大学院の博士課程を修了してくる人は、年間約16000人です。しかし、なんらかの形で就職出来るのは、ほぼ半数といわれています。

 

その他の「博士」は、「高学歴難民」と言われ、場合によっては専門学校の時間講師で生活費を稼がざるを得ない状態になってしまいます。

 

一方で、研究者をめざして短期契約の非常勤研究員「ポストドクター」(ポスドク)や大学の非常勤講師についてもその後の将来は保障されていません。

 

文科省の調査によるとポスドク(15000人)の4割は社会保険に加入していません。

 

また、大学の非常勤講師を専業にする人(25000人)の4割が年収250万円以下で、社会保険の加入は1割以下です。

 

こうした、不安定のままの「博士」が大幅に生み出された背景には、国の科学技術政策がありました。

 

1990年代に大学院の倍増計画を推し進めながら、大学教員の枠を抑制してきた結果なのです。

 

独立法人化させられた国立大学は、大学の運営交付金を一律に1%カットされたり、人件費の5%削減が押しつけられてきました。

 

そもそも我が国の高等教育費はGDP比0.5%で、OECD加盟国(30ヶ国)中、最下位なのです。

 

このままでは、日本の科学技術の発展をになう若手研究者の育成には赤信号が灯ってしまいます。 

さて、日本の臨床医学の発展にも黄色信号が灯りつつあります。 

勤務医・開業医がこれ以上過酷な労働条件に置かれると、日常診療の中での臨床医学の研究にも時間をかけることができなくなって当たり前です。 

このように、『高学歴難民』問題と、医師の過酷な労働条件は、科学や医学研究の発展という側面から共通するところがあります。 

その根本には、医療や社会保障、教育や科学研究へ十分な予算を配置しない我が国の政治のあり方が反映しているのではないでしょうか。

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朝日新聞の1月28日の社説を引用します。医師不足や医療制度について的外れどころか、国民のための医療をつかさどる医師や医療機関にとって容認できない「提案」をしています。

映画「シッコ」に描かれたアメリカ医療を反面教師として、「国民皆保険制度」の維持を主張しつつも以下の点を問題にしなければなりません。

1)  医師の地域的配置や科の選択を公的責任で決めるというものです。プロ野球のドラフト制度まで引き合いに出しています。

  そもそもの医師不足の原因は、政府・厚労省の「医師定数削減」政策にあるのです。その根底には、「医師亡国論」による「医療費削減政策」のあることはすでに多くの方々が明らかにしている、いわば常識であります。

その根本を抜きにして、少ない医師数を前提にして実用主義的に考え、夫々の医師の希望や将来展望を制限ないし無視してその配置やかの選択を決めるなどと提案してくるのです。

提案しているプロ野球のドラフト制にも「職業選択の自由への侵害」多くの矛盾があります。また国民の生命と健康や人権を守る医師という職業とプロ野球を同一視するきわめて乱暴な思考方法といわざるを得ません。

医師における地域的不足や科の「偏在?」を解決するには、医師の絶対数を増加させなければなりません。

その上で、どの地域にも、どの科にも医師が自発的に所属することができる条件を作るのが国や自治体の役割ではないでしょうか。国や行政の「公権力」では、医師の配置は不可能ですし、医師そのものへの希望者が減少するかもしれません。

2)  診療報酬体系を都道府県単位にして、「競わせる」ことも提案しています。それも、差別医療として悪評の高い「後期高齢者医療制度」を引き合いに出している始末です。

これは、国民の医療に責任を負うべき国の責任を地方に押し付ける絶好の機会を提供することになります。国の「医療費削減政策」もさらに地方自治体の責任で進められることになります。

その行き着く先は、医師不足・経営難から来る「病院崩壊」であり「地域の医療崩壊」であることは、多くの例が示しています。

3)  これらの財政的保障として消費税の増税を訴えています。

 

そもそも、 低所得者ほど負担の大きく、逆進性の強い「消費税」を所得の再分配としてある社会保障の財源とすること自体に大きな矛盾があることはいうまでもありません。

また、今ある税金の無駄使いもたくさんあります。そうしたことをしっかり検討しないで、社会保障費の財源は消費税=社会保障費税の創設というのは短絡的過ぎるのです。

朝日新聞が日本を代表するマスコミを自認するのであれば、もっともっと深く、謙虚に医療と社会保障について研究すべきではないでしょうか

近く結成される『全国医師連盟』では、そうした事を丁寧に学ぶことができます。是非、足を向けてほしいものです。
以下に「社説」の全文を紹介します。

希望社会への提言(14)医療の平等を守り抜く知恵を

・ドラフト制をヒントに、医師を公的に配置 ・運営を県単位にして、診療報酬を決める権限も     社会保障の各論として、まず崩壊が心配されている医療から考えたい。  「薬指だけなら1.2万ドル、中指は6万ドル。どっちにします?」。事故で指を2本切断した無保険者は手術に入る前、医者からこうたずねられる……  昨夏、米国の医療の実態を描いたマイケル・ムーア監督の「シッコ」は、日本でも大きな衝撃を与えた。  公的な医療保険は高齢者と低所得者に限られ、民間保険に入れないと無保険者になる。米国ならではの光景だ。  日本では、すべての人が職場や地域の公的医療保険に入る。いつでも、どこでも、だれでも医者に診てもらえる。「皆保険」は安心の基盤である。シッコの世界にしないよう、まず医療保険の財政を確かなものにする必要がある。  患者負担を除いた医療費は、高齢化で06年度の約28兆円から25年度には48兆円へ跳ね上がる、と試算されている。それをまかなうため、保険料と税金がともに10兆円前後増える計算だ。  試算では、サラリーマンの月給にかかる保険料率は平均して約1ポイント上がる程度だが、自営業者や高齢者が入る国民健康保険は、いまでも保険料を払えない人が多く、限界に近い。患者負担を引き上げるのはもう難しかろう。皆保険を守るためには、保険料と患者負担の増加を極力抑え、そのぶん税金の投入を増やさざるを得ないのではないか。  社会保障を支えるためには消費税の増税も甘受し、今後は医療や介護に重点を置いて老後の安心を築いていこう、と私たちは提案した。医療は命の公平にかかわるだけに、優先していきたい。  もちろんムダもある。治療が済んでも入院を続けて福祉施設代わりにする。高齢者が必要以上に病院や診療所を回る。検査や薬が重複する。こんなムダを排していくことが同時に欠かせない。    医療保険の財政基盤が固まったとして、医療の現場は大丈夫か。そこが最近は怪しくなってきた。  病院から医師がいなくなっている。患者のたらい回しもよく起きる。このままでは産科や小児科だけでなく、外科や麻酔科も足りなくなる。近ごろ医師の不足や偏在が目にあまる。  医師は毎年40000人ほど増えているが、人口1000人当たりの医師は2人だ。このままいくと韓国やメキシコ、トルコにも抜かれ、先進国で最低になるともいう。先進国平均の3人まで引き上げるべきだ。医師の養成には10年はかかる。早く取りかからなければならない。  医師が充足するまではどうするか。産科や小児科など、医師が足りない分野の報酬を優遇する。あるいは、医師の事務を代行する補助職を増やしたり、看護師も簡単な医療を分担できるようにしたりして、医師が医療に専念できる環境をつくることが大切だ。  そのうえで、診療科目の選択や医師の配置に対して、公的に関与する制度を設けるよう提案したい。  医師の専門分野が偏らぬよう、診療科ごとの養成人数に大枠を設ける。医師になってからは、一定期間、医師の少ない地域や病院で働くことを義務づける、というものだ。  配置を受ける時期は、研修時や一人前になったとき、中堅になって、といろいろありうるだろうが、義務を果たさなければ開業できないようにする。  医師は命を預かるかけがえのない仕事である。だから私立医大へもかなりの税金を投入している。収入が高く、社会的な地位も高い。たとえ公立病院に勤務していなくても、公的な職業だ。  自由に任せていては、医師の偏在は解消できない。社会の尊敬と期待にこたえて、このように一時期の義務を受け入れることはできない相談だろうか。    以上の制度ができたとき、医師を計画的に養成するのは中央政府の仕事だ。しかし、それ以後は思い切り分権を進め、地域政府にまかせるべきだ。  前述した配置も、都道府県が地元の病院や医学部、医師会、市町村などと相談しながら決める。医師の多い県から出してもらう必要も生じるだろう。  その際には、プロ野球のドラフト制度をヒントにしてみてはどうだろうか。新人だけでなく中堅の医師を含めて、医師不足の県が、医師の多い県から優先的に採用できるようにするのだ。  4月からは、75歳以上の高齢者が入る県単位の高齢者医療制度が始まる。中小企業のサラリーマンが入る政府管掌健康保険は全国一本だったが、これも10月から県ごとに運営される。市町村の国民健康保険や小さな健保組合も、県単位への統合を進めている。  したがって、医療の負担と給付を決めるのも県の仕事にするのが自然だ。  医療への診療報酬は政府の審議会で決めている。これを、政府が決めるのはその基準にとどめ、知事が最終的に決めるようにしたっていい。必要とされる医療は地域によってさまざまなので、地域の実情に合わせやすくなるだろう。
 長野県は、予防に力を入れて高齢者の医療費を全国最低に抑えつつ、長生きを実現している。県が責任をもつことで、そんな工夫が広がるよう期待したい。

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