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2007.12.27 17:48 |  海外留学  |  侍脳外科医  | 推薦数 : 8

米国ワーキングプア事情

米国のワーキングプアについて甲斐田雅子さんのレポートを紹介します。彼女が住んでいるフィラデルフィアには二度行きましたが、確かに黒人(アフリカ系アメリカ人)の割合が多く治安も決していいとは言えません。

彼女は下記の文章で結局【人種による差別は少ないものの、最終学歴により決まる貧富の格差が顕在化しており、学歴の低い黒人は貧困層を抜け出せない状況が続いているのだ。】と述べています。 

アメリカのノースカロライナ州ではシングルマザーに職を持って自分で稼がせる術を教える事業があります。遺伝子工学の高度な技術を身につければ高収入を得ることができ、自活できます。ヨーロッパ諸国でも真剣にこの問題に取り組んでいます。                                               

甲斐田さんの米国ワーキングプア事情をどうぞ! 

「フィラデルフィアで見た米国ワーキングプア事情」 甲斐田雅子 http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html

●加湿器から全ては始まった 

主人の仕事が異動になったためアメリカは東海岸、ペンシルベニア州フィラデルフィアに引っ越して来て2カ月。時に雪降る寒さが身にこたえるようになって来た。(途中略) 

 ●接客態度の悪さ

たしかにCVSの店員はどの店舗へ行ってもたいがい態度が悪い。CVSに限らずK-martなど大手量販店の店員は、常にイライラしながらガムなんか噛んでいる。リンゴを齧っていることすらある。動きはめちゃくちゃとろい。レジにどんな列が出来ようとも急ぐそぶりは見せない。次の客を呼ぶときは『NEXT!』と怒鳴る。バーコードが読み取れないと、値段を調べにいく代わりに大きなため息をつき購入をあきらめさせようとする。 日本のようにコンビニから高級レストランまで広く浅く、ある程度のサービスが行き届いている国からくると、ショックを受けることは多い。  

これらの低い接客サービスの要因は何か? 企業側の教育不足、創造性の乏しい単純作業が意識の低下を招くなど色々考えられるが、低賃金がモチベーションを下げているという先ほどのアメリカ人の意見を尊重して具体的数値から見ていくことにしよう。そもそも時給はいくらなのだ?  

アメリカ合衆国が定めた最低賃金2007年の7月24日からは時給5.85ドル。その後段階的に2008年の7月24日には6.55ドル、2009年の7月24日からは7.25ドルと上昇することになっている。ただ各州も独自に最低賃金は定めており、現時点でフィラデルフィアのあるペンシルベニア州は時給7.15ドルと合衆国のラインを上回る。  

だがこれには例外があり、20歳以下の研修期間の従業員は60日間、時給5.85ドルで働かなくてはならない。600円強である。CVSやK-martで働いているのはほとんどが高校生くらいの黒人の若者だから、最初のうちはこの時給で働かされているに違いない。仮に毎日8時間、ひと月20日間働いたとしても936ドル。3カ月目から7.15ドルに値上げされ、同じ時間枠で働き1年経つと1万3312ドル。2006年の国勢調査によるとアメリカの世帯平均所得は4万8201ドル、フィラデルフィアが3万3229ドルだから比べても賃金の安さは一目瞭然だ。 

●フィラデルフィアのワーキングプア事情

ただここでアメリカ合衆国の世帯平均所得と、フィラデルフィアのそれとの差が気になった。1万4972ドルもの差はどこからきているのだろう。同じく2006年の国勢調査によると、フィラデルフィアの総世帯数は554048。うち平均所得が1万ドルを下回る世帯が9万5227世帯と全体の17を上回る。2番目に多いのは全米の平均値を上回る5万ドル以上7万5000ドル未満の8万6737世帯(15.6パーセント)、3番目は3万5000ドル以上5万ドル未満の7万6788世帯(13.8パーセント)と、決して全員が貧しいわけではないのだが、底辺の厚さが数値を引っ張っているのだ。 

失業率は12.4パーセント。ここ12カ月の収入が貧困線(poverty level )以下に該当する家庭や人々の割合は19.6パーセント。アメリカ労働省労働統計局が2002年3月に発表したリポート“A Profile of the Working Poor,2000”で、ワーキングプアを「1年間のうち少なくとも27週間、職に就くか、あるいは職を探すかをしていながら、その収入が公的な貧困線未満の者」と定義しているので、それに該当すると言ってよいだろう。  

ワーキングプアが増えた原因は1980年代に登場した新自由主義の影響が大きいという声は根強い。規制緩和、公共事業の民営化、小さな政府へと方向転換したことにより、市場原理主義が急速に導入され、多くの人が職を失ったという理論について、その是非をここで問うつもりはない。政策の転換期にはその前提となる「転換を必要とした」過去があるわけで、その存在を忘れ結果のみを語るのは片手落ちというもの。日本における郵政民営化、道路公団民営化しかり。  

ただ大きく舵を切る時、遠心力で飛ばされる人がいるのは避けられない。その船がアメリカのように大きければ大きいほど飛ばされる人の数も多くなり、貧困層、低学歴層など社会的弱者ほど遠くへ飛ばされたのは想像がつく。そして社会的弱者について考えるとき、この大国が抱える人種問題に触れないわけにはいかなくなる。

●黒人の街

フィラデルフィアフィラデルフィアに来て一番驚いたのはその黒人の数の多さだ。街を歩いていても感じるし、地下鉄に乗ると周りを全て黒人に取り囲まれることもある。実際2006年の統計を見ると、フィラデルフィアの総人口144万8394人のうち白人の605796人に対し、黒人は642013人と上回り全体の45を占める。次に多いのがアジア系人口で7万7265人。チャイナタウンもあるため中国人が、次にインド人と続く。ちなみに日本人は754人と見る影もない。フィラデルフィアの中心街は東をデラウェア川、西をスクーキル川に挟まれた約4キロ、南北は約2キロの横長の長方形のエリアにすっぽりとおさまる。そのデラウェア川沿いは、1682年にクエーカー教徒ウィリアム・ペンが初めて足を踏み入れた場所として知られ、ヒストリック&ウォーターフロントと呼ばれている。独立宣言を採択し、1790年~1800年の間アメリカの首都として栄えたことから、アメリカ誕生の地として国内きっての観光地として名高い。有名なヒビ入りの鐘「リバティーベル」が見られるのもここだ。西のスクーキル川沿いに北上すると、日本でも展覧会を開催中のフィラデルフィア美術館が顔を見せ、近くにはロダン美術館もある。  

街の中心には劇場が数多くあり、日本にもファンが多いフィラデルフィア管弦楽団の定期公演が毎週のように見られるほか、クラシックバレー、ブロードウェイミュージカルと何かしら催し物がない方が珍しい。夜になると近くのレストランで夕食を済ませた人たちが、ソワレを鑑賞しにぞくぞくと集まってくる。だが、この歴史と芸術と文化のあふれる美しいダウンタウンをぐるりと取り囲む地域は銃とドラッグがあふれるぶっそうなエリアなのだ。毎朝テレビをつけると何かかしら事件が起きている。強盗、銃殺、レイプ事件。そしてこの危険な地域の住民はほとんどが貧しい黒人たち。 殺されてもおかしくないから絶対に近寄るなと多くの人に注意されたが、電車で郊外へ出るときには一度は通過することになる。車窓から見える風景は落書きで埋め尽くされたボロボロの長屋や、窓ガラスが割られた公営住宅。ゴミだらけの道路。その荒廃ぶりが嫌でも目に飛び込んでくる。

  アメリカ労働省労働統計局の2006年の労働調査によると、失業者のうち黒人が占める割合はここ16年間ずっと白人の2倍以上を維持している。教育に関する調査も見逃せない。失業者のうち高校を卒業していない人が占める割合は8.3%と一番高い。また高卒以下の人口のうち黒人が占める割合は、白人やヒスパニック系の2倍以上。仕事につけたとしても高卒以下の週給は平均419ドルと、学士卒以上が稼ぐ1039ドルの40%にしかならない。  

逆に学歴別の人種間格差はほとんどなく、高学歴になると白人、黒人、ヒスパニックに関わらず高収入が得られる。つまり人種による差別は少ないものの、最終学歴により決まる貧富の格差が顕在化しており、学歴の低い黒人は貧困層を抜け出せない状況が続いているのだ。  (以下略)

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