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日々患者さんと接する中で、医療が抱える問題点にふと気づくことがあります。
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雪子さん(仮名)は、40代の美しい女性です。
約3年来の腹痛を主訴に、ご主人に付き添われていらっしゃいました。
子宮筋腫の治療を何度かお受けになっており、開腹手術から2年たっています。
元々痛みと貧血のために子宮筋腫の治療をしたのですが、
治療後も痛みが取れません。
治療をしたのは、高名な産婦人科医です。
その後、何件も病院にかかって、夥しい種類の検査をお受けになっていますが、
結果は全て「異常なし」。
しかし、間違いなく痛みは雪子さんを苦しめています。
ひどい日には、鎮痛剤を十数個も使ってしまうそうですが、それでも治りません。
痛みが長引くと、行動にも制限が出始めます。
出かけるのも人に会うもの億劫になり、おうちに引きこもりがちになります。
家事をするのも辛く、日によっては1日中臥床しているなど、影響は深刻です。
気分もふさぎがちで、「こんな状態なら生きていても仕方ない」と思うようになってしまいます。
仕事人間だったご主人も、雪子さんのことが心配で
最近は仕事を休んで、雪子さんの代わりに家事をしたり、
痛がる雪子さんに向き合ったりしているのだそうです。
これは手ごわいかな、と、内心おそるおそる診察をしてみると、
変性した子宮筋腫がありました。
「ああ、筋腫がありますね。これのせいかも知れませんね。」
そう言った瞬間、雪子さんはボロボロと泣き始めました。
「今まで、どこに行っても”痛いはずない”って。
初めて、痛いことを認めてもらえました・・・」
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2つの問題点をはらんでいます。
ひとつは、子宮筋腫が今もあることを指摘されていなかった点です。
実は、雪子さんほどの強烈な痛みの説明がつくような筋腫ではありませんので、
筋腫の存在は診断されていても、雪子さんに知らされなかっただけかも知れません。
しかしそうではなく、これはあくまで推論ですが、高名な先生が治療をしているがために
その後、何件もの病院で「治療は成功、異常なしです」と言われていたのだとしたら・・・
でも、私自身も当科の教授が治療なさった後の患者さんで、もし同じようなことがあったら、
きちんと「筋腫があります」と言えるだろうか。
・・・・・。
医療不信って、こんなところから芽生えるのかも知れません。
もうひとつは、患者さんの痛みに向き合う姿勢が抜け落ちている点です。
痛みには、身体に危害が加えられた時に感じる、警告信号としての「急性痛」と、
痛みが長引いた時に、痛みを感じる神経が混線を起こすことによって生じる「慢性疼痛」があります。
慢性疼痛には、身体的要因だけではなく、心理社会的要因が複雑に絡んでいます。
雪子さんの場合、いくつもの病院で「痛いはずはない」と突き放されて来たことや、
ご自分のせいで仕事人間だったご主人が変わってしまったこと、
本来雪子さんの役割りだった家事が、結果として取り上げられてしまったことも
もしかしたら、関わっているかも知れません。
このように、痛みに悩む患者さんとは、日常的に出会います。
痛みの除去は、医学の重要な課題です。