ある時、ある内科の開業医さんから、「産業医を引き受けている会社で、今朝、社員の一人が社内で縊首したのだが、職員のメンタルヘルスをどのようにしたら良いだろうか」と相談を受けました。
まぁ、内科の先生方にはお世話になっていますので、こちらも協力できるところは・・・と、「お葬式が終わった次の日にでも、会社の事務所をのぞいて見ますわ」とお答えしました。
数日後、何とか仕事のやりくりをつけて事務所におじゃましました。私の方の心づもりは、ちょっと社長さんに様子を聞いて、調子の悪そうな人がいたら面接でもしてみようかと思っていたのですが、
じゃ・・・と社員さんを一人見始めると、次々と面接が始まり、結局は、30人近い全社員と面接し、最後の社員さんなどは、「先週、入社したばかりで、亡くなった人とは一度も会っていません」という感じでした。
全体的に、安定はしていましたが、数人は、食欲不振や睡眠障害を認めていました。経験的には、当初は、この2つが出てきて、食欲の方が先に改善し、睡眠障害、特に熟眠障害や入眠障害などは、数週間続きます。後は、不安感や不定愁訴、疲れやすさなど個人差はありますが、見られます。もっとも、これらは正常な範囲の反応です。重症度は、この時は、次の3点が関与していました。
①(自殺した)本人との心理的距離・・・もちろん、親しい人ほど、ショックは大きいものです。本人だけではなく、本人の家族との心理的距離も関与します。
②自殺時点との時間的距離・・・自殺した時から見て、より近いときにあった人ほど、「そういえば、あの時様子がおかしかった、何故声をかけなかったんだろう」「どうして、気づけなかったんだろう」と言う罪悪感が残っています。
③自殺現場との物理的距離・・・直接、自殺現場を目的した人、目的はしていないが救急車で運ばれるのを見た人、隣の建物で救急車の音だけを聞いた人など様々ですが、より現場に近い人の方が重症度が高まります。
緊急的に介入の必要性を感じる人はいなかったので、後で、社長さんに簡単なリーフレットを作って渡し、産業医さんに報告して、後はお任せしました。
・・・いずれにしろ、自殺後の対応も重要ですが、本来はここに至るまでに予防ができればよかったのですが・・。
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