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2008.03.27 17:30 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 29

産婦人科医を大切にしない病院

分娩施設と産婦人科医は、減少の一途を辿っています。

 

分娩施設は、この12年間で1200箇所減りました。

1年で100箇所減っている計算になります。

出生数は120万人から100万人へと17%減なのに対し、

分娩施設の減り幅は32%減です。

昨年度は、少なくとも111箇所が分娩取り扱いをやめました。

今年も既に18箇所の分娩取り扱い中止が決まっています。

 

産婦人科医は、1990年には1万3千人いましたが、今は1万人を切っています。

年間180人減っている計算ですので、このペースで減り続けたら

60年後には絶滅します。

全勤務医師に占める産婦人科医の割合から見ても、

30年前には10%だったものが、現在は4%を下回りました。

医師の中でもなり手の少ない科ということになります。

 

一昨日には、日本産婦人科学会より

「緊急的産婦人科医確保が必要な医療機関の調査」報告書が出され、

一部の該当施設には、防衛医大から産婦人科医が派遣されることが検討されています。

勤務医不足が止まらない現状では、今後は全科に波及する可能性があります。

徴医制度時代の到来です。

 

昨年9月には、同じく日本産婦人科学会から厚生労働大臣に

産婦人科勤務医の待遇改善に関する陳情書が提出され、その中で

「現に勤務している医師の労働内容を適正に評価し、それに応じた処遇を行うべきであること、

新人の養成も極めて重要だが、現に勤務している医師の知識と技術を失うことはダメージが大きいこと」

が盛り込まれていました。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ある病院で、4月からの若手産科医の給料が、従来の半分に減らされることになったのだそうです。

産婦人科は、他科と離れて独自の当直体制・オンコール体制をとっており、

若手でも一人前の働きをせざるを得ないこと、

また、時給にするとコンビニバイトより安い当直料ですが、

他科に比べて当直回数がずっと多いことなどから

若手の給料も常勤医師と同じになっていました。

 

しかし、病院の首脳陣が「それでは他科とのバランスが取れない」と言い出して、

減給を強行したのだそうです。

 

そもそも、勤務形態が他科とは違っています。

百歩譲っても、産婦人科に限らず全科で勤務医不足が言われているのですから、

他科の若手医師の給与を産婦人科の水準に合わせる、という発想はないのでしょうか。

そして院内の状況だけではなく、産婦人科医療の現状は冒頭に書いた通りです。

 

こんな時代に、産婦人科医を大切にできない病院は

これからどんどん危機が訪れてくる他科の医師たちも、大事にしないでしょう。

 

合掌。

 

 

 

(参考)

http://www.jsog.or.jp/news/pdf/ishihaken_2008-3-24.pdf

http://www.jsog.or.jp/news/pdf/shiryou_2.pdf

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2008.03.19 18:47 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 30

助産院で産むということ

助産院でお産ができる人は、妊婦さんの中でも限られた人です。

 

1 日本助産師会による「助産所分娩取り扱い基準」があって、

まずはこれをクリアした人でないとなりません。

持病がないことや、前回の妊娠経過が正常だったこと、

そしてもちろん今回の妊娠経過も良好である必要があります。

 

2 お産に対する考えがしっかりしていることも重要です。

第一に、「こんなお産がしたい」というバースプランを持っていること。

また、助産院には産婦人科医がいませんので、緊急事態における対応力はどうしても劣ります。

妊娠・出産は元々母児共に命がけの行為ですが、

その点に関する覚悟を固めた人でないと、なりません。

 

3 そして、きちんと自己管理のできる人です。

真っ当な助産院は、体重管理を厳しく指導しています。

これができない人には、容赦なく「これじゃうちではお産できませんよ」と言い聞かせており、

実際に、妊娠中の体重増加が助産院の基準を外れたため、

助産院でお産をできなくなった人もいました。

さらに、適度な運動指導も行っています。

良い妊娠・出産に向けた対策を、充分に講じています。

我々産婦人科医も見習うべき点が、多々あります。

 

こうして考えると、以上をクリアできる妊婦さんは、

妊婦さんの中でもエリートと言ってもいいかも知れません。

 

出産に関する希望は多様化し、女性たちは自らの価値観に従って、分娩施設を選ぶようになりました。

助産院や、助産師立会いの下での自宅分娩を選択し、

一生心に残るいいお産をされる方も、いらっしゃいます。

 

それは、最も大切なことである「母児の安全」が守られてこそ、実現できるものです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

助産院の約1割(27施設)が、4月以降に義務付けられている嘱託医療機関の確保ができず、

廃業に追い込まれる可能性があることが、報道されています。

厚労省は「続けられない助産院をゼロに近づけたい」としているそうです。

 

しかし、続けられない助産院をゼロにすることが、本当に大切なことでしょうか。

 

助産院から医療機関に転院する確率は約5%、つまり妊婦さん20人につき1人が転院していることになります。

助産院を開業していれば、それなりに地域の産婦人科と交流があったはずです。

それにも係らず、嘱託医を依頼できないのは、何故でしょう。

個人的には、嘱託医不在の助産院は、開業を諦めるべきだと考えています。

 

最も大切なことは「母児の安全」です。

 

 

 

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2008.03.12 20:32 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 76

It's my turn

大学病院で約1年間の研修を終えた後、初めて勤務した病院は、3次救急病院でした。

 

3次救急病院は、重症で緊急性を要する患者さんが、次々と運ばれてくる病院です。

救急車が同時に3台くらい到着したり、

患者さんの乗ったストレッチャーに内科の先生が馬乗りになって、

心臓マッサージをしながら運ばれ来たり、

その横では整外の先生が、むき出しになった膝の骨にジャブジャブと生食をかけながら

「すみません、ope室に連絡して下さい」と叫んでいたり。

 

産婦人科にも、大変な患者さんが毎日のように運ばれて来ました。

麻酔科の当直はいるし、小児科のNICUもしっかりしていましたので、

その地域の「最後の砦」の病院でした。

忙しいし、常に緊迫した状況でしたが

「何でも受ける」ということに、誇りと使命感を持っていました。

 

しかし慣れて来ると、同時にちょっとくたびれて来ました。

本当に重症な患者さんばかりではなく、中には本来救急病院ではなくてもいい患者さんもいます。

近所の慎重な開業医の先生から

「妊婦さんで、何日も便が出ていないそうです。念のため入院させてもらえませんか」とか

「悪阻で入院を希望しているんですけれど、うちは入院設備がないのでお願いします」とか。

そのうち応対も事務的になり、果ては少々高飛車になっていたと思います。

他の先生方は皆、産婦人科医として大先輩なのに、

強い立場を勘違いしていました。

今思い返すと、恥ずかしい限りです。

 

数年後、大学病院に戻り、「外勤」といって医局の関連病院に非常勤で勤務するようになります。

外勤で、個人病院に当直に行った時のことです。

順調だったお産が、突然暗転します。

赤ちゃんは無事に出たのですが、出血が全然止まりません。

水道の蛇口をひねったみたいにジャージャー出て、

通常の止血法では止血が得られません。

日赤に輸血をオーダーしましたが、到着までの間に、この産婦さん、亡くなるかも知れない。

院内にいる医者は、私一人。

一人では、この病院では、救命は不可能と判断し、搬送を依頼しました。

 

私は止血にかかり切りですので、横でナースが片っ端から電話していますが、

休日の夕方とあって、搬送先が中々見つかりません。

ようやく決まったのは7件目か8件目、同じ医局の先輩が産婦人科部長を勤めている病院でした。

 

輸血パックをいくつか持って、救急車の中でも止血を続けながら、移動しました。

産婦さんは、助かりました。

 

数日後、搬送を受けてくれた部長先生にお礼のメールを送ると、

お返事が返って来ました。

 

「一人で必死の思いをしている時、医者が大勢いるのを見ただけでも安心したでしょう。

いつかなな先生が搬送を受ける側になった時は”It's my turn.”(今度は私の番だ)、

アメリカ人がよく使う言葉です」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あれから数年、今、私は搬送を受ける側にいます。

It's my turn.

いつも、そう思っています。

 

そして、ほとんどの現場医師たちもみな、同じ気持ちです。

 

 

 

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2008.03.04 17:51 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 35

産婦人科医の醍醐味(3)

お産やopeをしているイメージの強い産婦人科医ですが、

婦人科癌の患者さんの治療も、我々の領域です。

癌患者さんの場合、「緩和ケア」と言って

手術や抗癌剤投与などの積極的治療は行わず、

痛みや苦しみを和らげることを主眼としたケアをお受けになっている方も

いらっしゃいます。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

昌子さん(仮名)は、緩和ケアをお受けになっている患者さんです。

70歳近いたおやかな女性で、ご主人は稀に見る愛妻家、

ほとんどの時間を病室で、ご夫婦一緒に過ごされていました。

 

ご自分の運命を受け入れている患者さんには、

ご自分の運命を受け入れている方にしかない、澄んだオーラがあります。

昌子さんもそうでした。

 

とても仲のいいご夫婦で、訪室するとお2人で大歓迎して下さいます。

回診というより、ほとんどが他愛のないおしゃべりで、

むしろ私の方が穏やかな気持ちを分けて頂いていました。

 

しかし、昌子さんと2人になると

「先生、私、主人より先に死ねて嬉しいんです」

と、少しだけ心の内をこぼされます。

今思うと、ご主人に心配をかけまいと、懸命だったのかも知れません。

 

次第に、昌子さんは弱って来ました。

しかし、ベッドから起きられなくなっても、笑顔を絶やしません。

そればかりか、ご自分は吐き気に苦しんでいても、

「あなた、ちゃんとお食事、して下さい」とおっしゃっています。

夫婦って、すごい。

 

鎮痛剤の副作用で、ほとんど眠っているようになった頃です。

寝顔だけ見て、そっと出て行こうとしたら、昌子さんが目を覚ましました。

「あ、先生・・・」

そう言ったきり、また眠ってしまったかな、と思ったら

「先生は、生まれ変わったら、何になりたいですか」

一瞬、言葉につまりましたが

「そうですね、やっぱり、産婦人科医になるかなー。

 昌子さんは? 生まれ変わったら、何になりますか」

「私は・・・もう一度女に生まれて、今の主人と出会って、結婚したいですね」

感動に喉が詰まって、お返事ができませんでした。

 

数日後、昌子さんは眠るように亡くなりました。

男泣きに泣くご主人に、看取られながら。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「人は、泣きながら生まれて、笑いながら迎えられる。

 そして、笑いながら死んで、泣きながら見送られる。」

 

こんな言葉を、聞いたことがあります。

その両方に寄り添えるのは、唯一、産婦人科医だけだと思うのです。

 

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2008.03.02 11:26 |  診療  |  なな  | 推薦数 : 21

産婦人科医の醍醐味(2)

 1 「また、お願いします」

 

産婦人科医を何年かやっていると、2人目の赤ちゃんを妊娠して、来て下さる方がいます。

1、2歳になった上の子を連れて、

「せんせー、次の子妊娠しました。またお願いしまーす」。

産婦人科医として、至福の瞬間です。

 

現在、その妊婦さん・彩香さん(仮名)が外来にいらっしゃっています。

彩香さんは、なんと平成生まれの経産婦さんです。

いつも、はちきれるような若い笑顔で、

右腕にベビーカーとバッグ、左腕に上の子を抱いて、

元気に健診にやってきます。

 

好奇心旺盛のお子さんが、見慣れない診察室ではしゃごうものなら

「ほらっ、ママは今、先生とお話しているの。静かにしてっ!」

と、ぴしっと叱っています。

大きなお腹であの若さで、何て立派なのでしょう。

 

「偉いですよね~、立派! 今、大変だろうけど、がんばって」

そう言うと、

「普段だれも褒めてくれないから、うれしいです」

ちょっと照れながら、微笑んでいました。

 

頑張る若いママに、幸多かれ。

 

 

2 パワーの基本

 

こちらは、3人目の赤ちゃんのお産のお話。

破水して、子宮口はほぼ全開大、

通常なら、スムーズにお産になるはずです。

 

ところが予想に反して、なかなかお産になりません。

いきんでいるのに、何だか力が入っていない様子。

 

「どうしましたか。力、入りにくいですか」とお聞きしたら、

「お腹すいた・・・」。 

た、大変!!

 

当直食のフルーツゼリーとスプーンをひったくって、速攻で分娩室に戻ると、

同時にナースから、お饅頭とチョコレートが差し入れられました。

 

産婦さん、分娩台の上で、分娩の体位を取ったまま、

お饅頭とチョコレートとフルーツゼリーを、陣痛の合間に完食!

 

数分後に、見事4000g近い赤ちゃんをお産されました。

天晴!!



 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

こんないい仕事、産婦人科医くらいだと思うのです。

 

 

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