豚狩り

(5月2日北海道新聞 卓上四季)

エジプト政府による新型インフルエンザ「対策」が物議を醸している。三十万頭という国内の豚すべてを殺してしまうという。多数派のイスラム教徒には、豚が「不浄な動物」とされることも背景にあるようだ。キリスト教徒や飼育業者が反発している

豚から人に感染することはまれだ。豚肉を普通に食べても問題はない。だから国連食糧農業機関(FAO)も、エジプト政府の対応は「誤りだ」と言っている。国ぐるみのパニック、過剰反応なのだろう

よくわからない不安があると、目の前の何かに責任をかぶせたくなる。人の歴史に時々みられることだ。異端を排除する魔女狩りがあったように「豚狩り」が起きてしまう

誤解はエジプトに限らない。風評被害を防ぐために、世界保健機関(WHO)は「豚インフルエンザ」という呼び方を、「インフルエンザA型」へと改めた。日本政府は法律に基づき「新型」としている

日本国内に感染者が広がった際の社会の反応も気になるところだ。感染者は病気をうつされた立場なのに、責めるような言動があってはなるまい。それでは「患者狩り」だ

国内も混乱しているが、被害が大きくなるのは途上国だ。「豊かな国では比較的軽いが、途上国では致死率が高まりより深刻となる」とWHOはみる。「人類の危機」と呼ばれるのはそのような意味だ、ということも意識しておきたい。

エジプト政府による「豚狩り」と言うものに対して、同じような危惧を抱くのものの1人です。

「新型インフルエンザ」として、世界的な流行を防ぎ、有効な手だてを打ち立てるためにも、各国の適切な対策が要求されているところです。

そうした中でのエジプト政府の「豚狩り」の事態です。科学的根拠もなく、「豚インフルエンザ」なる呼称から豚に原因があるとの短絡的な発想を持ち、では、国内の全ての豚を殺す・・・・。

あまりにも不必要な危機意識を煽りすぎるのではないでしょうか。大切なことは、正確な危険度の認識を国民に徹底させることです。

我が国においても、舛添大臣をはじめ政府・厚労省の冷静な、しかも素早い、徹底した予防治療体制の構築が望まれています。

また、国内の医療体制が未熟であったり、症状が発症しても経済格差のために医療機関への受診が遅れる事は、開発途上国のみならず、無保険者がおおいアメリカでも見られているのかもしれません。

WHO をはじめとして、国連機関は、「新型インフルエンザ」が多発している国と地域に、重点的に人的貢献も含めた技術・財政援助を直ちに開始すべきではないでしょうか。    

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 保険適用を決めるのは役所ではなく国民です。 

   鈴木寛   2009511日 医療ガバナンス学会 発行

 先日、慢性骨髄性白血病の話を、患者の方々から伺いました。原因不明で誰で
もなる可能性があり、全国で8千人ほど患者さんがいらっしゃいます。

 以前は造血幹細胞移植しか助かる道がなかったのですが、2000年に登場し
て日本でも翌年から使われ出した薬「グリベック」で事態は一変。薬が効かなく
ならない限り何年でも健常者と変わらない生活を送れるようになりました。

 ところが、命の不安から解放された患者さんたちを別の悩みが襲っています。
この薬は1錠3200円強。やめると一気に悪くなる可能性があり、悪くなって
から飲んでも効かないため、ほぼ毎日4錠飲み続ける必要があります。健康保険
の高額療養費・多数該当という制度により軽減されますが、それでも薬代は毎月
44400円。
年約53万円の支払いが一生続きますこのままでは生活苦、失業、
退職、子供の学費増等の理由で、飲むのをやめる決断をされる方も出そうだとい
います。

 この不況下、患者さんたちは、自己負担額が毎月1万円で済む厚生労働大臣指
定の「長期高額疾病」として認めてもらえないかと強く国に要望されています。
長期高額疾病とは、高額な治療を著しく長期間受けなければならない場合に認め
られるもので、今までにHIV、血友病、人工透析を行う慢性腎不全の3種類が
指定されています。

 しかし、厚生労働省の担当は「保険者の方々からの理解が得られないと思うの
で難しい」と断り続けています。

 グリベックの場合、世界標準の第一選択で、命を長らえるには生涯飲み続ける
必要があるのですから、明らかに指定の要件を満たしています。他の薬も、要件
を満たせば指定追加すればよいと思います。要件合致にもかかわらず、認めない
権限を、誰が厚労省の担当に与えたのでしょうか。

 
指定による保険の負担増は総医療費の一万分の一以下です。しかも費用負担す
るのは厚生労働省ではなく、保険者と納税者である国民です。この30億円を払う
べきか払わざるべきか患者も含めた3者に直接問うたらよいのです。

 中医協を、そのような真剣な熟議の場として再編することを考えてもよい時期
ではないでしょうか。

 慢性骨髄性白血病に対する「グリベック」のみならず、悪性腫瘍に対する化学療法剤の保険適応の未承認は、多くの患者さんから適切な医療の機会を奪っているのが現状ではないでしょうか。

 また、未承認問題は一方で、混合診療の導入を主張していたかつての「規制改革会議」のメンバーたちに「唯一の論拠?」を与えていたのも事実です。

 現在の日本の保健医療制度の中での未承認薬の使用は、保険診療にはならず全額自己負担となります。

 そうした中では、未承認薬だけでも自己負担で使用できないものかという患者さんの「素朴な希望」を逆手にとり、患者自己負担の増大と国民皆保険制度の崩壊に繋がる混合診療の導入を盛んに主張していたのです。

 こんかいの「グリベック」に象徴される様に、すでに薬効の確認と副作用対策が立てられているのであれば、厚労省は速やかに保険適応承認の立場に立つべきです。その結果、お金のあるなしで「グリベック」使用の許諾が得られるのではなく、全ての適応患者さんとご家族に希望を持って頂くことが出来るのです。

 そして、混合診療導入を策する一部、財界・御用学者の「根拠」もなくすることが出来るのではないでしょうか。

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