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政治化する30代論客 同世代による思想誌創刊へ

2008年01月19日朝日新聞) 沈滞がささやかれて久しい論壇で、このところ若手、とりわけ30代の活躍がめざましい。格差や若者労働にナショナリズム、社会主義革命。政治の再生を強く、時に過激に、問題提起してみせる。80~90年代初めに流行したポストモダニズムの「脱政治化」の流れを変える勢いで、この世代による思想誌の創刊も決まっている。

■格差打開 今だからレーニン  「微温的な左翼では駄目。もっと強烈な思想を対象にしたいと思った」  日本学術振興会特別研究員、白井聡さん(30)は、昨春発表した『未完のレーニン』(講談社選書メチエ)の執筆動機を、そう語る。ブルジョア国家を破壊する革命はユートピアではなく、プロレタリアートの本来的な「力」の結集によって現実に、常にすでに起こっているという主張を、フロイトも絡めて読み解く政治思想の書。各紙書評のほか、昨年を代表する本の一冊に選ばれたり、雑誌で特集が組まれたりもした。

 ソ連崩壊から16年、今なぜレーニンか。白井さんは「今だからこそ」と答える。社会主義国があった時代、自由主義諸国は対抗策として福祉政策を進め、労働者は様々な恩恵を享受することができた。だが冷戦後、システムが崩れ、グローバル化のひずみが世界を覆った。いわゆるロストジェネレーションの一人として、バブル後の混迷の「被害者」を肌で感じてもいる。

 「物心ついてから、ずうっと『改革』が叫ばれながら、実行されたのは新自由主義の構造改革だけ。方法はどうあれ、可能なる革命の構想が求められている」

 左翼の多くが冷戦後、自信喪失したことなどおかまいなしに、マルクス主義者を堂々名乗り、階級闘争を口にしてはばからない。

 津田塾大准教授(哲学)の萱野稔人さん(37)も、国家の起源を「暴力を組織化する運動」と指摘した『国家とはなにか』(以文社)以来、「左翼」「アナーキスト」と呼ばれることが少なくない。

 「上の世代の一部には『とっくの昔に終わった議論の蒸し返し』と言われたが、本当か?と聞きたいですね」

 大学院生活を送ったパリでは、経済的・政治的に見捨てられた人々がナショナリスティックな言説に吸い寄せられる現場を見た。日本でも似た状況を案じる。非正規雇用やワーキングプア問題の集会で話をするのも、白井さん同様、資本主義の変容に伴う社会の危機に「愚直な言葉の力で、少しでも立ち向かいたい」と思うからだ。

■左右の二分法崩したい  左翼的スタンスを鮮明にした論客ばかりではない。『中村屋のボース』(白水社)が話題になり、いま新聞・雑誌に引っ張りだこの北海道大准教授(アジア政治)、中島岳志さん(32)の最新作は、西部邁さんとの共著『保守問答』(講談社)。「従来の左翼にありがちな、理想設計主義的で合理的な正義は信用しない」と語る。と思えば、昨年の『パール判事』(白水社)では、東京裁判でのパールの見解を保守派が政治利用していると批判、反論を受けた。

 「左右の二分法を崩したい」。一つの指針は、目の前の弱者の存在から目をそむけたくない、という思い。ポストモダンの時代にしばしばみられた、政治的発言をすること自体の権力性を議論していても始まらない、と考える。

 メディアで幅広く活躍する若手は、ほかに鈴木謙介さん(社会学)、芹沢一也さん(日本思想史)らがいる。横の交流が活発なのが、この世代の特徴だ。こうした中、4月に「思想地図」(NHK出版)が創刊される。編集委員はともに71年生まれ、批評家の東浩紀さんと社会学者の北田暁大さん。デビューの早かった「先行組」が、続く若手を巻き込む形で準備が進む。1月22日には都内で記念シンポジウムも開かれる。

 社会学者の佐藤俊樹・東大准教授(45)は、政治に向かう若手の動きを、「ポスト『ポストモダニズム』時代」の「再政治化」とみる。「左」の崩壊が「右」の崩壊も引き起こし、従来のスタイルで語る論客は退場した結果、「政治を語るうさんくささや拒絶反応が薄らいだ」という。

 ポストモダン世代の一部にはなお、揶揄(やゆ)する声がある中で、政治化それ自体は肯定する佐藤さんだが、違和感を抱くこともある。「よくも悪くも洗練された研究者の手つきで、地方や低学歴層の人々の切実な問題をどれだけすくいあげられるのか」

 その意味でも今後、彼らの言う「政治」の真価が問われることになりそうだ。
 今年のお正月休みを使い、三冊の本に目を通しました。 

中島岳志著「中村屋のボース」と「パール判事」(共に白水社刊)それと関岡英之著「大川周明と大アジア主義」(講談社刊)でした。

それぞれが、明治維新から始まる国家主義の系譜をたどる一助になるものだと感じました。 

関岡英之氏は、以前から「拒否できない アメリカの日本改造が進んでいる」(文春新書)等の著書で、アメリカ政府が「年次改革要望書」や「外国貿易障壁報告書」などに基づいて、『日本医療のアメリカ化』に警鐘を鳴らしています。

今回の著書では、大川周明の思想と行動を通して、日本とアジアのアメリカからの自立について論じていました。 

さて、さらに面白かったのは、中島岳志氏(当年32才 北大準教授)著作の「中村屋のボース」と「パール判事――東京裁判批判と絶対平和主義――でした。  第二次世界大戦の最中、インドのイギリスからの独立をめざし、日本の東南アジア侵略を評価・利用しょうとしたにもかかわらず、挫折に終わったこと。  また、日中戦争や太平洋戦争を肯定し、「東京裁判」を批判し、戦争責任を曖昧にしょうとする人々に引用されているパール判事による「東京裁判無罪判決」についてもその歴史的背景から詳細にのべられていました。 

パール判事の生い立ちから、学歴・研究業績そして彼の政治的活動や戦勝国の裁判の持つ意味までも検討し、何故「無罪判決」となったのかを論証していました。 

パール判事の思想は、日本が起こした戦争を肯定してたものでは全くなく、むしろ彼の「絶対平和主義」がその根本にある事を明らかにしてくれました。 

こうした、中島岳志氏の研究姿勢は、今までの「左翼」と「右翼」という分け方ではなく、国の進路を歴史の中で、民族問題としても取り上げ、全く斬新な切り口のように感じました。 

今年に入り、北海道新聞で「闘う若者」の1人として取り上げられていました。きっと。北海道や日本だけに止まらないスケールの大きな論客として羽ばたいてほしいものです。 

中島氏の次作は、「大川周明」に関するかもしれません、今から待ち遠しい一冊です。 

一方、彼は北の札幌で「ホームレス支援」という実践活動をしています。決して、研究室にこもりっきりの「ひ弱な理論派」ではない事にも私を惹きつける魅力があります。 

ちなみに、2月16日、中島岳志準教授を招いて、「憲法問題」を護憲でも、改憲でもない独自の切り口からお聞きする機会が札幌であります。 

その後、その講演内容もお伝えすることが出来ればと思います。 

若手論客、がんばれ !!!
    

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posted from 別冊 社内報 2008.02.04 18:40

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