介護施設

(12月29日 北海道新聞 卓上四季)

年末年始ですか? 特別なことはありません。年中、二十四時間態勢なんですよ-。札幌にある介護老人福祉施設「たんぽぽの丘」の大河内秀太郎施設長は穏やかにこう話す

入居している高齢者は障害や認知症など介護の必要な約八十人。いつも家族の訪問を楽しみに待つ。年の瀬、その思いは募る。せめて正月は家族の家で過ごしたいと願うからだ。しかし一時帰宅できる人は多くはない

帰宅先の多くは車いす対応ではない。入浴やトイレの介助は想像以上に困難を伴う。だから「迷惑をかける」と帰宅をあきらめている人もいるという。認知症が進んでいれば環境の急変で新たな混乱を招くこともある

昨年末の出来事が忘れ難い。車いすのお年寄りが喜びに輝く目で筆者を指さした。息子が迎えに来たと思ったらしい。介護士さんが人違いに気付いて「残念、違ったわね」とささやく。一瞬おいて、涙があふれてきた

気の毒なほどの落胆に心が痛んだ。家族を求める気持ちは、それほど強い。認知症は新しいことを覚えにくくなるけれども、人間の情まで失いはしない。そんなお年寄りたちが今年も施設で新年を迎えようとしている

正月でも、もちを詰まらせないため、雑煮は出ない。介護士たちはしめ飾りの下で福笑いなどに誘う。自分たちとて「特別な」休みは望むべくもないが、絶やさぬ笑顔でお年寄りに正月気分を贈る。

病院・介護施設でのこうした光景は、いわば年末のありふれた光景。

お年寄りが大切にする「盆と正月」、それぞれがご家庭で楽しいひとときを過ごすことができれば・・・・。

不況・リストラの嵐が吹きまくる今年の年末です。

お年寄りを一時引き取るにしても、例年通りのそれが困難な家庭の多いことが予想されます。

そんなことを見越して、看護師さんや介護士さんたちが心づくしの催しで、お年寄りの心を和ませる努力が払われています。

それは、経営困難が続く介護施設でのぎりぎりの努力です。

こうした実態が、果たしてこの国の為政者には届くのでしょうか。

ほぼ毎日、高級料亭や会員制バーをはしごする総理大臣には、こうした庶民のささやかな望みは理解できないかもしれません。

「後期高齢者医療制度」が多くの国民から反対され、「定額給付金」が8割近くの国民から批判されて、そして、「派遣切り」でホームレスが増えそうな今日、しかし、全く有効な手を打てずにいる麻生自公内閣です。

介護施設の中でささやかに営まれる「楽しいお正月」も本当は、楽しいわがやで過ごせるように、「豊かな老後」「確実な雇用」を保障できるような日本のを作り上げたいものです。

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ソマリア沖海賊 なぜ「海自艦」派遣なのか

20081227 西日本新聞)

 麻生太郎首相がきのう、アフリカ東部ソマリア周辺海域の海賊被害対策として海上自衛隊の護衛艦派遣を検討するよう浜田靖一防衛相に指示した。

 この海域で多発する海賊被害の深刻さや日本関係船舶の被害、国連安保理の制圧決議を考えれば、日本が海賊取り締まりに協力するのは当然だろう。

 しかし、なぜいきなり海自艦派遣なのか。自衛隊の海外活動にはさまざまな法的な制約がある。派遣には納得いく説明と国会での慎重な論議が必要だ。

 そのうえで、日本が取り得る有効な手だてを講じるべきではないか。拙速な海自艦派遣は、慎重であるべき自衛隊の海外派遣の範囲を、なし崩し的に広げることにもなりかねない。

 首相が海自艦派遣の検討を指示したソマリア海域は、紅海からインド洋への出口にあたる。年間に各国の商船約2万隻が行き交う海上交通の要路である。日本の船も2000隻以上が通航する。

 同海域での海賊発生件数はことし100件を超えた。昨年の2倍以上だ。被害は1隻数億円の身代金だけではない。国際貿易ルートの不安定化や船舶保険の高騰などで世界経済への打撃も大きい。

 国連決議に応じて、米欧を中心に20カ国近くが軍艦を派遣し、海上での監視活動や船舶護衛に乗り出している。貿易に依存する日本が手をこまねいているわけにはいくまい。国際社会と連携して有効な海賊対策を急ぐ必要がある。

 政府は海賊対策のための新法を制定して海自艦船を派遣する方向で検討に入っているが、「ねじれ国会」の下では法整備に時間がかかる。

 そのため首相は当面の措置として、現行法令でも公海上での活動が可能な自衛隊法の海上警備行動による海自艦派遣の検討を防衛相に指示したとみられる。

 しかし、海上警備行動による海自艦の活動には疑問や問題が多い。

 警護の対象が日本籍船や日本人が乗った船舶に限られるため、外国船が海賊に狙われても警護できない。海賊に攻撃された場合、どこまで応戦できるのか。武器使用基準もあいまいだ。

 本来、日本近海での危機に対応する目的で設けられた条項であり、アフリカ東部のソマリア海域での長期の警備活動は法の趣旨を逸脱するのではないか。政府内にも慎重論がある。

 浜田防衛相が海上警備行動に基づく派遣に慎重姿勢を見せたのも、派遣しても的確かつ十分な任務遂行ができるかどうか、疑問と不安があるためだろう。

 日本には、かつてマラッカ海峡で多発した海賊行為を海上保安庁が中心になった訓練支援や情報共有、技術提供などで沈静化させた実績がある。

 自衛隊だけが何も国際貢献ではない。ソマリア周辺海域でも「初めに海自艦派遣ありき」でなく、有効な国際協力は可能なはずだ。拙速は禍根を残す。 2008/12/27 西日本新聞朝刊===============

ソマリア沖の海賊対策への海上自衛隊の派遣は、やはり唐突の感は否めません。

しかも、国会休会中のドサクサに紛れて、自衛隊の海外派兵の規制事実作りかも知れません。

何度も問題となっていますが、自衛隊派遣だけが国際貢献ではないことは明白です。 

海賊被害を根絶するために、当面する「犯罪予防」と被害船舶の救出はもとより、国家が「崩壊」し、海賊が発生するソマリアに対する国情安定への支援など、根本的・総合的な政策も検討すべきではないでしょうか。

以下のコラムは、海賊への確かな見方だと思いました。

海賊(12月27日北海道新聞 卓上四季)

海賊を奨励する時代があった。たとえば英国は十六世紀、敵国の船を略奪する免許を国王が与えている。

戦利品は海賊と国王で山分けだ。平和が訪れ海賊が不要になると、「失業者」たちはアメリカ海域に渡り、カリブの海賊となった。

アラビア半島周辺の海域も、昔から海賊が出没した場所だ。コーランに「すべての船を分捕る王」が出てくる。きのうの朝刊に登場したソマリア沖のソコトラ島は、有名な根拠地のひとつだった

国土が海に突き出したソマリアは、アフリカの角(つの)と呼ばれる。紅海とインド洋を結ぶ航路が近い。内戦で無政府状態になり、海賊が多発している。今どきは、ロケット砲や衛星測位システムを備えた高速艇で人質を取るという

麻生首相が、海上自衛隊の護衛艦をソマリア周辺の海域に派遣する考えを示した。「事は急いでいる」と、本来は日本の領海内を想定した「海上警備行動」として送る意向だ。浜田防衛相は、これに慎重な姿勢でいる

国連安保理で海賊対策について決議されたのは六月と十月だ。なぜ今になって急ぎだしたのか、十分な説明はない。国会の合間だ。暮れのどさくさ紛れのような、唐突な印象もある

海賊は、いわば復活した「伝統産業」だ。被害を防ぎ根絶するためには何が必要か。自衛隊の海外派遣自体を目的とするのでない限り、そこから論議を重ねるのが筋道というものだろう。

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