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前回、タミフル騒動に対するマスコミの報道について、オレ様な見解を述べた。その後の経緯を見守っていたが、マスコミの論調が余りに非科学的・情緒的であり、医学・医療、そして医療行政が万能でなければならない、とする迷信を益々国民に吹き込んでいることに対し、益々やるせない気持ちをつのらせている。
ここであえてもう一度発言するが、この異常行動により子どもを亡くされた方、ケガを負わされた方には、慎んでお悔やみ申し上げる。
また私は中外製薬とも全く関係ないこと(大学へ来ている担当者さえ知らない)を附記しておく。
これを前提にしても、マスコミ・知識人の「厚生労働省、製薬企業をスケープゴートに!」という一連の報道の異常さは目に余る。
私がまたタミフルについてこのブログで意見を言いたくなったには、有名な立花隆氏が日経BPに掲載した、次のような記事を見たからである。
「第102回タミフルに隠された真実:第二の薬害エイズに発展か(http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070324_tamiflu/)」
良く読んでみると、某NPOが公開しているデータ(タミフル内服群で、1日目の異常行動発生率が高い)がほとんどの根拠であり、これをもってして、「厚生労働省は何にも手を打たなかった」という、薬害エイズの際に使用されたロジックを展開するのだ。
「知」を標榜する立花氏にしては、余りにお粗末なレトリックである。
とは言え、最近の同氏は「東大はこんなにレベルが下がっている」という大昔から皆が認知してきたこと(東大生はみんなウルトラ天才であるとする幻想:もちろん優秀な人は沢山いますが)を、わざわざ声高に言い続けるネタを探すために、東大で講義をしているらしいが。
こんな風説を流される厚生労働省と製薬会社は、たまったものではない。このような理論がまかり通るようになれば、日本では新型インフルエンザが登場した途端、多くの国民の命が失われることになる。
従って、私は医師・科学者として、このようないい加減な論説は看過できないのだ。
薬害エイズと今回のタミフル騒動には、根本的な違いが2つある。
このことを、オレ様が指摘しておこう。
(1)薬害エイズは混入物(紛れ込んだウイルス)が原因であり、タミフルは本来の薬効を担う活性分子の副作用の可能性についての議論であること。
(2)薬害エイズでは、既に輸出元のアメリカで規制が行われていた事実を把握していながら、厚生労働省が国内で規制をしなかったことに関する点が問題であること。一方タミフルの場合は、海外での頻発事例の報告(もちろん散発事例はある)はなく、厚生労働省の立場としてみれば、タミフルを積極的に規制するだけの科学的根拠が無かった、ということ。しかもその検討を斑会議では進めていた段階であること。
従って今回のタミフル騒動は決して薬害なのではないのだ。あくまで、まだ検討途中の段階であり、異常行動をタミフルのせいだと結論するには、まだ余りに科学的根拠に乏しいと言うことだ。厚生労働省としては、そうしか判断しかできないではないか。
このことを考える上で、非常に参考になる記事が今日の日経メディカルに載っていた。
「薬剤溶出ステント(DES)とベアメタル・ステント(BMS)の優劣は? NEJM誌が異例の特集、5本の論文掲載」
知らない方のために簡単に解説しておく。
動脈硬化で心臓を栄養する血管(冠状動脈)が細くなったり、詰まったりする時に、バルーンやその部分にステントを入れる治療があることはご存知だろう(血管形成術+ステント留置術)。1990年代までは、これら治療の後に起こってくる再狭窄は40%程度にものぼり、大問題であった。それをほとんど解決したのが、2000頃に登場したDESだ。
但しこのDESにも副作用が起こる。急性の血栓性閉塞だ。これが起こると大変である。急性の心筋梗塞になり、かなりの症例では急死してしまうからだ。
事を重く見たアメリカFDAは、これを科学的に分析するため、色々なグループで行われている対照比較試験を検討した。それに関連する5論文が、アメリカで最も権威のあるNew England Journal of Medicineに5報まとめて掲載された。これを報道したのが以上の記事である。
ちなみに、先日行われた日本循環器学会では、このDES使用時の急性血栓の発生頻度は、日本では欧米よりかなり少なかったそうだ。
さて、以上をお読み頂いた方は、今回のタミフル騒動と比較して欲しい。
(1)DESについて、FDAは急性血栓を引き起こすこと、これが致死性であることを充分に知っていたが、その結果DESをアメリカ国内で全面使用禁止にしたのか?
(2)使用禁止にしなかったFDAを、アメリカのマスコミが「薬害だ!」として叩いたか?
(3)欧米で急性血栓が重大な問題だと解っていたのに、厚生労働省が日本国内で使用禁止にしなかったことを、マスコミが叩いたのか?
立花隆を初めとする日本のマスコミは、以上のDESの例をしっかり再考して頂きたい。
疑わしきは罰する。それは一つの考え方であり、それがBSEの時のように国の方針である場合もあるだろう。しかし医薬品にそれを適応した場合に、失われるベネフィットはどう判断するか?
アメリカのうらやましい点は、そのような判断を迫られた場合、極めて理性的、つまり医療をリスク/ベネフィットで論理的に処理しようとする行政、患者、医師、そしてマスコミの共通認識だ。
そして問題については、アメリカは必ず臨床試験により、時間を掛けて科学的に判定して行くことができる。その結果を、権威ある雑誌に掲載する。つまり科学的な検証がしっかりと進められているのである。
今日のオレ様な一言:
日本の医療を真の意味で遅らせているのは、副作用の発生について幼稚かつヒステリックな反応しか出来ない立花隆のような一部の知識人とマスコミではないのか? このブログを読んだ方は、是非一度よく考えて頂きたい。
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