| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
| 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
| 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
| 29 | 30 |
外来診療中、受付の女性から声がかかりました。
「何だか、とても辛そうな方がお待ちになっているんですけれど・・・」
様子を見に行くと、上半身を折ったうずくまるような姿勢の方がいらっしゃいます。
「どうされましたか?」とお聞きしたら
「はい、お腹が痛くて・・・」
明らかに苦悶様の表情です。
順番を飛ばして診ると、お腹にエコーをあてて「えっ」と驚きます。
血液と思われる液体が、かなりの量溜まっています。
卵巣出血です。
急いで手術の準備をし、本人にも説明しますが、
痛みのあまり、話もまともに聞けないようです。
幸いにしてご家族がすぐに駆けつけて下さって、開腹手術になりました。
卵巣が裂けて、出血が続いています。
お腹の中に溜まっていた血液は、1000mlを超えていました。
もう少し遅かったら・・・と思うと、背筋が寒くなります。
術後、落ち着いてからご本人にお聞きすると、
「早朝、お腹が痛くて目が覚めたのですが、
もうすぐ病院が始まる時間になると思って、我慢してしまいました。
他の患者さんも大勢待っているので、私だけわがままを言ったら申し訳ないと思って」
とのことです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「コンビニ受診を控えよう」という運動が、少しずつ広まっています。
非常に重要なことです。
実際、コンビニ受診をする患者さんは見受けられます。
「生理痛の薬が欲しい」と夜間受診する人、
「1週間前からできものがあるけれど、昼間は仕事が休めないから」という人、
普段は妊婦健診をさぼって、時間外に受診しようとする人。
厳に慎んでもらわなければなりません。
現状のままでは、救急医療は破綻するでしょう。
その一方で、良識のあるやさしい方のことが、心配になってきました。
本文中の卵巣出血の患者さんもそうですが、
医師に聞きたいことがあるのに、
「こんなことを聞いてもいいのかな、忙しいのに迷惑ではないのかな」と、
医療者に配慮して下さるがために、遠慮したり、お悩みになっている女性が、
このコメント欄にも、何人もいらっしゃいました。
やさしい人の方が生きにくい世の中なのかな・・・
固定リンク | コメント (53) | トラックバック (2)
お産の時に、臍帯血(胎盤と臍帯に残った血液)を採ることによって、
白血病のような重い血液疾患の治療に使うことができます。
臍帯血の採取・管理・供給をしている「臍帯血バンク」という事業があります。
臍帯血に関わっている方たちのお話です。
<臍帯血をバンクから全国各地に運んでいる人>
飛行機で臍帯血を運ぶ際、優先搭乗・優先降機になるそうです。
空港でも非常に細やかな配慮を受け、
航空会社の方々の臍帯血に対するご理解とご好意に、感謝するばかりです。
臍帯血の到着を待っていた血液内科の先生から
「血内も医者が足りません。患者さんの傍を離れられない中、届けて下さって、
本当に助かります」
と感謝されたこともあるそうです。
「この仕事は、生命と善意のリレーです」。
ずっと年長の方の、輝く言葉でした。
<元患者さん>
白血病の治療は、非常に厳しいものです。
ひどい倦怠感、吐き気と嘔吐、全脱毛、精神的苦痛。
そんな中、「適合する臍帯血が見つかった」と聞いて
これで地獄から解放される、という思いと
提供してくれた妊婦さんに対する感謝だけで、精一杯だったそうです。
臍帯血移植を受け、元気を取り戻してから改めて、
臍帯血を提供してくれた妊婦さんだけではなく、
採血した産婦人科医や、臍帯血バンクの人たちの存在に気づき、
感謝の気持ちを伝えたいのだ、とおっしゃっていました。
元患者さんの言葉です。
「私には2回誕生日があります。
ひとつは本来の誕生日、もうひとつは臍帯血移植を受けた日です。」
<採血協力病院の産婦人科医>
「当直が何日も続いて、夜中に何件もお産があると、正直きついな、と思うことはあります。
でもそんな時に、臍帯血提供希望の妊婦さんのお産があると
”よし、頑張ろう!”という気持ちになります」
そうそう、そうなんですよねー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「こんなご時勢に善意でやっている産婦人科には、しかるべき報酬が支払われるべきだ」
と言って頂くこともあります。
嬉しい評価です。
でも、不思議と何もほしくないのです。
ボランティアの何たるかが、ちょっとだけ理解できたのかも知れません。
固定リンク | コメント (40) | トラックバック (1)
20代後半の、妊娠初期の患者さんがいらっしゃいました。
診察すると、子宮の中に10数mmの小さな赤ちゃんがいます。
しかし、どうも浮かないご様子です。
気になって、患者さんの言葉を待っていると
「今回はあきらめようと思いまして・・・」
「・・・そうですか。それは、パートナーの方とよく話し合った結果ですか?」
「話し合って、彼は生んでほしいと言っているのですが・・・」
ここで、言葉が途切れます。
その日は、妊娠は間違いないこと、考える猶予はまだあることをお話して
診察を終えました。
数日後、再診にいらっしゃいました。
やはり今回はあきらめます、と言いながらも、今にも泣き出しそうなご様子。
お話をお聞きしたら、彼とは2人で育てて行こうと決めたのですが、
ご両親が、彼の職業を理由に反対なさっているのだそうです。
でも、2人とも20歳をとうに超えているし、
親と縁を切ってでも生んで育てたい、と思う一方で、
両親に大反対されてまで生まれた子が、幸せになれるのだろうか、
という思いも、ぬぐい切れません。
ご両親は、大丈夫、すぐに次の子ができるから、と言っているそうですが・・・
どんな手術でも、100%絶対に成功する手術は存在しません。
中絶手術でも、1000件に1件くらい子宮穿孔が起きますし、
術中の大量出血、子宮内腔癒着など、
今後の妊娠に影響する危険性も、皆無ではありません。
何故、我が子が選択した幸せを信じないのか。
中絶手術に伴う危険を冒し、心に傷を負わせ、
それでも親の選択が正しいのだ、と信じて疑わない自信に、
ただ、圧倒されます。
しかし、親子関係は様々で、本人同士にしかわかり得ないものがあります。
患者さん本人が悩んだ末辿り着いた、ひとまずの結論です。
却って混乱させるようなことは、言えません。
でもでも、大反対を押し切ってお産をしたら、
赤ちゃんを見た途端、骨抜きになった、という例は本当にあります。
いいえ、私は医師なんだから、
あくまでも医学的なアドバイスだけをすべきだろう、
あまり個人的な考えを述べるのは、控えなくては・・・
でも、私は医師だ。治療マシーンじゃない。
人間味があったって、いいじゃない。
医師も、迷います。
「ご両親は、リスクのこともご承知の上で、そうおっしゃっているのですか」
この問いには、言葉に詰まっていました。
結局、結論は先に持ち越されました。
最終的に患者さんがどのような選択をしても、支持するのが、
産婦人科医の仕事であると思っています。
固定リンク | コメント (44) | トラックバック (0)
最近、「いつまでこの仕事を続けられるだろう」と考えることが、多くなりました。
1 仕事に余裕がなくなってきた
2年くらい前に比べて、明らかに仕事量が増えて来ました。
産婦人科医が減っていることと、
分娩取扱いを中止する施設が相次いでいることが、ひとつの原因です。
また、以前だったら個人病院で充分お産できたような、例えば肥満や小さい子宮筋腫など
合併症とも言えないような軽微な状態の妊婦さんが、
総合病院に紹介されてくるようになったためです。
特に妊婦健診は混む一方です。
予約枠はないも同然で、2時間近くお待たせしてしまうこともあります。
好きな仕事ですから、別に1日中やっていても平ちゃらですが、
「お腹の大きい人や具合の悪い人をお待たせしている」という
心理的な圧迫感が、重いのです。
午前の外来が終わると、予定の手術です。
しかし、時間通りに始められなかったり、
時間ぎりぎりにope室に駆け込んだりすることが、多くなりました。
また、手術中にも診察や指示出しの催促の電話が
容赦なくかかってきます。
常に追い立てられている感じです。
2 訴訟のリスクを肌で感じる
未解決の術後合併症の患者さんが、いらっしゃいます。
お産の時に新生児仮死になって、予後が未定の赤ちゃんもいます。
今のところ訴訟沙汰になる気配はありませんが、
もしそうなったら、間違いなくボキッと行くでしょう。
「医療被害者が訴訟を起こすことが医療崩壊につながっているという誤った考えが
一部の医者から出ている」
という主張もあるようですが、
今、私が産婦人科医療から逃散することになったら、
訴訟は間違いなくとどめになるでしょうから
少なくとも私に関しては、真実です。
実際、訴訟が原因で辞めた産婦人科医は、身近にいます。
お産や手術のような体力の要る仕事は、
いずれにしても、いつまでもできるものではありません。
ゆくゆくは、産婦人科医としての経験を生かして、
女性のメンタルケアにゆっくりじっくりと取り組んで行くのが、私の夢です。
でも、最近の「常に追い立てられている感じ」と、訴訟と常に肉薄している恐怖を思うと
ちょっと早いけれど、女性のメンタルに専念しようかな・・・と思うのです。
本当はもうしばらく、お産をやりたいのですが。