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医療機器が発達してくると脳梗塞の患者さんでもMRI、血管撮影に頼ってしまい、昔ながらの身体所見を疎かにしがちです。放射線科医であれば写真の読影さえしっかりやれば文句を言われることはありませんが、一般の臨床医にとって脳梗塞の急性期にt-PAを使用出来る時代になり、身体所見の重要性は増していると私は思います。
今年7月、t-PA静注療法を施行した中で大動脈解離を来たしていた症例が数例報告されました。これらは全て左片麻痺、つまり右大脳に脳梗塞を起こしていた症例です。
心臓→大動脈弓→右腕頭動脈→右総頚動脈→右内頚動脈から右大脳は養われますが右上行大動脈に解離が生じて右腕頭動脈にかかりますと右大脳に行く血行が障害されます。 もしt-PA静注を開始する前に脈拍の左右差に気付いていれば(この場合大動脈弓→右腕頭動脈→右鎖骨下動脈→右腕を養う動脈の血行障害から右腕の脈拍が低下)、身体所見から十分大動脈解離(Debecay Ⅰ)を疑うことが出来る訳です。もちろん問診で激しい胸痛(脳梗塞の症状より前)を聞き出すことも重要です。
New England Jouranal of Medicine. Jan 327-329, 2006にDr. Bomback というレジデントがPhysical Exam and the Sense of Smellという論文を発表しています。エピソードを紹介しながら聴診、医師の嗅覚の重要性について触れています。(参考)脳外科医の聴診 http://blog.livedoor.jp/onizukam/?blog_id=2437115
今日の教訓:脳梗塞急性期+脈拍に左右差あり→上行大動脈解離かも?(もちろん鑑別として大動脈炎症候群もありますが)忘れるべからず!
自分の両手で脈をとり、看護師に頼り過ぎないこと! (と自分に言い聞かせます)
t-PA静注療法について(一般の方向け)
1 脳梗塞とは脳の血管が細くなったり,血のかたまり(血栓)が詰まったりして,脳に酸素や栄養が送られなくなるため,脳の神経細胞が傷害される病気です.脳梗塞の主な症状としては,手足の麻痺,しびれ,ろれつが回らない,めまい,意識障害などがあります.脳梗塞の治療では,できるだけ早く(症状が出現してから 3時間以内)脳の血の流れを良くすることが大切です.血栓溶解療法(アルテプラーゼ静注療法)は,詰まった血管の血栓を溶かすことによって,血液の流れを再開させ,脳梗塞を治療します.
2 治療方法症状が出現してから3時間以内にアルテプラーゼというお薬を,0.6mg/kg(34.8万国際単位/kg)の10%を注射で,残りの90%を1時間で点滴します.その効果は,米国で行われた臨床試験では,アルテプラーゼを使った人の39%がほとんど障害のない状態にまで回復しました(使わなかった人では26%でした).日本で行った試験では,37%の人がほとんど障害のない状態まで回復しました.副作用としては,この薬の特性から最も多いものとして出血があります.その程度は様々ですが,脳梗塞の患者さんでは,特に「出血性脳梗塞」に注意する必要があります. 脳の血管が詰まったことによってその先の血管ももろくなるため,この治療によって詰まった血管の血の流れが再開すると,この血流に耐えきれず,血管の壁¥が破れて出血を起こします.この状態のことを「出血性脳梗塞」と言います(これはこの治療を行わなくても起こることがあります).この程度は様々で,CT検査で初めてわかるものから症状が悪化するもの,場合によっては,手術が必要で,命に関わってくるようなひどいものまであります.
米国の試験では,「症状の悪化を伴った出血性脳梗塞」は6.4%で,うち死亡は2.9%でした(アルテプラーゼを使わなかった人では0.6%で,うち死亡は0.3%でした).日本の試験では,5.8%で,うち死亡は0.9%でした.この「症状の悪化を伴った出血性脳梗塞」は,血圧の高い人,血糖の調節が困難な人,意識状態の悪い人などで起きやすいことがわかっており,このような危険性が高い人には行えない治療です. その他の副作用として,消化器,膀胱や肺など,いろいろな臓器出血を起こしたり,出血に伴う貧血,血圧低下,発汗,熱感,発熱などがあります.いずれの副作用も1%未満です.中島みゆき、時代=Time goes around http://www.youtube.com/watch?v=zAOg6x5LIOk
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