
食道体部に同期性の収縮波が頻発
2)nutcracker esophagus(NE)
蠕動波高が異常に高くなる。
この2つはPPIが無効であることと胸痛よりつかえ感が訴えとしては多いのが特徴です。
診断は困難ですがCCBやNTGで症状がおさまるので狭心症と勘違いされることがあります。
NTGを治療診断として処方することがありますが、有効の場合にも、この点は注意がいると思います。
しかし24時間食道内圧・pHモニタリングまで行うのは実地医家では現実的ではありません。
他に考えられる疾患にパニック障害があります。
以前に心臓神経症といわれていた病態の一部はパニック障害だろうという考えがあります。
私見としてはチクチクとか何だかはっきりしない痛み、いわゆる指で指し示す範囲の胸痛を心臓神経症と診断していましたからちょっと違うんではないかと思います。
精神神経科領域では慢性疼痛(心因性疼痛)、うつ病などもNCCPの原因となります。
その他では筋骨格系の疾患が見落とされがちです。
たとえば肋骨骨折。高齢者では咳をしただけで骨折を起こすことがあるといわれています。本人も骨折を起こしたエピソードがはっきりしないため診断がつかないこともあります。
そのような場合には肋骨の上を圧迫して痛み(圧通)が限局性にあれば診断できます。
さらに診断が難しいのはTieze病、肋軟骨炎、胸肋鎖骨異常骨化症などの胸鎖骨や肋軟骨の炎症による胸痛。
原因や疾患概念が確立していないため診断も困難です。
脊椎関節炎という整形外科的な概念もあるようです。
間接の腱や靭帯の付着部の慢性炎症(付着部炎)が病態の本質といわれています。
胸だけが痛いということは少なくて脊椎、仙腸関節、四肢関節にも圧痛があることが多いので、全身の指圧点を性格に押していくと見つけられるとのことです。
胸肋鎖骨異常骨化症では掌せき膿庖症を高率に合併するため、手掌の水泡で発見されることもあります。
「繊維筋痛症」も鑑別が必要ですが、疼痛が胸部に集中する例は多くありません。
そうそう、最後になってしまいましたが帯状疱疹や肋間神経痛を忘れるところでした。

アンドレ ブラジリエ リトグラフ「9月の夕方」http://page9.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/k44867724
<コメント>
最近当院で胸痛の原因が食道がんだった症例を経験しました。
病変は下部食道でしたがつかえ感は全くなく、食事の際の胸部の激痛でした。
最初、食事に伴う狭心症を疑って検査をしましたが、食事との関係があまりにもはっきりしていたので胃透視検査を行い診断がつきました。(手術不能例でした)
胸痛
http://www.kirishimacho.com/HouseCall/encyc/1/44/2_0_0_0.html
胸痛(PDF)
www.med.hirosaki-u.ac.jp/~suga/sgcenter/series2/online2.12.pdf
胸部・脈系の異常-胸が苦しい・胸痛
http://www.yume-net.ne.jp/dome/worldpl/03_shojo/03_03_04.htm
心臓神経症とは?
http://www.aurora-net.or.jp/life/heart/stress/70/index.html
<9月19日夕刊より>
外径1.4ミリ、世界最細の治療用カテーテル
心臓の血管(冠動脈)が狭まる狭心症などの治療に用いる細い管(カテーテル)で、外径1.4ミリという世界で最も細いものを国立循環器病センターの竹下聡・心臓血管内科医長やテルモなどが開発した。
従来のものより断面積が半分以下のため、より細い血管まで治療できる。
挿入する皮膚部分からの出血の危険性が低くなる利点もある。
通常、治療に使われているのは外径2.1~2.7ミリ程度。新たに開発したカテーテルの断面積はこの半分以下のため、冠動脈の曲がった部分や細い部分まで届き、従来より治療ができる範囲が広くなる。
さらに、内径2.5ミリほどの手首の動脈からのカテーテル挿入にも適している。
竹下さんは「従来のものより軟らかいので操作しづらく、医師の技術力が要求される。だが治療の質を上げ、患者の負担も減らすことができる」と話している
http://www.asahi.com/life/update/0919/TKY200709190045.html
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コメント
コメント一覧
7月始めに焼けどして。それから痛みが弱くなりました!!その頃から微熱が続いてますがね・・・。(原因今だ不明)
コメントありがとうございました。
やけどをして痛みが軽くなったとのこと。
何だか医学的に興味のある話です。
お大事にしてください。
またコメントよろしくお願いします。
現在26歳の女性なのですが
中学生の頃から胸?(鳩尾より若干左の部分です)に
突然ナイフで内部を突き刺されたのではないか?という痛みを感じるようになりました。
息を吸うと突然痛みが。
そして息を止めたり浅い呼吸を繰り返すうち1分程度で
再度普通に息を吸っても痛くなくなります。
今まで様々な病院(生憎循環器科以外)を受診したのですが
不整脈・貧血・自律神経のバランスが悪いと言われたりしています。
健康?のようです。特に治療もしてきていません。
最近1日に何度もその痛みが起こるようになり、心配です。
また痛むかもしれない、と呼吸をするにも気を使い疲れてしまいました。
今までと同じく特に何も治療もないまま
痛みと付き合っていくしかないなら
病院に行く必要もないのかなぁ、と思ったり、
でも心配だから・・・。と思ったりで悩んでいます。
このような場合、先生ならどうしますか?
特に今まで通り浅い呼吸で対処しておけば良いでしょうか。
長文になってしまい申し訳ありません。
もしお時間ございましたらアドバイスお願いします。
こういった患者さんは当院にも時々みえます。
なんだかNCCP(非心臓性胸痛)の典型例のようですね。
とてもお話の内容が参考になります。
循環器医は「きりきり」とか「ナイフで刺したような」という言葉を聞いただけでNCCPと診断します。
狭心痛は「押さえつけられるような」とか「しめつけられるような」とかの漠然とした痛みです。
そして「手のひら」で痛みを表現すれば心臓由来、「指」で表現すれば非心臓性と判断します。
呼吸に関係した痛みの場合は胸膜(肋膜)が摩擦して起こる痛み(胸膜炎)や胸壁の動きに連動した肋間神経痛(大袈裟にいえば「帯状疱疹後神経痛」)が考えられると思います。
呼吸に連動している胸痛というのがキーワードになると考えられますが、何よりも胸膜摩擦音が聴こえるかどうかをしっかり聴診(その際には座位と臥位の両方)してもらうといいと思います。
CT検査も胸膜病変の有無をみるためのチョイスかも知れません。
そつのない答え方としては「一度専門医に相談下さい」ということでしょうが、なかなかそこまで相談にのっていただける医師が少ないのが現状ではないでしょうか。
お答えにはなっていないかも知れません。
またのコメントをお待ちしています。
とても参考になりました。
まさに「ナイフで刺されるような」かなりの痛みで
刑事ドラマではありませんが
「うっ!やられたー・・・。」と胸をおさえているような感じです。
指か掌かの表現は、上手く言えません。
掌の手首に近い部分でグッと押さえて痛む部位を表現しています。
折角なので帯状疱疹後神経痛を少し調べてみました。
母に聞くと、私は子供の頃に水疱瘡になったことがあるとのことです。
特に普段発疹のようなものはできません。
(発見した覚えが無いだけかもしれませんが)
今日痛んだ後に冷静になって考えてみたら、
そういえば痛みの前後は必ず左肩甲骨と背骨の間あたりが
もや~っと気持ちが悪いです。
こんなにちゃんと解説して頂けたのは初めてです。
どこの病院へ行ってもドクターは忙しそうで
色々聞いたら悪いかな。と思い・・・
「この痛みは何なのでしょうか?」とか
「痛みが起こらなくなる方法はないのですか?」とか
あまり質問攻めも出来ず終いだったので・・・。
次に行ったら、思い切って聞いてみようと思います。
どうもありがとうございました!
随分とすごい痛みのようですね。
結局私では診断がうまく出来ません。
呼吸と関連するようなので多分違うと思いますが、最近は胸痛の原因の一つとして食道に原因を求めることが流行って(?)います。
たとえば「逆流性食道炎」とか「食道痙攣(スパスム)」とか。
一度ネットで調べてみられたらいかがでしょうか。
心臓由来では「安静時狭心症」というものもあります。
治療診断としては「逆流性食道炎」ではPPI(プロトンポンプ阻害剤)、「安静時狭心症」では亜硝酸製剤(ニトロ)が有効です。
「食道痙攣(スパスム)」)や「安静時狭心症」にはカルシウム拮抗剤が予防効果があり、このカルシウム拮抗剤は「逆流性食道炎」では却って悪化する可能性があります。
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