【生物と無生物の間】 福岡伸一著 講談社現代新書
P165 第9章 絶え間なく壊される秩序―動的平衡
この9章では【生命とは動的平衡にある流れである】ことを分子生物学の歴史から始まり、分かり易い例を出しながら文学的に表現されています。
~現在、私たちは、脳細胞のDNAでさえも不磨の大典でないことを知っている。脳細胞は発生時に形成されると一生の間、わずかな例外を除き、分裂も増殖もしないとされている。つまりここにはDNAの自己複製の機会はない。
ならば脳細胞のDNAはまったく不変で、ヒトが生まれてから死ぬまで、同一の原子で構成されたまま不動なのだろうか。そうではない。脳細胞はまさに波打ち際に立つ砂の城だ。その内部では常に分子と原子の交換がある。脳細胞のDNAを構成する原子は、むしろ増殖する細胞のDNAよりも高い頻度で、常に部分的な分解と修復がなされている。城はずっと分子が出入りする流れの中にあって、すっかりリナベートされるのである。~
プリオン病の代表と言えばクロイツフェルトヤコブ病です。日本でもかつて脳外科手術の際に使っていた人工硬膜が原因となったヤコブ病患者の発生で話題になりましたからご存知の方も多いでしょう。プリオン病をおこす機序について素人の方に分かり易く解説した文章を初めて目にしました。
医学生の頃、一番苦手だった生化学を卒後10年以上経過して再度勉強した際、一番困ったのは分子生物学の進歩でした。今の医学生でも私同様、生化学が苦手な方は多いでしょう。生化学を始める前、あるいは現在進行形の学生さんにお勧めの本です。
第15章 時間という名の解けない折り紙
ドミナント・ネガティブ現象 p268
~頭三分の一を失ったプリオンタンパク質は、タンパク質Xとは結合できないにもかかわらず、中途半端なことに、タンパク質Yとは完璧に結合しうるのだ。そのことによってYは、擬似的にパートナー分子が存在する状況を与えられることになる。そこではバックアップが作動するようなSOSは発信されない。そして情報伝達経路は、何も知らないまま、さらに複雑なネットワークを組み立てていく。
やがてマウスは誕生し、未知の環境と遭遇する。脳の神経活動はどんどん盛んになり新しいシナプスが形成されていく。おそらくタンパク質XからYへの情報伝達はこのような脳の発達と関係して必要とされる機能なのだろう。その齟齬は、生まれてすぐにではなく徐々に現れることになる。XとYを橋渡しするはずのプリオンタンパク質は、ここではXの情報を伝達しないまま、Yと結合する。それはちょうど歪んだ硬貨を投入された現金識別装置のようにフリーズを起こすことになる。そして、そのフリーズは自動販売機の機能全体を致命的に停止してしまうことになるのだ。~
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「生物と無生物のあいだ」(福岡伸一・講談社現代新書)を読みました。読み終って少し茫然とした、不思議な感じの本でした。著者は最先端の生物学者なのに、まるで小説のような表現で各章を書き始めます。だから非常...
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「生物と無生物のあいだ」(福岡伸一・講談社現代新書)を読みました。読み終って少し茫然とした、不思議な感じの本でした。著者は最先端の生物学者なのに、まるで小説のような表現で各章を書き始めます。だから非常...
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コメント
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~あずささん、お勧めです。分子生物学を文学的に書いて解説してあり、素晴らしい文章力です。
私がかつて読んだのは
川喜多愛朗先生の本でした。
その後の仕事に随分、役立ってくれました。
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