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2008.01.12 17:31 |  医療事故  |  侍脳外科医  | 推薦数 : 8

解剖の力

日本には死体に傷を付けたくないという考えの方が結構いらっしゃいますから、死亡診断書に原因不明と書かざるを得ない場合に死後の病理解剖をお願いしても断られることが多いです。脳神経外科医の立場から死因に疑問を持ち、病理解剖をお願いして渋るご遺族には「責めて頭だけでも解剖させてください。」と私はお願いします。何故かと言いますと、

 

1.       医師として死因を突き止めて今後の診療に役立てたい。

 

2.       死因をはっきりさせることはご遺族に病気への関心を生み、病気を早期発見出来るメリットが出てくる場合もある。

 3.       ご遺族が死後落ち着いてから死因に疑問が生じて医療機関を訴える場合、カルテ、証言、画像所見だけから裁判するよりも信憑性が高い

等メリットがあります。

 もちろん解剖したけど死因が分からなかったということもあるでしょうし、病理医も不足していますからどこの病院でも解剖に対応できるとは限らないと反論があるでしょう。夜間死亡の場合、霊安室でご遺体を冷蔵して翌朝解剖を開始することが多く、ご遺族の元へ遺体をお返しするのは一日遅れます。実際、解剖後は傷が見えないように覆いますから棺の外から傷が見えることはありません。 

実は医療裁判の記事を読んでいくうちに時々「あれ、どうしてこの症例は剖検(解剖)しなかったのかな?」と疑問に思うことがあります。医療側が積極的に勧めなかった?遺族が拒否した?もちろん、死亡宣告直後は気が動転して解剖まで考えることが出来なかったという言い訳は十分成立しますが、これだけ医療裁判が多いご時世ですから一般の方も医師から病理解剖を勧められた場合は一考頂きたいと思います。 

また我々医師も疑問に思う箇所が死亡時にあれば勇気を持って家族へ剖検の依頼をする気持ちを忘れてはいけません。医師不足で激務の医師には「解剖まで手が回らないよ~」と悲鳴が聞こえてきそうです。ここにも医師不足の暗い影が見え隠れします。 

不審死は基本的に行政解剖に回りますが、昨年日本相撲協会を揺るがした時津風部屋の力士死亡事件で、もしも解剖が行われなかったら、、、闇に葬られたかもしれません。この事件から解剖で死因が変更されることがあること、社会の病巣を暴露することができることを再認識しました。 

時津風部屋、力士死亡事件の深き闇より

http://www.news.janjan.jp/living/0709/0709283103/1.php

不可解な死亡原因の変更

 この事件とは、時津風部屋の若い力士が、名古屋場所前(07年6月26日)の稽古中に不可解な死を遂げたというものだ。はじめは事故として処理されようとしていたが、遺族の機転により、今回事件として立件されようとしている。

 それにしても、このような事実が、ほとんど3ヶ月間も放置されたまま、今このタイミングで公になったことは、まったく解せないことだ。1人の前途ある17歳の若者が亡くなったのだ。

 ここまで問題の処理が長引いてしまった原因は、愛知県警が、相手が国技の相撲界ということで、当初から事故として処理しようとした思いこみにあったのではないかと懸念する。

 各種報道によると、事件当日の6月29日に時津風部屋からの通報があり、救急車が向かった。到着したときには既に力士は死亡しており、全身には、稽古でできたとは思えないような外傷が残っていた。

 そして、ここからが闇の部分である。救急隊、病院、警察署間でどのようなやりとりがあったのかは分からないが、通常であれば、不審なケガとなれば、検死や司法解剖がなされるはずだ。ところが当初、地元の病院が発表した力士の死因は「急性心不全」であった。それが後に遺体が実家に運び込まれた後の行政解剖の結果、「多発性外傷によるショック死」と変更された。

 この死亡原因の変更には、相撲界を取り巻く、大きな構造的問題が横たわっているのを感じる。まず、急性心不全と診断結果を下した地元、愛知県犬山市の病院の問題だ。何故、正確な死亡原因を発表できなかったのか。国民的な人気のある相撲がらみであるとはいえ、法治社会であれば、犯罪の疑いのある遺体の取扱いは、もっと厳密でなければならないはずだ。

 もしも時津風親方が、電話で遺族に申し入れたという「荼毘に付して遺骨をお持ちしたい。ついては任せていただけないか」ということが現実に行われていれば、今回の問題は闇から闇へと葬られていたのかもしれない。

 だが親方の申し出を不信に感じた実家の父親が、遺体を火葬にすることを拒んだことから、この件は事故として葬られる寸前、異なる展開を見せることになった。新潟の遺族は実家に運び入れたわが子の余りの変貌振りに、6月28日、新潟大学医学部に行政解剖を依頼した。その結果、「多発外傷性ショックによる死」という死亡原因が浮上したのである。この発表を受けて、愛知県警も時津風部屋周辺の捜査に着手して、今日のように事故から事件の疑いが濃くなってきたのである。~
 

 

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医療従事者の責任逃れ
先日、NHKでこんな内容の報道が為された。=================================== 医療従事者の責任逃れのためではなく、医療事故の真相究明、被害の救済、 再発防止のための... [続きを読む]

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これは私も同じことを考えております。当院は病理の常勤医不在で解剖は大学に頼むため、時間がかかります。特に、大学で加療した患者を引き継いだ場合は、極力解剖をお願いするように心がけておりますが、夜勤帯ですと看護師サイドで勝手に葬儀屋を頼んで見送りの準備万端となっていたり、ご遺族を時間がかかる、手続きが面倒、などの理由を並べて解剖に承諾しないようにミスリードすることも多く、研修指定病院の看板を返上したほうがよいのではないか、と思うことがあります。 黒幕

~黒幕さん、研修指定病院の名においても病理解剖は必要になりますし、ご指摘のように遺族、看護サイドが葬儀の準備を始める前に死亡宣告後直ちに剖検の話をしないといけません。タイミング、主治医と家族との関係、話のもって行き方に左右されますね。
written by 黒幕 / 2008.01.13 01:55
病理解剖は研修医のときや大学病院医局にいたときは進んで承諾を取っていましたが、今は解剖に立ち会うのが面倒(所見の記載をさせられる)ので取らなくなりました。CPCの準備とかもあるので。もっと簡単に解剖ができるようなシステムを病院や地域で作ってもらえるとよいです。ところで、頭だけの病理解剖は可能なのですか?以前、頭だけ病理解剖をしてもらったときに、「血液を抜かないとやりにくいので頭だけは止めてくれ」と病理医に強く言われたことがあり、それから頭の解剖は(体をしても)依頼しなくなりました。専門外ですが気になったもので・・・。これからも勉強させていただきます。unchan

~unchanさん、確かに所見の記載はしますし、当初のスケジュールを変更しないといけませんから面倒なんです。所見の記載、CPCは面倒でもきちっとすべきでしょうね。

頭だけの解剖は時間も短縮できますし、病理医の返事は単なる意味のない言い訳?に聞こえます。頭だけの解剖は脳外科ではよく行われていると思います。コメントありがとうございました。
written by uuchan / 2008.01.13 23:19

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