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2008.07.30 18:15 |  診療  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 19

医療事故を起こした後輩に伝えたいこと

術中損傷・再開腹をしてしまったと聞きました。

患者さんに後遺障害が残らなくて、幸いでした。

上級ドクターと入ったopeとは言え、執刀医だったのですから、責任を感じるでしょう。

 

苦しい最中と思いますが、今、やるべきことがあります。

 

まずは、患者さんに真摯に向き合って下さい。

もしかしたら、訪室を拒まれるかも知れないけれど、

それでも毎日、患者さんの状態を診察し、気持ちを受け止めましょう。

経緯を詳細に説明し、丁寧に謝って下さい。

人間ですから、逃げたい気持ちになるかも知れませんが、逃げちゃだめ。

先生が持つ全ての能力を駆使して、患者さんの気持ちを想像して下さい。 

 

それから、何故そうなってしまったのか、しっかり分析しましょう。

2度と同じことを繰り返さないためにも、記録しておくのがコツです。

類似の事故報告があるはずですから、文献検索もして下さい。

今読むと、とても頭に残ると思います。

 

落ち込まないで、と言っても無理ですよね。

ですが、100%安全確実な手技は、あり得ません。

このことを肝に銘じて、常に謙虚な姿勢で手術をしましょう。

患者さんにご迷惑をおかけしながら若手が成長していく、という構造が、

苦しいのですが、医学の宿命です。

この意味からも、患者さんに対する敬意を忘れてはなりません。

 

この状況で先生がどう行動するか、皆が見ています。

患者さんも、スタッフも、上級ドクターも。

もちろん私も、見守っていますよ。

先生なら、きっと大丈夫。

思い切り落ち込んで、適当なところで帰って来て下さいね・・・

  ・

  ・

  ・ 

・・・と言ってあげたいのですが、えらそで照れくさくて、言えません。

 

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2008.07.17 18:33 |  医療事故  |  その他(医療関連)  |  なな  | 推薦数 : 34

ななのつぶやき・2歳

福島県立大野病院事件が起きるまでは、私は眠っていました。

 

インターネットの使用目的は、電子メールと文献検索だけ。

テレビは見ないし、新聞はたまに読む程度、

医学関係も専門分野の勉強ばかりで、医療問題とか、法律や裁判とか、

全く無縁の世界でした。

地方の基幹病院から、産科閉鎖と共に撤退して来ましたが、

「こういうこともあるかな」くらいの認識でした。

当直がひと月15回を超えるようになっても、夜間に呼ばれる回数が増えても、

患者さんと向き合っていさえすれば幸せで、

仕事量が増えたことに、何の疑問も感じていませんでした。

辞めていく産婦人科医の仲間たちを見ても、

「今どきこんなきつい仕事、流行らないのよね~やっぱり」

くらいにしか思っていませんでした。

きっと10年後も同じように産婦人科医をやっていて、

少しずつ成長して、患者さんからもスタッフからも、もっと頼りにされるようになって、

年々幸せに産婦人科医療ができるようになるのだと、信じて疑っていませんでした。

 

平成18年2月18日、大野病院事件が起きました。

あまりに不合理な逮捕。

連日のように出される、医学系学会からの抗議声明。

100を超えた抗議声明に対抗するかのような、福島県警本部長賞授与。

 

たぎるような怒りに、私は目を醒ましました。

 

この異常な事件に接して、私がしたことは、インターネットでの検索でした。

調べてみると、情報の嵐です。

m3掲示板、医療系ブログ、HP、あちこちに峻烈な文章が掲げられています。

「私にも、何かできないだろうか」

そんな時、ふと「m3ブログ」をのぞいたら・・・

個性豊かなブログが、いくつも輝いていました。

東京日和、産科医療のこれから、がんばれあかがま、天国へのビザ、

さあ 立ち上がろう、マイアミの青い空、医者のホンネを綴りたい、やぶ医師のつぶやき・・・

惹きこまれるように読みました。

一気に、世界が広がります。

「私も書いてみよう。そしていつか、大野病院事件に対して峻烈な意見を書くんだ!」

そう思いながら、ひとまず患者さんたちのことを綴り出したら、綴り出したら、

止まらなくなってしまいました。

その間にも、「大野病院事件に対する峻烈な意見」は、

他の先生方がものすごいものをどんどんお書きになって、

言うことなんか、あっという間になくなって、そしてとうとう機会を逸しました(笑)。

 

一昨日、2歳を迎えた「ななのつぶやき」です。

当初の目的とは全然かけ離れてしまったものの、それなりの役割は存在するのかな、と

無理やり納得しています。

 

今日まで支えて下さった方々に、心からの感謝を込めて。

 

http://www.honey.ne.jp/~yosyan/fukushima/

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2008.02.18 02:38 |  診療  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 75

2月18日に記す

新潟大学産婦人科教授  田中憲一先生

 

不遜な文言を、どうかお許し下さい。

 

先生が、福島県立大野病院事件の検察側証人になられてから、

生活が一変したのではないでしょうか。

産婦人科の狭い世界で、居づらい思いはしていませんか。

心休まる暇は、あるのでしょうか。

 

この裁判、一審無罪の後も、控訴されるのではないかと思います。

もし先生が、これまでの成り行きを悔いていらっしゃるのでしたら

どうか勇気を持って、検察側証人を降りて下さい。

 

この事件のために、日本中の医師たちが悲鳴を上げています。

一日も早く裁判に終止符を打ち、

壊れかけた医療を、

我々の愛する産婦人科医療を、

共に守って行っては、下さいませんか。

 

 

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2008.02.07 18:01 |  診療  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 77

福島県立大野病院事件に思う

平成18年2月18日、福島県立大野病院の産婦人科医、加藤先生が逮捕されて

もうすぐ2年経ちます。

平成16年12月、加藤先生は前置胎盤の妊婦さんの帝王切開を執刀されました。

手術中に、胎盤が子宮壁に強固に癒着していることが判明し、剥離の際に大量出血、

加藤先生と手術スタッフたちは、懸命の治療をしますが、

非常に悲しく残念なことに、産婦さんは亡くなりました。

 

まずは、亡くなった産婦さんに、心から哀悼の意を捧げます。

 

手術から1年2ヶ月の後、加藤先生は業務上過失致死等で、福島県警に逮捕されました。

手術から1年以上経っているのに「証拠隠滅の恐れあり」、

ご自宅では、臨月の奥様がお待ちになっているのに「逃亡の恐れあり」として、

在宅起訴ではない、逮捕でした。

 

逮捕には、100を超える医学系学会が、抗議声明を表明しました。

現在も裁判は続いており、証拠調べは終了、次回は論告求刑が予定されています。

 

裁判では、癒着胎盤の術前診断や、胎盤剥離にクーパーを使ったことの可否が争われていますが、 

何だか違う気がするのです。

この他に、ずっと思っていることがあります。

 

① 加藤先生は、出血に対する処置は、最終的には完遂しています。

  手術経過を見直してみましょう。

------------------------------------------------

    14:50 児娩出、濃厚赤血球5単位輸血

  16:30 濃厚赤血球10単位輸血し、子宮全摘開始

  17:30 濃厚赤血球10単位輸血、子宮全摘終了

  18:00頃 心室細動、蘇生開始

  19:01 死亡確認

------------------------------------------------ 

出血を止められず、輸血も間に合わずに、血圧が低下して死亡しているのであれば、

過失の有無が問題になるのも、まだわかります。

しかし、胎盤剥離に固執せずに子宮摘出に切り替えることによって、止血を得ており、

その後、心室細動が起こって、亡くなっているのです。

加藤先生に、あれ以上何をし得たでしょうか。

 

② 医療が介入していなかったら、母児共に救命し得なかったケースであることが、

 忘れられていないでしょうか。

 麻酔下でも剥離できなかった、前置胎盤・癒着胎盤です。

 しかし、医療が介入した結果、児だけは救命できました。

 「母児共に救命できない」ことと、「母児共に救命できる」ことの間には、大きな溝があります。

 医療が介入すれば、その大きな溝を一足飛びに埋めることができて当然、

 できなければ犯罪行為なのでしょうか。

 医学はまだまだ発展途上、不確実なものです。

 発展を追求する途上で、追求者たちが犯罪者として裁かれるのであれば、

 誰が医学を発展させて行けると言うのでしょうか。

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2007.08.31 22:21 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 18

産科医療の現場で見たもの

2泊連続当直が明けた日のことです。
午前は、外来患者さんを40人診察しました。
午後は開腹のopeが2件、お産が1件ありました。
夜、ope患者さんの様子が安定したのを見届けて、帰宅します。
しかし、もし夜間にopeが必要な急患が発生したり、搬送があったりしたら、
出動して、病院へ向かいます。
今までもそうやって、搬送を受けて来ました。

ちょうどその日、奈良県で妊婦さんを乗せた救急車が10数カ所で受け入れ不能となり、
病院到着までに3時間かかってしまう、という事件がありました。

受け入れ不能の影には、この日の私の病院のように
無理してでも受けて来た、幾多の病院があるはずです。

しかし残念ながら、私の病院も、近いうちに搬送受け入れの範囲が制限される予定です。
人員不足により、責任を持ってお受けできる範囲が、狭まってしまったためです。

マスコミの人たちへ。
世の中の女性たちに向けて
「妊婦健診はきちんと受けましょう」と、発信してもらえないでしょうか。
この事件の妊婦さんも、普通に健診に通ってかかりつけ医がいたら、
搬送先が見つからずに往生することは、なかったでしょうから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

産婦人科医になってから、
「全身の血液が沸騰するほど怖い思い」をしたことが、何回かあります。
そのうち上位10に入る事件が、S先生の産院で去年の今頃にあった
分娩時出血多量事件です。
http://blog.m3.com/nana/20060831/1

子宮内反、修復後の弛緩出血、頚管裂傷で、
搬送先での出血量もあわせると、
身体中の血液が全部出切るくらい、出血しています。
人が一人失血死する過程を、目の前で見ているような感じでした。

S先生の産院で分娩、輸血、内反修復、裂傷縫合
搬送先でも再度内反してope、輸血、術後入院していますが、
実は、当院にも搬送先にも、全く費用を払っていないのです。

ちなみに、きちんとした妊婦さんです。
真面目に健診に通い、ちゃんと費用を支払っていました。
思いがけないアクシデントのために、医療費がかさんでしまい、
払い切れなかったのではないか、と思うのです……

あの時産まれた子は、1歳になるはずです。
あの妊婦さんがママとなって、
今、どうしているのか、どんな気持ちでいるのかと、
時折、思うことがあります。

 

 

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2007.08.05 08:31 |  診療  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 21

分娩同意書

病院で検査や治療を受ける時に「同意書」あるいは「同意書・説明書」
という書類を見たことのある方は、大勢いらっしゃると思います。
検査や治療の内容、目的、起こり得る副作用などが説明してある文章で、
それらを理解した上で、「その医療行為を受けます」と同意してもらうことが目的です。

様々な医療行為に関して、同意書が存在します。
手術や輸血はもちろん、
造影剤を使用した画像診断(CT、MRIなど)、鎖骨下静脈穿刺、
産婦人科領域では陣痛促進剤使用、子宮卵管造影、人工授精などです。

ところがお産に関しては、同意書・説明書がないのが一般的です。
お産こそ、手術や輸血に匹敵するレベルのリスクを孕んでいるのに。

一方、多くの人は、お産のリスクをほとんど知らないまま、お産に臨みます。
「おめでた」という言葉に象徴される、お産の明るいイメージ。
学校教育でも、お産のことを学ぶ機会は皆無、という現状。
また、妊婦さん向けの雑誌を見ると、
妊婦健診でもらった赤ちゃんの超音波写真を投稿するコーナーや、
マタニティ・ドレスの写真が、ファッション雑誌のように並んでいます。
こんな風潮のもとでは、
「お産は、順調に行って当たり前」、
そんな認識を持ってしまっても、ある程度仕方のないことかも知れません。

しかし、この認識が、患者さんにも、医療者にも、不幸をもたらしています。
患者さんは、順調に経過すると信じて疑わなかったものが、
思わぬ結果になると、非常に混乱します。
そして医療者は、最善を尽くしても患者さんの期待に沿えなかった場合に厳しく糾弾され、
士気を失い、医療の現場から立ち去り、
そして、残った医療者たちの負担が、倍加します。

こんな悪循環を断ち切るためには、
お産をされる方たちに、お産のリスクを啓蒙する必要があります。
そのひとつの方法として、全ての妊婦さんに
「分娩同意書・説明書」をお渡しすることを検討しています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


              【分娩同意書・説明書】


医療技術の進歩により、妊娠・出産における安全性は、劇的に改善しました。
しかし、それでも妊娠・出産で生命を落としたり、後遺症を残したりすることはあり得ます。


<生命に関わること>
出産に関わる母子の安全の指標として、以下の2つものがあります。

1 周産期死亡率:妊娠22週〜生後1週間未満の胎児・新生児の死亡率
 1985年には64人に1人が亡くなっていたものが、2005年には208人に1人と、
 20年間で死亡数が1/3以下に減少しています。

2 妊産婦死亡率:妊娠中〜出産後42日未満の死亡率
 1940年には430人に1人亡くなっていたものが、2005年には17000人に1人と大幅に改善し、
 世界でもトップレベルの成績です。

 しかし、このように現在でも、
 妊娠・出産において生命を落としてしまうお母さん、赤ちゃんがいます。


<健康に関わること>
妊娠は病気ではありませんので、経過が順調であれば、普段と同じ生活が望まれます。
しかし、思わぬ合併症が起こり、入院を要することもあります。
以下、頻度の多いものを示します。

1 重症妊娠悪阻:重症化すると、脳に障害を起こすことがあります。
2 切迫流産・切迫早産:早産になった場合、赤ちゃんが長期入院を要したり、障害を残すことがありま
   す。
3 妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群と改名):未熟児になったり、母体に高血圧、脳障害などの後遺症を残
   すことがあります。
4 前置胎盤、低位胎盤:大出血になったり、止血ができないケースでは子宮摘出を要することがあり
   ます。


以上のように、妊娠・出産にはトラブルが潜んでおり、
ひと度発症すると、取り返しのつかない場合もあります。

母子共に、健康で出産を迎えるために、以下のことをご理解・遵守下さい。


① 妊娠中はしっかりと自己管理して下さい
 お腹の中にいる赤ちゃんを守ってあげられるのは、お母さんしかいません。
 体重管理には充分気を配って下さい。体重が増えすぎると、産道にも脂肪がついて、
 赤ちゃんはより狭いところを通らなくてはなりませんので、苦しい思いをすることになります。
 また、脂肪がつくと、お産の時に産道が裂けやすくなります。
 味の濃いものは控えて下さい。血圧上昇につながることがあります。
 喫煙は論外です。赤ちゃんの顔に煙を吹きかけるのと同じと考えて下さい。


② 分娩時の医療行為をご理解下さい
 頻度の多いものとして、会陰切開、陣痛促進剤、吸引分娩あるいは鉗子分娩、帝王切開があります。
 いずれも母子の安全を守るために行うもので、不必要に施行することはありません。


③ 妊娠・出産は本来命がけの行為です
 何人ものお母さんと赤ちゃんが、お産で生命を落として来た教訓を経て、
 現在があることを忘れないで下さい。


上記事項をご承諾頂いた上で、当院でのお産をご希望される場合は、以下にご署名下さい。

---------------------------------------------------------------------------

○○病院長殿


私は上記事項に承諾の上、○○病院での出産を希望します。


                             平成_年_月_日

                                  ご署名___________


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2007.07.08 08:31 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 15

例えば、昨日の当直帯で

12時間の間に、お産が7件ありました。
産院ですので、院内に存在する医療者は、私と、看護師2名。
看護師は2人とも60代のベテランです(深夜勤、なさるんです(/_;))。

7件のうち2件は、15分違いで出生しています。
会陰の縫合も間に合いません。
7人とも、最初から入院していたわけではなく、 深夜になってから入院してきた人もいます。
その度に、電話に出たり、カルテや入院用具やベットの準備をしたり、
また入院時には、バイタルを測り、モニターをつけ、着替えてもらいます。
中には、入院後7分で分娩になっている人もいました。

進行中の産婦さんは、3時間おきに医者が内診して カルテに署名しないとなりません。
新生児室には、総勢19名の赤ちゃんが、 授乳時間を過ぎてしまい、
ほぎゃあほぎゃあの大合唱です。

明け方になって、妊娠35週0日の出血の急患が来ました。
診察すると、子宮口も開いて、お腹もはっており、 お産が始まっています。
この直後に、他の進行中の産婦さんが分娩、
新たな陣痛発来の妊婦さんが入院。
この陣発の妊婦さんを診察していると、
35週の早産の方が、あっという間にお産になりましたが、
血性羊水と共に、赤ちゃんも胎盤もいっぺんに出ました。
部分常位胎盤早期剥離です。
赤ちゃんは手足がだらんとしており、呼吸はなく、 心拍は100回/分を切っています。
第一啼泣があるまでは、生きた心地がしませんでしたが、
5分後には自発呼吸が出て、泣いてくれました。
しかし保育器に入れても、あまり具合は良くないので
新生児の搬送先を探しましたが、全くみつかりません。
どこも満床ですし、
「そのくらいの具合の子なら、そちらで診てもらえないでしょうか」とのこと。
今の医療事情では、当然の発想です。

人手は、増えません。
こんな状況ですので、新規採用の助産師・看護師は居着かないようです。
医局から派遣されている産婦人科の先生は、
他の病院で遭った医療事故を契機に、どんどん口数が減って、 メールをしても返事が来なくなり、
とうとう休職したと人づてに聞きました。

こんな現場で、
使える医療技能を使ってはいけない、
内診のできるベテランナースの技能を使っては、いけない、
というのが、この国の決まりです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いなか小児科医先生に、賛同します。
以下、先生のブログより頂戴しました。

おそらくご存知と思いますが・・・
http://tsukinohikarini.blog41.fc2.com/

この文章ですが、告発文です。多くの人の眼に届くよう、特別のご配慮をお願いします。リアリティの無視、などというレベルではありません。

全文を読みたい方は、こちらです。
http://tsukinohikarini.blog41.fc2.com/blog-entry-290.html

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2007.06.25 05:28 |  診療  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 32

産科医療の行く末を案ず

大学病院にいた頃にあたったお産です。

その産婦さんは、何の合併症もなく、赤ちゃんの発育も良好で
非常に順調な妊娠経過でした。
臨月に入って自然陣発し、入院されました。
それなりに時間はかかりましたが、初産としては通常の経過をたどり、
無事、お産になりました。

お産の後は、約2時間分娩室で横になってもらい、
経過観察してから、病室に帰るのが一般的です。
その間、経過が順調なお産で、ナースコールもなければ
1時間に1回くらいしか様子を見に行けないことも、しばしばあります。
このお産もそうでした。

ふと、分娩室内に院内PHSを忘れて来たのに気づきました。
お休み中のところをお邪魔して申し訳ないと思いながら、
PHSを取りに入りました。
当然、併せて産婦さんの様子もお聞きします。
「如何ですか。 お腹、痛くないですか?」
「はい。お腹はあまり痛くないのですが、ちょっと、頭が痛くて」
  血圧を見ると、全く正常の値です。
「目の前、ちかちかしませんか?」
「大丈夫です。ちょっと、いきみ過ぎたのかも」
「あんまり痛かったら、お薬持ってきますよ」
「はい、ありがとうございます。今のところ大丈夫です」

分娩室を出て、一応助産師に頭痛のことを話していたら、
指導医の先生がその会話を聞きとめました。
超慎重で有名なその先生は、ご自分でも様子を見ようと
分娩室に向かいます。
礼儀なので、私も一緒について行きます。
指導医の先生も、産婦さんに、私と同じ質問をします。
「目の前、ちかちかしませんか?」
「はい、大丈夫です」

ところが。
ここで、枕元のペットボトルに手をやった産婦さんが、
何故かうまくペットボトルを掴めない様子。
「お産の時、力入れすぎちゃって」と、笑っていますが、
指導医の先生の目つきが変わりました。
「頭のCTを撮りましょう」
頭痛と握力低下で、頭のCT?
しかし、尻込みする産婦さんと、戸惑う我々の様子は目に入らないかのように、
指導医の先生はさっさと手続きをしてしまいました。

できあがったCTを見て、仰天しました。
脳出血(被殻出血)でした。

あの時、私が分娩室にPHSを置き忘れていなかったら、
あの日の当直が、あの超慎重指導医の先生でなかったら、
産婦さんがお茶を飲もうとしなかったら……
発見は、ずっと遅れていたでしょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こちらは、開業産院で当直していた時のお話です。

陣痛室からコールです。
「先生! 来て下さい!」
超緊急事態であることを察し、すぐに飛んで行くと、
分娩進行中の産婦さんが、床に仰向けになって倒れています。
眼球は上転し、口からは泡、当然意識はありません。
「ルート! 血圧測って! 救急カート! バイトブロック! 院長呼んで!」
一気に叫びながら診察をすると、赤ちゃんの頭はすぐそこにあります。
血圧は上が200、胎児心拍は50くらい、意識は戻りません。
修羅場と化していたため、どうやったのかよく覚えていませんが、
床の上で急速遂娩したのは覚えています。

赤ちゃんは無事でした。
ほどなくして、お母さんも意識を取り戻しましたが、
ご本人はこの間の記憶がないそうです。
転んだ時に頭を打っていますし、
子癇発作の後ですから、個人開業医院での管理は困難です。
CTの撮れる施設で、産婦人科のあるところに、母体搬送しないとなりません。

ところが、大きな病院はどこも忙しく、受けてくれるとこはなかなか見つかりません。
軽く10か所以上あたった後、ようやく見つかったのは、
千葉県側から神奈川県側まで横断しないと行けない、都の反対側にある病院でした。
東京都の、平日の午後のお話です。

産婦さんは、無事でした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本日、奈良県大淀病院事件民事裁判の初回期日があります。

亡くなった産婦さんは、私より若い女性です。
産まれた赤ちゃんは、お母さんの顔すら見ることができません。
そして若いパパ、おじいちゃま、おばあちゃま……
悲しみと苦しみは、計り知れません。

その一方で、自分が産婦人科医としてぎりぎり渡って来た危ない橋を思うと、
大淀病院の先生と自分の間には、何の違いも感じません。
ぎりぎりの現場で、必死の努力をされた当事者の先生が、
今日、裁きの場に身を運ばなくてはならない、という現実を前に、
産科医療の行く末を案じずにはいられません。

 

 

 

 

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2007.04.26 22:07 |  診療  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 9

医者・患者関係は深遠です

Second opinionのために患者さんを紹介した先の先生から、電話が来ました。
患者さんの、子宮膣部組織診のプレパラートを貸し出してほしい、とのことです。
カルテを開くと、私の病院で子宮頚部上皮内癌と診断されたのが、半年以上前です。
また、私のところにいらっしゃる前に、他の病院で同じ診断がなされており、
元々Second opinionで当院にいらっしゃったものを、
更に他の病院での診察をご希望されたため紹介した、という経緯でした。
3つ目の病院(同時に2つの病院に紹介しましたので、計4つの病院にかかっています)で、
円錐切除術を受けた、という記録があります。
なかなか手術が受け入れられなかった、という気持ちがよく汲み取れる経過ですが、
それにしても、今頃になって何故?と思い、事情をお聞きしたところ
何と、患者さんが紹介先の先生を、訴えている、とのこと。

詳細は、こうです。
紹介先の先生のところでも、ご本人のご希望で同じ組織診を施行し、同じ診断になったそうです。
4つ目の病院でも、やはり組織診をやっています。
その上で円錐切除術を施行したら、切除した検体には癌細胞が残っていなかったのだそうです。
執刀した先生が「よかったですね、癌細胞はありませんでしたよ」と言ったら、
「癌細胞がないのに、どうして手術をしたんですかっ」となってしまったとか。

癌細胞がないことは、切除して初めてわかることなのですが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

世津子さん(仮名)は、体外受精で授かった、双子ちゃんの妊婦さんです。
子供の頃、重い腸の病気のため、お腹を開ける手術を何度も受けています。
体外受精であっても、妊娠成立自体が奇跡的、という状態でした。
遅いご結婚をされ、不妊に悩んだ世津子さんは、いくつも産婦人科を回った後、
当院の産婦人科部長先生の外来にたどり着きました。
更に部長先生のお知り合いの不妊専門のクリニックで、何度も体外受精をトライし
ようやく授かった、待望の双子ちゃんでした。
しかし、どんどん大きくなっていくお腹に、
恐らくは激しく癒着していると思われる腸がひきつれるのでしょう。
妊娠中に、激しい腹痛に悩まされていらっしゃいました。
一方で、妊娠成立までの背景もあって、世津子さんもご主人も、世津子さんのご両親も、
部長先生に絶大な信頼を寄せていました。
ああいうのを「目がハート」というのでしょう(笑)、
痛み止めを使っても全くおさまらない痛みに泣いていても、
部長先生の温和な顔を見るなり、涙目に笑顔を浮かべていらっしゃいました。

お産は帝王切開、もちろん部長先生の執刀です。
大きなケロイドのあるお腹を切開すると、何度も開けたお腹は、見たこともない腹壁になっていました。
皮膚のほぼ真下まで膀胱がつりあがっており、
部長先生の技術を持ってしても、最初の切開で、膀胱の一部を損傷してしまいました。
膀胱損傷は、本来は極力避けるべき合併症です。

お産は無事終わって、術後のご説明をご家族にした時のことです。

部長:「ほぼ予定通りの手術ができたのですが・・・実は膀胱の一部を損傷してしまいまして・・・
   膀胱を縫わざるを得ませんでした。1週間くらい、尿管が入ったままになりますし・・・」
お母様:「あ、あ、あ、先生、ありがとうございます~~」
ご主人:「子供を取り上げて頂いて、膀胱まで縫って頂いて、
   いやいや、何とお礼を申し上げたらいいのやら。」
部長:「は、は、は・・・(汗)」
私:(は、は、は・・・)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

医者・患者関係は深遠です。

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2007.04.19 22:19 |  診療  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 27

冒涜

共同通信の、配信記事です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
国立がんセンター中央病院で、2002年8月、子宮摘出術を受けた東京都八王子市の主婦=当時(47)が手術翌日に死亡した事故で、警視庁築地署は17日までに業務上過失致死の疑いで執刀医(65)と麻酔医(44)を書類送検した。
 調べでは、執刀医は骨盤内のリンパ節をはがす際、静脈を傷つけ、大量出血したのに十分な止血をしなかった疑い。麻酔医は執刀医に十分止血するよう促さなかった疑い。
 主婦は子宮がん治療のため、02年8月8日、同病院に入院。同12日、手術中に大量出血し、翌日、多臓器不全などで死亡した。
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

当事者の先生(以下、執刀医先生)は、私の目から見たら、神様のような先生です。

婦人科腫瘍専門の先生方からも、尊敬を集める先生です。
国がんの先生方だからこそできる治療・技術の、中心的存在でいらっしゃいました。

セカンド・オピニオンの患者さんを一人ご紹介したご縁で、度々ご指導を頂きました。
その患者さんは、当時私のいた市中病院では、子宮頸癌の浸潤癌と診断された方でした。
浸潤癌であれば、多くの場合は子宮摘出が必要になります。
30代前半の方でした。
ところが、執刀医先生にご意見をお伺いしたところ、
自らもプレパラートを検鏡して下さって、上皮内癌と診断しなおして下さいました。
他院での診断を覆して、より軽症の診断を下す場合、
最終的に悪い結果になってしまうと、厳しく責任を問われますので、
確かな自信と勇気が必要です。
結局、上皮内癌を前提として、子宮を温存できる円錐切除術だけをしましたが、
その患者さんは今、元気で2歳の子のママになっています。

これに味を占めた私は、はるかに目上で、しかもお会いしたこともない執刀医先生に、
厚かましくも、何人もの患者さんについて、ご意見を頂戴してしまいました。
子宮頸癌II期で、鶏卵大の外向発育型のmassのある患者さんの治療をお願いしたこともありますが、
もうすぐ5年になる現在、再発もなく元気にお過ごしとのことです。
また、ご意見を乞う度に、達筆な文字で大変丁寧なお返事を下さる上、
見ず知らずの若輩医者である私に、何かしらのアドバイスを下さるような先生です。

現在は、退職されています。
患者さん側とは既に示談が成立し、もうすぐ5年になろうとしているこの事故で
今、書類送検をして、一体、誰の、何のためになるのでしょう。

周産期領域の専門家である、敬愛する井上先生は、burnoutしてしまいました。
婦人科腫瘍領域の神様のような存在である、執刀医先生は、
犯罪者扱いされてしまいました。

これからどうしたら、いいんですか・・・

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