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「生命や性、人間とは」ということに思いを馳せると、
思い出すエピソードがあります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その患者さんは、妊娠15週くらいで、羊水検査をご希望されていらっしゃいました。
羊水検査とは、胎児の染色体異常の検査であり、出生前検査のひとつです。
母体のお腹に長い注射針を刺して、赤ちゃんのすぐそばまで針を進めて羊水を採取するものですので、
破水や流産などのリスクを伴います。
また、この検査で、例えばダウン症のような赤ちゃんの染色体異常が見つかった場合は
ご両親に対する慎重なカウンセリングが必要になります。
ですので、とても気軽にできる検査ではありません。
当時私が勤務していた病院では、外来で羊水検査をしていました。
お母さんのお腹をよく消毒して、滅菌したエコーをあててお腹の中をみて、
赤ちゃんと胎盤の位置、羊水の量を確認します。
注射針を刺す位置を決めて、局所麻酔をして、
赤ちゃんや胎盤に刺さないよう、慎重に針を刺します。
ところが、「痛っ!!」
妊婦さんが、針を刺した時に飛び上がってしまいました。
びっくりして手を止め、針を抜きます。
すぐに赤ちゃんを確認しましたが、幸いにして赤ちゃんは元気に動いていました。
「よかった・・・」
と、こちらは安堵のため息をつきますが、
どうも妊婦さんの様子が変です。
別室でよくよくお話をお聞きすると、
非常に言いにくそうに、事情を話してくれました。
赤ちゃんを流産させたくて、検査を受けたのだと言うのです。
検査の時に飛び上がることによって、流産につながれば、と思ったのだと。
新婚ですぐに赤ちゃんを授かって、さぞ幸せにお過ごしなのだろうと思っていましたが、
実はご主人の子ではないのだ、と。
妊娠を喜ぶご主人やご両親には、到底打ち明けることはできず、
悩んだ末、このような方法を取ってしまったのだそうです・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
生命と、性と、人間と。
思いを馳せ、夢ふくらむことのある一方で、
到底扱い得ない、無力感を感じることもあります。
これも、産婦人科の仕事の一部です。
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コメント
コメント一覧
いろんな理由があるかもしれませんけど
こんな妊婦さんが来たら、イヤですね。
それで流産して、妊婦の家族からクレームが来た日には超うつです。
それで訴状が来た日には、・・・・
中絶がらみの話題には敏感になってしまいます。
結局「中絶したい」人は理由はどうであれ身勝手ですよ。
「妊娠の継続が母体の健康を著しく害するおそれ」なんて理由をつけたって、それを客観的に正当ならしめる事実の判断を医師は事実上しておりません(できません)。
羊水検査にしたって、検査に対する事前の充分な理解もなく受けるものだから、「異常が出たらどうするか」を考える余裕がなく受けている方のなんと多いことか。異常が出た方の多くは中絶を選びます。胎児適応なんてないのに、、、。
>生命と、性と、人間と。
思いを馳せ、夢ふくらむことのある一方で、
到底扱い得ない、無力感を感じることもあります。
これも、産婦人科の仕事の一部です。
おっしゃるとおりですね。
先生がおっしゃるような「最悪の事態」も、もちろんあり得ました。
ご家族は、妊娠を非常に喜んでいらっしゃたようですし、
ご本人は真実を話すことなど、ないでしょうから。
産婦人科の仕事は好きですが、
こんなことにも直面しないとならないのだ、ということを書きたかったのでした。
それにしてもこういう人は、
将来的に、生命や性を大切にするようになるのでしょうか……
かの「”オギノ式”乱用者に告ぐ」に、以下のような文章がありました。
「戦時中、どんなに食糧難の時代でも、
食料不足を理由に子供を殺すことは許されなかった。
もし、「いない方が都合が良いから」という理由で生命を奪うことが許されるのであれば
年老いた親を山に捨てることも、合法化されなければならないであろう。」
中絶行為も、出生前診断も、様々な矛盾を孕んでいると思います。
僕らは生まれた子しかみないので、こうした出生に至るまでのヒューマニズムな話は産科の先生の方が経験豊富ですね。
似たような話で、弟がいる患児が腫瘍になり、骨髄移植をしようとしたら、弟が父の子でない事がHLAより判明してしまいました。父親が「なぜ弟のを使わないんだ!」と激怒しましたが、理由は話せませんでした。
親の身勝手でこどもが苦しむ。これほどのエゴはないでしょうね
私のところには「同時期に二人と関係していたが、どちらの子か知りたい」なんてどあほがきました。そんなものは裁判ででも決着つけてくれ、私は責任もてんと断りました。こういうときに真剣に悩むなな先生は患者思いですね。私はもっと冷酷です。
それにAtsullows-cafeさまの言うとおり、羊水診断だって医師にとってもしんどい(カウンセリングの手間暇、穿刺によって起きる問題のリスクなどなど)ものなのに、そんな理由でうけるな、と思いました。
こういう話を聞く度に思います。
生まれてきて欲しいと切実に思う場所に、なぜ生まれてくれて来てくれないのでしょう・・・。
お久しぶりです。
最後の一文に、深く同意です。
きっと小児科の先生は、そのようなケースを
毎日のように見ていらっしゃるのではないでしょうか。
出生前診断の結果、治療可能なものであれば「胎児が治療を受ける権利」、
そして「胎児の生きる権利」を守りつつ、
良心が安易な選択をしないようにお話するのも、私たちの仕事です。
力及ばないことも多々ありますが……
先生のおっしゃる部分が、「性を考える」の部分です。
生命に関する倫理観も含めて、あまりに荒んではないかと、絶望的な気持ちになりました。
本文中には抑えて書くに留めましたが、
こういう患者さんにも向き合わなければならない現場医者の気持ちを伝えたい、
という気持ちもありました。
汲んで下さって、ありがとうございました。
> 生まれてきて欲しいと切実に思う場所に、なぜ生まれてくれて来てくれないのでしょう・・・。
そう、思うでしょう?
本当に、そうでしょう?
こに2回連続の記事を書いた発端は、
そんな悲しさからでもあるのです。
共感して下さって、ありがとうございます。
先生の記事を読んでいると、荒廃する医療現場あってもなお
「医は仁術なり」
という言葉を体現なさっている医師が確かにいらっしゃるんだと思えます。
問題の妊婦さんのような方に心を開かせ
真実を話させることのできる医師はそうそういないのではって思います。
オンナって人の心に敏感だから、自分の存在そのものを否定する人には
例え医療者であっても絶対心を開かないと思うのです。
心の中の声であれ、否定され、罵倒されればわかりますから。
とはいえ、そういう方のケアは、外科系医師の受け持ち領域を越えているのではと思います。(素人考えですが)
複雑な状況の中、限られた時間で決断をしなくてはならない妊婦さんや
ご夫婦のケアが専門の機関があって、
そこと医療機関が連携できれば、安易な行動に走る人も減るのではと思いました。
産婦人科は産婦人科だけの知識だけではいけないのですよね。精神系の知識や技術もおおいに必要だと最近強く思います。
お褒め下さいまして、ありがとうございます。
いくつになっても、褒められるのは嬉しいし、
自分の存在を否定されるのは、つらいものです。
世の人が皆、和恵さんがここにお書きになったようなことを
いつも頭の片隅に置いてあれば、
もっとやわらかく、温かい世の中になるかも知れませんね。
おっしゃる通り、外科系医師であると同時に女性のメンタル・ケアをやっていくことには、
私自身も限界を感じています。
遺伝カウンセリングという領域がありますが、
学問的な知識もさることながら、
宗教観も含めて、確たるものが必要になります。
医学は、本当にまだまだですね。
この患者さん、確かにこのままではいけないと思いますが、
こういう方のケアは、極めて困難と思います。
心身医学は、病的な心理状態に働きかけることはできても、
その人の性格や倫理観まで、変えていくことはできないのですから。
最後の一文、本当にその通りです。
コミュニケーション・スキルひとつ取っても、
時間をかけないと培うことのできない、プロの技です。
我々の課題は山積みですね(笑)。
私は今年8月、妊娠高血圧症候群悪化の為、27週3日755gの男の子を出産しましたが、11日後、緑膿菌感染から肺炎を起こして亡くなってしまいました。何日も泣き続け、絶望に追いやられました。。短い期間だったけど、自分の子がこんなに可愛いとは、母になれるってこんなに嬉しい事なんだと初めて知りました。
今の世はモラルが低下してるんですかね。後先考えないで行為を行い、結果妊娠してしまう。中絶をすれば体と、そして心にも大きな傷が付くはずです。やっと授かった子を亡くしてしまった私からすると腹が立ってしょうがないです。
そして、こういう人たちが絶えないからこそ、産婦人科の先生方に肉体的、精神的な負担を与えてしまう。
情けない世の中になったなぁと思ってしまいます。。
755gの身体で、11日間頑張ったのですか・・・
息子さんも、ママもパパも、大変でしたね。
モラルの低下は、いろいろなところで影を落としていると思います。
産婦人科のみならず、医療者全体にも、
教師や警察官、公共団体の職員・・・
考えたら、社会全体に負に働いているのでしょうね。
それにしても、生命や健康に対するモラルの低下は、
本当に嘆かわしく思います。
身体の調子は、もう良いのでしょうか。
くれぐれもご自愛下さい。
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