緩む文民統制 期待と不満渦巻く船出

(2009年4月15日 東京新聞)

 十四日、広島県の海上自衛隊呉基地。旧日本海軍から引き継いだのは、戦艦「大和」を建造した呉基地(鎮守府・工廠(こうしょう))だけではない。ソマリア沖へ向かう護衛艦「さざなみ」「さみだれ」の出航に合わせて演奏された行進曲「軍艦」(軍艦マーチ)も継承した。

 自衛隊初の海外派遣となった一九九一年のペルシャ湾掃海艇派遣では、帰国時、首相官邸から演奏中止を求められたが、海自は海部俊樹首相(当時)の到着前に演奏した。

 その後の派遣で、あの勇壮なメロディーを気にする首相はいない。出航行事に出席した麻生太郎首相は「軍艦マーチ」が響く中、手を振り、見送った。

 派遣根拠は自衛隊法の海上警備行動。海賊対処は海上保安庁の仕事だが、政府は「海保では無理」と判断して自衛隊を選んだ。

 自衛隊法だけを根拠にした本格的な海外派遣は、ペルシャ湾以来、十八年ぶりだ。政府・与党は武力集団である自衛隊の海外派遣は慎重を期す必要があるとの判断から、九二年、国連平和維持活動(PKO)協力法を定め、陸上自衛隊をカンボジアへ送り出した。

 インド洋やイラクへの派遣は、それぞれ特別措置法を制定して対応した。十七年間積み重ねた「海外派遣法を根拠にした派遣」の実績は、「日本の船舶を守るため」という理由でなし崩しにされた。 「これは当面の応急措置です」。浜田靖一防衛相は一月、準備を指示し、こう繰り返した。自衛隊派遣のための新法案が国会提出されれば、審議で明らかにされるだろう問題点は水面下に沈んだ。

 いつ、どこで、どんな部隊が活動するのか、PKO協力法は実施計画、テロ、イラク特措法は基本計画で閣議決定される。また活動の国会承認か、国会報告が義務づけられ、国会も関与する。これにより、政治家による自衛隊の「文民統制」が形づくられる。

 だが、海警行動にそうした規定はない。「さざなみ」「さみだれ」は派遣期間さえ、非公表。「決めていない」と話す海自幹部もいる。そして問題が起きれば、浜田防衛相一人の責任になりかねない。珍しい丸投げの背景に、自衛隊海外派遣への「慣れ」と「緩み」がうかがえる。

 十三日に閣議決定された海賊対処法案が成立すれば、二隻にも適用される。同法は、自衛隊の活動を定めた対処要項を首相に提出。基本計画の国会への提示も義務づけられ、過去の海外派遣法と同様、内閣と国会が責任を負うことになる。

 「だが、今の国会情勢で成立するだろうか」と防衛省幹部。そもそも、巡視船で対応できないから護衛艦派遣となったのに「海賊対策は一義的に海上保安庁」と書かれた法案を、政府は本当に成立させる気があるのか。幹部は「浜田防衛相が派遣を渋るから提出したのでは」と疑う。 

これまでみてきたように、ソマリア沖での活動を対米支援の好機とみる海自幹部、主役の座を奪われ立ち尽くす海上保安官、緩む文民統制に戸惑う防衛官僚、という三すくみの構図。期待と不満の不協和音だ。 =おわり

 (編集委員・半田滋、社会部・西岡聖雄が担当しました)

こうした、「軍港」呉の実態を見ると、自衛隊のソマリア派遣は、海賊対策に名を借りた、「自衛隊の海外派兵」であることが実感されます。

ましてや、「軍艦マーチ」で艦船の出入港を送迎するなどとは、札幌の住んでいると分からないことです。

1991年以降、着実(?)に積み重ねられて生きた自衛隊の海外派兵です。

恐ろしいのは、こうしたこと徐々に慣らされ、「軍艦マーチ」の演奏が当たり前になることです。

軍国主義復活的雰囲気を作ろうと腐心している、田母神氏らの軍人的論調が思い出されます。

本日、国会に提出された「海賊対処法」の審議を徹底的に行って、自衛隊の海外派兵に歯止めをかけておく必要があるのではないでしょうか。

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