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2009.06.22 23:59 |  診療  |  仕事 / 職場  |  発達障害  |  NINA  | 推薦数 : 1

自閉症スペクトラムと就労のこと・後編。

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このblogと連動するサイト児童精神科医NINAの診察室,少しずつ更新中です。
過去記事をテーマ別に振り分けて読みやすくまとめてありますので,
(現在5月2日分までの記事がリンク済みです)
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今日は,高機能広汎性発達障害をもつ患者さんから聞かれる4つのキーワードのうち,「就労できない/したい」の続きを書いてみようと思います。


(3) それでも仕事をして収入を得たり,社会に参加したり(=誰かの役に立ったり)することは大切。

「好きなことや得意なことが活かせない仕事をわざわざする意味がない」と,就労したいと思っているのに関心のあまりもてない業種の就職先をまったく探そうとしない,という話もよく聞きます。たしかに,好きなことや得意なことが仕事に活かせれば,やりがいとか充実感とかは一見得られやすいように思えるかもしれません。でも,必ずしもそうとは限らないのです。

以前診させていただいていた患者さんの例を書いてみますね。
元々PCでイラストを描くのが好きで,専門学校でコンピュータグラフィックの勉強をしてその系統の会社に就職しましたが,趣味で自分の思うようにじっくりこだわってイラストを仕上げていくのと,仕事で依頼されたとおりの絵を手早く仕上げるのとでは全然勝手が違うということをいざ働き始めてから痛感したと言っておられました。自分としてはうまく描けたと思っても,納期に遅れたことを責められたり,勝手にアレンジしたことを怒られたり…結局職場での居心地が悪くなって退職することになってしまって。
でも,その後もやっぱりどうしても働きたいと思っていたところ,かつての同級生から「仕事を辞めたんなら,今自分が働いてる運送会社で荷物の仕分けをする仕事を一緒にやらない?」と誘ってもらって,あまり気は進まなかったけれどまぁ友達もいることだし心強いから…と試しに勤めてみることにしたのです。別段仕事の内容に関心があったわけでもないけれど,無心で荷物をラベルに従って分けたりまとめたり運んだりする仕事は意外と性に合っていると感じるようになりました。勤務態度も真面目だったので,慣れないうちにミスをしたりしたときも職場の先輩から気遣ってもらったり励ましてもらったりして,「こんな自分を必要としてくれている職場があることが嬉しくて」と診察室でちょっと誇らしそうに話してくれました。

この患者さんの場合,好きなことや特技を活かした仕事が続かなかったときにも「働きたい」という強い意欲を失わなかったこと,自分と同じ職場で働かないかと声を掛けてくれるような友達といい関係を作れていたこと,あまり興味の持てない仕事ではあったけれど真面目に取り組んだこと,そして職場の先輩や仲間の人柄にも恵まれていたことなど,たまたまいいことがたくさん重なった例だといわれればそうかもしれません。
でも,この患者さんに限らず,こういうかたちで趣味や特技とはあまり関連のない仕事を真面目にこなすことで自立することができた自閉症スペクトラム特性をもつ患者さんとこれまでに何人もお会いしています。
大事なのは,「合ってない」「どうせ無理」とやってもみないうちから決めつけて自分の可能性の幅を狭めてしまわないで,まっさらな気持ちでとりあえず真面目に取り組んでみることなのかな,と私は思います。
ひょっとしたらうまくいくかもしれない。そして実際にうまくいったら収入を得ることもできるし,社会のなかで役割をもつことができているという自信にもつながるし,収入や自信は自分のこれからの人生を少しずつ元気なものにしていってくれるはずですから。

このことはご本人にもしっかりお伝えしていきたいけれど,ご家族やまわりのひとから根気よく(でも深刻になりすぎずに)勇気づけたり励ましたりしていただくことも大切なのかな,感じています。


(4) 仕事に活かせないとしても,自分の趣味や特技は自分の人生のなかの大きな強みになってくれる。

先に挙げた例でも,趣味や特技としてのコンピュータグラフィックは直接は仕事の役には立たなかったけれど,自分の大切なリラックス法としてはとても有効だったようで,コツコツと描きためては診察のときに見せてくださったりもしていました。イラスト仲間とインターネット上でやりとりをしたりするのもご本人にとって大切で楽しいコミュニケーションだったようです。

自分が没頭できたり,ほかのひとと共有できたりする楽しみがあるということはとても大事なこと。

たとえそれが仕事に直結しないとしても,趣味や特技を大切にしない手はありません。

仕事ができていない時間にも,趣味や特技があることは自分を元気づけてくれるはず。
そして仕事でストレスが溜まったときやスランプに陥ったときにも,自分を支えるちからになってくれるはず。

「仕事と関係ないし…」と自分のせっかく得意なことを軽んじたりしないで,大切に持ち続けてほしいな,と思います。



…なんだかまとまりがなかったかもしれないけれど,そんなふうに思いながら,そんなふうにお伝えしようと考えながら診療させていただいているところです。うまく私も思いをお伝えできていたらいいのだけど…!


なかのひと

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