戯れ言たれる侏儒
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血圧の左右差が15mmHg以上あると死亡リスクが上昇
10mmHg以上の差で末梢血管疾患の疑い
左右の腕で測定した収縮期血圧の差が10mmHg以上あると、無症候性の末梢血管疾患の存在が疑われ、さらなる血管の検査が必要。差が15mmHg以上あると、死亡リスクが上昇する―。
そんな知見が、英Exeter大学の Christopher E Clark氏らが行った系統的レビューとメタ分析で得られ、Lancet誌電子版に2012年1月30日に報告された。

末梢血管疾患はその後の心血管イベントと死亡の危険因子であるため、早期に発見して介入すれば死亡を減らせる可能性がある。

しかし、無症候性の末梢血管疾患の発見は難しい。
診断には通常、足関節上腕血圧比ABI)が用いられるが、時間がかかる検査で、測定には一定の経験とトレーニングが求められるため、プライマリケアで日常的に行われてはいない。

そこで著者らは、左右の腕で収縮期血圧を測定し、その差を求める方法がABIの代替になることを示唆する研究に注目。

具体的に差がどれだけあれば、無症候 性の末梢血管疾患ハイリスク者と見なすべきかを明らかにするために、血圧の左右差と末梢血管疾患、心血管疾患、脳血管疾患、死亡の関係を調べる系統的レビューとメタ分析を実施した。

Medline、Embase、CINAHL、コクラン、Medline In Processなどのデータベースに11年7月までに登録された研究で、左右の腕の血圧差と、鎖骨下動脈狭窄、末梢血管疾患、脳血管疾患、心血管疾患、死亡に関するデータを報告していたものを選び、ランダム効果モデルを用いてメタ分析した。

28件の研究がレビューの条件を満たした。

うち定量的なデータを報告していた20件をメタ分析の対象にした。
多くの研究が、心血管リスクが高い人々を登録していた。

血管造影を用いた侵襲的な研究5件では、鎖骨下動脈の狭窄(2件で50%超と定義、残り3件では不明)が確認された患者において、狭窄がある腕の収縮期血圧は、もう一方の腕に比べ平均36.9mmHg(95%信頼区間35.4-38.4mmHg)低かった。

左右の腕の10mmHg以上の差と鎖骨下動脈狭窄の関係は強力だった。

2件の研究のデータをプール解析したところ、10mmHg以上の差があるケースに50%超の鎖骨下動脈狭窄が存在する可能性は、血圧差が10mmHg未満のグループの8.8倍になった(リスク比8.8、3.6-21.2)。
左右差 10mmHg以上を指標とする鎖骨下動脈狭窄同定の感度は65%(35-86%)、特異度は85%(82-88%)だった。
 
次に、非侵襲的な研究のデータをプール解析したところ、10mmHg以上の差は、末梢血管疾患の存在と有意な関係を示した。
リスク比は 2.44(1.53-3.87)、感度は32%(23-41%)、特異度は91%(86-94%)になった。15mmHg以上の差についても同様で、末梢 血管疾患のリスク比は2.48(1.63-3.77)、感度は15%(9-23%)、特異度は96%(94-98%)だった。

脳血管疾患の既往と血圧の左右差の関係も有意だった。15mmHg以上の差がある場合の脳血管疾患歴のリスク比は1.63(1.10-2.41)、感度は8%(2-26%)、特異度は93%(86-97%)だった。

前向き研究では、死亡の増加とも有意な関係を示した。15mmHg以上の差がある人々では、心血管死亡のハザード比は1.68(1.11-2.53)、全 死因死亡のハザード比は1.55(1.07-2.25)になった。

10mmHg以上の場合には、いずれの死亡リスクも上昇傾向を示したものの有意にはならなかった。

末梢血管疾患の存在を予測する能力においては、収縮期血圧の左右差10mmHg以上または15mmHg以上という指標は、感度は低いが特異度は高いことが明らかになった。

15mmHg以上の血圧差は、脳血管疾患の存在、心血管死亡リスク、全死因死亡リスクに関係していた。
左右の腕の血圧差の測定は、死亡リスクを低減するための介入の機会を与える、と著者らは述べている。

原題

Association of a difference in systolic blood pressure between arms with vascular disease and mortality: a systematic review and meta-analysis

 

The Lancet, Early Online Publication, 30 January 2012

doi:10.1016/S0140-6736(11)61710-8
 http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2961710-8/abstract

 

出典 NM online 2012.2.14
版権 日経BP社

 

 

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アリスキレンとRAS抑制薬との併用による高K血症についは
アリスキレン+RA系阻害薬による高K血症・急性腎障害のメタ解析
http://blog.m3.com/reed/20120117/_RA_K_
で既にとりあげました。
きょうは再確認です。
 
アリスキレンとRAS抑制薬併用で高K血症の頻度が大幅増加
直接的レニン阻害薬のアリスキレンとレニン・アンジオテンシン系(RAS)抑制薬の併用により,それぞれの薬剤の単独使用と比べ高カリウム(K)血症の頻度が大幅に増加すると,カナダのグループがBMJの2月4日号に発表した。
 
同グループは,アリスキレンとRAS抑制薬併用の安全性を検討するメタ解析を行った。
対象は,アリスキレン+ACE阻害薬またはアンジオ テンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)併用群と各薬剤単独群にランダムに割り付け,4週間以上投与して高K血症と急性腎障害の頻度を比較した10試験(患者数 計4,814例)。
 
解析の結果,アリスキレン+ACE阻害薬またはARB併用群の高K血症の発症頻度は,ACE阻害薬およびARB単独群と比べ1.58倍高く,アリスキレン単独群との比較では1.67倍高かった。
急性腎障害のリスクは併用群,単独群で有意差はなかった。
 
同グループは「アリスキレンとRAS抑制薬を併用する場合には,血清K値の注意深いモニタリングが必要」と指摘している。

Harel Z, et al. BMJ 2012; 344: e42.
 
出典  MT Pro 2012.2.16
版権  メディカルトリビューン社
 
<自遊時間>
きょうの夕方は、某メーカーへMRさんを対象にした講演会に出かけます。
タイトルは先方が勝手につけてくれました。
「スタチンに関する最近の話題」です。
さて、最近は循環器領域でもスタチンやARBは一段落ついたのか、「最近の話題」がめっきり少なくなってしまいました。
 
1か月前から下準備して来たのですが、講演前の緊張感とその後の開放感は昔(現役の時)の学会発表と同様に「いい感じ」 です。
 
さて、最近ちょっと気になる広告があります。
1つはAERAの新聞広告のタイトル。
もう1つはTVのCM。
 
パワポ馬鹿とメール奴隷
資料作りに時間を費やし
わかった気になる本末転倒     (AERA)
 
ブログとかツイッターとか、いっぱいいっぱいじゃなーい?             (TV CM)
 

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拡張型心筋症発症のメカニズムに迫る知見がNEJM誌に掲載されました。
以下は
http://www.m3.com/news/THESIS/2012/02/20/11984/ 
に掲載された記事です。
 
拡張型または肥大型心筋症患者543人および対照者249人を対象に、サルコメア蛋白のタイチンをコードする遺伝子TTNの変異を次世代シーケンシングで解析。
TTN変異の頻度は拡張型心筋症患者で有意に高かった
TTNの切断型変異は拡張型心筋症の一般的な原因であり、特発性拡張型心筋症の家族症例の約25%で起こることが示唆された。
 
Herman DS et al.Truncations of Titin Causing Dilated Cardiomyopathy.N Engl J Med 2012; 366:619-628.
 

Background
Dilated cardiomyopathy and hypertrophic cardiomyopathy arise from mutations in many genes.
TTN, the gene encoding the sarcomere protein titin, has been insufficiently analyzed for cardiomyopathy mutations because of its enormous size.
拡張型心筋症と肥大型心筋症は多数の遺伝子の変異から生じる.サルコメア蛋白であるタイチンをコードする遺伝子 TTN は,巨大であるために,心筋症変異に関する解析は十分に行われていない
 
Methods
We analyzed TTN in 312 subjects with dilated cardiomyopathy, 231 subjects with hypertrophic cardiomyopathy, and 249 controls by using next-generation or dideoxy sequencing.
We evaluated deleterious variants for cosegregation in families and assessed clinical characteristics.
拡張型心筋症患者 312 例,肥大型心筋症患者 231 例,対照 249 例において,次世代シーケンシングまたはジデオキシ法を用いて TTN の塩基配列を解析した.有害な変異体については家族内の同時分離を検討し,臨床的特徴を評価した.
 
Results
We identified 72 unique mutations (25 nonsense, 23 frameshift, 23 splicing, and 1 large tandem insertion) that altered full-length titin.
Among subjects studied by means of next-generation sequencing, the frequency of TTN mutations was significantly higher among subjects with dilated cardiomyopathy (54 of 203 [27%]) than among subjects with hypertrophic cardiomyopathy (3 of 231 [1%], P=3×10−16) or controls (7 of 249 [3%], P=9×10−14).
TTN mutations cosegregated with dilated cardiomyopathy in families (combined lod score, 11.1) with high (>95%) observed penetrance after the age of 40 years. Mutations associated with dilated cardiomyopathy were overrepresented in the titin A-band but were absent from the Z-disk and M-band regions of titin (P≤0.01 for all comparisons).
Overall, the rates of cardiac outcomes were similar in subjects with and those without TTN mutations, but adverse events occurred earlier in male mutation carriers than in female carriers (P=4×10−5).
タイチンの全長を変化させる固有の変異 72 個(ナンセンス 25 個,フレームシフト 23 個,スプライシング 23 個,大きなタンデム挿入 1 個)を同定した.次世代シーケンシングにより解析した被験者では,TTN 変異の頻度は拡張型心筋症患者(203 例中 54 例 [27%])のほうが,肥大型心筋症患者(231 例中 3 例 [1%],P=3×10-16),対照(249 例中 7 例 [3%],P=9×10-14)よりも有意に高かった.TTN 変異は,40 歳超での浸透度が高い(>95%)家族において,拡張型心筋症と同時に分離された(複合ロッドスコア 11.1).拡張型心筋症に関連する変異はタイチンの A 帯に過剰発現していたが,タイチンの Z 板と M 帯の領域には存在しなかった(すべての比較において P≦0.01).全体として,心臓転帰の発生率は TTN 変異の保有者と非保有者とで同程度であったが,男性の保有者では女性の保有者と比較して早期に有害事象が発生した(P=4×10-5).
 
Conclusions
TTN truncating mutations are a common cause of dilated cardiomyopathy, occurring in approximately 25% of familial cases of idiopathic dilated cardiomyopathy and in 18% of sporadic cases.
Incorporation of sequencing approaches that detect TTN truncations into genetic testing for dilated cardiomyopathy should substantially increase test sensitivity, thereby allowing earlier diagnosis and therapeutic intervention for many patients with dilated cardiomyopathy.
Defining the functional effects of TTN truncating mutations should improve our understanding of the pathophysiology of dilated cardiomyopathy.
TTN 切断型変異は,拡張型心筋症の原因として頻度が高く,おおよそで特発性拡張型心筋症の家族症例の 25%と,散発症例の 18%に発生した.TTN 切断を検出する塩基配列決定法を拡張型心筋症の遺伝子検査に組み込むことによって,検査感度が大幅に上昇する可能性があり,それによって多くの拡張型心筋症患者でより早期の診断と治療介入が可能になるはずである.TTN 切断型変異の機能的影響を明らかにすれば,拡張型心筋症の病態生理に関する理解が向上すると考えられる.
 
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1110186

 

 

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2月4日に東京都で開かれたMedical Tribune血管病セミナー「見逃さない! 今話題の血管病」において東京医科大学第二内科・冨山博史教授が講演されました。
テーマは「血管を診る」です。
種々ある血管機能検査の適切な組み合わせについての講演で、きょうはその講演内容を紹介した記事で勉強しました。
 
血管障害を見逃さない血管機能検査の組み合わせは?
糖尿病・高血圧は血管障害を介して心血管疾患の発症・増悪に作用する。
したがって,これらの疾患では,血管障害の程度・変化を評価する指標が必要である。
そうした指標として,血管機能検査の有用性が注目されている。
 
血管機能を3つの方法で評価
冨山氏は血管機能検査として,
(1)脈波速度検査,
(2)脈波解析,
(3)血管内皮機能検査
―の3つの方法を用いている(図1)。
 
そのうち,(1)の脈波速度検査は,区域的な動脈の硬さを評価する方法である。
心臓から駆出された血流の衝撃により生じた動脈の脈動が末梢へと伝播 する波が脈波である。
この脈動を体表面の測定可能な部位2カ所で記録し,2点間の距離と脈動の時間差から脈波速度が算出される。
脈波速度は血管が硬いほど (血管弾性率),血管壁が厚いほど(血管壁厚),血管内腔が狭いほど(血管径)亢進する。従来法は頸動脈と大腿動脈に測定用端子を圧着させる頸動脈-大腿 動脈間脈波速度測定だが,最近上腕動脈-足首動脈間脈波速度測定が普及している。
(2)の脈波解析によるaugmentation index(AI)は,脈波速度と異なり動脈系全体の動脈の硬さに関連した指標である。
AIは駆出波と反射波の重なりを評価する方法である。
両波の重なり は,左室による脈動発生(左室機能),弾性動脈の脈動伝播性(大動脈弾性),末梢の圧脈波反射効率(末梢血管障害)で決定される。
動脈硬化性血管障害が進展すると,弾性動脈の硬さ亢進,末梢血管障害によりAIは増大する。
最近,AIから左室近傍血圧(中心動脈圧)を推測することが行われている。
中心動脈圧 は,AIとは異なり絶対数値の指標であることから,有用性が注目されている。
 
(3)の内皮機能検査については,日常臨床では前腕阻血によるreactive hyperemia前後での上腕動脈径の変化を超音波法により評価する血流依存性血管拡張反応(flow-mediated vasodilatation;FMD)が用いられる。
これは,阻血による前腕血流増加で上腕動脈内のshear stressが増加し,一酸化窒素(NO)が内皮細胞から放出されることによる血管拡張を評価する。
すなわち,内因性NO動態を見る指標である。
FMD測 定には多少の技術と経験を必要とするものの,血管径の変化を連続的に半自動解析する機器の登場により普遍性,再現性は向上している。


ABIでPADをスクリーニング
末梢動脈疾患(PAD)と診断された症例は予後不良を意味し,下肢の血管病変だけでなく,全身の血管病変の評価が重要である。
冨山氏はPAD症例などの診療について概説した
(1)心血管疾患の既往のない70歳以上,
(2)動脈硬化危険因子を有する50歳以上,
(3)また,PADの国際的な治療指針であるTASCⅡで は,フラミンガムリスクスコアが10~20%―の場合にPAD合併を考慮すべきとしている。
PADの典型症状は間欠性跛行である。
すなわち,歩行時の下肢 の疼痛,だるさ,痺れ,こむら返りであり,安静により10分以内に改善するのが特徴とされる。
しかし,20~50%のPAD症例は無症状である。
また,重 症例では視診で皮膚色調変化(蒼白)や潰瘍が,触診で皮膚温低下が認められる。
しかし,最も重症な所見は脈の触診である。通常下肢では鼠径部・膝窩部・後 脛骨部・足背部で脈が触知されるが,その触知の有無とその左右差から狭窄部位が推測される。
 
このような臨床背景,症状,診察所見からPADが疑われた場合,最初のスクリーニングとして足関節/上腕血圧比(ABI)が測定される。
ABI は,足関節で測定された収縮期血圧を上腕収縮期血圧(左右の高い方を用いる)で除した値で算出される。
ABIが0.9以下の場合にPADの存在が推測される(図2)。


最後に,同氏は「血管障害の隠れた症例を診察・検査で掘り起こし,適切な対応を実施することが,致死的事故発症症例の減少につながる」と強調した。
           (医学ライター・市原 巌)
出典  MT Pro 2012.2.17
版権  メディカルトリビューン社

 

<私的コメント>

特に目新しい内容ではなかったようです。

問題は、内科医としてはこういった検査で異常が見つかった時にどのような薬剤を選択すれば最善の結果が得られるか、ということです。

勿論、症例個々によって治療の選択肢は異なるはずで、われわれ臨床医に結果を是非フィードバックしていただきたいと思います。

現在,東京医科大学第二内科を事務局とし,全国21施設が参加してFMD多施設共同研究(FMD-J)が進行中ということなので、その成果が待たれます。

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Na摂取量
多くても少なくても心血管系に悪影響

尿中Na排泄量の解析で明らかに

マクマスター大学(カナダ・ハミルトン)のMartin J. O'Donnell准教授らは,尿中ナトリウム(Na)排泄量(塩分摂取量の代理マーカー)と心血管疾患(CVD)リスクの関連について解析を行い 「CVDと糖尿病の患者では,同排泄量が中間レベルより高ければ心血管イベントリスクが高く,低ければ心血管死亡と入院を要するうっ血性心不全(CHF)リスクが高い」とJAMA(2011; 306: 2229-2238)に発表した。
同准教授らはまた,尿中カリウム(K)排泄量が多い場合には脳卒中リスクが低いとしている。

Naの至適摂取量は依然不明
論文の背景情報によると,至適なNa1日摂取量は依然不明で,Na摂取量と心血管イベントの関連を検討した前向きコホート試験の結果には一貫性がない
至適なNa1日摂取量を明らかにすることは,特にCVD患者で重要で,同患者ではそのような研究がこれまで十分に行われていなかった。
CVD患者は,同摂取量が多い場合と少ない場合に心血管系が特に脆弱で,Na摂取量を制限されることが多い。
また,Kは Na摂取量とCVDの関連に影響を及ぼすことが示されているが,やはり至適な1日摂取量は確立されていない。
 
O'Donnell准教授らは今回,NaとKの排泄量と,心血管イベントや死亡との関連性について検討した。ONTARGET試験と TRANSCEND試験(募集開始2001年11月〜追跡終了2008年3月)に登録された2コホート(2万8,880例)から得られた朝の空腹時の尿試料データから,NaとKの24時間尿中排泄量を推定。
心血管死亡,心筋梗塞,脳卒中,入院を要するCHFの複合アウトカムと,NaとKの尿中レベルとの関連を多変量モデルにより解析した。
 
Na1日排泄量4〜5.99gより多くても少なくてもリスク増加
ベースライン時におけるNaとKの推定24時間尿中排泄量の平均値は,それぞれ4.77gと2.19gだった。
追跡期間56カ月(中央値)の時点で,複合アウトカムは4,729例(16.4%)に発生していた。
多変量解析の結果,ベースライン時のNa1日排泄量が4〜5.99gの群(1万4,156例,複合アウトカム発現率15.2%)を基準として,ベースライン時 のNa排泄量が多い群(7〜8g群18.4%,8g超群24.1%)と少ない群(2〜2.99g群18.2%,2g未満群20.2%)では,複合アウトカ ムの発生リスクが高いことが明らかになった。
 
高Na排泄群では,基準群と比べて心血管死亡(7〜8g群9.7%,8g超群11.2%),心筋梗塞(8g超群6.8%),脳卒中(8g 超群6.6%),入院を要するCHF(8g超群6.5%)リスクが高かった。
低Na排泄群では,同じく心血管死亡(2〜2.99g群8.6%,2g未満群 10.6%),入院を要するCHF(2〜2.99g群5.2%)リスクが高かった。
また,Kの1日排泄量が1.5g以上の場合には,1.5g未満と比べて 脳卒中リスクが低かった。

 

O'Donnell准教授らは「以前の前向きコホート研究では,Na摂取量と心血管死亡について,正の相関,無相関,逆相関のいずれも報告されていた」と指摘し,こうした不一致は「Na摂取量の検討範囲の差,対象集団や測定方法の違いと非線形関係を考慮しなかったことなどが原因である可能性が高い」と考察している。

さらに「Na排泄量が中等度の群と比べて,高い群では心血管イベントの発現率が高く,低い群では心血管死亡と入院を要するCHFの発現率が高かった。これらの結果は,ランダム化比較試験を実施し,安全なNa摂取量の範囲を確立することが急務であることを意味している。また,尿中K排泄量が多い場合,脳卒中リスクが低いことが明らかになった。Kを標的とした介入はさらに検討する価値がある」と述べている。
 
減塩による自然な食事への移行が重要
テュレーン大学(ルイジアナ州ニューオーリンズ)公衆衛生熱帯医学部のPaul K. Whelton博士は,同誌の付随論評(2011; 306: 2262-2264)で,減塩の重要性について強調し,「米国のほとんどの成人は生理的に必要とされる量をはるかに超える量の塩分を摂取し,その過剰塩分のほとんどは,加工食品に添加される塩分である。食品に加える塩分の漸減はライフスタイル是正の1つの方法となり,大きな成功につながる可能性が高い。塩分を減らした自然な食事への移行により,食事によって摂取できるKの絶対量も同時に増加し,Na/K比も改善される」と説明。
さらに「減塩による健康上の便益は科学的に裏付けられており,一般人口が対象の場合,食事によるNa摂取量の減量という目標からの逸脱は,これまでに得られているエビデンスからは支持されない」とコメントしている。
出典  Medical Tribune 2012.2.16
版権  メディカルトリビューン社

 
<自遊時間>
きょう、天皇陛下の2枝ACバイパス術が行われます。
そこで循環器医なら誰でも思う素朴な疑問あり。
何故、ステントではなくACバイパスが選択されたのか。

LADとLCXの狭窄病変で、新聞報道では高度狭窄ではなさそう。
狭窄部位がlongなのか、主幹部にかかっている病変なのか、IVUSや血管内視鏡が行われて不安定プラークでも見つかったのか。
今後の同様のケースの患者への説明にも関係することなので是非詳細を知りたいものですが、きっと公表されないだろういし。

公表されない限り「同様のケース」という患者はありえない。
ちょっとイライラ。
先生方はいかがですか。
 
<AM7:50 追加>
陛下の手術のことが気掛かりだったので少しサイトで調べてみました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120212-00000521-san-soci
のサイトで永井良三教授(おそらく主治医)のコメント(病状説明)が比較的詳しく知ることが出来ました。
他のサイトと合わせた情報は以下のごとくです。
■バイパス手術の対象となる2カ所のうち、「左回旋枝」は、75%から90%まで狭窄が進行
■一般的に、冠動脈の血管の狭窄には、(1)投薬治療(2)カテーテルと呼ばれる細い管を使い、内部から血管を広げる(ステント)(3)狭窄部分の回り道を 作るバイパス手術-の選択肢がある。

このうち、体への負担が比較的小さい(2)については、「狭窄の場所や形を勘案すると、実施に向いていない」と早期に 判断されており、昨年から実質的には(1)か(3)の選択肢が検討されていた。
■医師団は「薬での治療をお続けになることも不可能ではなかった」と言っている。
■22年9月には、神奈川県の葉山御用邸で静養中に近くの海で小舟をこいだ後、胸部の不調を訴え、海岸沿いでしゃがみこまれたこともあった。
■左冠動脈の左回旋枝の狭いところの場所、形を総合すると、そこは手をつけないほうがいいというのが専門医の判断になりました。

 
いずれにしろ手術の成功と一日も早い御快癒をお祈り申し上げます。

 

 

マクマスター大学(カナダ・ハミルトン)のMartin J. O'Donnell准教授らは,尿中ナトリウム(Na)排泄量(塩分摂取量の代理マーカー)と心血管疾患(CVD)リスクの関連について解析を行い 「CVDと糖尿病の患者では,同排泄量が中間レベルより高ければ心血管イベントリスクが高く,低ければ心血管死亡と入院を要するうっ血性心不全(CHF)リスクが高い」とJAMA(2011; 306: 2229-2238)に発表した。
同准教授らはまた,尿中カリウム(K)排泄量が多い場合には脳卒中リスクが低いとしている。

Naの至適摂取量は依然不明
論文の背景情報によると,至適なNa1日摂取量は依然不明で,Na摂取量と心血管イベントの関連を検討した前向きコホート試験の結果には一貫性がない
至適なNa1日摂取量を明らかにすることは,特にCVD患者で重要で,同患者ではそのような研究がこれまで十分に行われていなかった。
CVD患者は,同摂取量が多い場合と少ない場合に心血管系が特に脆弱で,Na摂取量を制限されることが多い。
また,Kは Na摂取量とCVDの関連に影響を及ぼすことが示されているが,やはり至適な1日摂取量は確立されていない。
 
O'Donnell准教授らは今回,NaとKの排泄量と,心血管イベントや死亡との関連性について検討した。ONTARGET試験と TRANSCEND試験(募集開始2001年11月〜追跡終了2008年3月)に登録された2コホート(2万8,880例)から得られた朝の空腹時の尿試料データから,NaとKの24時間尿中排泄量を推定。
心血管死亡,心筋梗塞,脳卒中,入院を要するCHFの複合アウトカムと,NaとKの尿中レベルとの関連を多変量モデルにより解析した。
 
Na1日排泄量4〜5.99gより多くても少なくてもリスク増加
ベースライン時におけるNaとKの推定24時間尿中排泄量の平均値は,それぞれ4.77gと2.19gだった。
追跡期間56カ月(中央値)の時点で,複合アウトカムは4,729例(16.4%)に発生していた。
多変量解析の結果,ベースライン時のNa1日排泄量が4〜5.99gの群(1万4,156例,複合アウトカム発現率15.2%)を基準として,ベースライン時 のNa排泄量が多い群(7〜8g群18.4%,8g超群24.1%)と少ない群(2〜2.99g群18.2%,2g未満群20.2%)では,複合アウトカ ムの発生リスクが高いことが明らかになった。
 
高Na排泄群では,基準群と比べて心血管死亡(7〜8g群9.7%,8g超群11.2%),心筋梗塞(8g超群6.8%),脳卒中(8g 超群6.6%),入院を要するCHF(8g超群6.5%)リスクが高かった。
低Na排泄群では,同じく心血管死亡(2〜2.99g群8.6%,2g未満群 10.6%),入院を要するCHF(2〜2.99g群5.2%)リスクが高かった。
また,Kの1日排泄量が1.5g以上の場合には,1.5g未満と比べて 脳卒中リスクが低かった。

 

O'Donnell准教授らは「以前の前向きコホート研究では,Na摂取量と心血管死亡について,正の相関,無相関,逆相関のいずれも報告されていた」と指摘し,こうした不一致は「Na摂取量の検討範囲の差,対象集団や測定方法の違いと非線形関係を考慮しなかったことなどが原因である可能性が高い」と考察している。

さらに「Na排泄量が中等度の群と比べて,高い群では心血管イベントの発現率が高く,低い群では心血管死亡と入院を要するCHFの発現率が高かった。これらの結果は,ランダム化比較試験を実施し,安全なNa摂取量の範囲を確立することが急務であることを意味している。また,尿中K排泄量が多い場合,脳卒中リスクが低いことが明らかになった。Kを標的とした介入はさらに検討する価値がある」と述べている。
 
減塩による自然な食事への移行が重要
テュレーン大学(ルイジアナ州ニューオーリンズ)公衆衛生熱帯医学部のPaul K. Whelton博士は,同誌の付随論評(2011; 306: 2262-2264)で,減塩の重要性について強調し,「米国のほとんどの成人は生理的に必要とされる量をはるかに超える量の塩分を摂取し,その過剰塩分のほとんどは,加工食品に添加される塩分である。食品に加える塩分の漸減はライフスタイル是正の1つの方法となり,大きな成功につながる可能性が高い。塩分を減らした自然な食事への移行により,食事によって摂取できるKの絶対量も同時に増加し,Na/K比も改善される」と説明。
さらに「減塩による健康上の便益は科学的に裏付けられており,一般人口が対象の場合,食事によるNa摂取量の減量という目標からの逸脱は,これまでに得られているエビデンスからは支持されない」とコメントしている。
出典  Medical Tribune 2012.2.16
版権  メディカルトリビューン社

 
<自遊時間>
きょう、天皇陛下の2枝ACバイパス術が行われます。
そこで循環器医なら誰でも思う素朴な疑問あり。
何故、ステントではなくACバイパスが選択されたのか。

LADとLCXの狭窄病変で、新聞報道では高度狭窄ではなさそう。
狭窄部位がlongなのか、主幹部にかかっている病変なのか、IVUSや血管内視鏡が行われて不安定プラークでも見つかったのか。
今後の同様のケースの患者への説明にも関係することなので是非詳細を知りたいものですが、きっと公表されないだろういし。

公表されない限り「同様のケース」という患者はありえない。
ちょっとイライラ。
先生方はいかがですか。
 
<AM7:50 追加>
陛下の手術のことが気掛かりだったので少しサイトで調べてみました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120212-00000521-san-soci
のサイトで永井良三教授(おそらく主治医)のコメント(病状説明)が比較的詳しく知ることが出来ました。
他のサイトと合わせた情報は以下のごとくです。
■バイパス手術の対象となる2カ所のうち、「左回旋枝」は、75%から90%まで狭窄が進行
■一般的に、冠動脈の血管の狭窄には、(1)投薬治療(2)カテーテルと呼ばれる細い管を使い、内部から血管を広げる(ステント)(3)狭窄部分の回り道を 作るバイパス手術-の選択肢がある。

このうち、体への負担が比較的小さい(2)については、「狭窄の場所や形を勘案すると、実施に向いていない」と早期に 判断されており、昨年から実質的には(1)か(3)の選択肢が検討されていた。
■医師団は「薬での治療をお続けになることも不可能ではなかった」と言っている。
■22年9月には、神奈川県の葉山御用邸で静養中に近くの海で小舟をこいだ後、胸部の不調を訴え、海岸沿いでしゃがみこまれたこともあった。
■左冠動脈の左回旋枝の狭いところの場所、形を総合すると、そこは手をつけないほうがいいというのが専門医の判断になりました。

 
いずれにしろ手術の成功と一日も早い御快癒をお祈り申し上げます。

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CABGとPCIの選択に関する推奨事項を提示
ACCF/AHAがCABGガイドライン2011を発表
米国心臓病学会財団(ACCF)と米国心臓協会(AHA)は,冠動脈バイパス術(CABG)施行時の患者管理に関するガイドラインを改訂し,Journal of the American College of Cardiology(2011; オンライン版)に発表した。
この2011年版ガイドラインでは,冠動脈血行再建術におけるCABGと経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の選択に関する推奨事項が盛り込まれている。
 
2つのガイドライン委員会が共同執筆
今回のガイドラインの作成に当たっては,CABGガイドラインとPCIガイドラインの作成委員会が協力体制を組み,合同で冠動脈疾患(CAD)患者の血行再建術に用いられるCABGとPCIの治療選択について検討している。

2つのガイドライン作成委員会が,共同で同じ項目の執筆に当たるのは初めてである。
2011年版CABGガイドラインの発表と同時期に,ACCFとAHA,米国心血管造影インターベンション学会(SCAI)は2011年版PCIガイドラインを発表しているが,このPCIガイドラインにもCABGとPCIの治療選択に関する推奨事項が盛り込まれている。
 
CABGガイドライン作成委員会のL. David Hillis委員長によると,2011年版CABGガイドラインは「どのような患者が血行再建術を受けるのか」,「CABGとPCIのどちらが適している のか」という臨床医の疑問に答えるもので,2004年にガイドラインが発表されて以来,PCI対CABGという議論が熱を帯びていることから「医師の関心 が高いと考えた」と述べている。
同委員長は,近年,PCIの施行例が増えているが,PCIかCABGかという選択は年々複雑さを増していると指摘。「過去10年間に,PCIの技術が向上してきたことから,10~15年前であれば適応ではなかった症例に対してもPCIが行われるようになってきた。PCIの技術が成熟するに従って処置も向上し,術者が経験を積むのに従って,手技も向上している」と述べている。
 
例えば,左冠動脈主幹部病変を有するCADに対する標準治療は,10年前であればCABGだったが,冠動脈の解剖学的所見によってはPCIが可能で,現在ではPCIの施行例が増加しているという。
 
今回のガイドラインでは,左冠動脈主幹部病変を有する安定CAD患者で,PCIの合併症リスクが低い場合や手術による有害アウトカムリスクが上昇している場合には,PCIがCABGの代替術式として推奨されると明記された。
一方,3枝病変を有する大部分の患者に対しては,薬物療法あるいはPCIと比べて,CABGの方が優れていることが明記されている。
 

インターベンション専門医と心臓外科医の連携を推奨
今回のガイドラインでは,術式の選択に際して“ハートチーム”によるアプローチを推奨している。
このアプローチは,インターベンション専門医や心臓外科医から成るハートチームが,患者や冠動脈の状態を精査し,それぞれの治療選択肢の良い面と悪い面を評価して,患者にその情報を伝え,患者の意思決定を支援するというものである。
CABGガイドライン作成委員会のPeter K. Smith副委員長は「外科医と心臓専門医が協働することで,最適な推奨を行えるというハートチームによるアプローチの有効性は,ランダム化比較試験で証 明されており,今回のガイドラインでは,このようなアプローチを診療の場に導入することを支持している」とコメントしている。
 
糖尿病合併患者に対するCABGの適応にも言及
今回のガイドラインではCABGかPCIかという術式選択のほかに,オフポンプCABGか,従来のオンポンプCABGかといったバイパスグラフト導管の適切な選択や,糖尿病合併例のような特定の患者に対するCABGの適応などについても盛り込まれている。
そのほか,改訂ガイドラインでは周術期管理についても言及しており,術前術後の抗血小板療法や心臓リハビリテーション,禁煙の実行に関する推奨も明記されている。
今回のガイドラインは,過去10年間に発表された論文を対象に行われた文献レビューに基づいて改訂されている。
なお,このガイドラインではACCFとAHAが新たに導入した「委員長を含む作成委員のうち50%超が関連産業と関係がないこと」とする方針に基づいて作成された。
 
出典 Medical Tribune  2012.2.9
版権 メディカル・トリビューン社


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PCI後のAMI

戯れ言たれる侏儒 / 2012.02.16 00:31 / 推薦数 : 0
経皮冠動脈インターベンション治療後の急性心筋梗塞:退院時心拍数と予後
経皮冠動脈インターベンション(PCI)を受け、薬物療法を施されているST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者において、退院時心拍数が死亡の重大な予測因子であることが明らかにされた。
オランダ・ライデン大学メディカルセンター・M. Louisa Antoni氏らが、同患者1,453例を前向きに4年間追跡し退院時心拍数と死亡との関連を調べた結果で、梗塞サイズや心不全併存という因子で補正後も、退院時心拍数と死亡との関連は強固なままであることが示された。
冠動脈疾患患者における心拍数の予後予測因子としての価値は、主として左室機能障害患者で評価されており、安静時心拍数70bpm以上は2年間の長期転帰において強力な独立予測因子であることが明らかにされている。
一方で、STEMI患者については、現在治療の主流となっているプライマリPCIを受けた患者集団を対象に心拍数と転帰との関連について1年以上追跡評価した報告はこれまでなかった。
Antoni氏らは、プライマリPCIを受け至適薬物療法を受けているSTEMI患者1,453例を対象に、退院前に安静時心拍数を測定し、全死因死亡および心血管死亡との関連を評価する4年間にわたる前向き追跡調査を行った。
 
おもな結果は以下のとおり。
●追跡期間の中央値は、40ヵ月であった。
●同期間中、全死亡は83例(6%)で、そのうち52例(4%)が心血管疾患死であった。
●梗塞サイズがより大きい、心不全併存という因子で補正後も、退院時心拍数は死亡の強力な予測因子であった。
●心拍数≧70bpm.の患者の心血管死亡リスクは、<70bpmであった患者と比較して、追跡1年時点(ハザード比:2.44)および4年時点(同:2.11)ともに2倍超であった。
●退院時心拍数が5 bpm.増すごとに、心血管死亡リスクは、追跡1年時点では29%上昇を、4年時点では24%上昇を示した。

[監修者のコメント]
本研究は、冠動脈インターベンションを施行したST上昇型急性心筋梗塞患者の退院時の心拍数がその後の独立した心血管死亡リスクとなることを示した。
臨床的メッセージが明確な研究である。
現在のスタンダード治療が行われた急性心筋梗塞患者の2次予防においても、心拍数を70 bpm未満にコントロールしとくことが極めて重要であることを示している。
心 血管イベントの既往の有無に関わらず、心拍数の増加は心血管リスクの増大につながる。
一方、これまでの研究では、β遮断薬により心拍数を抑制することにより、予後がどの程度改善するかは、合併する疾患と年齢による。 
心不全や冠動脈疾患など心疾患を有する患者や若年者では利益が大きいが、合併症のない高血 圧患者や高齢者では他の降圧薬に比較して心血管イベントの抑制効果に劣る。
心拍数のみを低下させるイバブラジンを用いたBEAUTIFUL試験では、左室機能低下を伴う冠動脈疾患患者では、70 bpm以上の心拍数増加が2年間の長期予後の独立したリスク因子であった。
我が国においても、急性心筋梗塞患者に対するβ遮断薬の早期からの使用が浸透してきているが、まだまだ用量が十分でないことが多い。
冠動脈疾患患者においては、心拍数70 bpm未満を目指した早期からのβ遮断薬使用により、予後が改善することが期待される。
([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)

出典  Care Net.com 2012.2.13
版権  ケアネット

 
<自遊時間>
陛下が数日後の日曜日に心臓手術(off pump CABG)をされることになりました。
諸報道では「症状が(出)ない狭心症」 とのこと。
思わず「狭心症」とは何ぞやと考えてしまいました。
この言葉にはやはり抵抗があります。
「無痛性心筋虚血(silent ischemia)」「冠動脈疾患」「冠動脈狭窄症」 「虚血性心疾患」というべきではないでしょうか。
果たして東大病院ではどのように発表したのでしょうか。
ちょっと気にかかるところです。
手術の(適応も含めて)成否が一番気にかかるのは勿論ですが。

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急性心筋梗塞患者の右脚ブロック:そのリスクは左脚ブロックと同じか?
右脚ブロックを伴う急性心筋梗塞患者(AMI)は、その半数以上で梗塞責任動脈の完全閉塞が認められ、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施率も左脚ブロックを伴うAMI患者より高率であることが明らかにされた。
チェコ共和国・カレル大学のPetr Widimsky氏らが、AMI患者約7,000例について調べた結果、報告したもので、「欧州心臓病学会(ESC)によるガイドラインをはじめ、米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)において、現在は、右脚ブロックを伴うAMIは再灌流療法の適応症例としてリスト化されていないが、今後は、 右脚ブロックを伴う場合も適応とすべきであろう」と結論している。


左脚ブロックの4割弱、右脚ブロックの5割強が梗塞責任動脈のTIMI血流分類0
研究グループは、2006~2008年にかけて8ヵ所の医療機関に入院したAMI患者6,742例について後ろ向き解析を行った。
被験者の基線特性、心電図パターン、冠動脈血管造影、心エコーのデータと、再灌流療法の実施、入院アウトカムとの関連を調べ、右脚ブロックを伴う場合と左脚ブロックを伴う場合とを比較した。

 

おもな結果は以下のとおり。
●右脚ブロックが認められたのは、被験者の6.3%であった。
そのうち、右脚ブロックのみは2.8%、右脚ブロックと左脚前枝ブロックが認められたのは3.2%、右脚ブロックと左脚後枝ブロックが認められたのは0.3%であった。
 
●梗塞責任動脈のTIMI血流分類が0(完全閉塞)であったのは、左脚ブロックが認められた患者では39.4%だったのに対し、右脚ブロックの患者では51.7%と有意に高率であった(p=0.023)。
 
●プライマリPCIの実施率は、左脚ブロックの68.3%に対し、右脚ブロックでは80.1%と有意に高率であった(p<0.001)。
 
●院内死亡率は、左脚ブロックで13.1%、右脚ブロックで14.3%と同等であった(p=0.661)。
 
●PCI実施率は、新規発症または新規と考えられる右脚ブロック患者で最も高く84.8%であった。
次いで、新規発症または新規と考えられる左脚ブロック患者が73.0%、陳旧性右脚ブロック患者で66.0%、陳旧性左脚ブロック患者で62.3%であった。
 
●院内死亡率も、新規発症または新規と考えられる右脚ブロック患者で最も高く18.8%であった。
次いで、新規発症または新規と考えられる左脚ブロック患者が13.2%、陳旧性左脚ブロック患者で10.1%、陳旧性右脚ブロック患者で6.4%であった。
 
●被験者のうち左冠動脈主幹部急性閉塞は35例で、そのうち26%に、入院時心電図で右脚ブロック(ほとんどが左脚前枝ブロックを伴う)が認められた。
 
監修者(自治医科大学 循環器科・苅尾七臣教授)のコメント
本研究により急性心筋梗塞患者において、右脚ブロックを伴う例では責任冠動脈の完全閉塞が多く、死亡リスクが最も高いことが明らかにされた。
これまでのガイドラインでは、左脚ブロックの合併例は、積極的な早期血行再建療法の適応とされてきたが、右脚ブロックについては言及されていなかった。
院内死亡率も新規の右脚ブロック患者で最も高く、新規左脚ブロック患者よりも約1.5倍である。
また、発現時期が極めて重要で、陳旧性右脚ブロックに比較して、新規の右脚ブロックでは院内死亡は約3倍となっている。 
右脚ブロック合併例では完全閉塞例が多かった。 
また、左冠動脈主幹部による心筋梗塞の1/4にみられた右脚ブロックはそのほとんどが左脚前枝ブロックを伴っていた。 
つまり、右脚ブロックや左脚ブロックの新規発生は急性心筋梗塞による虚血範囲が広範囲に及んでいることを意味する。
したがって、早期インターベンションが必要であり、実際に再灌流の成功後、ブロックが消失することが多い。
本研究より、左脚ブロックに加えて、新規発症の右脚ブロックを合併する急性冠症候群では、より積極的に早期からの血行再建(注;原文では”結構再建”)が必要であることが伺える。
出典  Care Net.com 2012.2.13
版権  ケアネット 
 

 

 

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第25回日本冠疾患学会(大阪)で記事で勉強しました。
冠血行再建術ガイドラインの作成委員である帝京大学循環器内科の一色高明教授と日本医科大学心臓血管外科の落雅美教授の講演およびシンポジウム後のディスカッション内容を紹介した記事で勉強しました。
 
冠血行再建術ガイドライン初の改訂が来月発表に
今年3月開催の第76回日本循環器学会で「冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン〔待機的インターベンションにおける経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の適応〕」の改訂が発表される見込みだ。
数年ごとに改訂が行われてきた欧米とは異なり,わが国では2000年の発表以降12年ぶりの初改訂となる。
大阪市で開かれた第25回日本冠疾患学会では,外科内科合同シンポジウム「ガイドラインに基づく冠血行再建治療」が企画され,改訂作業のプロセスや課題などが整理された。
 
12年ぶりの初改訂
今回の改訂に当たっては冠動脈血行再建術協議会が結成され,2010年4月から11年11月まで,外科系6人,内科系9人の委員が12回にわたって協議を重ねた。
外科・内科双方の治療の進歩やエビデンスの変遷を背景に,両者の見解には相違が生まれ,議論は白熱したものとなった。
協議会のメンバーである一色教授や落教授は,内科・外科それぞれの意見の取りまとめを行う立場で作成に当たった。
内科側の見解
ガイドラインがPCI適応を規定している実態
一色教授はまず,ガイドラインの位置付けを論じた著書から「主治医と患者が治療方法を決める際の仲介資料のようなもの」,「既存エビデンスの集合体であり,臨床場面における意思決定に影響する要因の1つ」などの見解を紹介し,これに賛意を示したが,現実的にはガイドラインが保険診療におけるPCIの適応を規定していると問題提起した。
実際,2008年の診療報酬改訂の際には,1998~99年作成のガイドラインに基づいて待機的PCIの手技料 が,2007年の改訂版を根拠に急性冠症候群(ACS)の手技料が算定された。
 
同教授らは医師の裁量権が認められない行政対応に改善を求めてきたが,ガイドラインが保険診療の縛りとなっているのが実態だ。
欧米のように2~3年置きに改訂がなされなければ,その時々の標準療法と保険診療上の適応が乖離していくばかりであると指摘した。
 
PCI実施の透明性確保が課題
日本の冠血行再建術については,「PCIが行われ過ぎている」という批判があるのも事実で,薬剤溶出ステント(DES)が登場してからもPCIとCABGの割合が4対1程度である米国に対してわが国では約10対1となっている。
一色教授は,日本でPCIが多い理由を次のように説明した。
合理的な理由としては,多枝病変を有する可能性の高いACS患者に段階的にPCIを実施するstaged PCIが挙げられる。
さらに,一部の施設では必要性の有無によらず多枝病変に対してstaged PCIが実施されたり,無症状の末梢病変や側枝病変といった適応外症例に対してPCIが実施されている例がある。
その背景には,保険診療上,多枝病変に対するPCIの診療報酬加算が認められておらず,PCI実施件数が多いほど収入が増加するといった,ガイドラインとは別の要因があるという。
同教授はこのような状況を踏まえ,PCI実施に当たっての透明性の確保を今後の課題に挙げた。
その上で「ガイドラインの存在は,自らが行う治療の立ち位 置を明確にする。それに沿わない診療行為を選択する場合には,他の医療スタッフにも妥当性を説明する必要が生じる。これが適正な医療につながる」と述べた。さらに,内科と外科の連携強化の重要性が盛り込まれた欧米のガイドラインと同様に,日本でもガイドラインがハートチームを象徴するものになると期待を 寄せた。
外科側の見解
CABGと同様にPCIの全国調査を
外科側を代表して発表した落教授は,外科側が行っている全国レベルの全件調査を内科側も実施し,透明性を担保した上でそれぞれの適応を検討していく姿勢が重要であると強調した。
わが国の冠血行再建術をめぐる比較データとしては,ランダム化比較試験(RCT)は皆無であり,前向き観察研究のCREDO-KYOTOが近年報告されているのみだ。
しかし,CABGについては学会主導の全例調査で95%超の回収率で手術成績が集計されており,一部のハイボリューム施設だけでなく,全国 の平均的な成績を概観することができる。
一方,PCIの国内成績については,一部の専門施設の優れた成績が公表されるのみで網羅的な調査が行われていな い。
これが,外科側が懸念を抱く根拠となっているという。
約10年前の実態調査(厚生科学研究)では,年間施行件数が経皮的冠動脈形成術(PTCA)10万9,788件(1,086施設),CABG 1万7,445件(582施設)と報告され,PTCAをめぐっては「左室駆出率が不明」,「症状のみを根拠として客観的な根拠がない」といった問題点が挙げられていた。
同教授は,この調査以降,内科系PCIの全国調査が行われておらず,10年前に指摘されていた問題が現在も放置されているとした。
近年,日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)が中心となり全国調査の基盤を築きつつあるが,学会への参加もレジストリー登録についても強制力がない。
そのため,ガイドラインが作成されても,一部施設の不透明なPCI施行が放置される懸念が残るという。
 
ハートチームの推進を
特に問題視されているのが,手技の成否が生命にもかかわる非保護左冠動脈主幹部(LMT)病変の扱いだ。
欧米のガイドライン改訂の根拠となったRCTの SYNTAXでは,LMTを含む解剖学的高リスク病変(SYNTAXスコア33以上)における冠血行再建術を含む主要心血管イベント発生率(MACCE) が,3年でCABG群19.5%,PCI群34.1%とPCI群で有意に高く,追跡が長期になるにつれて差が広がってきている。
この結果から,落教授は「特に非保護LMT病変に対するPCI施行は慎重に行う必要がある」と警鐘を鳴らす。
米国では,LMT病変へのPCI推奨レベル が2009年に「有益でない,根拠がない」とするⅢから,「有用とする根拠が乏しい,意見が少ない」のⅡbへ引き上げられたものの,「多枝病変でない症例 に限定されるべき」,「外科医のバックアップが不可欠」などの詳細なただし書きが添えられている。
同教授は「日本のガイドライン改訂においても多枝病変や非保護LMTの扱いが焦点になったが,最も重要なのは欧米で重視されてきている外科・内科のハートチームによる協力体制を日本でも推進していくことだ」と締めくくった。
 
全件調査の重要性が強調される
講演後のディスカッションでは,ガイドライン改訂を踏まえた問題点などが討議された。
その中で,京都大学大学院心臓血管外科探索医療センターの丸 井晃准教授は,日本で唯一の比較レジストリーの解析に当たった経験を踏まえ,術件数や術成績の施設間格差が厳然と存在するため,「ガイドラインという1つ の枠組みで治療選択を決めるのは困難であると実感した」と述べた。
榊原記念病院循環器内科の浅野竜太部長は,外科側の優れた長期成績を造影検査などで目の当たりにする経験を積み重ねてきたことが,現在の治療選択 に大きく影響していると説明した。
一方,東京医科歯科大学心臓血管外科の田村清氏は,内科でステントを10本以上留置した後に外科に依頼が来る症例も存在する現状を指摘。ガイドラインにも掲げられることが予想される「ハートチームによる患者中心の良識的な治療が望まれる」とした。
PCI施行困難例にも優れたPCI成績を残している大阪大学大学院先進心血管治療学講座の角辻暁准教授は「ガイドラインを評価し,改訂を行う作業 を順次進めていくことが重要」と指摘した。
この点については一色教授も同意。現在,日本循環器学会では各ガイドラインについて5年ごとの改訂を進めているが,進化の速い領域であり,また内科と外科で協議を円滑に進めるためにも,数年ごとの更新が望ましいとした。
さらに,同教授は「ガイドラインを検証し,書き換える作業は重要であるが,基本的には遵守していくものである」と確認した。
落教授が講演の中で要望したPCIの全国・全件調査については,一色教授が専門医や研修施設の認定制度にリンクさせたレジストリー体制の構築を進めていると説明。
それでもなお,非学会員については野放しの状況になることから,内科側シンポジストからも,診療報酬とリンクさせるなどの強制力を持った 全件登録の実施を推す意見が挙がった。
出典 Medical Tribune  2012.2.9
版権 メディカル・トリビューン社

 

<きょうの一曲> Miles Davis Quartet - My Funny Valentine
http://www.youtube.com/watch?v=HS2BUr83O-8

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スタチンのpleiotropic作用はどの程度の臨床的インパクトがあり,どのようにして評価されるのか。
スタチンの中のアトルバスタチンに焦点を当てAHA開催中のディスカッション記事で勉強しました。
 (発言内容をピックアップ)

 
司会
平山 篤志
氏 日本大学内科学系循環器内科学分野教授
出席者(発言順)
David D. Waters
氏 Professor of Medicine, San  Francisco General Hospital University of California
代田 浩之
氏 順天堂大学循環器内科教授
石井 秀樹
氏 名古屋大学大学院循環器内科学
 
心血管系イベント抑制およびプラーク退縮を目指した脂質管理の重要性
スタチンはプラーク容積を減少させ心血管系イベントの発症を抑制
(平山)日本国内においても,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した急性冠症候群(ACS)患者70例を,アトルバスタチン投与群または通常療法群に無作為に割り付け,6カ月間追跡したESTABLISHや,ACS患者307例を対象にプラーク容積の変化率を検討したJAPAN-ACSなどにおいて,ストロングスタチンの投与による冠動脈プラーク容積の退縮に及ぼす影響が検討されています。

 <私的コメント>
JAPAN-ACSはピタバスタチンにおける検討。
 
(平山)最近発表されたPROSPECTでは,心血管系イベントの原因となるプラークは,薄い線維性被膜(TCFA)を伴い,血管腔が狭小化した,大型のプラークであることが示されています(図1)。
 
(平山)スタチンによりプラーク容積を減少させれば,心血管系イベントの発症率は低下するのでしょうか。
言い換えれば,スタチンによるプラーク容積の減少は,そのまま心血管系イベントの発症率の低下につながるといえるのでしょうか。
 この点については,これで得られている事実を総合すると,その可能性は十分考えられるものの,直接的に検証した試験がないことから,今後さらなる検証をしていく必要があると思います。
(平山)スタチンに関するもう1つの疑問は,スタチンによるプラーク容積の減少は,LDL-C低下だけによってもたらされるものかどうかということです。スタチン にはLDL-C低下とは独立したいわゆるpleiotropic作用があり,直接的にプラークに作用して容積を減少させることが指摘されています。

(平山)ロスバスタチンとアトルバスタチンという2つのストロングスタチンの最大用量を用い,冠動脈プラーク容積への減少効果を比較するSATURNが実施され,その成績が今回のAHAで報告されました。
 
アトルバスタチンによるプラーク容積の減少に抗炎症作用が関与
(Waters)MIRACLではACSによる入院患者約3,000例を対象に,アトルバスタチンの高用量を用いた積極的脂質低下療法群とプラセボ群に無作為割り付けし,16週間追跡して虚血性イベント再発の抑制作用を検討しています。
ここで興味深かったのは,試験開始時および治療中のLDL-Cレベルはどちらも,転帰の有意な予測因子となっていなかったことです。
しかし,C反応性蛋白(CRP)が関与し,抗炎症作用が影響した可能性が示唆されています。
さらに,他のスタチンとアトルバスタチンで相対リスクおよび両群間の差がいつから認められるかも検討されており,その他の報告も含め考えると,アトルバスタチンは効果発現が速く,LDL-C低下以外の作用が関与していることが考えられます。
 
アトルバスタチンについてのさまざまなエビデンス
(Waters)安定冠動脈疾患患者を対象としたTNTでは,アトルバスタチンの高用量を用いた積極的脂質低下療法と通常用量を用いた脂質低下療法における脳心血管イベント再発に与える影響を検討しています。
TNTの結果を治療中のLDL-Cレベルで5群に分けて層別化し,LDL-Cレベ ルと主要心血管イベント(MACE)発症の抑制作用も解析しており,アトルバスタチンによる治療では,LDL-Cは低ければ低いほどよいといえるのではないかと感じています。
また,eGFRはさまざまな患者集団において強力な予後予測因子になることが知られていますが,同様にTNTでは,eGFRへのアトルバスタチンの影響についても検討されており,eGFRを改善する可能性が示されています。
さらに,アトルバスタチン投与中のeGFRの変動により腎機能低下群,不変群,改善群に分けて,心血管イベント発症との関係についても検討されています。
アトルバスタチンの長期治療によりeGFRの改善が見られた患者群では,アウトカムの改善にもつながることが期待されています。
 
高まるアトルバスタチンの臨床的意義
(代田)わたしたちは腹部大動脈瘤の手術予定患者20例を対象に,アトルバスタチン20mg/日群と通常治療群に無作為割り付けして4週間治療後,腹部大動脈瘤置 換術を施行,組織における炎症への効果を比較しています。
その結果,アトルバスタチン群では炎症性細胞やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現が有意に抑制されていました(図2)。
 
4週間という短い期間でアトルバスタチンが組織での抗炎症作用を示したということは,直接的な pleiotropic作用の部分が寄与しているのではないかと考えています。
こうした抗炎症作用は,より炎症反応の強いACS患者において,さらなる有 用性が期待できるのではないかと考えています。
事実,わたしたちが実施したExtended-ESTABLISHのLDL-C別サブ解析でも,ACS患者 におけるアトルバスタチン20mgのイベント抑制作用がより早期から見られています(図3)。

血管内視鏡により明らかとなったアトルバスタチンのプラーク安定化作用
(平山)わたしたちはIVUSと血管内視鏡を同一患者に施行することで,アトルバスタチンが冠動脈プラークにどのように作用するかを検討しています。
その結果,IVUSで確認されるプラークの退縮は80週の試験期間を通じ持続的に確認された一方,血管内視鏡で確認されるプラークの色調変化については,28週目までは黄色調から白色調への変化が認められたものの,その後80週の時点まで一定でした(図4)。

(石井)IB(integrated backscatter)-IVUSでは脂質成分は青色に,線維成分は緑色に映ります。
したがって青色部分の多いプラークは脂質含有量の多い,不安定なプラークと判断できます。
わたしたちは特に慢性腎臓病(CKD)患者でIB-IVUSを実施し,PCIの目標ステント留置部位には,脂質に富むプラークが多く存在することを報 告しています。
また最近,対象をeGFR(mL/min/1.73m2)60未満と60以上に分けてIB-IVUSの結果を解析し,前者は後者に比べて脂質容積が有意に大きく,線維容積が小さいことも報告しています。
また,岐阜大からの報告では,アトルバスタチン20mgで6カ月間治療すると,IB-IVUS所見の青色部分,すなわち脂質成分が有意に減少することも報告されており,虚血性心疾患のハイリスクグループと考えられるCKD患者に対しては,アトルバスタチンの効果が期待されています。

(Waters)エゼチミブをスタチンに併用すると,LDL-Cは低下するので有効だとは思いますが,エゼチミブでLDL-Cを低下させたことでイベントを抑制したという臨床試験のデータがないため,現状では,エゼチミブを加えるよりも,まずはスタチンを増量する方が良いと考えています。
 
出典  Medical Tribune 2012.2.9
版権  メディカルトリビューン社


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