本田 麻由美記者
今月7日、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」を原則禁止している国の政策に対し、「禁止する法的根拠はない」との判断を東京地裁が示した。判決文を読みながら、私は3年前のことを思い返していた。
「国際的に効果が認められた国内未承認の抗がん剤治療が受けられるよう、緊急避難的に混合診療を認めてほしい」
2004年11月。私は、今は亡き患者仲間と政府の会議で訴えた。国内未承認薬など保険外の診療を併用すると、入院代など保険診療分も全額自己負担となる。「それは患者にとって余りに酷。薬の承認が欧米に比べ大変遅い。その状況が改まるのを待つ時間がない人もいる」
がん患者らの切実な声に、厚労省は例外的に混合診療を認める制度を大幅に拡大。例えば新療法は、医療機関が届け出て、「先進医療」に認められると、混合診療が可能になり、保険診療分は原則3割負担ですむ。その新療法の有効性・安全性を評価する仕組みなどを設け、保険適用への道筋も明確にした。
今回の訴訟の原告で腎臓がんを患う清郷伸人さんが保険診療と併用していた「活性化自己リンパ球移入療法」も、この先進医療だった。だが05年度に有効性が評価されず指定を取り消された。清郷さんは全額負担しないと同療法を受けられなくなるため「混合診療の禁止は違法」と提訴したという。
「求める治療を受けたい」という思いには、同じ患者として共感する。一方、有効性が評価されない療法も含めた「混合診療の全面解禁」を求める声が一部にあるが、それには疑問だ。効果や副作用などの評価・監視の目が届かず、怪しげな療法が横行する危険性もある。それを藁(わら)にもすがる思いの患者が見分けるのは難しい。そのため有効な療法を受ける機会を逸し、気付いた時には手遅れになってしまうこともある。さらに新療法などについて、医療機関や製薬会社が保険適用の手続きを行わなくなり、保険診療の範囲を狭める可能性もある。
ただ、現在のルールに基づく混合診療の制度も、拡大されたとはいえ不十分だと感じる。特に海外で有効性が認められた薬については条件が厳しいため、実際には混合診療の対象とはならないことが多いからだ。もちろん保険適用を急ぐのはいうまでもない。今回の判決をきっかけに、もう一度、急速に高度化・多様化する新療法や新薬を保険にどう取り込むのか徹底的な議論が必要だ。
こうしてみると「混合診療」導入を急ぐ「規制改革会議」の主張する真意は、患者さんへの治療に責任を持つというより、一部の治療手段をあくまでも保険診療外に止め、「医療費公費負担削減」政策を実現するためであることがわかります。 病める患者さんとご家族の「切なる願い」に乗じて、「その分だけ自費でも認めろ」というのは、如何に暴論であることがわかります。 安全で有効な診療手段は、一日も早く保険適応とすることが必要なのです。
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