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「私たち、発達障害と生きてます」
好評発売中です♪ 発達障害をもつ当事者たちの貴重な体験談が満載!
私も読ませていただきました。
当事者のみなさんはきっと頷き,共感しながら読めて,たくさん勇気をもらえると思います。
支援者のみなさんにとっては,日々の支援活動に役立つ豊富な「活きたヒント」が見つかる1冊です。

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ここ最近,診察室に来てくださるこどもさんの親御さんからなぜか連続してお聞きした言葉があります。

「こどもには“普通の高校”を出てほしいと思うんです」


“普通の高校”と対比されているのは,たとえば通信制高校のサポート校だったり,たとえば高卒業認定だったり。

(ところで,今知ったんですが高校卒業認定試験の過去問って文科省HPで公開されているんですね! あとでじっくり見てみなくちゃ…。)


親御さんのそうおっしゃる気持ちもよくわかります。

普通の高校で不登校になったり不適応を起こしたりして通えなくなってしまったこどもさんをサポート校へ通わせてみたら,なんだか見違えるようにのびのび過ごしている…全然しんどそうにも見えないし,大して勉強もしないで好きなことばっかりしているようで。こんなに楽そうに過ごせてる今なら普通の高校に戻れるんじゃないかしら,とか。

あるいは,わざわざサポート校へ通わせることにしたのに,結局全然積極的に行こうとしない…いろんな縛りが緩いぶん余計に今の状況で何をどう頑張ればいいのかわからないのかも。やっぱり毎日あたりまえのように登校する普通の高校のほうが我が子には合ってたんじゃないかしら,とか。


余談ですが,高卒認定になってからはあまり聞かれなくなったけれど大検(大学入学資格検定)の頃は「高校を卒業したことにはならないから…」と反対する親御さんも多かったです。当時はまだサポート校などもあまり普及していなくて,通信制となると3年で卒業できないイメージのほうが強かったし,いろんな意味で選択肢が少なかったように思います。


さて,普通の高校を一旦離れてみて,「あたかも普通の高校にでも毎日元気に通えそうに思えるこどもさん」や「普通高校のほうがむしろきちんと通う気になれそうに見えるこどもさん」が普通の高校へ戻ることになった場合,果たして元気に通えるものなのでしょうか。


もちろんケースバイケースだと思いますが,すごく正直なことを言うとかなり難しいだろうと私は思っています。


前者の場合,今の環境だからこそこどもさんは自分らしく過ごすことができて,ストレスを溜めずに済んでいるんじゃないのかな,と思うのです。
もちろん,大学進学を目指すならさらに受験用の勉強もしなくてはいけないでしょうけど,それは普通の高校に通っていてもほぼ同じような状況ですし,自分の夢がはっきりしているこどもさんは高校よりも大学のほうがしっかりと目的意識をもって受験にせよ入学後にせよ勉強に取り組めているように見えることが多い気がします。

だから,親御さんには「親御さんとこどもさんご本人が話し合って,思い切って“普通の高校”から環境を変えてみようと決心されたからこそ今の学校でうまくいっているのでは? 今のように自分に合った環境でしっかり調子を整えたり自信を取り戻したりしながら,大学とか社会に出てからとかの将来に向けていろいろ考えたり準備をしたりするといいのかもしれませんね」といったことをお伝えするようにしています。


では,後者の場合は?

…年度をまたぐことになりますが,この続きはまた明日。


なかのひと

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2009.03.30 23:59 |  診療  |  こどもの精神科  |  精神科一般  |  NINA  | 推薦数 : 1

厳しいお言葉のおかげで…

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このblogを始めた当初にも書きましたが,地域のなかでの専門家同士の連携が私はとても大切だと思ってます。


思い起こせばもう何年も前のこと。

ちょうど私が「児童精神科医を目指したい」と教授にお伝えしたばかりの頃。
そんなときに児童精神科医の先生が私の住む地域に講演に来てくださる機会があって,せっかくはるばる来てくださるんだから講演があることをしっかり周知して会場を盛り上げよう,という話になったのです。

私がこの領域に関心があることをご存じだった教授から,この講演の聴衆を集めるように,と指令を受けました。

でも,いくら児童精神科領域に興味があるといっても,まだまだ地域でのパイプづくりなんて全然できていない超若手だった私。人集めと言われたってどこにどう呼びかけたらいいのか当時はさっぱりわからなくて。

絶対にお伝えしたほうがいいと私にもわかるような機関や組織をいちおうリストアップした後で教授に「このあたりでどうでしょうか」とお伺いを立てたところ,こんなお返事が返ってきました。


「ほかにも伝えるべきひとがいないか,もっと考えてみて。これからはあなたが自分で人脈を広げていかないといけないんだから」


そのときは,教授は厳しいことおっしゃるなぁ…とかなり困ったのを覚えています。

でも,あれから時を経るにつれ,本当にそのとおりだったということを実感…私自身が自分でひととひととのつながりを作っていくことがとても大事だったということに気付きました。


今では,困ったときに何でもご相談できる先輩医師や他職種のベテランの方々,いつか一緒に仕事をしたいと心から思えるような同世代の医師たち,今自分が知っていることはすべて伝えたいと思えるような後輩たち,…教授の言葉にあたまを悩ませていた頃の自分と比べて,地域の中に本当に大きな広がり・つながりをつくることができたなぁ,と改めて思います。


せっかくできたつながりは,日々の臨床のなかで活かしていかないともったいない。

私自身が臨床しやすくなり,ほかの先生や専門職の方々も仕事をしやすくなり,そしてそれが患者さんやご家族にとってのメリットにつながる…,

みんなにとって便利で有益なかたちでこのつながりを役立てていくために,この大切なネットワークをますます活用して,より強いつながりを築きながら,より機能しやすい状態にいつも保っておきたいな,と思います。



なかのひと

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2009.03.29 23:58 |  診療  |  こどもの精神科  |  発達障害  |  NINA  | 推薦数 : 1

難題への取り組み,一旦終了。

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先日記事にした難題へのチャレンジが,先日無事終了しました。


お母さんだけに受診していただいて生育歴などをお聞きする時点で,さすがにお母さんの観察眼は鋭くてこどもさんの発達上の特性がしっかり現れているエピソードをたくさん具体的に挙げな がらお話を聞かせてくださったので,私のあたまのなかでこどもさんご本人のイメージをずいぶんとしっかり描くことができました。

お話のなかで,なぜ今回わざわざ帰省中に診断を受けようと思われたのか,といったあたりのことも教えていただけたし,お母さんがこどもさんの将来に関して今の時点でどのようなことを心 配しておられて,今後どのように過ごしてほしいと思っておられるのか,といったこともいろいろ教えていただけました。


「まだご本人さんの心理検査の結果を詳しく見ることのできていない段階ではあるけれど」と前置きしてから,お母さんのお話から推測できるこどもさんの特性,得意なことや苦手なことについ てお伝えして,今後を過ごしやすくしていくために実行できそうな工夫についても大まかにお話ししてみました。


最後にお母さんがおっしゃったこと。

「今私に話してくださったことを,そのまま本人にもう一度伝えてやってください。小さいときからいろいろ心配で,あの子にはもっと自信をもっていろんなことをしてほしいし,そうすればもっとや れるはずだとずっと思っていたけれど,見ているともどかしくて口を開けばついつい叱責するようなことばかり言い続けながら育ててしまった。でもNINA先生から今のように言ってもらったら,き っとあの子も納得できて,自信を取り戻してこれから先がんばっていけると思います。私も,もうだいぶん大きくなったあの子をこれからうまく支えてやれるようにがんばります」と。


…お母さんのこの言葉は,私にとっては最高の讃辞でした。

でも,お母さんがそんなふうに言ってくださるようなアセスメントができたのは,お母さんが小さいときからこどもさんのことをしっかり見ておられて,ちょっとしたエピソードでもこどもさんのことを気に留めながら覚えていてくださって,それをまだ会って間もない私にひとつひとつ丁寧に話してくださったからこそ。お母さんには本当に感謝しています。

お母さんの言葉にすっかり勇気づけられた私。心理検査の結果とお母さんからやこどもさん本人からお聞きしたエピソードを照らし合わせながら本人に改めてお伝えする内容を組み立てて,いよいよ最後の診察の日を迎えました。


結局診断名としてはお伝えしない方向でお話をすることにしましたが,本人の特性・個性を得意な部分はもちろんのこと不得意な部分までお伝えしつつ,それをカバーするために今後取り組むべき課題についてもお伝えできて,その課題を行っていくのを身近なところで支えてくれる相談機関についても本人の意向に沿うかたちで見つけてきちんとお繋ぎすることもできました。

お母さんのおっしゃったとおり,こどもさんにも私の説明をすんなり受け容れてもらえたし,今後に対する不安も多少払拭することができたようでした。「工夫すべきことをまずはがんばってみようと思います」と言ってくれて,とっても嬉しかった!


私にできることはとりあえずここで一旦終了ですが,今後また必要なときにはお繋ぎした相談機関と連携させていただくかたちでこどもさんをサポートさせていただこうと考えています。

もちろん,こちらがわざわざ何かをお手伝いする必要もなく,こどもさんが順調に過ごしてくださることがいちばん嬉しいのですけどね。


なかのひと

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2009.03.28 23:57 |  診療  |  仕事 / 職場  |  こどもの精神科  |  NINA  | 推薦数 : 1

役割,CHANGE!

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最近になっていろいろとうちの病院の来年度の計画が見えてきました。

私自身の業務も,診療以外のところで役割が今年度とはかなり変わることになりそうです。


今までやってきた楽しかった仕事をいくつか手放さなくてはならなくなるのはとても寂しいこと。

「来年度はこんなふうにやりたいな」と構想を練っていたこともいくつかあったし,今年度新規に立ち上げたプロジェクトがよい方向に進んでいて今後を楽しみにしていたところもあったし。


でも,新しく担当する業務も,話を聞いてみるととても面白そうでワクワクしています。

それに,私が本当にやりたいと思っていることは,新しい仕事の枠組みのなかにいるほうがずっとやりやすくなるはず。


なんだかんだ言いながら結構「住めば都」を地でいっている私。

これまで医局人事でさんざん異動してきたけれど,行く前はいろいろ不安なことを思うくせに,いざ次の異動が決まる頃には「あーあ,今の病院がこれまででいちばん楽しかったのに」と思いながらその病院を後にすることになるのです(あ,ごくたまに例外もありますが…)。

まぁ病院間の異動のことを思えば今回迎える業務内容の変化はとてもちっちゃいことだし,どうせ私のことだからそのうち楽しんでしまうことでしょう。

とりあえず波に乗るまでは,ほんのちょっとの不安と,慎重さと謙虚さを持ちつつ,徐々にあたまと身体を慣らしていこうと思います。

「はりきりすぎてオーバーヒートしたらダメですよ!」っていつも患者さんにお伝えしている立場なんだし,自分も実践しないとね。


なかのひと

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2009.03.26 23:42 |  診療  |  こどもの精神科  |  発達障害  |  NINA  | 推薦数 : 2

お母さんのファインプレー。

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年度末を迎えて自分の仕事はますます忙しくなるばかりですが,世の中では春休みシーズン…久しぶりに診察室に顔を出してくれるこどもの患者さんの予約も続々と入っています。

そして,患者さんのきょうだいも同じく春休みだと,普段は本人さんだけが学校を早退したりして親御さんと受診してくださっているところを,きょうだいも一緒に診察室についてきてくださったりす ることも結構多くて…。


私の外来に定期的に通ってきてくれるアスペルガー障害をもつ女の子と一緒に,先日妹さんがついてきてくれました。

私が主治医として担当させていただく前に,すでにほかの病院で診断を受けておられるお姉ちゃん。でも,お母さんはそんなことは全然深刻な問題とは思っておられなくて,本当に上手におお らかに子育てしながら,でも細心の注意でもってお姉ちゃんの自己肯定感が崩れないように見守っていらっしゃっいます。

いつも母子で楽しく日常の様子を話してくださるのをとても微笑ましく聞かせていただくばかりの私…たしかに学校を始め周囲の環境への適応もとてもよい状態で過ごしておられるので今私が 何もすることがないといえばない状態なのですが,果たして本人やお母さんのお役に立てているのかしら? と何度も不安になってきて。
実際にお母さんにそんな疑問をぶつけてみたりもしていますが,「むしろこちらが喋りたいことを勝手に喋ってばかりでごめんなさいね」と明るくおっしゃるお母さん。

そんな母子の話にこれまでときどき登場していた妹さんと私はこの日が初対面でした。


初めて診察室に入ってくださったにもかかわらず,私とも屈託なく自然に話をしてくれる妹さん。


妹さんがふとジュースを買いに出たとき,お母さんがひとこと。

「妹もちょっと変わったとこあるんですよ。あの子もひょっとしてアスペルガーかな,って思ったり。別に今学校でうまくいってないとかがあるわけではないんですけどね」


…そう,お母さんは初めから妹さんを私に見せておきたいという意図をもって連れてきてくださっていたのでした。
もちろんそのお母さんの意図を妹さんは知らないわけですが。

本当にセンスのいいお母さんです。


診断についてはもちろん今日お会いしただけでどうだということは言えないけれど,もしも診断というか特性をもっておられたとしても,学校や社会に上手に適応して本人が苦しんだり困ったりすることなく過ごせていれば,それはただの個性であって病気とは言えないですよね,と改めてお伝えするとにっこり頷かれるお母さん。

今後もし妹さんが何らかの困難に押しつぶされそうになったときには,きっとまたよいタイミングで連れてきてくださるのでしょう…日頃のお母さんのサポートぶりを考えると,いろんな困難をうまく家族で乗り越えて行けるようにも感じましたが。

私もこんなふうに我が子をさりげなく守り支えてやれる母親でありたいな,と思わされたひとときでした。



なかのひと

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2009.03.25 23:59 |  診療  |  こどもの精神科  |  発達障害  |  NINA  | 推薦数 : 1

驚きの勘違い。

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先日診察室へ来てくださったこどもさんのお母さんに言われた言葉。

「○○病院(私の勤める病院)の先生方は,うちの子のような△△障害についてたくさん論文を書いていらっしゃる,って紹介元の先生からお聞きしてます」


えーと…私,△△障害に関する論文なんて書いたことないですけど…?

そして,私以外のうちの病院の医師が△△障害に関する論文を書いたという話は一度も聞いたことがないのですけど…?


その場では「あー,そうなんですかぁ。私は書いてないから,じゃあほかの先生方が以前そういった論文を書かれたのかもしれませんね」とお答えしたのですが,どうにも腑に落ちなくて。


その患者さんが帰られて数時間経ったところで,私の勤務先の病院と名前がとてもよく似ている別の病院のことだったんじゃないか,とようやく思い当たりました。


話の流れから考えると,紹介元の先生が勘違いしておられて,患者さんとご家族に誤った(よい方向の)情報提供をされたのだろうと思います。


いずれにせよお母さんはその情報のおかげもあってとても信頼して話をしてくださったし(いわゆる後光効果というやつですね)こちらとしても私の実力以上にとてもスムーズに診療を進めることができてとてもありがたかったですが,理由がわからなかったとはいえ自分たちの実績ではないことを自分たちのもののように言ってしまったこと,申し訳なかったなぁと反省…。



さて,ときどき(特にアスペルガー症候群をもつ患者さんに多いのですが)「ネットで調べてみたら,NINA先生は□□に関する論文を書いてるんですね」なんて患者さんから言われることがあります。

主治医にはどんな経歴や著作があるのか,興味が湧くのはあたりまえのことだと思うし,そうやって興味を持ってくださるのは嬉しいことでもあります。

でも,論文をたくさん書いているからといってよい臨床ができる医師とは限らないし,論文を書いていない医師でも素晴らしい臨床をされる先生はいらっしゃいます。

検索エンジンを使って,主治医に関する情報の一端を知っていただくことも面白いとは思いますが,著作の実績と臨床の実力とが必ずしも相関するわけではない,ということもいちおう頭の片隅に置いといていただけたらな,とふと思ったできごとでした。


なかのひと

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2009.03.24 23:54 |  診療  |  こどもの精神科  |  発達障害  |  NINA  | 推薦数 : 1

難題に挑戦。

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じつはこの度,とても難しいケースを担当させていただくことになりました。

何が難しいって,春休みに他県から帰省中の学生さんに,初診から発達障害の告知までを行ってたうえで無事に下宿先へお帰りいただく,という指命。

与えられた期間はたったの2週間。


2週間のうちに治療関係を構築しながら本人から現在の状況を,そして親御さんから生育歴などの情報をお聞きして,心理検査によるアセスメントも心理士さんに実施してもらって,本人と親御さんに診断告知を行う…もちろん検査の結果わかることや具体的な対処法も含めてお伝えする…そこまでで全診察過程が終了! となるわけですが,これまでそんなタイトなスケジュールで発達障害診断告知を行ったことは一度もありません。

今回のように初診と診断告知の2回しか会えないとわかっていて,それを確実によい形で終わらせなくてはならないというのはものすごいプレッシャー。
もちろん普段から1回1回の診察を大切にするように心掛けているし,特に初診の大切さはとても意識しているけれど,2回目以降診療を続けていくなかでようやく良好な治療関係を築けることだってあるわけで,挽回の余地が残されていない真剣勝負と思うとやはりとても緊張感を伴います。

とても通常の診療スケジュールのなかでは診させていただくのは難しいと判断して,本来の外来枠とは違う時間をセッティングしました。


心理士さんも大急ぎで検査結果を出してくださったので(やはり発達障害の存在が強く疑われる結果でした),あとはその結果をこれまでお聞きした本人の状況などと絡めながらどのようにご説明して,必要で有効だと思われる対処法をどのように受け容れていただくか,そのあたりを練る作業が必要。診断名として伝えるか,それとも特性の部分だけをお伝えするか,といったことも決めておかなくてはいけません。
そして,他県へ戻られたら私からのアフターフォローはほとんどできない状態になると予測されるので,他県でアフターケアをしていただけそうな場所も確保しておきたい…。

少しでも元気になって,少しでも自己肯定感を持って,そして将来に少しでも希望を持った状態で下宿先へお帰りいただくために。

できる限りのことを準備して,最後の診療のときを迎えたいと思います。


なかのひと

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2009.03.23 23:29 |  診療  |  こどもの精神科  |  発達障害  |  NINA  | 推薦数 : 1

いただいたコメントへのお返事。

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今日は,いただいたコメントへのレスに代えてこの記事を書きます。

元のコメントはこちら

   (以下引用です)
   > 要するに「今不登校、今孤立、今学力不振」
   > でないと、診断してもらえないのでしょうか?
   > そのラインだったお子さんを引き上げた私は、
   > 結果的に無意味な事をしたのか…と思う毎日です。
   > 変に病院での専門医による診断を遠ざける姿勢が、
   > 理解できないので、自分の考えが定まりません。


発達障害の診断告知については精神科医や小児科医のなかでも対応が分かれるところなのですが,受診していただく以前の段階にもハードルがあるということなのですね。

いつも感じていることですが,診断名を伝えればそれでいいというわけではなくて,じゃあどうすればうまくいくのか,本人の特性に合わせてどんな工夫ができるのか,といった部分まで含めてお伝えするのが診断の意味だと思うのです。

その部分をする自信がない医師(単に知識や技術の問題というよりは,診療時間の枠の範囲でそんなに丁寧にはできない,というのが正直なところかもしれません)は,告知のデメリット,つまり本人や親御さんがショックを受けるのではないか,という点に意識がいくから告知に消極的。

そして,医師に紹介してみたけれど診断名が告知されただけで何もいいことがなかった,と感じた支援職(たとえば心理職)の方々は「わざわざ医者に診断つけられることに何のいいことがあるんだ?」って思われるに違いありません。

それについては私たちの力不足以外の何ものでもありません。

いちばん大切なことは診断名を伝えることじゃなくて,考えられる今の状態像の説明と,それに対する対応や支援をお伝えすること。

「診断名」は医師にしかつけられないけれど,状態像の説明(心理検査の結果から読み取れることや,日常生活のなかでのエピソードを取り上げること)は医師以外の支援職の方にもやっていただけることだと思うし,対応・支援方法についても医師がしなくてはいけないことではないだろうと思っています。医師ですら支援するのに診断名告知は必須じゃないと考えているひとも多いですし。

だから,「わざわざ医師のところへ診断とかもらいに行かなくたって,うまく対処する方法を私が伝えてあげますから大丈夫!」と言ってくださる支援職の方がいてくださるというならそれはそれで大変ありがたいことだと思います。


でも,支援職の方のところで「問題なし」と言われてしまうと…私たちにはどうすることもできません。

「問題なし」と親御さんに伝えしまうことは,診断名だけを告知して支援方法を何も伝えないことよりも悪いことだと私は思います。

だって診断名がわかっていれば(それが正しければの話ですが)書籍やインターネットなどで親御さんや本人が自力で情報を集めたり仲間と出会ったりすることも可能だけど,「問題なし」と言われてしまうと現状の難しさの説明も得られなければ支援につながる情報にもたどり着けないまま…言ってみれば「この苦しい状態のままがんばるしかないよ」と本人やご家族にプレッシャーをかけていることになります。


さて,ここからが本題(?)。

今本人も親御さんも困っていると感じることが何もなくて,「問題なし」と言われて納得しているとしたら…周りで見ていて困難さをいろいろ抱えているように思えても,やはり介入するのは難しいように思います。

そして,もしも「問題なし」と言われても「こんなことがうまくいかなくて…」という悩みを本人や親御さんが感じているとしたら,周りにまずできることは,役に立ちそうな具体的な支援策をいくつか提案して実際に有益であることを実感していただくこと。それが第一段階だと思います。

「こんな工夫をしたら,こんなふうにうまくいきましたね」という実績をいくつか積み重ねていって,「こういうところを苦手さとして持っていて,でもこういう対処法を使えばうまくいく」というのが共通認識として持てたところで,「以前ちょっとタイプの似たこどもさんに関わらせてもらったときに○○先生(医師でも非医師でも)に相談したらいろんなアドバイスがもらえてもっと楽になったケースがあったけど,あなたの場合も役に立つかも…?」という感じで医療機関や相談機関へつなげていただくと,本人も親御さんも受診先・相談先へスムーズに出向きやすいかもしれません。


要は,本人や親御さんの「相談したい,相談したら役に立つ情報が得られるかも」というモチベーションがないと,相談や受診にはつなぎにくいということ。

そして,信頼できる専門家や支援スタッフが確実にいるとわかっているところへつなぐこと。


時間も手間もかかることですが,せっかく専門機関につながるのなら,いちばん役に立つかたちで使っていただくのがいいですもんね。



…長くなりましたが,うまくお答えすることができているでしょうか?


なかのひと

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2009.03.22 23:58 |  診療  |  こどもの精神科  |  精神科一般  |  NINA  | 推薦数 : 1

まだ足りないもの。

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「私たち、発達障害と生きてます」
好評発売中です♪ 発達障害をもつ当事者たちの貴重な体験談が満載!
私も読ませていただきました。
当事者のみなさんはきっと頷き,共感しながら読めて,たくさん勇気をもらえると思います。
支援者のみなさんにとっては,日々の支援活動に役立つ豊富な「活きたヒント」が見つかる1冊です。

このblogと連動するサイト児童精神科医NINAの診察室,少しずつ更新中です。
過去記事をテーマ別に振り分けて読みやすくまとめてありますので,
(はやく3月前半分の記事のリンク作業を行いたいと思います…)
最近こちらに来ていただいた方も過去記事はサイトの方から読み返していただくと便利です♪

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先日,仕事上のことでふと疑問に思ったことがあって,思い切ってほかの病院のベテラン児童精神科医の先生に質問させていただいたのですが,返ってきた答えは私が知りたかったことの範囲をはるかに超えた深~いお言葉…。

改めて,我が身の未熟さを思い知らされました。


もっともっと勉強しなくちゃいけないことがいっぱいあります…謙虚になっているのでも何でもなく,自分がこれまで学んできたことだけでは全然カバーしきれていない部分がまだまだ本当にたく さんあるのです。

たとえば,小児神経科領域とか身体の発達障害にに関することとか,先天異常にともなう発達障害や精神障害のこととか,中等度以上の知的障害があるひとへの支援とか,…パッと思いつくだけでもこんなふうにいろいろと出てきます。

普段から児童精神科どっぷりの臨床をしているわけではなくて,「一般精神科を受診される患者さん」という枠のなかでこどもさんを診させていただいているので,診察室で出会うことができて診療の経験を積ませていただける患者さんの層がある程度限定されてくるんですよね。

もちろん,それは患者さんのせいではまったくないのですが。

今の臨床の場でずっと仕事をしていくなら,その枠のなかで経験を積んで実力をつけていけばそれでいいけれど,いずれ児童精神科医として「どんなこどもさんでも来てくださって大丈夫!」って自身と責任をもって言うためには,今の枠のなかでの経験だけでは不充分。

自分が経験を積めない部分については,本などから情報を得るか,ほかのひとの経験を分けていただくか,そんな方法で補っていくしかありません。


自分に足りないものをきちんと把握して,ベテランの先生方やまわりの仲間たちから貪欲に経験を分けてもらって…,

そして,私自身のまだまだ中途半端な経験であっても,たとえば「こどもの精神科臨床に興味はあるけど,診る機会がない」と嘆いている若い先生たちにはきっと役に立つはず。

優れた経験を吸収させていただくことはもちろんだけど,経験を共有し合ったり,世代を超えて伝達したり…。

伝えられること,そして伝えること。
そんなことを意識しながら過ごしたいな,と思います。


なかのひと

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2009.03.20 23:59 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  スポーツ  |  NINA  | 推薦数 : 3

WBCがもたらした疑問。

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先日私の診察室に来てくださったアスペルガー症候群をもつ患者さんが,「TVは面白くないので観ません,だってWBCで日本が負けた翌日はどこのチャンネルもそれしか言わないし」とおっしゃっていました。うーむ…たしかにそのとおりかも。

でも,私はWBCが結構好きなので,試合中継はさすがに無理だけどスポーツニュースあたりはちょこちょこチェックしています。

2次ラウンド1組の一位通過を決めた韓国戦も,その前日にあったキューバとの敗者復活戦も,ニュースのスポーツコーナーで試合のダイジェストや街の声などを知ったわけですが,とても印象に残ったことがありました。


まず,対キューバ戦。

キューバチームを応援していたキューバ人のひとたちは,日本チームに負けたにもかかわらず日本チームを祝福してくれるようなコメントをするのです。
悔しさを露わにしたり,来年のリベンジを誓ったりするような,そんなアグレッシブなコメントは(少なくとも取材に答えてくれたキューバ人たちからは)聞かれなくて,日本チームを褒め称えたり,日本の勝利を祝福してくれるようなことばがとても多かったのです。


そして今日の日韓戦のスタンドには、日本チームを応援してくれているキューバ人らしき観客たちの姿が!

キューバの分もがんばってほしい,ということなのでしょうか。

そのあたりの事情はちょっとよくわからなかったのですが,とにかくキューバのひとたちはキューバチームを倒してしまった日本チームを祝福し,応援してくれているようでした。


もしも日本チームが昨日キューバチームに敗れて逆の立場になっていたとしたら,果たして日本人は(もちろん私も含めてですが)キューバ人のような態度をとることができるだろうか?…


今回のキューバ人たちの言動は「怒らない,妬まない,愚痴を言わない」というまさに三毒追放に則ったものと言えるかも,なんて思ったりもしたのですが,キューバのひとたちの振る舞いを見ている日本人の私もとても気持ちが楽だったし(日本が勝っちゃってごめんね,という心苦しさをあまり感じずにいられた,と言えばいいのでしょうか…),キューバのひとたちもきっとあまりストレスをためずに済んでいるように思えたのです(悔しがったり日本を恨んだりしてみたところで敗戦という結果は覆らないわけですし,だったら「日本チームってすごいな,ここからはキューバの分も応援するよ」って気持ちを切り替えたほうが無駄なマイナスのエネルギーを燃やさなくて済みそうですよね)。


こんな生き方ができたら,きっと精神も健康に過ごせるだろうな…キューバの精神疾患発症率ってひょっとして世界平均よりも低かったりするのかしら?

野球に対する考え方からくるのか,国民性から来るのか,背景もよくわからないけれど,とにかくキューバのひとたちのことがすごく心に残りました。
キューバの教育や福祉や政治にはどんな特色があるのかな…WBCのおかげで,キューバに興味津々になってしまった私です。


なかのひと

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