2007年のノーベル生理学医学賞は「ノックアウトマウス」の作成に成功した米ユタ大学のマリオ・カペッキ教授(70)、米ノースカロライナ大学のオリバー・スミシーズ教授(82)、英カーディフ大学のマーチン・エバンス教授(66)に決定した。
脳外科医もノーベル生理学医学賞を1949年に受けている。エガス・モニス (Anto'nio Caetano de Abreu Freire Egas Moniz, 1874年11月29日 - 1955年12月13日)、その功績は「前部前頭葉切截ロボトミー」。頭蓋骨にドリルで穴を開け、" Leucotome(白質切断用メス)"と呼ばれる棒状の器具を差し込んで前頭葉の神経繊維を切断し、繊維群の再結合を促すことで精神障害を克服するというもので、モニスはこの方法で20人の精神症状を呈する患者に対して手術を行い、"著しい成果"を挙げた事を学会に報告したのである。
この手術を施行したうつ病の患者の6%は手術死、その他てんかん発作、人格変化、無気力、抑制の欠如、衝動性などの重大かつ不可逆的な副作用が 起こった。しかし、アメリカのW.フリーマンとJ.W.ワッツにより、難治性の精神疾患患者に対して熱心に施術された。抗精神病薬が発明されたこと と、ロボトミーの副作用の大きさとあいまって、この手術は行われなくなった。また、エガス・モニスもロボトミー手術を行った患者に銃撃され重傷を負った。現在は精神疾患に対してロボトミーを行うことは禁止されている。
日本では1942年、新潟医科大学(後の新潟大学医学部)の中田瑞穂によって初めて行われ、戦時中および戦後しばらく、主に統合失調症患者を対象として各地で施行された。施行された患者数は、一説によると3万から12万という。1975年に「精神外科を否定する決議」が日本精神神経学会で可決され、それ以降は行われていない。日本ではこのロボトミー手術を受けた患者が、同意のないまま手術を行なった医師に対し復讐と称して殺人を行った事件がある(1979年東京都小平市のロボトミー殺人事件)。
ロボトミー手術を受けた患者の中には世間に名を知られた人々も多い。例えば1941年には故ケネディー大統領の妹で軽度の精神障害を患っていたローズマリー・ケネディも23歳の時に、また当代一の美人にして、様々な奇行でも知られた女優のフランシス・ファーマーも各種治療を試した後、1949年にロボトミー手術を受けている、彼女の伝記映画、ジェシカ・ラング主演の「女優フランシス」は私も観た。ジャック・ニコルソンの代表作「カッコーの巣の上で」ではニコルソン演じるマクマーフィーはロボトミー手術によって、もはや言葉もしゃべれず、正常な思考もできない廃人のような姿になっている。
その当時患者のためにbestと思える治療が、時代を経て「人体実験」と言われる危険が潜んでいることを我々は念頭におきながら診療に従事しなければならないのである。
pink floyd brain damage- cuckoo's nest tribute
http://jp.youtube.com/watch?v=Hm4cgYX0-h8
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脳梗塞急性期iv tPAが日本でも認可になり約2年経過しますが、出血の合併症が日本では多い印象がありますがいかがでしょうか。岩手医大脳外科 小川 彰教授の書いた論文がStrokeに掲載されています。
Randomized trial of intraarterial infusion of urokinase within 6 hours of middle cerebral artery stroke: the middle cerebral artery embolism local fibrinolytic intervention trial (MELT) Japan. Ogawa A, Mori E, Minematsu K, Taki W, Takahashi A, Nemoto S, Miyamoto S, Sasaki M, Inoue T; MELT Japan Study Group.
Stroke. 2007 Oct;38(10):2633-9. Epub 2007 Aug 16.
http://stroke.ahajournals.org/cgi/content/full/38/10/2633...
このMELT studyは症例が集まらず、またstudyの途中でtPA静注が保険認可されてしまったために登録が打ち切りになりました。 このstudyの結果がよいのは、t-PA予後不良である内頚動脈閉塞群が入っておらず、中大脳動脈閉塞群に限っているためです。現在J-MUSICの第二層試験が始まっており、これは閉塞血管を明らかにした上でiv. tPAを行うようになっています。これにより閉塞血管別のiv. tPAの成績がでますので、後日MELTと比較できるでしょう。
さて、t-PAの静注は禁忌項目に該当する患者、ワーファリン使用中には当然使えません。t-PAの静注は血管内治療までの繋ぎと言いますか、CTで梗塞なし、出血なし、3時間以内で投与しながら血管内施設に搬送して改善すれば良いですが、改善しなければ6時間以内なら血管内でPTA(ウロキナーゼは使用せず)、後方循環であれば10時間以内でもアメリカではやっていました。
日本ではまだ呼ばれていませんが、適応ありと考えれば私は血管内を第1選択でやると思います。動注で効果が無ければ直ちにPTA(経皮的血管形成術、つまりバルーン形成術のみでステントは使用しない)をまず考えます。アメリカなら頭蓋内ステントの使用でしょう。
iv. tPA 対 ia. UKに関しては、まだtPA/UKの動注自体が日本では保険認可されていないために、これからの検討課題です。しかし、strokeに載った日本オリジナルのstudyですから一挙に動注療法が花開くかも?ですね。
===以下日経ネットから抜粋===
<脳梗塞の血管内治療法、回復率2倍に・57施設が共同研究>
脳梗塞(こうそく)患者の脳の血栓にカテーテルで血栓溶解剤を注入し、血流を回復させる新たな治療法は、社会復帰できるまで回復する患者の割合が従来の薬物治療の約2倍に高まるとの臨床試験結果を、全国57施設が参加する研究グループが3日、発表した。記者会見した主任研究者の小川彰・岩手医科大学教授は「今後、早期治療では血管内治療が標準になっていくと思う」と述べた。
臨床試験には岩手医大のほか、東北大学、国立循環器病センターなど全国の大学や病院が参加。脳に血液を送る「中大脳動脈」が血栓でふさがって脳梗塞になり、2002年1月から05年10月にかけて各施設に運ばれた患者を対象にした。発症から6時間以内で脳の損傷がほとんど始まっていない段階の患者で、家族の同意が得られた114人を対象とした。
患者を57人ずつ二組に分け、一方には足の付け根からカテーテルを入れ、脳の動脈の詰まっている部分に直接、ウロキナーゼという血栓溶解剤を注入する新治療を行った。もう一方はむくみを取ったり脳の血液の循環を改善したりする従来の薬物治療を行った。
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