母体搬送とは、産科診療において、自施設で管理していた妊婦を、医療上の必要性から高次医療施設に、主に救急車で送ることをいいます。
先日奈良県大淀町立病院で、痙攣と意識障害を起こした妊婦を母体搬送する際、受け入れ病院がなかなか見つからなかったと報道されました。我が新潟県と異なり、奈良県は周産期医療の整備が遅れており、総合周産期母子医療センターがひとつもないとのことです。新潟県の産科医として、我が身は恵まれていると安堵した次第です。
ところで、今週さっそくNICU(新生児集中治療室)のある病院に母体搬送する必要が生じました。ただちに最寄の病院2箇所に受け入れをお願いしたところ、NICUが満床状態。次に近い病院も同様。そして、4番目に依頼した一番遠い病院が受け入れ可能でした。一安心・・・。
午後1時、救急車で出発。同乗した先輩医師が帰院したのは夕方になりました。先生は疲労困憊状態。なにしろ、搬送先は県内にもかかわらず片道160Kmもあるんです(汗)。奈良県大淀町から大阪まで70Kmだそうですから、新潟県の方が大変だということを認識した次第です。
日本地図をぱっと見ると、新潟県は、奈良県と三重県と大阪府を合わせた程広大なんです(涙)。 次回より母体搬送に同乗したら、出張手当を請求したいと思います。
もう一言、不妊症専門医の先生へ。
体外受精胚移植をするなとは決して申し上げませんが、多胎妊娠を作らないでください。NICUがパンクします。お願いします。
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新任地の図書室を探検していたところ日本の母体死亡
という本を発見、さっそく読みました。この本は、厚生省心身障害研究費「妊産婦死亡の防止に関する研究」の補助を受けた調査の症例集です。
対象症例は平成3年、4年に日本国内で死亡した妊産婦170例です。若干古いかもしれないという印象を抱きつつ一気に読みましたが、そういった懸念は不要でした。最近報道された母体死亡3例(福島県1例、奈良県2例)の類型もこの症例集に求めることが出来ます。
この本は、わが国の産科医療システムの特徴として1施設あたりの産婦人科医師が1.36人(米国6.69人、英国7.1人)と極めて少ないこと、さらに緊急時に全身管理を担当する麻酔科医師も0.21人(米国4.95人、英国2.99人)と少ないことを指摘しています。そして妊産婦死亡を減少させるためにはマンパワーと設備の充実が重要で、それには分娩施設の集約化が必要であると提案しています。
本来なら、集約化は周産期医療の向上を目的に、積極的かつ合理的に推進すべき事柄です。しかし現状は、勤務が過酷であるとか訴訟が多いといった理由から産科医がどんどん減少し、やむなく自然消滅的に集約化しているといった感じです。なんか、皮肉めいていますね。
さて、朝のジョギングでもするか・・・・。
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