先日,ある会で公立高校(普通科)の特別支援コーディネーターの先生とお話をする機会がありました。
いろいろしゃべるうちに,発達障害の話になったのですが,「今のところ校内で発達障害に対する支援はまったく行えていない」とはっきりおっしゃられたので,驚いてしまいました。
だって,特別支援コーディネーターの先生がそうおっしゃるのですから。
医療機関で「発達障害」という診断がついて,それに対して校内で支援していこう,という話になったケースはこれまで一例もない,と。
・・・。
そういえば,他の地域の高校の先生とお話ししたときも,就学前・小学校・中学校と特別支援教育に関する研修が地域で企画されてきて,最近やっと高校にも及んできた,なんてことをおっしゃってたっけ。
きっともっとよい状況の高校もあるのだと思うけれど,あまり発達障害に対する理解の進んでいない高校はおそらくまだまだたくさんあるってことなんですよね。
発達障害のこどもたちを早期に見つけ出して,早期に支援を始めることでこどもたちの育ちをサポートできたり親御さんの疲弊に対してフォローができたり,というのが大事なのは言うまでもないこと。
だけど,就学前や小学校で発達障害を見過ごされたまま思春期を迎えたこどもたちに中学・高校で支援を始めていくことだってすごく大事だと思うのです。
そこでも気付かれないまま大学へ進んで不適応を起こしたり,社会に出てからうまく適応できず就労が続かなかったりする,そんな発達障害のおとなたちの生きづらさだってすでに問題になってきているんですから。
診断がすでについていようがいまいが,そしてどのライフステージからであっても,発達障害に対してそのとき必要な支援をその時点から始めていかなくちゃいけない,と私は思います。
先の高校については,ただ単純に特別支援コーディネーターの先生を責めるわけにはいきません。
校内のたくさんの先生方の意識が変わっていかないと,先生方が特別支援コーディネーターさんを校内でどのように活用すべきかもピンとこないはずだし。
そんな状況では,何のために特別支援コーディネーターの先生を校内に配置したのかさっぱりわからないことになってしまいます。
そして,校内では発達障害をもつこどもたちが困り続けることに…。
悲しいけど,どうやらこれが地域の高校の現実のようです。
現実を受け容れて,いや,受け容れられないけど現実をきちんと知って,その現実を変えるために自分にはなにができるのかを考えていかなくちゃ。
診察室へ来てくれたこどもたち(ときにおとなたち)への支援は当然続けていくとして,支援が必要なのにまだ受けることのできていないこどもたちがひとりでも多くそして少しでも早く支援を受けられるように,こどもたちの日常を支えるおとなたちにもっともっと発達障害のことを知ってもらえるような,そんな活動にも力を入れていきたいな,と思っています。
まずは次の講演で,そのことをしっかり意識してやってみようと思います。

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今日外来に来られた患者さんのお母さんからお聞きして初めて,昨日うちの地域でかなり大きなシンポジウムがあったことを知りました。
それも,発達障害をテーマにしたシンポジウム。
地域でご活躍されている,教育・行政・福祉の,一度はお会いしてみたかった錚々たる面々が勢揃いだったよう。
…あぁ,知ってたら絶対行ったのにぃぃぃぃぃ(涙)。
地元での講演会・研修会などに関する情報には敏感にアンテナを張り巡らせているつもりですが,なかなかすべてを把握することはできません。
自分ではがんばっているつもりだけど,まだまだ自分のやりたいことのど真ん中(必要な情報が確実に集まってくるような現場だとか,いわゆる「中枢」的なイメージの場所)にはたどり着けていないんだなぁ,ということを改めて痛感して,ちょっと悲しくなってしまいました。
本当に,もっともっと精進していかなくては。
相変わらず,職場での役割として特に求められているわけでもないまま発達障害も含めてこどもさんたちをたくさん診させていただいている私ですが,よくよく考えてみると職場の役割として期待されているわけでもないのにこどもさんたちを勝手に診させていただいてそれが許されているということは,本当にありがたいことなんですよね。今の職場に感謝!
そして,こどもさんたちのお母さん方から,
「こどもを診てくれるところはみんな数ヶ月待ちって言われてたけど,ここでいちばん困ってるときにすぐ診察が受けられてとっても助かったんです!」
とか,
「すごくしんどかったときに診てもらって,あれから私もこどもにもゆとりを持って接することができるようになったし,こどもも楽になったみたいで嬉しい」
なんて言っていただくと,児童精神科の専門機関でないところでひっそり「穴場」的に診療していてよかったな,と少し報われたような気持ちになれます。
働く場所がどこであろうと,今できるbestを尽くすことが大切,ですよね。
まだまだがんばっていこうと思います!

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ちょっと久しぶりな感じですが,また講演の依頼をいただきました。
今度はあるひとつの学校へ出掛けていって,その学校の先生方のみに向けてお話しをさせていただく形です。
先生方の代表として私に連絡してくださった先生に,「先生方はどんなことを知りたいと思っていらっしゃいますか?」とお聞きしたところ,
- 専門機関への紹介の仕方
- 保護者にこどものことでの専門機関受診を勧める方法
- 受診させるべき状態かどうかの見極め
- 紹介したあと,どんなふうに診療することになるのか
といったことが知りたい,という意見が出ているのだそう。
えーと,それは講演じゃなくてもお伝えできるような気がするけれど…。
きっと大切なのは講演の中身ではなく(いやいや中身だってもちろん大事だし,準備も手抜きはしませんが),先生方の学校の近くにはこんな顔した精神科医がいてこんな雰囲気でしゃべってるんだな,と知っていただいて,なぁんだそれなら気楽に紹介できるじゃん,と思っていただくことが私にとってはいちばんの目標になるかもしれません。
やっぱり,「顔の見える連携」っていいですもんね。
私も先生方のお顔と雰囲気をしっっっかり見させていただこうと思っています。学校にお邪魔する日が今からとっても楽しみ♪
…あ,でもまずはちゃんと講演のネタづくりを始めないといけませんね!

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このblogでもよく書かせていただいている,家族の話。
先日の記事でも,「精神科にかかってくださる患者さんだって,ご家族に本人の様子をよくわかっていただいて治療に協力していただくほうが患者さん本人の負担がより少なくなって治療もスムーズに行きやすい」なんて書いたばかり。
ですが。
患者さんご本人もしんどいだろうけど,彼らをいちばん近くで見守りながら病状を悪化させないよういろいろと気を遣ってくださるご家族の負担ってとっても大きいはずですよね。
しかも,本人の病状に関する疑問や質問は主治医に尋ねて解決すればいいけれど,ご家族自身の不調やしんどさについては患者さん本人と同じ主治医にどんどん打ち明けるわけにはいかない…だって,ご家族が本人を心配をすることで疲れたり悩んだりしているということをまさか本人の前で主治医と相談するわけにはいかないですから。特にうつ病の場合にそんなことをしてしまったら,患者さんは「自分のせいで家族はこんな大変なことに…」と余計に自責の念に駆られることになってしまうでしょうし。
そして,患者さん本人が調子を崩して精神科にかかっているということを,そうそう積極的に周りに打ち明けられない場合もあるでしょうし,そうなるとご家族は本人の主治医はもちろん自分の周りのひとたちにも自分のしんどさのことを相談できないということになってしまいます。
そんなふうに考えてみると,ご家族って私たちが想像する以上にしんどくて孤独だったりすることがきっと多いんですよね。
さて,そんなしんどくて孤独であろう患者さんのご家族の方々に対して,私たちができる支援ってどんなことなんだろう? と最近考えてみたりしています。
もちろん,患者さんの診察に同席してくださったご家族に対しては,患者さんの自責感を刺激しないよう配慮しながらご家族の苦労をねぎらうこともできます。それは私自身,日々の臨床のなかでできるだけ心掛けていることのひとつです。質問や声掛けの中身をうまく工夫すれば,患者さんの目の前で患者さんを看病するご家族のがんばりをねぎらうことは可能です。でも,毎日の診療のなかでご家族おひとりおひとりにそれほどたくさんの時間をかけることもできない…。
そこで,もしもできることなら。
患者さんのご家族同士が集まれる,自助グループのようなものが作れたらいいな,と考えています。
自分の大切な家族が精神科で治療中だということを隠さずに済んで,お互いのしんどさがわかりあえて,悩みを共有したり解決策をみんなで分かち合ったりできる,そんなグループ。
発達障害のこどもたちの親御さんのためのグループなどは全国各地わりと多くみられるように思いますが,たとえばうつ病の配偶者をもつひとたちのグループなんて少なくとも私の住む地域では聞いたことがありません。
安心して相談できたり場合によっては愚痴をこぼしたりもできて,アドバイスをし合ったり励まし合ったりもできて。
いきなり自主運営で始めていただくのは難しいだろうけど,初めのうちは病院スタッフが関わったりしていけば,うまく形が作れるかも。
ご家族をうまくサポートできれば,それは結果的に患者さん本人にもいい方向に働くはず。
いつかこの計画を実現させることができるよう,もっといろいろ詰めて考えてみたいと思います。

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しつこくて申し訳ないのですが,
一昨日,そして
昨日からの続きです。
発達障害を疑って受診したのに医師が診断をしない場合,特にこどもさんの年齢がとても小さい(1歳前後)ときには一般精神科医も児童精神科医もそれぞれの立場や事情からすぐには診断や告知をしないことがある,と書いてきました。
私のまわりにいる医師(多くは一般精神科医)を診ていると診断するかしないかは医師のキャリア,特に発達障害臨床にどのくらい携わってきたかによって違っているように感じます。
これは,医師自身に発達障害に対する理解や発達障害のこどもたち(おとなも,ですが)と関わった経験が少ない場合,発達障害の可能性を疑ったとしても,その診断として伝えるとしてじゃあ具体的にはどう支援すればいいのか? という部分がきちんとイメージとして思い描けないから,告知すること自体を躊躇してしまっているように思われます。
診断名は告知したけれど具体的な支援策は何も伝えられないままというのではただのレッテル貼りで終わってしまうし,それでは告知する意味なんてないようなもの,ということは告知する側である医師にも徐々にわかってきていて,だから診断がつくだろうと思っても「自分では支援できないかも知れない」という不安が告知に踏み切らせてくれなかったりして。
(稀に,診断だけは伝えるけれど伝えっぱなしで何の支援もされていない,みたいな話も聞きますが…。)
きっと,医師自身が知識や経験を積み重ねていけば具体的な支援について十分な情報を蓄積することができるでしょうし,診断をお伝えする経験の場数を踏めば親御さんへの説明や助言なども含めてうまく診断をお伝えできるようになっていくだろうと思われます。
こんなことを偉そうに言っていますが,数年前の私自身のことを振り返ってみるとやっぱり発達障害について全然わかっていなかったし診断をお伝えするのも下手くそだったなぁと情けなく恥ずかしく思います(いや,今だって決してスムーズに告知できているわけではありませんが)。当時診療させていただいていたこどもさんや親御さんには申し訳ない気持ちがあったり,むしろ私のほうが勉強させていただいてありがたい思いがあったり。
言うまでもないことですが,医師はプロなんだからちゃんとした告知=診断名とその状態に対するときに役立つ知識を親御さん(ときには本人)にきちんと伝えられるのがあたりまえのこと。ただ,それがあたりまえではあるのですが,こと発達障害に関してはまだまだ時代や世の中の流れに合わせて精神科医たちも新たな役割を負い始めたばかり,という面がありますので,ちょっと大目にみていただけたら嬉しいな,なんて甘えたことを言ってみても許していただけるでしょうか?
たとえば,うつ病や統合失調症の患者さんが診察室へ訪れたら,診断名や今の病状について患者さんご本人やご家族に説明して,治療方針や処方の内容をお伝えする,というのは一人前の精神科医なら当然できること。
精神科医になったばっかりではさすがにできないでしょうけど,こういうことができないうちはその医師ひとりで外来や入院の患者さんを担当することはなくて,先輩医師と一緒に担当させていただきながら経験を積み,勉強していきます。
でも,今「一人前」の精神科医として仕事をしている医師たちの多くは,駆け出しの頃に発達障害について先輩医師から指導を受ける機会もないままひとりだちしているわけで,世間がこういう状況になって初めてそれぞれが勉強し始めた,というのが現状なのです。
(…もちろん,教育や福祉の現場でもそういう状態なのですよね,きっと。)
だからといって,発達障害を心配して受診してくださったこどもさんや親御さんに対して「診察の結果に納得いかなかったとしても仕方ないですよ」なんて言いたくはありません。ましてや,せっかく思い切って受診してくださった患者さんやご家族を医師が非難したり責めたりするなんて言語道断。
親御さんを傷つけるような発言をする医師のところへは通い続けなくてかまいません(当然!)。
でも,発達障害にはまだあまり詳しくないかもしれないけど親身になってくれそうな医師に運良く出会えたとしたら。
そして,ほかに発達障害について相談できたり支援を受けたりできる場所に心当たりがなかったとしたら。
こどもさんに診断がつきそうかどうか,診断がつかないとしてもこどもさんが○○な状態のときにご家族はどう対処すればいいのか,…親御さんの知りたいことをいろいろ尋ねながら,その医師を育てるくらいのつもりで根気よく接していただけるととてもありがたく,嬉しく思います。
患者さんやご家族から質問していただいたら,まともな医師なら文献や書籍を読んだり他の医師に相談したりしながら一生懸命診てくれるはずです。
医師はみんな,患者さんやご家族に育てていただきながら成長しているのですから。
もちろん私自身も。
毎度言っていて恐縮なのですが,患者さんやご家族にはぜひとも医師を上手に使って,上手に役立てていただきたいと思います!

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学校や幼稚園・保育園など,保護者以外でこどもさんとしっかり関わる職業の方々が,「発達障害かも?」と思われるけれど専門機関未受診のこどもさんを担当しているときに感じておられる疑問,
「どうして専門機関を訪ねないの?」について先日取り上げました。
その記事にも書きましたが,この場合,親御さんが発達障害の可能性を疑っていらっしゃらないことが結構多いだろうと思っています。
もちろん,なんとなくその可能性に気付きながらまだ受診を躊躇っていらっしゃる,ということもあると思いますが…。
そして。
親御さんの立場からコメントをいただいて改めて気付きましたが,親御さんがせっかく専門機関を訪れてくださったにもかかわらず,医師が診断をしなかったため「未診断」になっている,ということもあったりします。
これはどういうことなのか…ちょっと考えてみたいと思います。
この「受診したけど未診断」という現象は,その「専門」機関がどれくらい専門性の高いところなのか,担当した医師のキャリアがどのくらいなのか,といった要素で変わってくるように思います。そして,地域性によっても…。
まず,一般精神科の,主に成人を診ている精神科医を訪れた場合。
悲しいことですが,一般の精神科医がこどもの精神科臨床技術を学ぶ時間は本当に限られています。むしろゼロに近いかも。「せめて高校生以上なら診られるかもしれないけど,中学生はちょっと無理」くらいの感覚の精神科医が(少なくとも私の周りでは)大半を占めています。これは,真面目にきちんと研鑽を積んできている医師であってもそう。
さらに,一般精神科医が発達障害について十分な知識を身につける機会はほとんどない,というのが現状です。多くの精神科医が学んできた診断方法は現在出ている症状で評価して診断するやりかたであって,発達歴・生育歴をあまり重視しません。
こんな現状なので,こういう医師が1歳くらいの赤ちゃんを目の前にしてできることって本当に少なくて。
「この月齢で来られても…」と言いたくなる一般精神科医の気持ちはものすごくリアルに想像できます。
たしかに,いい加減に評価して「あー,発達障害ですね」「いやいや,発達障害じゃありませんよ」と安易に判断するよりはマシかもしれない。
でも,1歳にも満たない頃から自分のこどもさんの育ち具合に疑問を感じて,いろんな不安を振り切って受診してくださった親御さんに向かって「こんな早く連れてくるなんてどうかしてる」といったニュアンスで対応するのはおかしい,と私は思ってしまいます。
せめて,「申し訳ないけれど,自分にはこの年齢(月齢)のこどもさんの発達障害を判断する能力はない」とお詫びして,地域の専門機関の情報を提供をするとか,それくらいのことはしてほしい。
…ちょっと脱線ですが,患者さんや親御さんにお詫びしたり,「自分には○○はできない」と告げたりすることに抵抗のある医師って結構多いようです。
そりゃ確かにできないことがあるよりは何でもできたほうがいいに決まってるけど,これだけ医療の専門性が細分化された時代に「何でもできる」医師なんてそうそうあり得ないんだし(ま,そう開き直りすぎるのも問題ではありますが),できないことはできない,って認めたほうがいいのに,と思ったり。自分にできないことについては代わりに誰ならできるのかを把握しておいてそのひとへきちんと繋いであげることができれば,まずは最低ラインクリアでしょうか。
長くなってきたので,後日へ続きます。

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うつの症状がなかなかよくならない,…
そんな患者さんが最近とても多い気がします。
業界(?)では,「新型うつ病」なんてコトバもちょっと流行っていたりして。
いわゆる,古典的・典型的なうつ病とは違うタイプの患者さんが増えているような印象は,きっと多くの精神科医が感じていることでしょう。
本当に「新型」なのか(昔から無気力型のうつとか,気分変調性障害と呼ばれる軽いうつが長く続くタイプとかありましたよね…),従来のうつ病とは別物なのか,という議論はさておき。
うつの症状がなかなかよくならない患者さんのお話をよくよく伺っていると,ある傾向が見えてくることが多かったりします。
それは,ご家族との葛藤。
何かちょっとしたことでごく身近な家族とのあいだにすれ違いのようなものが生じていたり,お互いに気にしていながら触れられないタブーのようなものが存在していたり。
たとえば,以前診ていた患者さんのなかには,結婚直後に数百万単位の借金をしていたことを数十年経ってようやく妻に打ち明けることができた男性がいらっしゃいました。この告白を契機に嘘のように表情が明るくなりうつも軽快していきましたが,妻は「何か隠しごとがあるとは薄々感じていたが,ずっと問い詰められずに自分も気になっていた」と話されました。
ほかにも,うつ病で休職中の夫が水晶の塊など観賞用の高価な石を妻に内緒で買い集めていることが妻に知られてしまい,家計を守りたい妻と自分の趣味を守りたい夫の間で葛藤が生じているけれどお互い相手に遠慮したり気まずく感じたりしてずっと無言で探り合いをしていた,なんてケースもありました。
身近な相手とのあいだに具体的な問題や葛藤を抱えている場合,どれほど適切な薬物療法がなされていてもうつ症状はそう簡単には改善しないのは明らか。
うつそのものへの治療だけでなく,診察室でもなかなか語られることのない家族間の「秘密の悩み」をいかにうまく引き出して,いかにうまく取り上げていくか…そんなところも私たちの腕の見せどころなのかな,と思っています。

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昨日,「笑っていいとも! 増刊号」を観ていたら,面白い話を聞くことができました。
劇団ひとりさんが出演しているコーナーで,「P.M.S」というのをやっている,と言っていて。
P.M.Sとは,もちろん月経前症候群(Pre-Menstrual Syndrome)のことではなくて,パーソナルマイレージシステム(Personal Milage System)のこと。
「…のこと」,なんて言ってみたけれど,これって劇団ひとりさん考案のとっても個人的なシステムのよう。
航空会社のマイルを貯めるように,自分で設定した項目を満たすたびにマイルが貯まるのだそうです。
たとえば,ひとから「ありがとう」と言われたら5マイルとか,10分運動をしたら20マイル(だったかな?)とか。
で,3000マイル貯まったら,大好きなカツカレーを食べていいのだそう。
彼は自分で時分の顔写真入り会員証を作り,注意事項(たとえば「自分に嘘をついてマイルを貯めても,損をするのはあなた自身です」など…)まで印字してあるみたいでした。
この話を聞いて,私が思ったこと。
目標を決めて,達成できたらポイントが得られて,一定のポイントが貯まるとご褒美がある…これって,ADHDや広汎性発達障害の療育などで使われる「トークンエコノミー」と似てるな,と…。
自分が達成すべき目標を定めて,モチベーションが上がるような報酬を決めて,目標に向けて一歩ずつ努力する。
おとなだろうがこどもだろうが,発達障害があろうがなかろうが,誰でも実行できるし,そして誰でも効果が得られそう。
…正直な話,私自身も始めてみようかな,って思いました。
楽しみながら自分を成長させていくと,がんばりも継続しやすいでしょうし。
お仕事とはあまり関係ないネタかもしれませんが,個人的にとても気になるお話だったので記事にしてしまいました。

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コメントでご質問いただいたのですが,とても重要なことだと思うので記事にして取り上げさせていただこうと思います。
保育園・幼稚園や学校,塾などで先生方から見て「この子,発達の問題があるかも?」と思われること,結構多くあるかもしれません。
先生方から見ると,とっても気になるであろうこどもたち。
ちゃんと専門機関にかかって,診断がついたほうがいいんじゃないのかな?
このままだとしんどいことが積み重なって,いずれ二次障害が出てきちゃうんじゃないかな?
そんなふうにご心配いただくこともきっと少なくないですよね。
こどもたちを丁寧に見て,気に掛けてくださって,本当にありがとうございます♪
さて,そんなとき「親御さんはこの子のこと,気にならないんだろうか? 専門機関へ行ってみようと思わないんだろうか?」と疑問に思われたり,もどかしく思われたりすることもあるだろうと思います。
これは,あくまで私の予想なのですが,…
親御さん,こどもさんに発達障害の可能性があることに気づいていらっしゃらないんじゃないでしょうか。
軽度発達障害の概念が広まったり,特別支援教育が始まったりしたことで,先生方をはじめとする「専門家」たちのなかではグレーゾーンも含めて発達に問題のあるこどもたちにとても敏感に反応してくださるようになってきたと感じます。特に,熱心な先生方ほど高感度のアンテナを張り巡らせてこどもたちの発達の問題をキャッチしてくださっていて。
でも,親御さんたちは普段の生活のなかでそこまで新しい情報に触れることはないはず。
「ひょっとして…」と発達の偏りなどを疑ってくださったとしたら,インターネットなどでもさまざまな情報を見つけることはできるでしょうけど,そうでなければ情報のほうから飛び込んでくることはないでしょうし。
さらに,親御さんはご自分のこどもさんのことはよく見ておられるとしても,その年齢のほかのこどもたちとの違いに気づくほどたくさんのこどもたちの様子を見て比較する機会はないはずです。
だから,特にグレーゾーンのこどもさんだったりした場合には勉強のことや躾(たとえばTPOに合わせた振る舞い)のことなど,もしも気になっていたとしても「うちの子がちゃんとやらないから」「私の育て方が悪かったから」という方向に考えが向いてしまいがちで,こどもさんの持って生まれた特性のためじゃないだろうか,とか,専門機関に相談に行ったほうがいいだとか,そういう発想にはならないのではないでしょうか。
だから,こどもたちの発達障害に気付いていない親御さんを責めてはいけない,と私は思っています。
そして,もしも気付かれたとしても,
こういう事情で受診になかなか至らないこともあるのだろうと思います。
それから。
学校などの先生方から「障害があると思うから受診してみては?」と勧めていただくこともあると思います。
先生方や私たちのイメージする発達「障害」と,親御さんが一般的にイメージする「障害」にはまだまだかなり大きな開きがあることが予想されるので,できれば受診を勧めていただくときには「障害」ということばを使わないでいただくと誤解が生じにくくていいのかな,と思ったり。
たとえば「息子さんは授業中も本当にがんばっているというのがよく伝わってくるけど,私(先生)の教え方だとうまく理解しにくいことがあるよう。以前,同じようなこどもさんを担当したことがあって,そのときは専門機関に相談に行っていただいたらその子に合わせた伝え方があるとわかって,学校としてもうまく教えてあげられるようになったし,その子自身の力もぐんぐん伸びていって自信がついたようだった。私が気にしすぎているだけかもしれないけど,私たちが彼の個性や特徴に配慮して関わればもっとうまく教えられたりするかも知れないので,念のため専門機関に行って相談してみてはいただけないだろうか?」くらいの勧めかたをしていただけると,親御さんも「そんなこともあるのかな?」と受診していただきやすくなるかもしれません。
ぜひとも先生方からは,「障害だというレッテルを貼りたいわけじゃない,こどもさんのためによりよい方法があるなら知りたい」と,そんな思いを親御さんに伝えていただきたいのです。
そしてせっかく受診していただけたのなら,私たち専門家は,親御さんやこられどもさんたちを責めず,お役に立てそうな情報を精いっぱい提供し,これまでのがんばりをねぎらって,お力になれたらいいな,と思っています。
勇気を振り絞って受診していただいたことを絶対後悔させたくないし,絶対無駄にしたくない。
そんな思いで,診察室へ来てくださるこどもさんと親御さんをお待ちしている毎日です。

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