「HDLコレステロール=善玉」に疑問符,「悪玉」HDL-Cが存在!?米,医療関係者対象の大規模症例対照研究心血管疾患リスクとは逆相関を示すことから「善玉コレステロール」との別名で呼ばれることも多いHDLコレステロール(HDL-C)。そのような中,「HDL-C=善玉」説に疑問を投げかける研究成果が米ハーバード公衆衛生大学院のFrank M. Sacks氏らから報告。医療関係者を対象とした大規模症例対照研究(J Am Heart Assoc 2012; 1: e000232)で,冠動脈疾患(CHD)発症に関連する「悪玉」HDL-Cの可能性が示された。アポリポ蛋白C-Ⅲを含有するHDL-Cに着目HDL-Cを上昇させる作用のある薬剤に関する複数の検討で,HDL-Cの粒子サイズと心血管予後が関連する可能性が指摘されてきたが,一致した結果は得られていなかったという。 Sacks氏らはこれまであまり明らかにされていなかったアポリポ蛋白C-Ⅲ(apo C-Ⅲ)とHDL-Cの関連に着目。apo C-ⅢはVLDLやLDLの動脈硬化促進作用に関連することが知られている。 医療関係者らを対象とした2つの大規模症例対照研究〔Nurses' Health Study(3万2,826例)とHealth Professionals Follow-Up Study(1万8,225例)〕のコホートを対象に,血液サンプルからapo C-Ⅲの有無によるHDL-CとCHDイベントの関連を検討。 apo C-Ⅲ含有HDL-Cと非含有HDL-CでCHDリスクに差10~14年の検討期間に634件のCHDイベントが発生。全HDL-Cの1SD上昇当たりのCHD相対リスク(RR)は0.78(95%CI 0.63~0.96,P=0.02)と有意に低下。 しかし,apo C-Ⅲを含有しないHDL-Cでは,1SD上昇当たりのCHDリスクの有意な低下が見られた(同0.66,0.53~0.93,P=0.0001)のに対し,apo C-Ⅲ含有HDL-Cではリスクが有意上昇していた(1SD上昇当たりのRR 1.18,95%CI 1.03~1.34,P=0.01)。リスクの有意な低下あるいは上昇はトリグリセライドおよびapo B蛋白の補正後に消失したが,2つのHDL-Cサブタイプ間のCHDリスクの差は残存していたという(P=0.05)。 なお,HDL-Cの大部分はapo C-Ⅲを含有しないサブタイプで,apo C-Ⅲ含有HDL-Cは13%程度であった。 「HDL-C全体を測定するよりもapo C-Ⅲの有無によるHDL-C測定がより優れた心血管リスクの指標となる可能性が示唆された」とSacks氏ら。食事あるいは薬物療法におけるapo C-Ⅲ含有HDL-Cの減少が有効性のマーカーとなるかもしれないとしている。(坂口 恵) 出典 MT pro 2012.5.21版権 メディカル・トリビューン社
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従来の知見覆る? HDL-C高値と心筋梗塞リスク低下に関連なし
欧米の大規模遺伝疫学研究
これまで,ナイアシンやコレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬など,HDLコレステロール(HDL-C)を上昇させる機序を有する各種薬剤の開発が進められてきた。
しかし,心血管予後の改善を直接証明できた臨床試験はなく,開発中止を決めた企業も複数出ている。
そのような中,HDL- Cの心血管マーカーとしての意義に疑問を投げかける研究成果が相次いで報告されている。
1つ目の報告はHDL-C上昇が心血管リスクの低下につながらない可能性—脂質と動脈硬化に関する従来の知見を覆すような検討結果が,欧米の多施設による大規模遺伝疫学研究から明らかになった(Lancet 2012年5月17日オンライン版)。 遺伝的な高HDL-C例のMIリスク,低下せず 報告を行った米ペンシルバニア大学のBenjamin F. Voight氏らは,メンデルランダム化解析(mendelian randomization)を用いた2つの試験で,高HDL-C血症に関連する遺伝子型と心筋梗塞(MI)発症リスクの関連を解析。 1つ目の試験では,20の臨床試験からMI患者2万913例と9万5,407例のコントロール群の一塩基多型(SNP)解析を実施。 高HDL-C血症に関連する内皮リパーゼ遺伝子型(LIPG 396Ser アレル)を有する人とそうでない人のMIリスクを比較した。
同アレルの保有頻度は全体の2.6%で,保有群のHDL-C値はコントロール群に比べ高かった〔0.14mmol/L(約5.5mg/dL),P=8×10-13〕ものの,MIリスクに関連するそのほかの脂質・非脂質プロフィールはアレル非保有群と同等であった。
HDL-C値の差から,アレル保有群のMIリスクは13%低下する〔オッズ比(OR)0.87,95%CI0.84~0.91〕と予測。
しかし, アレル保有例におけるMIのORは0.99(同0.88~1.11,P=0.85)であった。
この検討から「遺伝的な高HDL-C血症はMIリスクの低下に関連しないことが確認された」と同氏らは結論。
HDL-CとMIリスクの関連,観察疫学と遺伝疫学で不一致
さらに,2つ目の試験として,HDL-Cと特異的に関連する14の頻度の高いSNPから成る遺伝子型スコアとMIリスクの関連を検討。
ポジティブコントロールとしてLDL-Cに関連する13のSNPから成る遺伝子型スコアとMIリスクの関連も同時に調べた。
観察疫学研究では,HDL-C上昇に伴うMIリスクの有意な減少とLDL-C上昇に伴うMIリスクの上昇が認められた。
LDL-C関連SNPの遺伝子型スコアを加味したLDL-Cの1SD上昇当たりのMIリスクも有意に上昇(OR 2.13,95%CI 1.69~2.69)しており,観察疫学との一致が見られた。 しかし,HDL-C関連SNP遺伝子型スコアを加味したHDL-Cの1SD上昇当たりのMIのORは0.93(0.68~1.26,P=0.63)で,有意な関連は見られなかった。 Voight氏らはなんらかの形でHDL-Cが上昇していても,それがMIリスクの低下に関連しない可能性が示されたと結論。 HDLを上昇させる薬剤がMIリスクを低下させるとは考えにくいとの見解を述べている。(坂口 恵) 出典 MT pro 2012.5.21
版権 メディカル・トリビューン社 欧州心臓病学会がランセット発表論文に「物言い「HDL-C介入の意義薄い」としたJUPITERサブ解析欧州心臓病学会(ESC)は(2010年)7月23日の声明で,前日(7月22日)にLancetオンライン版で発表されたJUPITERサブ解析で示された見解に対し,懸念を表明した。 同論文ではHDLコレステロール(HDL-C),アポリポ蛋白A1による層別化が行われ,ベースラインと治療時の心血管疾患初発リスクとの関連が解析。同試験グループの主任研究者Paul Ridker氏(米ブリガムアンドウィメンズ病院)らは,「積極的なスタチン治療により非常に低いLDL-C値を達成できた症例では,HDL-Cの心血管リスクにおける意義は薄い」と結論付けた。 これに対し,ESCは「1つのサブ解析だけでHDL-Cに対する介入の意義がないと判断すべきでない」と反論している。 実薬群ではHDL-C値と心血管リスクとの有意な関連見られず JUPITER試験では糖尿病,冠動脈疾患の既往のない正常LDL-C値,かつ高感度CRP(hsCRP)が2mg/dL以上の健康者を対象に,ロスバスタチン投与による心血管疾患初発予防効果が検討された。発表と同時に有名医学雑誌が同試験に対するコメント欄を設置したほか,米国では同薬の適応が拡大されるなど,大きな話題を呼んだ。 最近も,同試験には利益相反に関連する問題をはじめ,不適切な点が複数あったと指摘する論文(Cholesterol Lowering, Cardiovascular Diseases, and the Rosuvastatin-JUPITER Controversy; Arch Intern Med 2010; 170: 1032-1036)も発表,反響が続いている。 今回,Ridker氏らは同試験のプラセボ群(8,901例)では,同群におけるHDL-C最低四分位群を1とした場合の最高四分位群における ベースライン時の心血管疾患のハザード比(HR)は,0.54(95%CI 0.35~0.83,P=0.0039),治療期間中のHRは0.55(同0.35~0.87,P=0.0047)と有意な逆相関が見られたと報告。それ に対し,ロスバスタチン群(8,900例)ではベースライン時のHRが1.12(同0.62~2.03,P=0.82),治療期間中のHRは1.03(同 0.57~1.87,P=0.97)と有意な相関が見られなかったという。 同氏らはHDL-Cのマーカー,治療標的としての意義に水を差すものではないと付け加えながらも,ロスバスタチン群で見られた結果は,スタチンがもたらした積極的なLDL-C値低下による効果により裏付けられると考察。 「こうした患者群ではHDL-Cの心血管疾患の残存リスク予測能は見られない」 と結論付けた。
ESCは「今回の解析だけでHDL-Cの評価を判断すべきでない」
ESCはこれに対し,現在開発が進むHDL-C値増加をターゲットにした新たな研究に支障が生じると懸念を表明。
同学会の広報担当Dan Atar氏(ノルウェー・オスロ大学)は,今回の解析によりHDL-C値の増加が心血管リスクの低減に何のベネフィットももたらさないとの解釈が生まれるのは危険だと指摘。
そのうえで「これは統計手法の問題。もし心血管イベントのリスクがかなり低い群に対し,(LDL-Cのような)低下しうるあらゆるリスクに介入を行えば,そのほかの効果を生じる因子の影響は払拭されてしまうのは当たり前だ」と述べている。
これまで薬物療法によるHDL-Cの上昇が心血管リスクの低下に寄与する可能性がいくつかの試験で報告されていることから,HDL-Cを上昇させる意義について,医学界が一定の判断を下すには時期尚早と同氏。
「今回のサブ解析だけで判定を下すべきではない」と論文読者に呼び掛けている。
(坂口 恵)
出典 MT pro 2010.7.26
版権 メディカル・トリビューン社
血管内皮リパーゼ(Endothelial Lipase: EL)の
脂質代謝異常、動脈硬化に対する役割
私達はHDL 代謝に重要な分子であるトリグリセリドリパーゼのファミリーに属する新規リパーゼである血管内皮リパーゼ(EL)をクローニングした。
そして、ELが炎症性サイトカインやずり応力など動脈硬化
の促進因子によって誘導されることを明らかにした。
また、ELがヒト冠動脈の血管内皮細胞や動脈硬化病巣のマクロファージに存在し、血管局所での動脈硬化の進展に重要である可能性を報告した。
さらに、ELノックアウトマウスと動脈硬化のモデル動物であるアポEノックアウトマウスを交配することによって、EL が動脈硬化を促進的することを明らかにした。
EL が脂質代謝においてHDL を低下させることと、血管局所にてマクロファージの接着やリポ蛋白の取り込みを促進することが、EL が動脈硬化を促進させるメカニズムであると考えられた。
また、EL がマクロファージと血管内皮細胞の架橋因子と
してはたらき、炎症の制御に関与していることを明らかにした。
JUPITER試験はここが変だ - MEDICINE BLOG - FC2JUPITER試験とコレステロール降下剤(スタチン)疑惑2010 JUPITER試験にバイアス存在? - 葦の髄から循環器の世界をのぞく ... 内科医のノート (Diabetologistnote) JUPITER 試験への批判あの試験は今・・・JUPITER試験: MEDICINE-BLOG クレストール の適応拡大を承認~心筋梗塞などの一次予防が新たに追加 (まさしくアポ蛋白 C‐Ⅲに関する研究)
「マルチスライスCCTAによるACS除外」の有用性示唆:ACRIN PA 4005急性冠症候群(ACS)診断が疑われる低~中等度リスク患者を対象に、マルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)を用いてACSを除外した場合、除外例における30日間「死亡・心筋梗塞」発生率は1%未満と極めて低いことが、無作為化試験 "ACRIN PA 4005" の結果、明らかになった。米国ペンシルバニア大学のHarold Litt氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。同氏は「CCTAを用いたACS除外は安全で効率的だ」と結論している。 本試験の対象は、ACSを疑う症状がありながら、心電図上虚血性変化を認めない救急外来(ER)受診 1,370例である。全米5施設から登録された。ACSを除外し得た例は含まれておらず、全例、TIMIリスクスコアは2以下だった。平均年齢は50歳 弱、男女ほぼ半数ずつだった。
これら1,370例が、即時CCTA施行群(908例)と、通常の診療を行う対照群(462例)に無作為化された。CCTA群では64列以上のモダリティを用い、狭窄が50%未満であれば加療せず帰宅、対照群では各施設の判断にゆだねた。Litt氏によれば米国の「通常診療」では、ER受診時に心電図検査と血中マーカーを検査し、それでACSが除外できない場合、入院または日を改めての「負荷試験」というのが一般的だという。30日間追跡した結果、CCTA所見に基づくACS除外の安全性が確認された。すなわち、CCTAに より「狭窄率<50%」とされ、加療せず帰宅した患者は83%に上ったが、それらの「30日以内の心臓死・心筋梗塞」(第一評価項目)発生リスクは、0% (95%信頼区間 [CI]:0.00~0.57%)。95%CI上限が、当初仮説で設定した「1%」を下回った。「30日以内の重篤イベント発生率<1%」は、米国ガイドラインが「低リスク」とする基準だという。加えて、全CCTA群と対照群の「死亡・心筋梗塞」、「冠血行再建術施行」発生率にも有意差はなかった。CCTAを用いた鑑別はまた、医療経済的にも好ましいと考えられた。ERからの退院率は、CCTA群 で50%と、対照群の23%に比べ有意に高い。院内滞在時間も、CCTA群で有意に短かった。一方、心臓カテーテル検査、ER再受診、再入院、心臓専門医 受診──はいずれも、両群の頻度に差はなかった。現在、Litt氏らは、CCTAによるACS除外の安全性・経済性が長期間維持されるか、1年間の追跡を継続中だという。出典http://www.carenet.com/conference/acc/2012/03.html <私的コメント> CSAに伴うAMIもあるはずですが、その場合にはACSという状態はあるのでしょうか。もし存在するとすれば、CCTAではチェック出来ないような感じもします。もっとも欧米では冠スパスムはあまり考慮されないようですが。
<メモ> 高血圧と脂質異常症の同時治療の重要性
■高血圧と高コレステロール血症の潜在患者数
高血圧のみ 約2,200万人
(高血圧潜在患者 約4,000万人)
高コレステロール血症のみ 約1,200万人
(高コレステロール血症潜在患者 約3,000)
高血圧 + 高コレステロール血症 約1,800万人
■降圧剤とスタチンをともに処方されている患者は半数にすぎない
■高血圧症と高コレステロール血症の合併により脳・心血管イベント発症リスクが増加
(Asian Pacific Cohort Studies Collaboration : Circulation 112(22);3384, 2005)
■薬物療法による心血管イベントへの影響
(血圧と脂質を同時にしっかり管理することが重要)
血圧低下*(10%)+脂質低下**(10%)=心血管イベント発症リスク低下(45%)
*収縮期血圧で約14mmHg
**総コレステロール値で約23mg/dl
(Emeherson,J.et al. Eur Heart J: 25(6);484,2004)
<自遊時間> 英語の名言集Action may not always bring happiness, but there is no happiness without action. Benjamin Disraeli(British politician) 行動すればかならず幸せになるというわけではないかもしれないが、行動しなければ幸せになることはない。 <自遊時間>
金環日食。7分間だけ姿を見せた奇跡の横浜から
http://style.carenet.com/9850.html
読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/http://harrison-cecil-lobe.blog.so-net.ne.jp/ (「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)があります。
“ドラッグラグなかった”ダビガトランの市販後1年を山下武志氏が総括モニタリング不要の新しい経口抗凝固薬として,ダビガトランは米国の発売からわずか3カ月後に,わが国でも承認された。RE-LY試験での非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における脳卒中・全身塞栓症予防が実臨床でも期待されたが,市販から半年後,同薬との関連性が否定できない重篤な出血例が報告され,厚生労働省は安全性速報(ブルーレター)を出した。5月10日に東京都で開かれたプレスセミナー(提供:日本ベーリンガーインゲルハイム)で,心 臓血管研究所所長の山下武志氏は,市販後の安全性情報が既にあるドラッグラグがある薬剤しか使ってこなかったわが国の現状を指摘。特定の患者群を対象とした臨床試験の結果を,あらゆる患者を診る実臨床でどう当てはめていくのかの検証が大事だと述べた。<私的見解>臨床試験がはたして「特定の患者群を対象とした」ももかどうか?実臨床とそんなにかけはなれているのかというのが率直な感想です。大学や市中病院での自分の経験からいえば、治験はいわば「やっつけ仕事」 でした。臨床試験がそれほど真剣に行われているとはとても思えません。今や心不全治療薬としても使用されているメインテート。勤務医時代に治験に関わって、副作用欄に「著明な徐脈」 と記入したらMR(当時はプロパー)が飛んで来て、「全国で1例もそういう報告は出ていない」といわれてびっくりしました。私は、それ以来メインテートは怖くて処方していません。 実臨床では出血が起こるか起こらないかの2つに1つ ダビガトランを適正使用した場合の脳卒中または全身性塞栓症発症の抑制は,110mg×2/日投与群はワルファリン投与群に対し非劣性であり,150mg×2/日投与群では有意に低いことが証明されたRE-LY試験。大出血および頭蓋内出血の発現頻度については,ワルファリン投与群に比べて 110mg×2/日投与群で有意に低かった。
そのため,ダビガトランは「定期的な血液凝固モニタリングが不要」であり,「予測可能で安定した抗凝固作用」を持つ新しい抗凝固薬として大きな期待を持ってわが国の実臨床にも迎えられた。
しかし,発売から半年以内に同薬との関連性が否定できない重篤な出血性の副作用による死亡例が報告され,ブルーレターの公表と,事態は思わぬ方向に向かう。 山下氏は,3つのギャップがあることに気づいていなかったと振り返る。
その1つが「臨床試験と実臨床とのギャップ」だ。同氏によると,臨床試験は経験豊富な専門医が治験コーディネーター(CRC)の協力を得て,ある特定の患者だけを対象に行われるいわば温室の世界だという。しかし,実臨床ではあらゆる患者が対象となり,状況は全く異なる。2つ目は「対象集団と実際の患者とのギャップ」である。臨床試験では大出血の発現は年当たりで換算されるが,実臨床は目の前の患者に起こるか起こらないかのどちらかしかない。つまり「集団でのデータを1人の患者にどう応用するのかを知らなかった」(同氏)。最後に「ドラッグラグがある薬剤とない薬剤とのギャップ」がある。米国とわが国のダビガトラン承認のタイムラグはわずか3カ月しかない(米国2010年10月承認,日本2011年1月承認)。これまでの薬剤は何年ものドラッグラグがあったために,わが国で承認された時には海外の安全性情報やその対応策が既に示されていた。しかし,今回ばかりは状況が違った。 腎機能低下例の出血,排泄型に依存せずその後,11報ものRE-LY試験のサブ解析が報告され,大出血で注意すべき点として(1)年齢,(2)抗血小板薬併用の有無,(3)出血部位―があることが分かった(Circulation 2011: 123: 2363-2372)。75歳以上に同薬を投与した場合,1年当たりの大出血発現率が逆転し,ワルファリンよりもダビガトランで高くなった。さらに,アスピリンやクロピドグレルとの併用によりダビガトラン投与例でも出血リスクが増加した。用量調節不要な薬剤なだけに,リスクがあると抗凝固作用を調整しきれずに同薬のせっかくの利点が負に働いてしまう。出血部位を見ると,非消化管ではワルファリンに比べてリスクが低かった(110mg×2/日投与群:P=0.06,150mg×2/日投与群:P=0.038)一方,消化管だと逆にリスクが高くなった(同:P=0.44,P<0.001)。そのほかサブ解析から,出血に関する興味深い点が示されたと山下氏は言う。腎機能低下例における出血はダビガトランだけでなく,肝代謝型のワルファリンでも見られ,代謝の違いにかかわらず腎機能の程度に応じてリスクが上昇することが明らかになった(Circulation 2011: 123: 2363-2372)。「これは腎排泄率が低いため,腎機能にはあまり依存しないと思われるリバーロキサバンにも言えることだ」と同氏は指摘した。 別の救うべき低リスク患者の存在が明らかにこのように,同薬が適さない症例が示された一方で,75歳未満やCHADS2スコアが低い例などメリットが明らかな患者群もサブ解析で明らかになった。75歳未満例における脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制は75歳以上に比べてより高く,大出血リスクはワルファリンに比べて明らかに低かった(Circulation2011: 123: 2363-2372)。また,CHADS2スコアが0~1点や2点などの低い例も多いのが実臨床だが,ダビガトランにおける脳卒中および全身性塞栓症の発症はワルファリンに比べて同等または低いことが示された(Ann Intern Med 2011; 155: 660-667)。リスクと比較した上でのベネフィット(Net clinical benefit)分析によると,CHADS2スコア0~1点群におけるダビガトラン投与のベネフィットは,ワルファリン投与に比べて明らであった(図)。
当初,ダビガトランは高リスク群が承認の入り口であった。しかし,低リスク群の心房細動患者はむしろ多く,脳梗塞発症も高いことがサブ解析で推定されたため,山下氏は「低リスク群という別の救うべき患者の存在が分かった」と指摘する。aPTT測定で大出血を防止ところで,同研究所ではダビガトラン投与による大出血は1例も出ていない。その鍵は,医師が投与前後に活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を測定していたことにあった。実際に測定してみると,投与後のaPTTは一様ではなく,延長例が混在していたという。そこで,延長例は使い慣れたワルファリン投与に切り替えるなどの措置を講じたため,同研究所ではブルーレターとは正反対の結果となったのだ。山下氏は「サブ解析からダビガトランの弱点も示されたことは臨床上,重要なこと。臨床試験の結果を患者にどのように当てはめていくか,臨床現場に徹する中で,いずれのギャップが埋まっていく」と述べた。 (田上 玲子)出典 MT pro 2012.5.15版権 メディカル・トリビューン社
2012.5.19 22:02 撮影アウトリガー・リーフ・オン・ザ・ビーチhttp://jp.outriggerreef.com/Default.aspx?ref=1 http://jp.outriggerwaikiki.com/ http://allabout.co.jp/gm/gc/381026/
<ある日の講演会メモ> 冠動脈疾患治療の新展開①
■Toxic lipolysis product hypothesis
○中性脂肪リッチなリポ蛋白が脂肪分解を受ける時に多くの炎症性脂質を産生し、血管内膜に障害を与える
・fatty acids lysolecithins
・oxydized lipids
○これらの代謝産物は
・接着因子の発現
・サイトカインの分泌
・マクロファージへの細胞毒性
・凝固
を促進させる
■Mets、2型糖尿病患者に食後高中性脂肪血症は多い
・Postprandial(食後)state,Postabsorptive(栄養素の吸収)stateを加味すると1日のほとんどが食後となる
・動脈硬化は食後に作られる!
■エゼチミブで食後中性脂肪が低下する機序
①小腸粘膜におけるコレステロール吸収障害
②小腸粘膜における脂肪酸吸収・運搬の阻害
③小腸粘膜における中性脂肪合成の障害
④カイロミクロン量の低下
⑤ApoB48の分泌低下
■血管内皮機能を改善する治療
・RAA系阻害薬
ACEi > ARB
・高脂血症治療薬
statin, EPA, fubrate, エゼチミブ
・糖尿病治療薬
ピオグリタゾン、DPP-4阻害薬 >> SU
■マクロファージはLDL-Cを食べない
■マクロファージが食べるのはatherogenic cholesterol
・レムナント
・酸化LDL
<きょうの一曲> The PrayeCeline Dion & Andrea Bocelli - The Prayer (Live In Boston Taking Chances Tour 2008) 720p HDTV http://www.youtube.com/watch?v=2xdlsu4sCaU&feature=related 読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/http://harrison-cecil-lobe.blog.so-net.ne.jp/ (「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)があります。