「戯言」「猛省を」日経社説に関係団体から抗議多数『レセプト完全電子化を後退させるな』(39日)の撤回を要求

 

2009312日 村山みのり(m3.com編集部) 

 

 
 39日、日本経済新聞朝刊に掲載された社説「レセプト完全電子化を後退させるな」に対し、様々な医療関係団体より抗議文書・声明が上がっている。神奈川県保険医協会は310日に談話を発表、日本医師会も311日の記者会見で反論を述べた。

 神奈川県保険医協会・保険診療対策部部長の入澤彰仁氏(レセプトオンライン請求義務化撤回訴訟・原告団幹事長)は、『財界のお先棒を担ぐ日本経済新聞39日付 社説「レセプト完全電子化を後退させるな」は、社会の現実を知らない「構造改革主義者」の戯言』とする談話を発表。

 

 また、日本医師会・中川俊男常任理事も記者会見において「日本経済新聞の社説に対する反論」を発表し、「事実誤認に基づく内容であるだけでなく、全国各地で真摯に地域医療を支えている医師や医療関係者と患者との信頼関係を揺るがすものであり、断じて容認できない」と厳しく批判した。 問題となっている主な記述箇所と反論内容は以下の通り

 

 現在医療界が反対しているのは「レセプトオンライン請求義務化」である。しかし、同社説では、この言葉は一切使われず、「完全電子化」としている。入澤氏は、談話において「医療でIT化が遅れているために医療の質が向上しないとでもいうような文章。論点を“請求方法”から“医療データの活用方法”へすり替えている」と指摘。費用の請求方法と患者国民の享受する医療の質の向上を混同しているとした。
 

 同様に、「電子請求があまねく行き渡れば、病気の種類ごとに治療方針を標準化する作業にも弾みがつく」との記述についても、「レセプトデータはあくまでも請求明細書なので病気の種類ごとの“標準的な値段”の整理には役立つかもしれないが、治療方針のエビデンスを得るのは不可能」とし、「社説は請求事務効率化・人件費圧縮による医療費抑制を主張するが、実際には病気ごとの標準的な値段をコントロールすることによる医療費の抑制を考えていることは明らか」と指摘した。

 治療方針の標準化については、日本医師会・中川俊男常任理事も「医師の裁量権が失われ、さらに患者の特性に応じた医療が制限される恐れがある。新たな医療・高度な医療へのインセンティブが弱まり、医療の平均水準が低下する」と懸念を示した。

 日本医師会・中川俊男常任理事は、「これ以上医療崩壊を加速させてはならないという切実な危機感からの反対を“言い訳”と歪められたことは極めて遺憾」と反論。

   社説で言及されている「診療所のシステム投資には税制上の支援策」に当たる「情報基盤強化税制」は70万円以上が対象であり、かつ診療所が活用する製品で基準条件を満たすものがないこと、「独立行政法人による低利融資」は独立行政法人・福祉医療機構の「経営安定化資金融資」を指すと思われるが、これも医療機関の負担での借り入れであり、厳しい医療費抑制の中では医療機関をさらに困窮させること、「診療報酬政策でも電子化への加算制度を設けた」というが、診療報酬の電子加算はわずか3点(30円)、かつ初診時のみの加算であり、あまりにも実態とかけ離れていることなどを示した。
 

 同記述については、入澤氏も「控除があろうが融資があろうが、余裕がない医療機関にとっては意味がない」と批判。「電子化加算は一月20日間の診療で新患10人で計算した場合、請求電子化に必要な費用300万円を充当するには500カ月、40年以上かかる」とし、「さらに、電子化加算はオンライン請求義務化導入になるとなくなる。現に昨年4月から400床以上のほとんどの医療機関がオンライン請求義務化となり、加算が廃止された」と指摘した。

 入澤氏、中川氏ともに、そもそもオンライン請求義務化は、医療関係者の声を聞かずに規制改革・民間開放推進会議や官邸の主導で決定された「小泉構造改革の負の側面」そのものであると主張。入澤氏は「財界が医療を食い物にしようとすることに対して我々が声を上げ、患者国民に実態を伝え、訴訟を起こし、世論が動き始め、与党が問題視したことにあせって、財界の代弁者である日本経済新聞の社説で論陣を張ったに過ぎない」とし、社説の撤回を要求している。

 

 中川氏も、日本医師会として今回発表した抗議文を日本経済新聞へ送付するとともに、オンライン請求完全義務化の根拠となっている20076月に閣議決定された、「経済財政改革の基本方針2007(骨太2007)」に基づく「規制改革推進のための3か年計画」の今月中の撤回を、引き続き強く求めていく考えを示した。

 

  「レセプトオンライン請求義務化」は、全国の医師・医療団体から反対意見があがっています。

 聞くところによると、与党内部からさえ反対意見が出ている始末です 

さて、この電子化を最初に正式に持ち上げたのは、あの有名な「規制改革・民間開放推進会議」であることは、すでにご存じのかたは多いと思います。2005年12月21日の第2次答申に明記されています。http://yb-satellite.co.jp/main/iryou/archives/mw2926.pdf

 

当時の座長は、オリックスの宮内義彦CEOでありました。

 宮内氏と言えば、「かんぽの宿」問題で、郵政民営化の中で暴利をむさぼろうとしたことが明らかにされました。

 しかし、宮内氏らは、郵政民営化だけではなく、「医療のIT化推進」の中で医療機関へのITメインテナンスやリース業務などでも自社への利益誘導を計ろうとしているのではないでしょうか。 

こうした自己利益のためにだけ、国民の財産や国民の医療制度を明け渡すことは絶対に拒否しなければなりません。

 「小泉改革」なるものの負の遺産(国民への背任?)の事実が、これからも明らかにしなければならないと思います。

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研修医学徒出陣に反対署名 

 医師養成の在り方を大学の枠を越えて考えようと集まった全国の医学生でつくる「医師のキャリアパスを考える医学生の会」(代表=川井未知子・東京女子医科大学医学部4年)は、2010年度から見直される新人医師の研修制度について、「教育体制の整わない病院にも未熟な医師を強制的に配置し、国民が将来享受する医療の質の低下を招くもの」などと反対した上で、「都道府県別募集定員の上限設定」と「病院別募集定員の設定」の撤回を求める署名活動を開始した。(新井裕充)


 医師免許を取得した新人医師に2年間の研修を義務付ける「新医師臨床研修制度」は2004年度から導入された。しかし、研修先を自由に選べるようになった結果、研修医が大学に残らなくなり、地方の病院に医師を派遣していた大学病院が関連病院から医師を引き揚げ、地方の病院が医師不足に陥ったという問題点が指摘されていた。

 このため、文部科学省と厚生労働省は昨年9月から見直しに向けた議論を進め、今年218日にまとめた最終報告に、研修医を医師不足の地域に誘導できるような仕組み(募集定員の調整)を盛り込んだ。このような「医師不足を解消する」という観点に軸足を置いた見直しに対し、「良い医師を育てるという視点が欠けている」との批判もある。

 そうした中、200人を超える全国の医学生でつくる「医師のキャリアパスを考える医学生の会」は227日、「臨床研修制度改定における計画配置について」と題する声明文を発表。
 「医師不足問題と医師の教育は切り離して扱うもの」と指摘し、医師不足の地域に研修医を派遣する仕組みに対して、「地域医療の支えとして望まれているのは研修医ではなく、臨床経験豊富な熟練の医師であるのだから、研修医がよい教育を受けることこそ、日本の将来の医療を担う優秀な医師を育てるために必要である」と主張している。

 その上で、「都道府県別募集定員の上限設定と病院別募集定員の設定の撤回」を求めている。

■“
徒弟制度からお客さん扱い
 「新医師臨床研修制度」の見直しをめぐっては、「現在のような見学研修は意味がない」「医師不足なのだから研修医を現場でもっと活用すべき」との意見もある。226日に開かれた厚労省の「医道審議会医師分科会医師臨床研修部会」の終了後、同省の担当者は記者団に対し、「研修医はお金をもらって働いている医者なのだから、医師偏在問題に貢献すべきだ」と話している。

 「新医師臨床研修制度」の導入は、劣悪な労働環境にあった研修医を解放させる1960年代のインターン闘争の延長線上にあるともいわれる。基本的な診療能力(プライマリ・ケア)の獲得を目的とするものの、最大の狙いは、医学部教授の権威を背景にした「医局講座制」の解体だったとされる。医師の人事権を大学医局から奪い取り、研修医の獲得を「自由競争」に委ねた新制度により、教育制度や待遇面での充実が図られ、研修医の質が向上したと評価する声も多い。もはや、従来のような徒弟制度を望む声は少ない。

 しかし、へき地や離島のように医師不足が深刻な地域に医師を供給する「大学病院の医師派遣機能」が、地域医療を支えていたと評価する声もある。また、現在の制度について、「専門医の下をぐるぐる回っても、本当の意味でのプライマリ・ケアの教育にはならない」と皮肉る声もある。研修医をお客さん扱いする「ゆとりの教育の弊害」を指摘する声もある。

「良い教育」とは何か
 今回、「医師のキャリアパスを考える医学生の会」が発表した声明文では、「研修医を単純に労働力としてのみ考えている風潮もあるが、卒後数年間にきちんとした指導医のもと充実した教育を受け経験を積むことが、将来優秀な医師となる上で大変重要であるということは、疑う余地がない」としている。

 その上で、「教育環境の整っていると考える病院を選んだ結果、都会・地方にかかわらず教育に力を入れている病院に研修医が集まったのであり、それに国が介入することは、研修医からよい教育を受ける機会を奪うものである」と主張している。

 「医師のキャリアパス」を考えるために全国の医学生らが結集したことは、国が主導する政策形成の手法に風穴を開ける意味を持つかもしれない。ただ、今回の一連の動きからは、医学生らが望む「良い教育」とは何かが見えない。

 詳しくは、同会のホームページで。
 http://students.umin.jp/index.html
 署名はこちらから。
 http://students.umin.jp/syomei.html
更新:2009/03/13 12:50   キャリアブレイン

 

記事の引用が長くなりましたが、医学生や研修医が語る今回の厚労省や文科省が進めようとしている「研修医配置計画」への反対は、全く理にかなったことではないでしょうか。

元をただせば、2004年から開始された「新医師臨床研修制度」は、新自由主義路線に基づいた「聖域なき民営化路線」の一環でした。 

それまでの大学医局を中心とした関連病院への医師配置を「封建的徒弟制度」とし、それに変わる「自由競争・自由選択」の名の下に導入されたのが今回の制度です。

それまでの医局講座制を中心とした医師人事・研修・研究制度を否定した側面もありましたが、一方でそれまでの医師人事システム自体が乱暴に破壊されてしまったのです。

そうして、厚労省の本当の狙いは、一度制度を破壊しておいて混乱を招き、それを「解決」する過程で全国の医師配置へ国家の意志を反映出来るシステムの構築(医師配置の官僚統制?)ではないでしょうか。

(余談ですが・・・医療費と医療内容の統制は、DPCの導入で始まっています)

今日、大学においては、「独立行政法人化」でそれまでの大学の自主性が蹂躙されて「経営的側面」が重視され、大学病院ではDPCの導入で在院日数と利益確保の経営を迫られ、「若手医師の研修」を受け入れる余裕さえ奪われているのが実態です。

また、地方の研修条件の完備出来ない病院に数合わせために研修医を配置しても、研修医も指導医も共倒れになることは、当事者が一番よく知っていることではないでしょうか。

大切なことは、現在の医師研修制度をさらによくするために、当事者である医学生と研修医の意見を取り入れることです。

大学病院であれ地方の研修病院であれ、現在の「絶対的医師不足」の解消策を徹底的に進めることなくして、「医師研修条件の向上」はありません。

今回のように、顕在化した「医師不足」を今度は研修医の配置で乗り越えようとする(誤魔化そうとする)厚労省の官僚的、実用主義的な方法では、全く問題の解決になりようがありません。

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