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「私たち、発達障害と生きてます」 好評発売中です♪ 発達障害をもつ当事者たちの貴重な体験談が満載!
私も読ませていただきました。
当事者のみなさんはきっと頷きながら共感しながら読めて,たくさん勇気をもらえると思います。
支援者のみなさんにとっては,日々の支援活動に役立つ豊富な「活きたヒント」が見つかる1冊です。
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先日,大先輩の小児科医の先生からメールをいただきました。
開業医として日々とってもお忙しく過ごしていらっしゃる先生なのですが,ありがたいことに精神科領域にもとても関心を持ってくださっていて。
でも,昨今の発達障害ブームとも言うべき風潮には多少辟易していらっしゃるようで,メールにはこんな感じの内容が書かれていました。
「この頃自閉症と診断される子どもが急増している。自閉症と定型発達の間のいわゆる『ボーダーライン』の児童に対する診断が増えていると思われるけれど,10年・20年前に比べて子どもの本質は変わっていないのではないか? 昔も変わった子は少なからずいたものだし…」
自閉症スペクトラムの診断がつくこどもたちは,たしかに以前に比べて増えてきていると思います。
でも,自閉症スペクトラムのこどもたちが実数として本当に増えてきているのか,と聞かれると,私はそうではないような気がします。
ちゃんと疫学研究のメタ解析の結果を見たわけではないけれど(ぜひ探してみたいところですね,これは),自閉症スペクトラム概念が広がったために従来「自閉性障害」と「それ以外=定型発達」とされていた部分が,「自閉症スペクトラム(>広汎性発達障害>自閉性障害)」と「定型発達」に分けられるようになって,つまりこれまでなら「それ以外=定型発達」に含まれていたであろうひとたちが「自閉症スペクトラム」のほうでカウントされるようになったせいで統計上増えているんじゃないのかな,と思うのです。
…そもそもあまりに古い研究だと,自閉症研究はあったとしても,自閉症スペクトラム概念はおろか広汎性発達障害全体としての統計もないんじゃないのかな?
じゃあ,以前と比べて増えていないからこれまでと同じような対応でいいのか,と言われると,それはまた違うような気がします。
まず,自閉症スペクトラムの特性をもっているこどもたちが対人関係スキルを磨く機会は減っているように思えるのです。
受験が盛んになったり空き地がどんどん減ったりゲーム機が普及したりして,こども同士が放課後や休日に大勢で元気に遊ぶ機会というのはたとえば私が小学生だった頃と比べて確実に減少しています。みんなの活動の流れに合わせて自己主張したり自分の希望をぐっと抑えたり,そういう経験を積む場面は本当に少なくなっているんじゃないのかな,と診察室でこどもさんたちと会いながら感じているところ。
そして,自閉症スペクトラムの特性・個性をもったこどもたちの活躍の場が少なくなっているように思えるのも心配なこと。
昆虫や化石や鉄道など,「○○博士」と呼ばれるほど特定の領域に詳しいこどもたちが理科や社会などの授業中や休憩時間・放課後などのちょっとした時間や夏休みの自由研究などの場面で脚光を浴びることもちょくちょくあったように思うのですが,この頃は学校の勉強がよくできてナンボ,受験勉強ができてナンボみたいに価値観の幅が狭まって来ているように感じます。「○○博士」に限らず,勉強はどうあれ(?)かけっこの速い子が活躍できていた運動会でさえ,かけっこの順位はつけないほうがよい,みたいな流れにもなってきて,活躍の場が失われつつありますし…。
そして,多様性が失われているのは学校場面だけではないですよね。
第1次産業,第2次産業ではどんどん人手を掛けずにすむよう機械化が進んできて,ヒトがやるべき仕事の多くはサービス業などの第3次産業が中心になって。たとえば田畑をきちんと管理して農作物の収穫を得たり,コツコツ正確にものづくりの工程を進めたりしていれば収入が得られる時代は過ぎて,サービス業など複雑な対人場面を巧みに切り抜けてこそ認められるような業種で器用に立ち回れることが期待されるようになってきているように思うのです。それは自閉症スペクトラムをもつひとたちにとってはとても困難なこと…自分たちに合った就労の場さえ得るのが難しくなってきているのではないかと思えてなりません。発達障害をもつ成人患者さんたちの就労支援の場に立ち会っていると,このあたりの難しさはしみじみと感じ取れます。
要は,以前なら自閉症スペクトラムの特徴があっても自分の個性を発揮してこども時代に活躍したりおとなになって就労して収入を得たりする方法がいろいろあったところが,最近では自閉症スペクトラムをもっていることでこども時代から成人後をとおしてとても生きづらい世の中になってきているので,自分の得意と苦手をきちんと知って,比較的早い時期から自分のよさの活かせるように,苦手さに翻弄されずに済むように備えておくことが大切だ,ということだと思うのです。
そのために,診断の幅を広めにとって,少しでも将来に向けて準備が必要だと思われるひとにはそのことをお伝えして安心しておとなになってもらえるように…というのが最近の流れなんじゃないのかな,と私は思っています。
診断を広めにとろうと狭めにとろうと,診断することが,あるいは診断しないことが,患者さん本人にとってメリットがあることがなにより大事なこと。
そのことさえ見失わなければ,診断が広めだろうが狭めだろうが,どっちでもいいんじゃないの? と私は思っています。
精神科医同士でもきっと意見が分かれるところだと思います…他の先生方のお考え,いろいろお聞きしてみたいことのひとつです。