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2007.06.05 18:55 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  なな  | 推薦数 : 15

妊婦さんは麻疹に注意して下さい

少しの間、来院していなかった妊婦さん・典子さん(仮名)が、外来にいらっしゃいました。
カルテを開くと、最後の受診が4月末になっています。
健診、さぼったのかな?  と思いながら診察室のお呼びすると、
別人のように憔悴し切った典子さんが入って来ました。
ぽつり、ぽつりと話した内容は、こうです。

GWの直前の頃、微熱と倦怠感が出てきました。
本当は自宅で寝ていたかったけれど、兼ねてからの帰省の約束を反故にすることもできず、
不調を圧して移動しました。
ところがどんどん体調が悪化するので、帰省先で病院にかかったところ、
麻疹と診断されました。
妊娠中の麻疹は、対症療法といって、高熱に対する治療くらいしかできませんが、
食事も満足に摂れていない状態だったので、産婦人科に入院しました。
点滴を受けて、少し身体が楽になったと思ったら、
突然お腹が激しく痛くなって、ベッドでうずくまっていると、
数分で、赤ちゃんも胎盤も一塊になって出てしまったのだそうです。

妊娠、19週でした。

妊娠中に麻疹にかかると、流早産のリスクがあること、
分娩直前だと、赤ちゃんにうつる可能性があることは知られていますが、
こんな激烈なことになるとは。

検索すると、報告はありました。
わが国では、2000年頃に麻疹が流行した地域があり、
やはり同様の急峻な転帰をたどった例が記されていました。
特に妊娠中期(妊娠24週未満)では重篤で、
ほぼ全例で麻疹の診断後数時間〜数日のうちに、突然お腹を痛がって、
あっという間に流産・死産に至ったそうです。
妊娠25週以降だと、概ね良好な経過をたどっているようですが。

典子さんは、激しい自責の念に苦しんでいます。
あの時、人ごみに出かけたのがいけなかったんだ。
自分が充分注意しなかったのが悪いのだ。
栄養のバランスに、偏りがあったのかも知れない。
もし、子宮の中が透けて見えるようにできていたら、
赤ちゃんが苦しんでいるのが、わかったかも知れないのに。

流産・死産を体験された妊婦さんは、赤ちゃんの喪失だけではなく、
母としての役割や、娘や嫁(孫を身ごもっている者)としての役割をも、喪失します。
典子さんの悲しみがひとしきり癒えるまでには、相当時間がかかるでしょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

麻疹にかかったことのない妊婦さんは、充分に気をつけて下さい。
特に今の東京は、依然として伝染病危険区域です。
なるべく人ごみに出ないで、手洗いとうがい(水でいいそうです)をしっかりやって下さい。

国の公衆衛生を司る人たちは、麻疹ワクチン不足と、麻疹輸出国対策に加えて、
実際に妊婦さんと胎児の犠牲者が出ていることに対して、
充分な啓蒙と対策を講じて下さい。

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