手術料増も給与増えず 特定看護師に外科医の期待/日本外科学会定期学術集会

2010414   提供:Japan Medicine(じほう)

 日本外科学会定期学術集会が10日、名古屋市で開かれ、外科医の労働環境問題に関する特別企画では、2010年度の診療報酬改定における手術料の大幅アップを評価しながらも、外科医の給与改善にはつながらない現状が指摘された。その現実を踏まえた上で、特定看護師の試行に対しては、外科医療現場で期待する声が高いことも報告された。

ドクターフィーで手術技術の質評価システムが必要

 調憲氏(九州大消化器・総合外科)は、今回の診療報酬改定において九州大病院の年間手術症例1000例で、5100万円の増収が見込まれているとした。

しかし、九州大病院関連20病院で見ると、18病院の病院長は、今回の改定で手術料アップという実績があるものの外科医の給与アップには否定的で、残り2病院だけが外科医の年俸に還元させることも考えたいと回答するにとどまったと報告。

特に、中医協でも議論の俎上に上がったドクターフィーについては、「技術評価システムがない。手術技術の質の評価に耐え得るシステムの構築が必要だ」と指摘した。

  外科医とチーム医療を組む看護師の業務拡大については、複数の講演者から意見が述べられた。調氏は、特定看護師の制度化について、国家資格としての法的整備や教育の充実、責任の明確化など一定の条件付き賛成も含めると、ほぼ9割程度が賛成しているとした。

  西田博氏(東京女子医科大心臓血管外科)も特定看護師の試行実施へ言及し、「これからが大事だ」とし、看護師が行っている医行為の実態調査やモデル事業対象施設の選定と具体化、教育と評価に関する第三者機関の設立などを課題に掲げた。  特に、同氏は、「一般看護師の業務拡大が先という意見に対して、医行為の一部を担おうという以上、看護師であれば誰でも行っていいようになってしまうような拡大は非現実的ではないか」と指摘。

また、「いま一般看護師がやってしまっていることができなくなるという意見もあるが、リスクの高い状況でやってしまっているのであれば、インセンティブ、モチベーションもなく、国民も望まない」と、チーム医療の推進に関する検討会で、日本医師会の見解への反論を述べた。

特定看護師は患者、国民の理解拡大を

 一方、日本看護協会の坂本すが副会長(東京医療保健大教授)は、医師と看護師の役割分担について、08年度厚生労働科学研究報告書から解説した。

坂本氏は、外科領域において特定看護師などへの期待が高いことを踏まえながら、「看護師業務のグレーゾーンは明確にしていくことが必要だが、これまで看護師が行ってきたことが患者にとって有効な治療として寄与しているということがある。

その一方で、看護師が行えると通知されてもやっていない現状もある」とし、やるべきことはやっていくことが必要だと指摘した。その上で、特定看護師については、医師が行っている医行為の特定の範囲について看護師が行えるように試行していこうというものだと説明した。

  セッション後、本紙の取材に対して坂本氏は、「外科領域での特定看護師への関心が高いことは十分認識できた。検討会での結果を踏まえて、早急に次のステップに進んでもらいたいと期待している」と述べた。新職腫としての法制化については、「試行結果から判断されるだろう」と述べ、特定看護師の役割が、国民、患者に十分理解が、得られるようPRしていくことが必要とした。

そもそも、今回の診療報酬改訂での引き上げ率は、0.003%であったことは周知の事実です。

そんな中で、外科の手術手技料が値上げされ、それが外科医の待遇改善と収入増に結びつかないのは、当たり前といえば当たり前ではないでしょうか。

これまでの医療費削減政策のもとで、病院経営そのものが瀕死の状態に置かれて来た医療機関がほとんどです。

スズメの涙ほどの「収入増」では、個別の科や医師の収入アップへ行く前に、病院の赤字解消に投入されざるを得ないことは、以前から指摘されていることです。

であるならば、医師の待遇改善の中での「収入増」に関して、その実現尾ためには、「診療報酬の大幅アップ」を実現する以外に道はありません。

外科学会でもそうした事が議論されているとは思いますが、学会の総意と「診療報酬の大幅引き上げ」を宣言すべきではないでしょうか。

さて、医師の待遇改善との関連でも「特定看護師制度への賛成率90%」が語られているようです。

私は、これが外科医の本当の意見の集約であるとは思いません。

私の周りの外科医の中にこうした意見を述べる先生もいません。

医師の指示の下での、投薬変更ならいざ知らず、創縫合やIVH挿入、人工呼吸器の抜管など、患者さんの身体状態にかかわる手技をいくら『トレーニング』を受けている看護師といえども任せる医師はそう多くはないでしょう。

簡単な処置だとしても、そこから重篤な病態へ発展する例は、数多くあげられますし、簡単だと思っても充分な観察・考察と慎重な手技の徹底を教育されているのが「医師教育」であります。

もし、そうしたことを推奨するのであれば、看護師としてではなく、医師として「医学部」で養成するのが本筋ではないでしょうか。

これを処置を受ける患者さんの側からみて、医師が直接処置する病院と「特定看護師」に代用させる病院のどちらを選択するかといえば、医師が行う病院を選ぶのは明らかです。

「医療の質の向上」をいいながら、一方で「特定看護師」を用いて、実は、「医療の質を下げる」働きを進めているのが今回の制度変更です。

現行の制度下であっても、医療現場で医師・看護師の働き方にゆとりがあれば、上げられているほとんど問題は解決可能なものばかりです。

何も新たな「特定看護師」まで養成する必要は全くありません。

むしろ、IT導入によるPC操作の代行やペーパーワークへの事務部門からのかかわりのほうがよっぽど医師の待遇改善に寄与するものです。

こうした、論理的には破綻している「特定看護師」制度に固執する背景には、作り出された「医師不足」とそれを「解決」するかのような政策を立案し、医療現場に「二本立ての指揮系統」をつり出すことがあります。

最初は、「医師の指示下」として「特定看護師制度」として導入し、いずれは、医師の指示なしでもいいアメリカ式の「ナースプラクティショナー(PN)」へと持ち込もうとしていることは明らかです。

さらに、医療技術の評価において「二本立て」が持ち込まれ、診療報酬上も「医師編」と「看護師編」を区別して、「看護師編」を安価に設定し、医療費削減の一助にとの構想も否定できません。

となれば、「お金のない人は、医療費の安い看護師さんに縫合してもらえ!!」となる日が来るのもそう遠くはありません。 

「特定看護師制度」は、こうした側面からも検討しなければならない重要な課題ではないでしょうか。

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