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病院で検査や治療を受ける時に「同意書」あるいは「同意書・説明書」
という書類を見たことのある方は、大勢いらっしゃると思います。
検査や治療の内容、目的、起こり得る副作用などが説明してある文章で、
それらを理解した上で、「その医療行為を受けます」と同意してもらうことが目的です。
様々な医療行為に関して、同意書が存在します。
手術や輸血はもちろん、
造影剤を使用した画像診断(CT、MRIなど)、鎖骨下静脈穿刺、
産婦人科領域では陣痛促進剤使用、子宮卵管造影、人工授精などです。
ところがお産に関しては、同意書・説明書がないのが一般的です。
お産こそ、手術や輸血に匹敵するレベルのリスクを孕んでいるのに。
一方、多くの人は、お産のリスクをほとんど知らないまま、お産に臨みます。
「おめでた」という言葉に象徴される、お産の明るいイメージ。
学校教育でも、お産のことを学ぶ機会は皆無、という現状。
また、妊婦さん向けの雑誌を見ると、
妊婦健診でもらった赤ちゃんの超音波写真を投稿するコーナーや、
マタニティ・ドレスの写真が、ファッション雑誌のように並んでいます。
こんな風潮のもとでは、
「お産は、順調に行って当たり前」、
そんな認識を持ってしまっても、ある程度仕方のないことかも知れません。
しかし、この認識が、患者さんにも、医療者にも、不幸をもたらしています。
患者さんは、順調に経過すると信じて疑わなかったものが、
思わぬ結果になると、非常に混乱します。
そして医療者は、最善を尽くしても患者さんの期待に沿えなかった場合に厳しく糾弾され、
士気を失い、医療の現場から立ち去り、
そして、残った医療者たちの負担が、倍加します。
こんな悪循環を断ち切るためには、
お産をされる方たちに、お産のリスクを啓蒙する必要があります。
そのひとつの方法として、全ての妊婦さんに
「分娩同意書・説明書」をお渡しすることを検討しています。
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【分娩同意書・説明書】
医療技術の進歩により、妊娠・出産における安全性は、劇的に改善しました。
しかし、それでも妊娠・出産で生命を落としたり、後遺症を残したりすることはあり得ます。
<生命に関わること>
出産に関わる母子の安全の指標として、以下の2つものがあります。
1 周産期死亡率:妊娠22週〜生後1週間未満の胎児・新生児の死亡率
1985年には64人に1人が亡くなっていたものが、2005年には208人に1人と、
20年間で死亡数が1/3以下に減少しています。
2 妊産婦死亡率:妊娠中〜出産後42日未満の死亡率
1940年には430人に1人亡くなっていたものが、2005年には17000人に1人と大幅に改善し、
世界でもトップレベルの成績です。
しかし、このように現在でも、
妊娠・出産において生命を落としてしまうお母さん、赤ちゃんがいます。
<健康に関わること>
妊娠は病気ではありませんので、経過が順調であれば、普段と同じ生活が望まれます。
しかし、思わぬ合併症が起こり、入院を要することもあります。
以下、頻度の多いものを示します。
1 重症妊娠悪阻:重症化すると、脳に障害を起こすことがあります。
2 切迫流産・切迫早産:早産になった場合、赤ちゃんが長期入院を要したり、障害を残すことがありま
す。
3 妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群と改名):未熟児になったり、母体に高血圧、脳障害などの後遺症を残
すことがあります。
4 前置胎盤、低位胎盤:大出血になったり、止血ができないケースでは子宮摘出を要することがあり
ます。
以上のように、妊娠・出産にはトラブルが潜んでおり、
ひと度発症すると、取り返しのつかない場合もあります。
母子共に、健康で出産を迎えるために、以下のことをご理解・遵守下さい。
① 妊娠中はしっかりと自己管理して下さい
お腹の中にいる赤ちゃんを守ってあげられるのは、お母さんしかいません。
体重管理には充分気を配って下さい。体重が増えすぎると、産道にも脂肪がついて、
赤ちゃんはより狭いところを通らなくてはなりませんので、苦しい思いをすることになります。
また、脂肪がつくと、お産の時に産道が裂けやすくなります。
味の濃いものは控えて下さい。血圧上昇につながることがあります。
喫煙は論外です。赤ちゃんの顔に煙を吹きかけるのと同じと考えて下さい。
② 分娩時の医療行為をご理解下さい
頻度の多いものとして、会陰切開、陣痛促進剤、吸引分娩あるいは鉗子分娩、帝王切開があります。
いずれも母子の安全を守るために行うもので、不必要に施行することはありません。
③ 妊娠・出産は本来命がけの行為です
何人ものお母さんと赤ちゃんが、お産で生命を落として来た教訓を経て、
現在があることを忘れないで下さい。
上記事項をご承諾頂いた上で、当院でのお産をご希望される場合は、以下にご署名下さい。
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○○病院長殿
私は上記事項に承諾の上、○○病院での出産を希望します。
平成_年_月_日
ご署名___________