国立大学医学部長会議常置委員会(安田和則委員長)は6月12日、国立大学が抱える国からの借入金約1兆35億円の解消などを求める要望書を、本日付で麻生太郎首相など関係閣僚に送付すると発表した。財政制度等審議会(財政審)がまとめた来年度予算編成への建議を受けたもの。安田委員長は都内で開いた記者会見で、「この足かせがなくなれば、国民への医療に貢献できる」と述べた。(熊田梨恵)
要望書は、医学部を有する42国立大学が抱える国からの借入金総額1兆35億1132万4000円について、「国立大学法人経営の大きな足かせとなっている」として解消を求めている。
法人化前の医学部を有する国立大学は、病院建物の建造や医療機器の購入などの際に国から一部融資を受けており、大学病院で得た報酬から毎年返還している。加えて、法人化した2004年度以降は大学の運営費交付金が年に1%ずつ削減されており、国立大の経営悪化に拍車をかけている。国立大学協会の調べによると、借入金が最も多いのは東大で約679億円、最も少ないのは大分大で約59億円。
要望書はまた、2010年度に独法化する国立がんセンターの借入金については与謝野馨財務・金融・経済財政相が来年度予算で「財政状況をより健全に」する意向を表明していることにも言及し、「国立大学病院の借入金も国立病院と同じ構図でできたのだから、全国の国立大の借入金の解消も可能」とした。
嘉山孝正委員は会見で、「国の事業による借金を、国家公務員である我々医師や看護師、事務員らが附属病院で収入をあげて、働いて返しているという国は他にない」と批判。安田委員長は法人化前の国立大が現在の独立行政法人国立大学財務・経営センター(文部科学省管轄の旧国立学校財務センター)から融資を受けていたことについて、「高い利子の借入金だが、当時は国立だったのでそれ以外に選択肢はなかった」と述べた。建物の老朽化や待ち時間の長さなどの国立大附属病院のイメージについて、国民からは医師や教官が悪いと思われているとして、背景事情を知ってほしいと訴えた。
要望書ではこのほか、
▽低医療費政策を改めて医療費をOECD加盟諸国並みにまで引き上げる
▽人口当たり医師数、高等教育費をOECD加盟諸国並みにまで引き上げる
▽医学部教職員を国際水準並みにするため少なくとも現状の約3倍にまで増員―などを求めた。
また、建議が提言する医師の計画配置については、「国立大医学部における教育には国税を使っているので、学生の専門の決定や配置に関しては規制が導入されてもよいという意見は、基本的人権の見地から見ても誤り」と主張している。
また、財務省や厚生労働省の公開会議で使用されている資料が財政審の議論に使われていないと指摘し、「科学的な証拠を持たない意見や合理的とは言えない海外資料の解釈が採用されている」と遺憾の意を表明。
その上で、医療や医学教育の現場に即さない議論によって来年度の予算編成や政策決定がなされることを危惧するとした。安田委員長は「一番欠けているのは医療の質を担保しようという点。医療について教育というインフラを考えず、"みてくれ"だけ整えても必ず崩壊する。医療や教育の基盤は相互に関連するもの」と、建議が歳出改革路線を堅持する方向であることを批判した。
極めて当然なのが国立大学医学部長会議要望書です。
分かり易く言えば、これまでに国立という名の下に作られた借金が、独立行政法人化された後もその大學の借金として残された結果、経営的な重圧として残っているのです。(これからの経営的な比重は大きくなるかもしれませんが・・・)
ましてや、現在の医療費削減政策が続けられる限り、大學といえども経営的な改善は、無いか、あっても微々たるものです。
一方で、そうした借金生活の大學では、充分な医学教育や医学研究はますます困難になりつつあります。
低医療費政策改善や医師数の増加と同時に要望書の中で言われている「高等教育費の引き上げ」と「医学部教員の3倍化」は、これからの日本の医師と医学・医療の「質」を確保して行くためには、避けて通ることが出来ない課題です。
国公立大学を「独立行政法人化」したところに、大きな分岐点がありました。
公教育に競争原理を持ち込んだ・・・まさに新自由主義的政治経済路線が高等教育の中に持ち込んだのが「独立行政法人化」なのです。
世界の教育行政環境が、高等教育費無料化を目指す流れになりっている現在、国際的には、大學での研究費やスタッフもふくめた教育環境が充実されようとしています。
現在、日本政府のとっている「民営化」の名の元の大學環境の劣化は、当然医学部と医学部教育にも顕在化しています。
また、医学部学生の専門配置への国家介入に対しても、「基本的人権」の見地から反対を表明しています。
こうした時期に発せられた「国立大学医学部長会議要望書」は、重要な意義を持つものだと考えています。
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