さて、いよいよ3月10日。わざわざ休暇を取って協力してくれる山口調整員と林理学療法士に案内されてダマスカス郊外に二台の車椅子とともに到着しました。
まず最初に届けたのは、ハラン村に住むジャマル君。9歳の少年でした。生来、脳性マヒの状態で、古い通常タイプの車椅子を使用していました。
札幌から持参したのは「ティルトタイプ」の車椅子で、林理学療法士さんも「これがほしかった!」と大喜びしてくれました。しかし、ジャマル君が年齢よりも小柄であったため、その場で「Foot Rest」と「Head Rest」を一度はずし、小一時間の調整作業を行いました。
その後、美味しいお茶をご馳走になり、満足そうなジャマル君と、感謝でいっぱいの様子のご家族に見送られて村を後にしました。
この村では、ジャマル君が使用した後の車椅子は「責任を持って障害のある子供たちに使わせていただく」とのことでした。
次の届け先は、林さんもかかわっているCBR(Community BasedRehabilitation)でもよく訪問している、カンフリー村の11歳の少女、リナちゃんです。
非常に痙性の強い脳性マヒのため、通常の車椅子では使用困難で、生活のほとんどが床のじゅうたんの上で横になっている状態でした。車椅子のサイズもちょうどよく、調整作業は必要ありませんでした。
ここでも「ティルトタイプ」の車椅子であったことが大変役立ちました。 「あ~、運んできてよかった!」とつくづく感じたのは車椅子に乗ったリナちゃんが屋外に出て満面の笑顔を見せてくれたとき。
そして、何度も感謝の言葉を口にするご家族の姿に接するときでした。そうしたとき、安堵感とともに脳裏に浮かぶのは札幌での、吉田さんをはじめとする事務局の方々や寒い保管倉庫の中で車椅子を整備するボランティアの方々の顔でした。
翌日は残る車椅子をダマスカス郊外にある、サイダー・ザイナブ地区(通称、リトルバグダッド)で難民生活を送るイラクの方たちに届けました。
お昼に炊き出しをしているイブラヒム教会を訪問して難民の方たちの状況を聞かせてもらい、「車椅子」を希望されている何人かの子育て中の母親とお話をして、持参した「バギータイプの車椅子」を受け取ってもらいました。
生後七ヵ月のシャーレスちゃんを抱いた母親のマークーンさん(32歳)は1年前にバクダッドから逃げてきたイラク難民の方でした。
今は命の安全だけは確保されているものの、昼食は協会の炊き出しによる毎日です。日本から持参した車椅子にシャーレスちゃんを乗せた母親の嬉しそうな笑顔がいつまでも続くように、そして平和で安全な祖国へ一日でも早く帰国できるようにと願ったのでした。
そこでは旅の仲間のシンガーソングライターさんのミニライブを開いたり、日本から持参した文房具などを贈呈したりして今回のヨルダン・シリアへの旅が終了しました。
「飛んでけ!車椅子」の言葉通り、私たちの活動で、日本では「役目を終えた車椅子」が今度は世界のどこかで子どもや障害を負った人たちに乗ってもらい、生命を吹き込むことができます。
そして、今回の「届ける旅」で、吉田さんを中心とする事務局の方々や寒さの中で車椅子を再生させる「職人的ボランティア』の人々の誠実な活動をあらためて学ぶことができました。心から感謝申し上げます。
最後に、「車椅子を届けるなど、何か目的を持った旅っていいなぁ~」とつぶやいていた、JICA調整員で海外経験の豊富な山口リカさんの言葉が大変印象的でした。
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