なな
More プロフィール

Search

Calendar

<< 2008/04 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

トップページ

Doctors Blog

新着コメント

新着トラックバック

2008.04.27 14:14 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 27

町医者の問題意識:(3)モラル

3人とも、うちの病院でお産してくれた妊婦さんがいます。

3人とも、私が取り上げました。

産婦人科医の、勲章です。

 

1人目は、今の病院に赴任した時に前任者から引き継いで、

間もなくお産になりました。

 

2人目は、妊娠初期から私の外来に来てくれました。

毎回上のお子さんを妊婦健診に連れて来ていて、一緒にかわいがっていました。

自分が取り上げた子の成長を見れるのは、本当に嬉しいものです。

この妊婦さんと赤ちゃんが来るのが、毎回楽しみでした。

 

3人目も、初期から私の外来に来てくれました。

今度は子供2人を引き連れて、健診に来ていました。

ママにそっくりな2人の子は、外来ナースたちにも人気で、

みんなできゃあきゃあ言ってかわいがっていました。

妊娠経過中、入院が必要になった時には、

なかなか保育園が見つからなくて困っている彼女を、何とか助けようと

病棟師長が保育園探しに奔走していました。

 

小さなお子さんを2人連れて、大きなお腹を抱えて健診に通うのは、とても大変なはずですが、

いつも笑顔の、かわいらしい妊婦さんでした。

 

無事3人目をお産して、退院になろうという時、

医事課から電話がかかって来ました。

「実はこの方、今までの分娩費が未払いになっていまして・・・」

 

ええええ~~~~っっ??!

 

そもそも医事課が電話して来た理由が、

「今回は個室に入っているが、個室料は払わないと言っている」とのこと。

入院中に感染症にかかってしまったので、個室に隔離したのでした。

「個室に入ったのは自分の希望ではないから」というのが、個室料支払い拒否の理由だそうです。

感染症ですから、これは減免するとしても、

それどころか、前2回とも分娩費を踏み倒していたとは・・・

 

結局今回も、未払いで退院したそうです。

 

その後、産褥1か月健診にも来院せず、

赤ちゃんの1か月健診にも、来ていないそうです。

 

自分が取り上げたあの子たちは、一体どんな大人になるのだろう・・・

先を憂わずには、いられませんでした。

 

人間不信になりそう。

 

 

固定リンク | コメント (50) | トラックバック (4)

2008.04.25 03:42 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 15

町医者の問題意識:(2)お年寄り

外来に、100歳の患者さんがいらっしゃいました。

1908年生まれです。

息子さんに車椅子を押されて移動していますが、

あまりに手馴れた息子さんの動きに、ナースたちと一緒に感動しました。

軽々とお母様を抱きかかえて

「さ、立つよ」と、愛情がにじみ出るような介護をしています。

100歳の方の息子さんですから、若くても60~70歳でしょうか。

 

それだけではありません。

ほとんど寝たきりですが、床ずれが全くありません。

関節もやわらかく、内診台にも普通に乗れます。

髪がきちんと結ってあるので、つい

「きれいですね。どなたが結われたんですか?」

とお聞きしたら、ちょっと照れくさそうに「僕です」。

おばあちゃまは浴衣姿ですが、

そういえば襟元におしゃれなスカーフを巻いています。

 

「100歳ですか。お元気で、素晴らしいですね。」と言うと

「はい、区からお祝いをもらったので、きれいな着物でも買って帰ろうかと思いまして。」

 

みんなで、すっかり参ってしまいました。

 

でも、このおばあちゃまの年金からも、4月から6000円くらい引かれてるんですよね・・・

固定リンク | コメント (6) | トラックバック (1)

2008.04.23 08:00 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 39

町医者の問題意識:(1)痛み

日々患者さんと接する中で、医療が抱える問題点にふと気づくことがあります。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 

雪子さん(仮名)は、40代の美しい女性です。

約3年来の腹痛を主訴に、ご主人に付き添われていらっしゃいました。

 

子宮筋腫の治療を何度かお受けになっており、開腹手術から2年たっています。

元々痛みと貧血のために子宮筋腫の治療をしたのですが、

治療後も痛みが取れません。

治療をしたのは、高名な産婦人科医です。

その後、何件も病院にかかって、夥しい種類の検査をお受けになっていますが、

結果は全て「異常なし」。

しかし、間違いなく痛みは雪子さんを苦しめています。

ひどい日には、鎮痛剤を十数個も使ってしまうそうですが、それでも治りません。

 

痛みが長引くと、行動にも制限が出始めます。

出かけるのも人に会うもの億劫になり、おうちに引きこもりがちになります。

家事をするのも辛く、日によっては1日中臥床しているなど、影響は深刻です。

気分もふさぎがちで、「こんな状態なら生きていても仕方ない」と思うようになってしまいます。

仕事人間だったご主人も、雪子さんのことが心配で

最近は仕事を休んで、雪子さんの代わりに家事をしたり、

痛がる雪子さんに向き合ったりしているのだそうです。

 

これは手ごわいかな、と、内心おそるおそる診察をしてみると、

変性した子宮筋腫がありました。

「ああ、筋腫がありますね。これのせいかも知れませんね。」

そう言った瞬間、雪子さんはボロボロと泣き始めました。

「今まで、どこに行っても”痛いはずない”って。

 初めて、痛いことを認めてもらえました・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

2つの問題点をはらんでいます。

 

ひとつは、子宮筋腫が今もあることを指摘されていなかった点です。

実は、雪子さんほどの強烈な痛みの説明がつくような筋腫ではありませんので、

筋腫の存在は診断されていても、雪子さんに知らされなかっただけかも知れません。

しかしそうではなく、これはあくまで推論ですが、高名な先生が治療をしているがために

その後、何件もの病院で「治療は成功、異常なしです」と言われていたのだとしたら・・・

でも、私自身も当科の教授が治療なさった後の患者さんで、もし同じようなことがあったら、

きちんと「筋腫があります」と言えるだろうか。

・・・・・。

医療不信って、こんなところから芽生えるのかも知れません。

 

もうひとつは、患者さんの痛みに向き合う姿勢が抜け落ちている点です。 

痛みには、身体に危害が加えられた時に感じる、警告信号としての「急性痛」と、

痛みが長引いた時に、痛みを感じる神経が混線を起こすことによって生じる「慢性疼痛」があります。

慢性疼痛には、身体的要因だけではなく、心理社会的要因が複雑に絡んでいます。

雪子さんの場合、いくつもの病院で「痛いはずはない」と突き放されて来たことや、

ご自分のせいで仕事人間だったご主人が変わってしまったこと、

本来雪子さんの役割りだった家事が、結果として取り上げられてしまったことも

もしかしたら、関わっているかも知れません。

 

このように、痛みに悩む患者さんとは、日常的に出会います。

痛みの除去は、医学の重要な課題です。

固定リンク | コメント (29) | トラックバック (0)

2008.04.13 22:40 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 60

2つの流産

数か月前、流産しました。

職場の産婦人科部長に相談しようと思ったのですが、

気を遣って頂くもの何だか申し訳ないし、とためらっている間に、自然に出ました。

あまりの痛さに、びっくり。

とても立っていられないし、あぶら汗がにじむし。

でも、お産の痛さはこんなものじゃないのでしょうね。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

広美さん(仮名)は、妊娠14週の妊婦さんです。

非常に残念なことに、破水してしまい、ご入院されました。

この週数での破水は、ほぼ絶望的です。

当然のことですが、悲しみ、苦しみ、混乱し、気持ちが全くついて行きません。

まずは病院で安静にして、心と身体を落ち着けてもらうことにしました。

 

しかし、あまり待たずに出血が始まり、一緒に組織塊も出てくるようになります。

「悲しいし残念だけれど、こうなるともう、どうにもしてあげられないのですよ・・・」

そう話すと、広美さんは、わあっと泣き出しました。

泣いて泣いて泣いて、泣きじゃくっている間に、

今度は陣痛のような痛みが始まってしまいました。

痛みに泣いているのか、悲しみで泣いているのか、

もう、ぐしゃぐしゃに泣き崩れて、わかりません。

 

自分が流産した時の、あの痛みを思い出しました。

出たのは明け方に、一人で病院にいる時でした。

一人でその時を迎えた心細さと、痛みそのものが、たまらなく辛かった。

 

妹のような年齢の広美さんが、やはり一人でその時を迎えようとしている姿に、

いてもたってもいられません。

こんな時、自分だったら、どうしてほしいだろう。

「痛いね・・・」と言いながら、ただ背中をさするしか、ありませんでした。

 

体長15cmほどの、ちいさなちいさな赤ちゃんでした。

夕方の出来事でしたが、帰宅しようとしていた師長が更衣室から引き返して来ました。

師長は、果てしなくやさしい、助産師です。

赤ちゃんをきれいにして、ちいさな箱に入れて、ガーゼで綿帽子を作って、

サクランボくらいの大きさの頭に、かぶせてあげていました。

 

研修医が、見慣れないその光景を見て

「え、患者さんに見せるんですか?」と、驚きます。

「先生、”見せる”じゃないのよ、”会わせる”、ね」

私にそう言われて、はっとしていたようです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

広美さんに、充分なケアができたかどうか、わかりません。

研修医の先生も、どれだけのことを学んでくれたでしょう。

しかし、私自身が流産の痛みと苦しみを、身を持って体験し、

より患者さんの気持ちに寄り添うことができた、流産の「再体験」でした。

 

この世に生まれ出ることのなかった二つの生命に、そう思いを馳せています。

固定リンク | コメント (97) | トラックバック (2)

医療安全調査委員会の第三次試案に反対します。

誰のためのものなのか、わからないからです。

 

この委員会は、医療死亡事故が起きた場合に、

原因究明と再発防止を専門的に評価する機関として、設立が検討されています。

さらに、医療の透明性の確保や医療に対する信頼回復につながることによって

医師等が萎縮することなく医療を行えることが目的なのだそうです。

厚労省か内閣府に属して、医師・看護師等・法律家・有識者(患者代表)で構成されます。

第三次試案そのものはこちら

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495080001&OBJCD=&GROUP

僻地の産科医先生がまとめた、この件に関するブログ一覧はこちら

http://obgy.typepad.jp/blog/2008/04/post-1341-13.html

私見ですが、反対理由の概要は、以下です。

 

1 患者遺族の気持ちより届け出義務が優先

医療死亡事故について、一定の基準に達したら、全例この委員会に届け出ることになっています。

全ての患者さんのご遺族が、それを望むでしょうか。

医療事故で死亡した患者さんのご遺族の気持ちは、様々です。

謝罪してほしい、補償してほしい、真実が知りたい、再発防止につなげてほしい、

そっとしておいてほしい。

さらに、これらの気持ちは、時の流れと共に変わっていきます。

ご遺族が病院からの説明で納得し、そっとしておいてほしいと思っているのに、

基準に達したら全部調査、という発想は、

到底ご遺族の気持ちに配慮したものとは、思えません。

 

 

2 働き者のナースが危ない

例えば「消毒薬の静脈内への誤注入」は、届出の対象になっています。

主としてナースの仕事ですが、このような事故は

働く量が増えれば増える程、起こしやすくなります。

タクシーの運転手さんが、長く運転すればするほど交通事故を起こしやすくなるのと、同じです。

だったら、働かなければ事故はゼロになりますが、そうは行きません。

本気でこのような性質の事故を減らそうと思ったら、事故後に机上で検討することよりも

ナースの注意力が散漫にならない状況で働かせること、つまり「ナースの労働環境の整備」が

本来やるべきことではないでしょうか。

 

 

3 産婦人科医の立場からも反対

「医療事故の刑事手続きの対象については(中略)謙抑的な対応が行われることになる」

とあります。

つまり、「この委員会の存在は、医療事故を犯罪として裁くことには、抑制的に働く」ということです。

表現が曖昧過ぎて、全く信用できません。

刑事罰適用を検討する対象を、何故はっきりと明記しないのでしょう。

この点が曖昧なままでは、現場は益々萎縮してしまいます。

 

内診問題がいい例です。

看護師に内診させたとして、医師・看護師が逮捕されました。

このままでは分娩ができない施設が続出し、地域医療の崩壊につながると

分娩医療機関に大混乱を起こしました。

産婦人科医の団体と厚労省の応酬の末、

看護師は医師の指示によって「診療の補助」として、内診をしていいことになりました。

 

しかし、結局現場では、看護師は内診していません。

何の火種になるか、わからないからです。

一度萎縮した医療現場は、なかなか元に戻りません。

40年間産院で働いた看護師の技術も、埋もれたままです。

内診してもいい旨、通達されていてすらこの顛末ですので、

大野病院事件で加藤先生が逮捕され、醜悪滅裂な論告求刑がなされた時に

全く明文化されていない「警察・検察による謙抑的な対応」など、誰が信用できるでしょう。

 

 

 

固定リンク | コメント (46) | トラックバック (6)

2008.04.04 21:00 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 35

新人産婦人科医に贈る

産婦人科の新人たちに、必ず言っている言葉があります。

 

1 医師としての人格形成期である

最初の2年間くらいは、医師としての基本的なスタイルを形成する時期です。

患者さんとの会話の間の取り方や説明の仕方、

器具の取り扱い方や、切開・縫合などの手技の型、

カルテや手術記録の書き方、

スタッフとの接し方や院内外での態度、

学会発表時や論文作成時のスタイルの形成など、

この時期に身についたものは、一生ものになります。

そう思って、心して自分のスタイルを形成して下さい。

 

2 分娩第一期に立ち会えるのは今だけ

陣痛が始まってから、子宮口が全部開くまでの間を「分娩第一期」と言います。

産婦さんが痛みに苦しむ時間で、初産だと普通に10時間くらいかかります。

この分娩期に立ち会えるのは、最初の数年だけです。

年次が上がると仕事も増え、体力も衰えますので、

じっくりとひとつのお産に寄り添えなくなります。

分娩第一期に立ち会ったことのない産婦人科医人生は、

きっとつまりません。

是非この時期に、ひとつのお産に最初から最後まで立ち会って下さい。

 

3 産婦人科医日誌の勧め

その日の分娩件数と、手術内容、外来業務内容、当直などを

毎日書き留めています。

例えば、お産でひやりとしたことや、機転を利かせてうまくいったこと。

手術で他の医師の素晴らしい技を見たことや、

出血量が多かった場合には、どこで出血して、どうすればよかったのかなど。

当直で大荒れだったことや、外来で珍しい症例を見たこと。

学会で得てきた新しい知識や、今後自分でまとめてみようと思ったこと。

患者さんに言われて嬉しかったことや、心に残った言葉。

助産師・看護師と飲みに行ったこと(笑)。

今でも、たまにこのノートを開いては、思いを深めています。

 

4 「これは君に任せよう」というものを持つ

何でもいいんです。

緩和ケアにおける疼痛コントロールが抜群、

難しい合併症妊娠の管理に長けている、

子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群に誰よりも詳しい、

息を呑むほどopeがうまい、更年期障害の患者さんならお任せ、

学会でのプレゼンテーションが絶妙無比。

ちなみに私自身は、女性のメンタルヘルスをライフ・ワークと考えています。

 

子供の頃の思い出が一生心に残るように、

新人産婦人科医時代の経験は、産婦人科医としての生涯を通して心に残ります。

佳い時間を過ごして、佳い産婦人科医人生が送れることを祈ります。

固定リンク | コメント (20) | トラックバック (1)