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医療安全調査委員会の第三次試案に反対します。
誰のためのものなのか、わからないからです。
この委員会は、医療死亡事故が起きた場合に、
原因究明と再発防止を専門的に評価する機関として、設立が検討されています。
さらに、医療の透明性の確保や医療に対する信頼回復につながることによって
医師等が萎縮することなく医療を行えることが目的なのだそうです。
厚労省か内閣府に属して、医師・看護師等・法律家・有識者(患者代表)で構成されます。
第三次試案そのものはこちら
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495080001&OBJCD=&GROUP
僻地の産科医先生がまとめた、この件に関するブログ一覧はこちら
http://obgy.typepad.jp/blog/2008/04/post-1341-13.html
私見ですが、反対理由の概要は、以下です。
1 患者遺族の気持ちより届け出義務が優先
医療死亡事故について、一定の基準に達したら、全例この委員会に届け出ることになっています。
全ての患者さんのご遺族が、それを望むでしょうか。
医療事故で死亡した患者さんのご遺族の気持ちは、様々です。
謝罪してほしい、補償してほしい、真実が知りたい、再発防止につなげてほしい、
そっとしておいてほしい。
さらに、これらの気持ちは、時の流れと共に変わっていきます。
ご遺族が病院からの説明で納得し、そっとしておいてほしいと思っているのに、
基準に達したら全部調査、という発想は、
到底ご遺族の気持ちに配慮したものとは、思えません。
2 働き者のナースが危ない
例えば「消毒薬の静脈内への誤注入」は、届出の対象になっています。
主としてナースの仕事ですが、このような事故は
働く量が増えれば増える程、起こしやすくなります。
タクシーの運転手さんが、長く運転すればするほど交通事故を起こしやすくなるのと、同じです。
だったら、働かなければ事故はゼロになりますが、そうは行きません。
本気でこのような性質の事故を減らそうと思ったら、事故後に机上で検討することよりも
ナースの注意力が散漫にならない状況で働かせること、つまり「ナースの労働環境の整備」が
本来やるべきことではないでしょうか。
3 産婦人科医の立場からも反対
「医療事故の刑事手続きの対象については(中略)謙抑的な対応が行われることになる」
とあります。
つまり、「この委員会の存在は、医療事故を犯罪として裁くことには、抑制的に働く」ということです。
表現が曖昧過ぎて、全く信用できません。
刑事罰適用を検討する対象を、何故はっきりと明記しないのでしょう。
この点が曖昧なままでは、現場は益々萎縮してしまいます。
内診問題がいい例です。
看護師に内診させたとして、医師・看護師が逮捕されました。
このままでは分娩ができない施設が続出し、地域医療の崩壊につながると
分娩医療機関に大混乱を起こしました。
産婦人科医の団体と厚労省の応酬の末、
看護師は医師の指示によって「診療の補助」として、内診をしていいことになりました。
しかし、結局現場では、看護師は内診していません。
何の火種になるか、わからないからです。
一度萎縮した医療現場は、なかなか元に戻りません。
40年間産院で働いた看護師の技術も、埋もれたままです。
内診してもいい旨、通達されていてすらこの顛末ですので、
大野病院事件で加藤先生が逮捕され、醜悪滅裂な論告求刑がなされた時に
全く明文化されていない「警察・検察による謙抑的な対応」など、誰が信用できるでしょう。