自閉症スペクトラムの成人女性の患者さんが先日受診されたときのこと。
二次障害として抑うつがみられて何年も前から精神科に通っているのですが,最近はかなり調子がよくなっていて,今では父親の経営するお店を毎日コンスタントに手伝えるようになってきていて。
彼女曰く,「私の調子がよくなってきてうまく働けるようになると,父はさらに仕事を増やそうとするんです。今までずっとそうで,そのたびに具合が悪くなって…」と。
元々の仕事量さえやっとの思いでこなせているというのにそれ以上の負荷を掛けようとするなんて無茶だ,と思って以前は父親にけんか腰で訴えていって,でも父親にはそれが受け容れてもらえずに結局自分がイライラして調子を崩すことになっていたのだそう。
調子よく働けている今もまさに父親から仕事の負荷を増やされそうなところなのですが,話をお聞きしてみると,どうやら今はうまく調子を保って過ごすことができているようなのです。
どうしてかわせるようになったの? と尋ねたら,
「今までは『父にわかってもらおう,父にはわかるはずだ』と思ってたから説得しようとして疲れてしんどくなってた。今は『どうせわかってもらえないんだから』と割り切って,父とは口論せずに,仕事のほうは自分に無理のない範囲でやってます。そのほうが自宅での居心地もいいし」と。
…すばらしい諦め(笑)だな,と思いました。
自分と相手の考え方が違うことに気付きにくかったり,自分のこだわりのあるやりかたを押し通そうとしたりして,トラブルになりやすい自閉症スペクトラムのひとたち。
相手を説得したいけれどあえてそうしないで黙っておくほうが結果的に自分も楽に過ごせる,という気付きが得られて,それを実行することができているなんて!
おとなになってからでも対人関係スキルをちゃんと向上させることができて,そしてそのおかげで実際に二次障害を軽減することもできるんだなぁ,と教えていただくことのできた診察のひとこまでした。

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まだ公表できないのですが,今日は本当に,本当にとっても嬉しいことがありました。
何週間も,何ヶ月も前から待ち続けていた手紙がついに手元に届いたのです。
私がその手紙を手にすることなんてできないかもしれない,と思ったこともあったけれど。
受け取った今も,あまり実感がわかないのだけど。
でも,ホッと安心することができました。
いろんな意味で「責任重大」と受け止めて,これからもコツコツ地道にがんばっていこうと思います。

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発達障害をもつこどもたちのソーシャルスキル獲得を考えるとき,いつも難しいと感じること。
それは,こどもたちにどのくらい負荷を掛けていいのか,どのくらい保護すればいいのか,というところ。
「こういう状況で,こういう振る舞いをすればいい」と説明して理解できるところまではいいとして,その理解を汎化することが難しい広汎性発達障害のこどもたちは実際にそのスキルを使ってみないとなかなか身につきにくいだろうし,そういうソーシャルスキルが上手に使えるようになってくれば自信や自己効力感も徐々に回復させることができてくるはず。
つまり,いろんな「うまくいかないこと」が蓄積されて自信を失ってしまった状態から抜け出すために,過去に傷つき体験をした集団に入ってスキルの実地練習をするのはとてもつらいことだと思うけれど,そうしなければなかなか自信を取り戻せないというジレンマがある,と言いたいのです。
そのジレンマを解消するには,傷つき体験が少ないうちに=まだ年齢が若いうちからソーシャルスキルを練習するか,または傷つき体験をした集団でなく広汎性発達障害のこどもたち同士の集団のなかでソーシャルスキルを実際使う練習をしていくか,そのふたつのうちのどちらか,といったところでしょうか。
実際には,たくさんの傷つきを重ねて二次障害が生じてから初めて広汎性発達障害の診断がつくこどもたち(思春期・青年期以降)が私のまわりには多いし,その時点で広汎性発達障害をもつこどもたち同士のグループを形成するとなると,新しい集団への不安もあって相当難しそうにも思えます。
保護しすぎると自信を回復するチャンスが得られないし,負荷を掛けすぎるとますます自信を失いそうだし…。
解決するのは難しい問題かも知れませんが,「いちばん負担が軽くていちばん有用な方法」をいろいろと考えてみるのはとても大事なことなんじゃないのかな,と思います。

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ちょっと前まで,
発達障害をもつこどもたちの勉強のことがとても気になっていたのですが,最近私の中での興味がまた少し違う方向へシフトしつつあります。
新たに気になり始めたのは,社会性とかソーシャルスキルの獲得とかいったところ。
どういうスキルをどのくらいの年齢でクリアしておくべきなのか,もしその課題が通過できないまま過ぎてしまっていたらどうやってあとから補っていけばいいのか。
今はそんなことに興味を感じています。
もはや全然医学じゃない(笑)。
でも診断するのは医師の仕事だし,診断したあとに行うのは「治療」ではなくてむしろ多職種の支援者の方々のコーディネーター的役割を果たすことだと考えると,医学の範疇におさまらないことまでいろいろ知っておかなくてはいけないのは当然ですよね。
できればいつか,自分の外来の患者さんやデイケアを利用している患者さんに対して個別または集団でのソーシャルスキルトレーニング(SST)が行えるようになりたいな。
ソーシャルスキルの獲得が必要だと思われる患者さんに出会う機会は本当に多いので…。
発達障害に興味をもてばもつほど,わからないことやもっと知りたいことが次々増えてくる。
きっと「すべてを知る」ことはできないだろうけど,新しく蓄積される有用な知識をどんどん自分の中に取り入れていこうと思います。

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このblogに書いてきた記事を整理する目的も含めてこのblogと連動させるかたちでサイトを立ち上げたいなぁ,と
思っている今日この頃。
でも,久しくhtml言語で書いたりしていないし,どんなかたちにしようかもまだ迷っているし,週末にも少しページを作りかけたりしていたのですが一向に進む気配がなくて。
せっかくサイトを作るなら,診療日記的な雰囲気で思いつくまま自由に書いているこのblogでの記事以上の情報も盛り込んでいきたいですし。…なぁんて欲ばっているからなかなか作業が進まないのですけど。
まだ当分は模索状態が続きそうですが,公開できるような感じでまとまり始めたらまたこちらでアナウンスしたいと思います。
Blogはこれまでどおり続けていくつもりですので,引き続き応援よろしくお願いします!

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先日久しぶりに「セカンドオピニオン希望」の患者さんがいらっしゃいました。
「うつ病だけどなかなか治らないから」と…。
今の主治医に本人が「私,うつ病ですよね?」と尋ねたら「そうです」と言われた,とおっしゃるのですが,話を聞けば聞くほど摂食障害の症状があることが浮き彫りになってきました。私の診断は,むちゃ食いと排出行動(下剤乱用)を伴うタイプの神経性無食欲症。
食行動のことを今の主治医には話しているのかと問うと,ちゃんと話してはいるとのこと。でも,主治医から月に何回過食したかを聞かれその回数を報告したら「ほう,そうか」で終わる,と…。
・・・。
正直なところ,もしも患者さんのお話がそのまま真実だとしたら,その主治医の先生の対応はあんまりなんじゃないの? と思ってしまいます。
過食の回数を尋ねたって食行動の問題が解決していくわけがないし,全然治療になってない。
でも,患者さん自身も摂食障害の症状の治療に対して受け身になってしまっているんですよね。
「ほう,そうか」しか言ってくれないから何にも変わらない,って。
摂食障害の患者さんとお会いして私がいつも思うことは,過食でも拒食でも食行動を望ましい方向にコントロールする力を身につけてコントロールできるようになっていくのは患者さん自身にしかできないことだ,ということ。ご家族や主治医だけがいくら一生懸命がんばっても,本人の食行動を変えることはできないのです。
ただ,そんなことは症状に苦しんでいる患者さんや必死で本人に関わっているご家族にはおそらくわかっていないはず。
だからこそ,主治医が「あなたががんばって変えていかないと症状はなくならない,周りのひとにできるのはせいぜい応援とちょっとしたお手伝いくらいのもの」って患者さん本人にきちんと説明してあげないといけない,と私は思います。
でも。
「私があなたの摂食障害を治してあげます」と断言できるような名医なら,患者さんに「あなたががんばらないと」って言う必要ないじゃん,って思われた方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。
私自身,摂食障害の治療がすごく上手な先生方に何これまで人もお会いしてきましたが,どの先生も患者さんが自分で治していく力を引き出すことに長けていらっしゃるのであって,決して先生おひとりの力で摂食障害を治しているわけではないんですよね。
逆に「私があなたの摂食障害を治してあげます」と断言するような医師に出会ってしまったら,ちょっと疑ってかかるくらいのほうがいいのかもしれません。いろんな意味で,ご注意を!

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昨日に引き続き自閉症スペクトラムの話。
特にここ最近,私の中で,自閉症スペクトラムのこどもたちにどうすれば「がんばりすぎない」でいられるか,ということを伝えるのがちょっとしたテーマになっています。
抑うつなどの二次的な症状が取れてくると,自閉症スペクトラムをもつこどもたちはすぐに全力投球モードに戻ろうとしてしまうんですよね。
やると決めたことに全力投球しようと思えること,そして実際に全力投球できることは,とってもすばらしいこと。
でも実は,全力投球できるところをあえてせずにおく,ということも全力投球することと同じくらいすっごく大切なこと。
短期間で終わらせることができるようなちょっとしたことなら,全力投球してさっさと片付けてしまうのもいいかもしれない。
でも,全力投球したくなるような骨のある課題は,たいてい月単位・年単位でじっくり取り組まないといけないようなことだったりするもの。
そこで最初からエンジンフル回転で飛ばしていたらどうなるか…?
当然,途中で息切れしてしまいます。
全力で一生懸命がんばってきたからこそ途中で燃え尽きてうまくいかなくなったにもかかわらず,こういう場面で彼らは「だから自分はダメなんだ」「何をやってもうまくいかない」と自分を責め,ガックリ落ち込んでしまう。
決して,「ダメな自分」「何をやってもうまくいかない自分」がやったからうまくいかなかったわけじゃなくて,がんばりすぎていたから長く続けられなかっただけなのに,そこの因果関係がなかなかわかりにくかったりして。
せっかく自分がもっている力をうまく発揮するためには,がんばりすぎないことがとても大事なんだよ。
細く長く,最後まで続けていくことでいい結果を出せることが多いんだよ。
全力投球しないことは,怠けたりサボったりしてることにはならないんだよ。
そんなシンプルだけど大切なことを,彼らにもっともっとうまく伝えられるようになりたいな,と思っています。

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ちょっと久しぶりに自閉症スペクトラムの話。
デイケアに通ってきていただいている患者さんのことで,主治医の先生と
定期的に文書でやりとりする以外にも,必要に応じて不定期に連携をとらせていただくこともあります。
最近立て続けに,ふたりの自閉症スペクトラムの患者さんのことでそれぞれの主治医とお話しさせていただきました。
ひとりは,もともとアスペルガー症候群の診断がついている患者さん。
患者さん本人が自宅でリラックスして過ごせるようご家族にお願いしたいことがあって,でもそれをこちらのデイケアスタッフからお伝えするのと主治医の先生から伝えていただくのとどちらがいいのか…そもそも主治医の先生はご家族との連携を望んでいらっしゃるのか,そのあたりをご相談したくて。
もうひとりは,統合失調症の診断がついていたけれど,生育歴や現在の症状から自閉症スペクトラムが強く疑われていた患者さん。
本人とご家族の希望もあっていくつかの検査をしてみたら,やはり自閉症スペクトラムをベースにもっている可能性がきわめて高いような結果だったので,それを主治医にご報告しておきたくて。
先生方おふたりとも,本当に気持ちよくこちらの意図を汲んでくださって,とっても嬉しかったんです。
自閉症スペクトラムをもつ患者さんへの支援って,誰かひとりがすればそれでうまくいく,なんてことは滅多になくて,それぞれの支援者がそれぞれの立場で,自閉症スペクトラムの特性を理解して必要な支援を行っていくことがすごく大事だと私は思っているので,その患者さんに自閉症スペクトラム特性があるというところでまず関係者が合意してそこからチームとしてみんなで支えていく,その根底というか前提となる「診断への合意」の部分がうまくいって本当によかったなぁ,と思ってホッとしたのでした。
自閉症スペクトラムの概念がだいぶん浸透してきたとはいえ,いつも主治医の先生に受け容れていただけるとは限らないので。
端から拒絶反応を示す先生や,「別にこの患者さんの診断は 統合失調症で/うつ病で/強迫性障害で 問題ないんじゃないの?」とおっしゃる先生,自閉症スペクトラムだとしても「そんなの関係ねえ」と言わんばかりの先生…まだまだ精神科医のなかでも自閉症スペクトラムへの対応はまちまちなのが現状。
その診断を念頭に置くこと,その診断を意識して関わっていくことが患者さんにとってどれほど大きなメリットがあるか,そんなところを精神科医の先生方にもっと広く知っていただきたいな,なんて野望もわいてくる今日この頃。
果たして私なんかにそんなことができるのかわからないけれど,ひとつひとつのケースを通して主治医の先生と連携する機会を最大限に活かして,地道に野望を現実のものにしていきたいと思っています。

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つい昨日の記事で,とある高校を訪れた話を書きましたが,また別の日には保育園を訪ねる機会がありました。
こちらは,自分のこどもがお世話になっている保育園。
要は参観日みたいなかたちでお邪魔しました。
園内で,また園外で,こどもたちがどんな遊びをしてどんなふうに過ごしているのか。
遊びの時間や食事,お昼寝の時間を含めて数時間,こどもたちと一緒に行動しながら様子を見させていただく機会だったのです。
率直な感想ですが…,
保育士さんって本当にものすごく大変なお仕事だということがよくわかりました。
我が子でもないこどもたちが大勢それぞれ好き勝手に過ごしているなかで,よいことがあればすかさず褒め,危ないことがあれば素早く駆けつけて対処し,ダメなことはきっちり叱り,…その合間に歌を歌ったり,絵本を読んだり,給食を食べさせたり,オムツを替えたり,寝かしつけたり。
文字どおり「片時も休めない」ほどの忙しさ。よほどの使命感かよほどの適性がないと,とても続けられそうにないお仕事にみえました。
…なるほど,どおりで診察室でお会いする保育士さんの多くは,燃え尽きてエネルギーが枯渇した状態にみえるわけだ…。
精神的にも肉体的にも保育士のお仕事でくたくたになっている/なってきたにもかかわらず,
「こどもたちが待ってるから早く復職したいんです」
「保育士の仕事は大好きだから,絶対に辞めたくない」
などとおっしゃる先生が多いので,まずは「とにかく少し元気がわいてくるまで焦らずしっかり休んでいきましょう」と説得するのが私の最初の仕事のように思います。
子を持つ親の立場からすると,こんなに一生懸命自分のこどもの面倒をみてくださる保育士さんがいらっしゃるということは本当にありがたいこと。
でも,精神科医の立場から見ると,できればそんな無理をしていただきたくなかったり。
以前診させていただいたある保育士さんは,園児たちの前で上手に折り紙ができるように前日に家で何十個も練習して作ってみる,なんて教えてくれました…それでは心身ともに休まるときがないですよね。
保育士さんって,小さなこどもたちの発達や成長を見守り支えてくれる,大切な存在。
そして,こどもたちの「家族以外のひととひととのつながり」のいちばん最初のところに関わってくださる立場のことも多いはず。
ひとりの母親として,保育士さんのストレスを増やすような保護者にはできるだけなるまい! と思うと同時に,精神科医として保育士さんのしんどさが今以上に増えずに済むように,自分にできることを考えていこうと思いました。

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