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日本救急学会が先日発表した救急医療の終末期に関する指針(ガイドライン)です。http://www.jaam.jp/html/info/info-20071116.pdf
この指針には法的拘束力はありませんが、延命治療中止にあたっては、元気だった頃の本人の意思、つまりLiving willに沿うのが最優先であることは言うまでもありません。「このような状態になっても延命をして欲しい。」とは主張していなかった、との言質を家族から取っておくことは最低必要です。
12月23日西日本新聞朝刊の一面に下記の記事が掲載されていました。秋田赤十字の症例は40代の女性ですし、重症頭部外傷から脳死に至っていますからLiving willは恐らく確認できなかったでしょう。
この指針策定に携わった日本医大救命救急部 横田教授は「救急患者の終末期は多様で、学会の指針もすべての状態を想定しているわけではないが、今回の延命措置中止は指針の範囲内と考えられる。」とコメントされています。 横田教授は脳神経外科出身ですし、重症頭部外傷を数多く診られている先生が指針の範囲内と言われているのですがLiving willがなかったことについては新聞紙上では触れられていないのか?新聞社が割愛したのか?疑問です。
さて、識者談話で光石忠敬弁護士は「脳死の判定が正確でも脳死は人の死との考えは社会通念になっておらず、長期にわたる場合はなおさら、他者の意思で本人の死を前倒しにできるか問題だろう。」
市民団体「安楽死・尊厳死法制化を阻止する会」の清水昭美事務局長
「患者の意思が分からない時に家族の判断で、生命を左右してはならない。患者の元気な頃の意思表示があってさえ治療中止は慎重に考えなければならないのに、それも家族の意思に委ねてしまうのは大変危険だ。家族が決められるという一歩を踏み出してしまえば、やがては長期の意識障害の患者や家族の負担になる障害者にも生きることを諦めてもらおうという、命を粗末にする社会につながるだろう。」
私(5人のうちの1人)個人は秋田赤十字病院の決定に賛成の立場の人間です。しかしliving willがとれていない症例であったことで弁護士、市民団体の意見も重く受け止めようと思います。
全く新聞では触れていませんが、脳死患者、植物状態の患者にかかる医療費には税金が投入されています。国民の前で堂々と議論がなされ、延命治療中止の対象が植物状態の患者さんに拡大されることを脳外科医である私は個人的には歓迎します。
しかし、これは緩和ケアの進んだアメリカでさえ、Living willが確認できないケースで植物状態の患者の治療中断は全米レベルで議論されていますから慎重であるべきことは勿論です。
一番まずいのは国民の知らないところで議論されることです。医療経済的側面を抜きにして倫理面だけの議論になることに強い疑問を感じています。秋田赤十字病院の症例でも家族が治療中断を決定されるまでに2005年9月の受傷から2006年2月の決定まで時間はあります。家族の間で議論が尽くされて出た結論に対して病院の倫理委員会が結論を出したのでしょう。大いに議論していきたいテーマだと私は思います。
「法の空白」どう判断 病院側相談警察も見解示せず 長期脳死患者の延命治療中止
「呼吸器を外してほしい」。家族の言葉は医療現場に難しい判断を迫った。22日明らかになった秋田赤十字病院の延命治療中止ケース。主治医は「法律が埋めてくれない『空白』の部分を、倫理委員会の判断で埋めたらこういう形になった。今でも迷う気持ちはあるが、家族の希望を考えれば、あれでよかったと思う」と振り返った。
「できるだけの治療をしてください」。主治医によると、女性が脳死状態になっているとの説明を受けた当初、家族はそう望んだ。治療を続けてみると、女性の全身状態は安定。肺炎になっても抗生物質を投与すると回復するなど、脳死状態が維持され、心停止になることはなかった。
主治医はその後(1)治療を続ける(2)栄養やホルモン剤投与をやめる(3)昇圧剤をやめる(4)呼吸器を止める‐などの選択肢を家族に示し「患者本人だったらどうしてほしいと思うか、代わって考えてほしい」と話した。
家族が「呼吸器も含め延命治療を中止したい」と求めたのは、約5カ月後。主治医は「法的に微妙な問題で難しい」と説明したが、家族の希望は変わらなかった。
病院は倫理委員会で承認を得た後、秋田県警にも見解を照会。「病院内の医療行為の是非を判定する立場にはない。ただ法律違反があると察知された場合は捜査を行う」と回答があったという。
=2007/12/23付 西日本新聞朝刊= http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/20071223/20071223_007.shtml
長期脳死患者の延命中止=本人意思くみ家族希望-秋田赤十字病院
脳死状態が長期間続く「長期脳死」状態にあった女性患者=当時(43)=について、秋田赤十字病院(秋田市、宮下正弘院長)が2006年3月、人工呼吸器を外し延命治療を中止していたことが23日、分かった。本人の意思は明確でなかったが、家族が本人の意思をくんで希望。病院は会議を開き検討した上で延命医療中止を承認した。
一般に、脳死状態になると1~2週間で心停止するが、女性は半年以上脳死状態が続き、「死期が差し迫っているとは言えないが、無理に生かしている状態」(宮下院長)となった。日本救急医学会が10月に策定した終末期医療のガイドラインでも想定していない事例で、こうしたケースでの治療中止は異例。http://www.jiji.com/jc/cg=soc_30&k=2007122300167
急性疾患で「脳死」患者、家族が申請→呼吸器外し
秋田市の秋田赤十字病院(宮下正弘院長)が、急性疾患で脳死と判定された患者に限定して、人工呼吸器の取り外しを可能とする独自の指針を策定していたことが、26日分かった。
国は9月、終末期医療のあり方で指針原案を示し、全国の病院で指針作りが進められているが、呼吸器取り外しの具体的手続きを明文化したのは全国でも珍しい。呼吸器取り外しの対象とするのは、脳卒中や事故に伴う頭部外傷などから、臓器移植に必要な「法的脳死判定」と同じ基準で脳死と確認された患者。医師は家族に脳死状態であることを説明し、「治療継続」、点滴の減量などの「部分的な治療中止」、「呼吸器の取り外し」の三つの処置方針を示す。
呼吸器を取り外す場合は、延命治療を望んでいなかったという患者の意思が確認できる、脳死に伴う臓器提供の意思表示カードなどをもとに家族の同意を文書に残し、家族に「申請書」を提出してもらう。 その上で、病院長が承認を示す「通知書」を家族に渡す。
2人以上の医師が「法的脳死判定」を2回実施して確認後に取り外す。脳死と判定できない場合や患者の意思が確認できない場合、取り外しは認めない。指針作りは脳死に伴う臓器移植実施を契機に5月から始まり、弁護士らを交えた倫理委員会を経て、9月の部長会で承認された。
厚生労働省の終末期医療に関する検討会委員を務めた社会福祉法人小田原福祉会の時田純理事長は、「呼吸器取り外しは医師個人の責任が問われるケースだけに、早期の指針作成が求められているが、全国ではまだ珍しい。しかし、急性疾患の場合、若い人が対象となる可能性が高く、より広い議論が必要だ」と話している。(2006年11月27日 読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20061127ik04.htm
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神経疾患の患者の意志を確認したのち、人工呼吸器をつけて在宅ケアされている場合もあれば、この患者さんのように意志が確認できず、家族と主治医との話し合い、病院内の倫理委員会(あればと仮定して)を通して呼吸器を取り外すこともある。
また、人工呼吸器を着けないことを患者が意思表示しているので、その後は自然経過にまかせることもある。
脳死の場合、アメリカでは脳死判定以後の治療費は臓器移植をしない場合には自費になるので患者家族は治療費支払いを考えて呼吸器を取り外すことを選ぶと聞いています。
そして臓器移植の場合は、脳死判定の人工呼吸器装着は医療保険でカバーできるのもアメリカ。
ちょっと内容がずれますが、臓器移植と脳死判定でも国によって違います。
#WHOガイドラインおよび世界の臓器移植関連法・制度
http://www.medi-net.or.jp/tcnet/tc_5/TC5index.html
オランダ・ベルギーでは患者本人が臓器移植に反対の意思表示をしていなかった場合は、(2006年以降は家族の反対があっても)脳死になれば臓器移植の適応と考えて臓器が取り出せる。患者の意志が不明の場合、家族の判断で脳死判定後に臓器移植ができる。そして脳死判定は移植をするかどうかに関わらず、患者の死の判定として行われる。フランスやイタリアも同じはずです。最近はイギリスもオランダやベルギーの方式に変更しつつあるようですね。
スウェーデンやデンマークなどは患者が臓器移植OKの意思表示を示していた証拠があるか、家族が同意すれば脳死判定後に臓器移植が可能。
日本は脳死判定と臓器移植が欧米と比べても、かなり特殊な方式を取っています。
同じことは、人工呼吸器の取り外しにも当てはまるのでしょうね。 鶴亀松五郎
~鶴亀松五郎 さん、アメリカの場合、臓器移植のドナー不足で脳死ではない患者を術場で挿管チューブを抜いて死亡宣告(心臓死)をしてから家族の代表を術場の外へ出してから臓器を取り出すことを認めた州も増えました。
日本は倫理、宗教観の違いから延命処置中止に関しては難しく法改正が先なのですが、それを待っていられずに秋田のような病院もこれから出てくるのでしょうね。
このシリーズ、続けます。
日本人は死生観を考え直す時期にきていると思います。中央公論の1月号で櫻井よしこさんがこう書いていました。
>良寛さんは「死ぬときは死ぬがよろしい」と言いました。でも、高度医療が可能な時代では、薬、手術、臓器移植などで寿命を延ばします。医療技術の」発達はすばらしいけれど、それに振り回されるのが幸せか否かは分かりません。<
医療費のことですが、今のまま延命の中止が認められなければ、この先医療費は膨大にふくれあがることは目に見えています。限りある医療費をどのように再分配するのかを考えなければなりません。今のままだと、老人の延命治療に医療費が使われ医療財源を圧迫し、逆に若者や壮年層の人たちが十分な治療を受けられなくなる、そういうところまで来ていると思います。
しかし、日本尊厳死協会会長は、「尊厳死を認めるのは医療費削減のためではない」と明記し、医療費について国民にアピールして議論を進めることを避けています。これは、反対勢力からの「医療費削減のために人の命を縮めるなんて言語道断」という反論を避けるためだと思うのです。
ご存じのように、以前、ブログ上で尊厳死に反対する立場の人たちと議論を交わしましたが、その議論を通して、彼らの考えを変えることは到底無理であると学びました。それはもう宗教みたいなものですから、誰かが正論をいくら訴えても無理でしょう。反対派の人たちを説得してすべての国民を納得させてから法制化するというには絶対に無理ですから、強行していくしかないのかも知れません。 春野ことり
~ことりさん、コメントありがとうございます。先生のブログ上でも議論されていましたね。秋田の今回の強行を私は支持しています。医療経済の話を介入しないで議論するって、、、日本人はいい子に徹する傾向があるのでしょうか?
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