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全ての研修医に、新臨床研修制度が義務付けられて、数年たちます。
この制度は、医師が幅広い診療能力を身につけることを目的として、スタートしました。
「スーパーローテーション」と呼ばれ、
将来何科の医師になろうと、各科を研修することになっています。
産婦人科には、卒後1年間の研修を終えた先生が回ってきます。
これまで来た研修医は全員が、既に何科に進むか決めていました。
つまり、耳鼻科に進もうが皮膚科に進もうが、
お産や不妊治療、婦人科手術などを研修しなくてはなりません。
それも、たった1ヶ月の間です。
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1 佐藤先生(仮名)は、呼吸器内科に進むことが決まっている研修医です。
opeの時、簡単な操作くらいはやらせてあげようかと思って、
「ope、興味ある?」と聞いたら
「いえ」。
(・・・あ、そ)。
と、私に冷たくされてしまいました。
でも熱心なので、切迫早産で入院中の妊婦さんたちみんなの胸に、毎日聴診器を当てています。
しかし、お腹が張ること以外は元気な若い女性たちに、毎日胸を出させているわけですから、
当然の流れとして、妊婦さんたちに嫌われてしまいました(苦笑)。
そんな佐藤先生ですが、
横で見ていると、必ず患者さんの目を見て話しています。
きっといいお医者さんになってくれるでしょう。
2 伊藤先生(仮名)は、循環器内科に進むことが決まっている研修医です。
病棟で師長さんにオリエンテーションを受けた後、
「ところで、産婦人科部長に挨拶した?」と聞かれて、
返事は、
「どうして挨拶しないとならないんですか」。
引継ぎの言葉が飛び交っていたナースステーションが、シン・・・としました。
どこの病棟でもそうですが、病棟を仕切っているのは医者ではなく、師長さんです。
師長さんに嫌われたら、おしまいです。
産婦人科には興味がないとしても
この先、どうするのでしょうね・・・
3 斉藤先生(仮名)は、私が所属する産婦人科医局に入局することが決まっている研修医です。
実に、熱心です。
夜中だろうが休日だろうが、お産がありそうとなると、やって来ます。
毎日全ての患者さんのベッドサイドを回り、我々よりもよく患者さんの話を聞いています。
opeの時も「ちょっと、そんなに近寄ったら手術できないでしょ」と言われるくらい、
熱心に見入っています。
「身体壊すから、もう今日は帰ったら」と、こちらが言いたくなるくらい、病院に張り付いています。
「是非、自分の部下にほしい」と思うような、好人物です。
しかし、最近は分娩の研修ができる病院が減ってきて、
他の病院から産科の研修だけしに来ている人が増えており、
数人の研修医がいっぺんにかち合ってしまうことがあります。
産婦人科医局で自分の後輩になることが決まっている、超熱心な斉藤先生に、
本当だったら全ての手術に入ってもらいたいのですが、
他の研修医の手前、そうも行きません。
本人は「見るだけでも勉強になりますから」と謙虚なことを言っていますが、
他科に進むことが決まっている研修医の先生たちも、遠慮がちです。
私自身が、研修医時代に上の先生たちにかわいがってもらったように、斉藤先生にもしてあげたいのに、
そんな気持ちも、活かすことができません。
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産婦人科のことしかわかりませんが、
たった1ヶ月研修したところで、
「幅広い診療能力」の足しになるとは、到底思えません。
おそらく、正常分娩ひとつ取ることができないでしょう。
一体誰の、何のためになるのか。
スーパーローテーションは、当然現場から出た発想ではありません。
「現場のことは現場で決める」
「現場で起きた症例は、現場の人間が検討する」。
こんな当たり前のことがなされないから、医療が壊れてきたように思えてなりません。