母子分離
子どもは胎児期から乳児期にかけて全てを母親に依存して成長していきます。乳児期から少しずつ母親から離れてその子どもなりの生活が始まります。子どもに自我が形成されてきて自己主張を感じるようになる頃には、かなりの時間を母親から離れてその子どもなりに過ごして、だんだん家の外の社会と、特に子ども社会と関わるようになってきます。それを母子分離と言います。この子どもの成長過程は人間ばかりでなく多くの動物にも見られています。
母子分離不全と言う言葉はいろいろな意味で使われています。子どもの年代によっても異なった意味で使われます。ここでは幼い子どもの登校拒否、不登校について言われている母子分離不全について述べてみます。保育園や幼稚園、小学校に母親が子どもを連れて行っても、子どもが泣き叫んで母親に抱きついて離れようとはしない場合です。または子どもが保育園や幼稚園、小学校にいても近くに母親の存在を感じない限り、子供が泣き叫びだして保育士や先生方が困るという場合です。
子どもの置かれている条件で異なりますが、小さな子どもの集団、保育園や幼稚園、小学校などと子どもは関わっていくとき、子どもが母親と離れられなくてこれらの集団の中に入っていけない場合を幼い子どもの母子分離不全と言います。子どもの自立性が育っていないという意味です。ほぼ同じ意味で子どもが母親から離れて生活する訓練ができていないという意味です。母親と子どもとの結びつきが強すぎて、子どもが母親から離れて生活できないという意味です。その原因として母親が子供に対して甘い態度をして子どもを母親から離そうとしないという意味での使い方があります。いずれにしても子供に問題がある、母親に問題があるという意味です。
母子分離不全を指摘された子ども達を観察してみますと、子ども達は全て母親から遊ぶことが可能ですし、面識のない他の子供達の中にもその子どもなりに入っていけます。最終的には一緒に遊ぶこともできます。それでいて子どもが行かなくてはならない保育園や幼稚園、小学校だと入っていけない事実があります。母子分離不全と指摘されている子どもは、その子どもが行かなくてはならない保育園や幼稚園、小学校に問題があるという反応の仕方をします。
また母子分離不全と判断された子どもは、保育園や幼稚園、小学校に一緒に行く大人が父親でも、祖父母でも、同じように反応して泣き叫び父親や祖父母に抱きついてきます。それは父親や祖父母が子どもに甘すぎるのではないです。子どもは保育園や幼稚園、小学校が辛いから、そこから逃げ出したいから、同伴した父親や祖父母に抱きついて離れようとしません。子どもと母親との結びつきが強すぎ離れられなくて、保育園や幼稚園、小学校に入っていけないのではないことが分かります。
なぜ子どもが保育園や幼稚園、小学校に辛さを感じるかを知る必要があります。辛さとは感情(情動)ですから、その子どもなりの特有な反応です。保育園や幼稚園に入園するときに感じる辛さとは新奇刺激でしょう。今まで経験したことのない場所で子どもの集団に加わる経験をしていなかったという意味です。この場合は子どもが納得した状態で経験を繰り返すことで解決できます。子どもを強引に母親から引き離すことで解決しようとすると、子どもの心は傷ついてしまう(恐怖の条件刺激を学習してしまう)でしょう。母親と保育園や幼稚園で一緒に楽しく過ごすようにすれば解決します。
保育園や幼稚園を終えて小学校に入学する場合には、子どもにとって小学校は新奇刺激だけではないです。入学時に小学校に入ることを渋る子どもは新奇刺激の他に、程度の差は合っても既に子どもの集団で疼く心の傷を持っています。無理矢理に子どもを母親から引き離すことで子どもの心は疼き心の傷を広げ深めていってしまいます。母親から無理矢理に離された学校の中に、子どもがどれだけ楽しみを見つけ出せるかと言う要素も、その後子どもが自分から学校に通えるかどうかを決定します。
保育士や教師の立場から言うなら、自分立場子ども達のために働いている保育園や幼稚園、小学校の中に、子どもが母親に抱きついて入ってこないのは子どもに問題があると考えています。子どもと母親との間の結びつきが強すぎて、その結びつきを断ち切って子どもが保育園や幼稚園、小学校に入っていけないと考えています。そのように子どもを育てた母親に問題があると言う意味で、子どもが未だ社会性が育っていないから保育園や幼稚園、小学校に入っていけないという意味で母子分離不全という言葉を使っています。
子どもの立場から言うなら、自分が加わらなくてはならない保育園や幼稚園、小学校に問題があるから、保育園や幼稚園、小学校に子どが入っていきたくないと表現しています。それを無理矢理に入って行かそうとするから、母親に抱きついて行きたくないと表現しています。母子分離不全ではなくて、辛さから回避しようとする単なる回避行動で母親に抱きついています。
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