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「この子に挿管した、小児科医がいけないんです」
10余年前、学生実習の時に小児科で担当した患児、ゆきちゃん(仮名)。
学齢になるかならないかの、小さな女の子でした。
ゆきちゃんは先天性の病気のために、手足の成長が遅れていました。
顔は年齢相応の大きさなのですが、知的発達遅延があり、
おしゃべりすることは、できません。
そして「致死性」、つまり生まれてもほとんど生きることのできないはずの、重い病気でした。
初めて会った時、ゆきちゃんはちいさなベッドに寝ていました。
小学生くらいの女の子の顔に、短い手足。
ちょうど、ちょっと大きめの赤ちゃんくらいの大きさです。
ひと目見て、「かわいい」と思った次の瞬間、
小児科の先生が言った言葉が、冒頭の言葉でした。
すぐには、意味が理解できませんでした。
しかしよくよくお話しを聞くと、こういうことです。
「胎児の時点で診断し、致死性とわかっていたら、救命すべきではなかった」
と。
ショックでした。
確かにゆきちゃんは、生まれてすぐに亡くなる例がほとんどの重い病気です。
「親御さんも全然会いに来ないし、一日生きると数十万円かかるのだ」
と、小児科の先生は言っていました。
でも、ゆきちゃんは、数年生きています。
アイスクリームを食べさせてあげると、嬉しそうに笑います。
それなのに、「救命すべきではなかった」と、
本当に言えるのでしょうか。
産婦人科医になって、胎児が致死性の病気と診断したことは、何度かあります。
ご両親と相談して、妊娠を中断したこともあります。
また、重篤な疾患の場合、積極的な救命措置をしない、という考え方も、理解します。
ゆきちゃんも、生まれた時に何の手も施さなかったら、亡くなっていたでしょう。
でも、「その方がよかった」と、本当に言えるのでしょうか。
未だに、わからずにいます。