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創薬が期待される組織レニン研究 Victor J. Dzau
レニンは未知の病態生理学的反応の誘導に関わる可能性も
「レニンが臨床医学と公衆衛生に与えた影響は計り知れない」。
Dzau氏はまずこう強調した。レニンが発見されてから既に100年を超え、心血管系疾患におけるRA系の重要性は広く知られている。
しかし、レニンは、アンジオテンシンIIを産生するだけでなく、レニン受容体との結合を介した作用も持つことが近年明らかになっており、未知の病態生理学的反応の誘導に関わる可能性も指摘されている。
血液中のRA系の作用に比べ、腎臓、心臓などに対する組織レニンの作用は長期にわたるため、臓器障害をもたらすリスクが高いと考えられる。
実際に体内でプロレニン/レニン受容体が機能することは、動物実験などで示されている。
受容体との結合は、レニンの触媒活性を上昇させ、増殖や繊維化を促進する。
組織レニンの由来については、血漿レニンの取り込みによる可能性と、局所発現による可能性が想定されるが、両方ともあり得ることを示すデータがある。
では、既知のレニン阻害薬は組織におけるレニンの活性も阻害できるのか。「答えはイエス」とDzau氏は考えている。
Dzau氏らは、脂肪組織に存在する間葉系幹細胞に対するレニンの作用を調べる実験を行い、
(1)間葉系幹細胞から脂肪細胞が分化する際にレニン受容体の発現が上昇すること
(2)レニンは幹細胞からの脂肪細胞の分化を促すが、アンジオテンシンIIはそれを抑制する
ことを明らかにした。これは、RA系は脂肪組織の脂肪細胞量を制御していることを示唆する。
組織レニンの発現はどのように調節されているのか
では、組織におけるレニンの発現はどのように調節されているのか。
これは、新規創薬標的の発見に結びつく可能性がある研究課題といえる。
Dzau氏らは、
1) 肝臓X受容体アルファ(LRXα)がレニン遺伝子のプロ2) モータ領域(CNRE)に結合すること
3) レニン遺伝子やc-myc(細胞増殖に関わるc-mycもCNRE領域を持つ)のcAMP依存性の発現調整に関わること
を見出した。
LRXαは、以前からコレステロール代謝の調節への関与が知られていた転写因子である。
同氏らは、LRXαがレニンを分泌する糸球体近接細胞(JG細胞)の増殖を仲介しているのではないかと考え、in vivoでJG細胞におけるLXRαとレニンの局在が一致することを明らかにした。
JG細胞はレニンの合成と分泌に特化しており、レニン産生能を維持しながら増殖できるという特徴を持つ。
これまで、この細胞の起源と増殖の分子機構は不明だった。
Dzau氏らは、cAMPによって活性化されたLXRαの初期遺伝子発現、ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込み、細胞増殖に対する影響を調べた。
その結果、cAMP-LXRα経路が、JG細胞によるレニン発現とこの細胞の増殖に総合的にかかわっている可能性が示された。
傍糸球体細胞(JG細胞)の起源は?
研究グループはさらに、増殖機構の理解を深めるため、JG細胞の起源を探った。
これまでレニン産生細胞の前駆細胞は平滑筋細胞や平滑筋前駆細胞と考えられてきた。
しかしDzau氏らは間葉系幹細胞こそが、JG細胞の祖先ではないかと考え、cAMPなどを加えた培養液で間葉系幹細胞を培養、これらの細胞でレニンmRNAの発現が上昇し、活性レニンが分泌されていることを明らかにした。
Dzau氏らは、今後、ヒトの体内で虚血のような特定の病態生理学的刺激があった場合、JG細胞が増殖分化して治癒に役割を果たすのかどうか、といった研究を進める考え。
こうした知見がJG細胞自体、あるいはレニン発現を標的とする新たな心血管疾患治療薬開発に役立つと期待している。
(日経メディカル オンライン)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/ish2006/200610/501676.html
<コメント>
糸球体近接細胞は傍糸球体細胞と改めました。
その他一部を変更しました。
ザウ博士についてはこんなことが載っていました。
2005.7.25の記事です。
◎新社外取締役にザウ博士ら ペプシコが新役員発表
米ペプシコ社は23日、同日の役員会で2人の社外取締役を選任したと発表した。2人は、ビクター・J・ザウ医学博士とダイナ・ダブロン女史で就任は同日付け。
「ザウ博士が社外取締役に加わったことで、世界的な健康問題の権威の一人からその洞察がうかがえることになった。健康問題は当社の最優先事項の一つであり、ザウ博士の医学的経験は、全米有数の医療研究機関を運営しているというビジネス上の洞察力とあわせて、ペプシコに大きな利益となるだろう」と語った。
ザウ博士は、デューク大学健康関係学部長であり、デューク大学医療システムの社長兼CEOを勤め、米国でもトップクラスの医療機関を率いる責任を持っている。博士は、ハーバード大学医学部を卒業、スタンフォード大学医療センター、ハーバード大学医学部大学院で心臓学、薬学の責任者を勤めるなど責任ある地位を歴任した。
ザウ博士は、心臓学者として患者の面倒を見ながら、心血管の研究で大きな業績をあげた。心血管疾患とそれに関連する問題について10冊の著書と225以上の論文があり、鬱血(うっけつ)性心不全と高血圧の治療法の先駆者。博士は、心血管疾患に関する遺伝子と細胞に基づく治療法の研究で、国立衛生研究所(NIH)から4つの研究基金を受けている。博士は、全米科学アカデミー医学研究所、中国科学院、欧州科学芸術アカデミーのメンバーでもある。
▽ペプシコ社について
ペプシコ社は世界最大級の食品、飲料会社で、年間売上高は290億ドル。主要事業はフリトレイ・スナック、ペプシコーラ飲料、ゲータレード・スポーツ飲料、トロピカーナ・ジュース、クエーカー食品など。ポートフォリオにはそれぞれ年間の小売売上高が10億ドル以上の16ブランドが含まれている。
http://prw.kyodonews.jp/prwfile/release/M000010/200507251175/_prw_open.html
<コメント>
Dzau博士ってすごい方なんですね。そしてペプシコもすごい。
そして米国の懐の深さも再認識しました。
余談でした。
日野 晥 油絵10号 「洋蘭」
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v27207641
大阪医科大学薬理学教室-教授紹介
http://www.osaka-med.ac.jp/deps/pha/kyouju.htm
<コメント>
研究の苦労話です。
なかなか面白い内容でした。
一部紹介させていただきます。
遺伝子は検出できるようになっても所詮それは遺伝子であり、実際のアンジオテンシIIを血行由来と区別してその機能を同定するのは難しい。
それよりも、細胞内情報伝達系を他の系でやっているのと同じ手法で攻める方が手っ取り早かったと言えば、嫌みになろうか。
我々は、そのような中で極めて泥臭い古典的薬理学手法、すなわち摘出血管をマグヌス装置に懸垂してアンジオテンシンによる発生張力を測って、血管壁には従来のレニン-アンジオテンシン系によらないアンジオテンシンII産生機構が機能していることを見いだした。
単純ではあるが、一片の血管が、この組織の本質的機能である収縮という反応を見せつけてくれたがために、その生理的機能の重要性が確信できたので、未知の機序に迷い無く取りつくことが出来たのである。
もしこれが、新規の遺伝子から入っておれば、おそらく、もっと別の特殊な機能か、逆に流行りの機能に走って、華やかそうに泥沼に引き込まれていたかもしれない。
われわれは、血管で収縮反応という形でまちがいなく機能するアンジオテンシンIIを産生している酵素の存在を1980年代のはじめに見つけCAGE(chymostatin sensitive angiotensin generating enzyme)と報告しておきながら、その酵素がキマーゼであるという同定は、1990年に米国の二つのグループに先行されてしまったのである。
キマーゼ含量の多い肥満細胞腫や含量の多いヒト心臓でなくて、含量のきわめて少ないイヌの正常組織に取りついたのが敗因である。
もっとも技術的に彼らが先行していたのも事実であろう。何とか血管のそれはわれわれの手で証明して何とか取り繕ったが。
キマーゼ由来のアンジオテンシンIIの役割を突き止める仕事は、初めは手がかりが全く無かった。なにしろ、冒頭にも述べた如く、姿かたちは同じだが氏素性が異なるアンジオテンシンIIを機能の上で選別しなければならない。血行由来の旧来のアンジオテンシンII、組織のアンジオテンシン変換酵素の活性化によって作られたアンジオテンシンIIも混在しているかもしれない。遺伝子を所かまわず発現させたり除去したり、アンジオテンシンII標品を溶かして振りかけたりの、荒っぽい手法は使えない。
ヒントは、アンジオテンシン変換酵素阻害薬がラットの血管肥厚抑制に効いたというのと、ヒトの血管肥厚病態には無効であったという二つの報告であった。
ヒトキマーゼはアンジオテンシンII産生能を備えているが、ラット精製キマーゼとアンジオテンシンIを反応させてもアンジオテンシンIIは出来なくて、別のペプチド断片しか生じないという極めておもしろい種差を見つけていたので、これらの報告から、血管肥厚が最初のキマーゼの標的疾患と予想した。
一つ手がかりが出来ると、後は芋づる式に予想以上に多様な疾患が、キマーゼと関連していることが解ってきた。その中には、アンジオテンシンⅡ産生機能以外のキマーゼの役割も当然含まれている。
病態も循環系の枠を越えて大きく広がりを見せ始めた。組織癒着、血管新生、癌などが今後の大きな研究標的である。
読んでいただいてありがとうございます。
リンク 先もよろしくお願いします。
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