| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | |||||
| 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
| 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
| 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
少し時間は経ちましたが、手術の合併症が続きました。
尿管や膀胱を損傷してしまいました。
患者さんには、大変申し訳ありません。
幸いにして、後遺症が残るようなものではありませんが、
治るまでの間、患者さんには多大なご負担をかけてしまいます。
合併症は、一定の確率で起こり得ることは頭ではわかっているのですが、
外科系の医師としての自信が、根底から揺らぎます。
産婦人科医としての人生において、多分第二の苦境にいました。
こんな自分が、今後もopeをやる資格があるのだろうか。
「もう、辞めようかな・・・」
そんな気にもなります。
しかし、この産婦人科医不足の状況下で辞めてしまうことが、
本当に正しいと言えるのだろうか。
こんな時に相談できる人は、産婦人科の恩師・井上先生(仮名)です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<井上先生へ>
尿路損傷を続けてやってしまいました。
・・・・(合併症の詳細な説明)・・・・
正直なところ、産婦人科医を辞めたい、と思ってしまいます。
しかし空前の産婦人科医不足の今、自分が辞めることが
社会にとって、医局の一員として、正しいことなのでしょうか。
ここで逃げてはいけない、という思いもありますが、
続けるのだとしたら、どう気持ちを持って行ったらいいのでしょう。
悩んでおります。
<ななへ>
失敗を恐れていたら、人間は進歩しません。
偉そうなことを言っている僕が犯した過ちの数は、ななの比ではありません。
それでも僕が立ち直っているのは、同じ失敗を繰り返さないこと、
自分の経験を次の世代に伝えることが、使命であると解釈しているためです。
ななは、僕が誇る僕の後継者です。
もし産婦人科医を辞めるのだとしたら、共に働いたあの日々は
一体何だったのでしょう。
辞めるのは止めましょう。
・・・・(症例に関する詳細なアドバイス)・・・・
それぞれの症例には、少しずつ違いがあるはずです。
それを認識して、次に役立てましょう。
ななは次の世代を育てなくてはなりません。
それが僕の願いです。
立ち直らなくてよいのです。今のままでいて下さい。
<井上先生へ>
先生の言葉に、涙しております。
本当に本当に、ありがとうございます。
そうでしたね・・・似たような合併症ではありますが、
それぞれ違いがあります。
詳細に検討して、反省すべき点をもっと具体的に肝に銘じます。
後達を育てることは、井上先生になったつもりで頑張っています。
自分が若いドクターたちに執刀させる立場になって、
井上先生がいかに忍耐強かったか、今更ながら思い知っています。
前任地で遭遇した新生児仮死に次ぐ、産婦人科医としての人生の危機を迎えていますが、
こんな時に親身になって下さる師匠に出会えたことは、
何ものにも代えられない、大きな財産です。
この事態を見ている後輩たちに、そう話します。
そろそろ泣き止まないと外来に出られなくなるので、これで送信します。
敬愛する井上先生へ
<ななへ>
「敬」は要りませんよ。
固定リンク | コメント (79) | トラックバック (4)
新潟大学産婦人科教授 田中憲一先生
不遜な文言を、どうかお許し下さい。
先生が、福島県立大野病院事件の検察側証人になられてから、
生活が一変したのではないでしょうか。
産婦人科の狭い世界で、居づらい思いはしていませんか。
心休まる暇は、あるのでしょうか。
この裁判、一審無罪の後も、控訴されるのではないかと思います。
もし先生が、これまでの成り行きを悔いていらっしゃるのでしたら
どうか勇気を持って、検察側証人を降りて下さい。
この事件のために、日本中の医師たちが悲鳴を上げています。
一日も早く裁判に終止符を打ち、
壊れかけた医療を、
我々の愛する産婦人科医療を、
共に守って行っては、下さいませんか。

固定リンク | コメント (101) | トラックバック (12)
季節柄、風邪をひいた妊婦さんが何人も受診されます。
風邪をひいた妊婦さんは、大体2通りのタイプがあるようです。
まず、赤ちゃんが元気だとわかると、安心するタイプです。
このタイプの妊婦さんは、赤ちゃんの心音を聞いて、エコーで元気な姿を見ると
ほっと笑顔になり、安心して帰って行きます。
もうひとつは、風邪薬を希望するタイプです。
妊娠中でも、病院が出すお薬なら安心と思っていらっしゃるのでしょう。
咳やくしゃみ、頭痛などつらい症状を取るために、お薬がほしいとおっしゃいます。
風邪をひいた妊婦さんたちに、お伝えしたいことがあります。
40度近い高熱が続かなければ、風邪自体が赤ちゃんに影響することはありません。
昔からある風邪の治し方で、充分です。
おうちであったかくして保湿して、栄養と水分を摂って、寝ていて下さい。
ママにとっても赤ちゃんにとっても、それが一番。
寒い中病院に行ったり、風邪薬をのむことに、あまりメリットはありません。
もし「インフルエンザかな」と思ったら、病院に行けば検査はできますが、
インフルエンザの薬は使えません。
妊婦さんでも使える解熱剤はありますので、高熱が続いたら病院に行って下さい。
そして、病院にかかる場合は、なるべく急患にならない時間帯に行って下さい。
最近は、どこの病院も急患で一杯で、一刻を争う患者さんの治療が優先されます。
寒い中待たされたら、たいへん。
かかりつけの病院がお休みの場合は、
救急病院にかかる場合でも、必ず電話をしてから行くようにして下さい。
ドクターは全員手術中、なんてこともあります。
個人病院も、時間外はぎりぎりの人数で切り盛りしていますので、
なるべく時間内にかかるようにしましょう。
施設によりますが、60歳70歳の助産師・看護師が
数日に1回当直しているのが現状です。
限られた医療資源=医療設備と医療者の労働力を、本当に必要な患者さんのために使えるよう
協力して下さい。
妊婦さんの風邪以外にも、こんな場合は「本当に今すぐ救急受診するべき?」と、
まずは一旦考えましょう。
・妊娠初期の、ごく少量の出血
・妊娠中の、休めばおさまる程度のお腹の張り
・妊娠中の便秘や腰痛
・生理痛
・避妊の失敗
もうひと言。
臨月の陣痛や破水で、あわてて救急車を呼ばないようにしましょう。
まず大きく一回、深呼吸をして、かかりつけの病院に電話します。
そして落ち着いて、お産のために準備したバッグを持って、自分の足で病院に行きましょう。
それで充分、間に合います。
固定リンク | コメント (43) | トラックバック (6)
平成18年2月18日、福島県立大野病院の産婦人科医、加藤先生が逮捕されて
もうすぐ2年経ちます。
平成16年12月、加藤先生は前置胎盤の妊婦さんの帝王切開を執刀されました。
手術中に、胎盤が子宮壁に強固に癒着していることが判明し、剥離の際に大量出血、
加藤先生と手術スタッフたちは、懸命の治療をしますが、
非常に悲しく残念なことに、産婦さんは亡くなりました。
まずは、亡くなった産婦さんに、心から哀悼の意を捧げます。
手術から1年2ヶ月の後、加藤先生は業務上過失致死等で、福島県警に逮捕されました。
手術から1年以上経っているのに「証拠隠滅の恐れあり」、
ご自宅では、臨月の奥様がお待ちになっているのに「逃亡の恐れあり」として、
在宅起訴ではない、逮捕でした。
逮捕には、100を超える医学系学会が、抗議声明を表明しました。
現在も裁判は続いており、証拠調べは終了、次回は論告求刑が予定されています。
裁判では、癒着胎盤の術前診断や、胎盤剥離にクーパーを使ったことの可否が争われていますが、
何だか違う気がするのです。
この他に、ずっと思っていることがあります。
① 加藤先生は、出血に対する処置は、最終的には完遂しています。
手術経過を見直してみましょう。
------------------------------------------------
14:50 児娩出、濃厚赤血球5単位輸血
16:30 濃厚赤血球10単位輸血し、子宮全摘開始
17:30 濃厚赤血球10単位輸血、子宮全摘終了
18:00頃 心室細動、蘇生開始
19:01 死亡確認
------------------------------------------------
出血を止められず、輸血も間に合わずに、血圧が低下して死亡しているのであれば、
過失の有無が問題になるのも、まだわかります。
しかし、胎盤剥離に固執せずに子宮摘出に切り替えることによって、止血を得ており、
その後、心室細動が起こって、亡くなっているのです。
加藤先生に、あれ以上何をし得たでしょうか。
② 医療が介入していなかったら、母児共に救命し得なかったケースであることが、
忘れられていないでしょうか。
麻酔下でも剥離できなかった、前置胎盤・癒着胎盤です。
しかし、医療が介入した結果、児だけは救命できました。
「母児共に救命できない」ことと、「母児共に救命できる」ことの間には、大きな溝があります。
医療が介入すれば、その大きな溝を一足飛びに埋めることができて当然、
できなければ犯罪行為なのでしょうか。
医学はまだまだ発展途上、不確実なものです。
発展を追求する途上で、追求者たちが犯罪者として裁かれるのであれば、
誰が医学を発展させて行けると言うのでしょうか。