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2008.06.16 18:52 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 24

中絶手術と産婦人科医の葛藤

20代後半の、妊娠初期の患者さんがいらっしゃいました。

診察すると、子宮の中に10数mmの小さな赤ちゃんがいます。

しかし、どうも浮かないご様子です。

気になって、患者さんの言葉を待っていると

「今回はあきらめようと思いまして・・・」

「・・・そうですか。それは、パートナーの方とよく話し合った結果ですか?」

「話し合って、彼は生んでほしいと言っているのですが・・・」

ここで、言葉が途切れます。

その日は、妊娠は間違いないこと、考える猶予はまだあることをお話して

診察を終えました。

 

数日後、再診にいらっしゃいました。

やはり今回はあきらめます、と言いながらも、今にも泣き出しそうなご様子。

お話をお聞きしたら、彼とは2人で育てて行こうと決めたのですが、

ご両親が、彼の職業を理由に反対なさっているのだそうです。

でも、2人とも20歳をとうに超えているし、

親と縁を切ってでも生んで育てたい、と思う一方で、

両親に大反対されてまで生まれた子が、幸せになれるのだろうか、

という思いも、ぬぐい切れません。

ご両親は、大丈夫、すぐに次の子ができるから、と言っているそうですが・・・

 

どんな手術でも、100%絶対に成功する手術は存在しません。

中絶手術でも、1000件に1件くらい子宮穿孔が起きますし、

術中の大量出血、子宮内腔癒着など、

今後の妊娠に影響する危険性も、皆無ではありません。

 

何故、我が子が選択した幸せを信じないのか。

中絶手術に伴う危険を冒し、心に傷を負わせ、

それでも親の選択が正しいのだ、と信じて疑わない自信に、

ただ、圧倒されます。

 

しかし、親子関係は様々で、本人同士にしかわかり得ないものがあります。

患者さん本人が悩んだ末辿り着いた、ひとまずの結論です。

却って混乱させるようなことは、言えません。

 

でもでも、大反対を押し切ってお産をしたら、

赤ちゃんを見た途端、骨抜きになった、という例は本当にあります。

 

いいえ、私は医師なんだから、

あくまでも医学的なアドバイスだけをすべきだろう、

あまり個人的な考えを述べるのは、控えなくては・・・

 

でも、私は医師だ。治療マシーンじゃない。

人間味があったって、いいじゃない。

 

医師も、迷います。

 

「ご両親は、リスクのこともご承知の上で、そうおっしゃっているのですか」

この問いには、言葉に詰まっていました。

 

結局、結論は先に持ち越されました。

最終的に患者さんがどのような選択をしても、支持するのが、

産婦人科医の仕事であると思っています。

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